願いの物語シリーズ【ヒナちゃんねる2】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第7話『事件が起こった。』

事件が起こった。

 

そう。それは事件だ。

 

配信界隈では稀に起こる事ではあるが、ヒナちゃんねるで起こったのは初めてだ。

 

おそらくは多くのスタッフを抱えているであろうヒナちゃんねるで、こんな事件が起きる訳がないと思われていた。

 

しかし、それでも起こってしまったのは、この時の配信が少人数で行われていたからでは無いだろうか。

 

その結果、起きてしまったのだ。配信事故が。

 

そう。それは、心霊現象が起きると噂のあるペンションに陽菜ちゃんが行くという企画の中で起きた。

 

生配信が終わり、挨拶が終わったというのに、カメラが切られなかったのだ。

 

「あー! 終わったー!」

 

「お疲れ。陽菜」

 

「あーん。つーかーれーたー! 綾ちゃーん! ジュース飲みたーい!」

 

「はいはい。ちょっと待ってねー」

 

【あれ? 切れてないぞ】

 

【心霊現象起こってるじゃん】

 

【いや、そういう趣旨の配信かもしれんぞ】

 

「でも心霊現象何も起きなかったねー」

 

「まぁ、そうそう起きるものでもないだろう。それに何も起きないのなら。このペンションのオーナーが助かるじゃないか」

 

「そうそう。幽霊なんて私も会いたくないよ」

 

「もうお兄ちゃん! 綾ちゃん! それじゃ私たちのチャンネルが盛り上がらないでしょー! こう妖怪百鬼夜行とか出て来てくれないと」

 

「そんなの出てきたら、大変な目に遭っちゃうぞ」

 

「ダイジョーブ。ヒナがぜーんぶ退治しちゃうから! ていてい!」

 

「それは頼もしいな。でも、良いのか? 陽菜」

 

「何がー?」

 

「妖怪の中にだって、良い妖怪が居るかもしれないぞ」

 

「そっかー。それは困ったちゃんだね。あ。でも、それならひかりちゃんに頼めば分かるんじゃない? ね? ひかりちゃん」

 

「ぇ、む、む、むりだよぉ」

 

【ひかりって誰だ?】

 

【なんか微かに声は聞こえるが、姿は見えず】

 

【マジモンの幽霊って事ォ!?】

 

「なに? 聞こえないよ。こっちに来て話してよ」

 

「わたし、妖怪の区別なんて出来ないよ。陽菜ちゃん」

 

「えー。ひかりちゃんなら出来そうだけどなー」

 

画面外から現れたその少女は陽菜ちゃんの横に座り、その足の上に陽菜ちゃんが頭を乗せる。

 

そんな陽菜ちゃんの頭を撫でながら、少女は柔らかく微笑んだ。

 

【古宮ひかりじゃねぇか!!!】

 

【陽菜ちゃんとか飯塚美月引退で騒いでる辺りでひっそり姿を消してたけど、こんな所に居たのか!?】

 

【え? 陽菜ちゃんとどういう関係?】

 

【昔、スターレインっていうアイドルグループに陽菜ちゃんが所属してた事があって、そこのメンバーだった子】

 

【かなり人気があって、グループ内でも人気はいつも二位だったんだよな】

 

【言うてあのランキングはかなり操作されてたからな。実際の所は圧倒的にひかりちゃんが一番人気だったんだぞ】

 

【てか陽菜ちゃんと仲良かったのか】

 

【ひかりちゃん自身、アイドルやってた時と大分性格が違う様に見えるけどな】

 

【アイドルの時ってどんなんや】

 

【小悪魔系天然アイドルって感じ? 熱狂的なファンが滅茶苦茶居たよ】

 

【居なくなった時、誰かに誘拐されたんじゃ。なんて騒がれてたもんな】

 

【そんなアイドルがなんでヒナちゃんねるの裏方やってんだ?】

 

【いや、まだ裏方って決まった訳じゃないだろ】

 

【どう見てもそうじゃねぇか】

 

「んー。そういえばひかりちゃんは何か見たー?」

 

「何も見てないよ」

 

「そっか。という事はこの場所がハズレなのかな。次はもっと危険そうな心霊スポット行く?」

 

「お兄ちゃんは反対だぞ。陽菜。危なすぎる」

 

「えー! でもさ、でもさ。なんか映ったら私たち大人気だよ」

 

「そんな物で人気になっても、すぐに飽きられてしまうよ。地道に頑張ろう」

 

「そうだよ。陽菜ちゃんには陽菜ちゃんの魅力があるんだから。変な期待はしないの」

 

「ぷー。良い案だと思ったのになぁ」

 

「陽菜ちゃん。光佑さんも、綾ちゃんも、陽菜ちゃんの事心配してるんだよ」

 

「分かってるよ! むー!」

 

「ふふ。よしよし」

 

「子供扱いしないでー! って、そうだ!! 良い事思いついた! ひかりちゃん。二人で心霊スポットに行こう! いっぱい人が居るから出てこないんだよ。二人なら出てくるんじゃないかな!?」

 

「え、えぇー!? わ、私は、その、怖いのは、苦手だから」

 

「なら余計に良いじゃん。幽霊だってさ。怖がってくれる人が居た方が出てくると思うんだよね!」

 

「で、でも。ほら。光佑さんに怒られちゃうよ?」

 

「お兄ちゃんには当然内緒で!」

 

「聞こえてるぞ。陽菜」

 

「お兄ちゃん。駄目だよ。ガールズトークに勝手に入ってきちゃ」

 

「お兄ちゃんにはガールズトークじゃなくて、悪い子の悪だくみに聞こえたけどね」

 

【なんか企画じゃ無くてマジモンの放送事故っぽいな】

 

【って事は、古宮ひかりを映すつもりは無かったって事か】

 

【でも古宮ひかりを抱えてるなら、なんで出演させないんだろ。その為に雇ってるんじゃないのか?】

 

【なんか別の目的があるとか?】

 

【別の目的って何だよ】

 

【さぁ? それが分かったら苦労はしない】

 

【そらそうだ】

 

【いや、でももしさ。もしなんだけど。古宮ひかりが消えた辺りの噂が本当なら、どう思う?】

 

【噂って?】

 

【掲示板に、なんか犯罪に関わってそうな質問する奴が居たんだよ。ヒト一人を世間から完全に隠すにはどうすれば良いかとか。マンションの中で閉じ込めた場合、防音はどうするのかとかさ】

 

【うげー。何それ、マジの奴?】

 

【その質問をした奴は漫画を描く時の参考にする。なんて言ってたけど、実際の所はどうなのか分からないからさ。もし、怪しげな事件を起こそうとした奴が居たとして、その現場に偶然立花と陽菜ちゃんが居合わせたら、どうだ?】

 

【二人の性格上、助けようとするだろうな。でもそれなら警察に行けば良いだろ】

 

【じゃあ、それがもし警察とかテレビにも圧力を掛けられる人間だったらどう思う?】

 

【そんな事あり得るか?】

 

【あー。いや、あり得るかもしれないな】

 

【どういうこっちゃ】

 

【実はさ。ひかりちゃんが引退する前に、怪しげな噂があったんだよな。事務所が陽菜ちゃんと飯塚美月が抜けた穴を埋める為に、スターレインに枕させようとしてるって噂】

 

【ホントなら大分胸糞な話だが】

 

【あの事務所で働いてたって奴の証言でさ。ひかりちゃんに、メンバーの引退をチラつかせて、モデルやらせたり、どっかの御曹司と飯食いに行かせたりしてたって話】

 

【はぁ!? あり得ねぇだろ!】

 

【でもマジだって話だぜ? ひかりちゃんがモデルデビューした時とか、どう考えてもおかしいって話してたもんな。あの時のひかりちゃん大分追い詰められてる感じだったし。まぁ加藤沙也加と一緒にモデルやる様になってからは落ち着いてたけど】

 

【それに、某高級有名ホテルでひかりちゃんが謎の男に迫られてたって話もあってな。まぁこっちも加藤沙也加に助けられたって話なんだが、こう考えると結構ガチっぽい気がしないか?】

 

【確かに】

 

【でもその話が本当なら、ひかりちゃんがこうして画面に映っちゃったのはマズいんじゃねぇの?】

 

【大分マズイと思う】

 

【一応陽菜ちゃんにはメッセージとかも送ってるけど、心霊スポットに行くって趣旨だし。その辺りが連絡付かないかもしれないな】

 

【あー。なら加藤沙也加から連絡すれば良いんじゃないか?】

 

【確かに。そこなら確実に繋がってるだろうし。直接ひかりちゃんに繋がれば良いな】

 

【よし。俺、連絡してくるわ】

 

【一通だと無視されるかもしれんし。俺も行ってくるか】

 

「ん? あれ? なんだろ。え? ホントに!? 分かった! ありがと!」

 

中央でゴロゴロしていた陽菜ちゃんが突如電話に出ると慌てた様子で立ち上がり、カメラの方に走ってきた。

 

そして、急いでカメラを切ったが、既に時間は大分過ぎてしまったため、この事件は皆大騒ぎとなるのだった。

 

しかし、陽菜ちゃんたちは皆普段通りであり、特に面白い何かがあった訳でもない為、この事件は忘れられていく事になる。

 

ただ、それでも一部界隈ではひかりちゃんが見つかったという事でいつまでも騒いでいるのだった。

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