天上天下唯我独尊! と高らかに宣言しながら練り歩く人々を尻目に、私マゴリは原爆ドームに向かっていた。『天上天下唯我独尊教』のメンバーのひとりが、私に話しかけてきたからアワワとなった。彼女は50代の主婦らしく、夫を殺したくてたまらないらしい。だから手伝って欲しいと懇願してきた。私は承諾した。なんだか楽しそうだったから。こんなにも簡単に他人の人生に竹槍を突き刺すから不幸な目に遭うのだ、と研究者のおじさんは言う。「死ねよクソ!」「なんだと! こ、この脳足りん癖に美少女のバカ女が!!」「うるさいわよ! あんた。近所迷惑だから黙りなさい!」「なんだと! なんだと! 貴様、誰だ!」「あたしは夫を殺したくてたまらないしがない主婦よ。あんた喧しいわよ。さっさと黙りなさい」ここで、私マゴリのちっぽけな脳みそに電撃が走る。バリリリッ! 私の脳のすぐそばに、拳銃が生成されたことをなんとなく知る。でもどうやって頭から取り出せばいいんだろう? 「『黄金のキノコ』だ。マゴリよ」「え? なに」「ふははっ。わしは破壊神墓石。原爆ドームを守護する神の一柱だ。わしはこう見えても強大な力を持っておるのじゃ」キショい奴出てきたと思った。私はこういう嘘くさくて胡散臭い神が嫌いだ。本能で私は嫌っているのだ。そうに違いない。心じゃなくて脳みそが言ってるの。脳足りんなマゴリ。でも信じられるのは脳みそだけだって分かってる。「おい。聞いておるのか? マゴリよ」金髪の少年が言う。彼はとてつもなく美しい。人間ではありえないレベルで。つまり本当に破壊神なんだろう。「違うぞマゴリよ。わしの名字が破壊神なだけで、わし自体は破壊神ではないのじゃよ」じゃあ名前変えなさいよ。50代主婦が口を挟んでくる。少年はカッカッカと笑い声を上げる。特殊な笑い声だったから、『天上天下唯我独尊教』の人たちが群がってきた。「天上天下唯我独尊!」「天上天下唯我独尊!」ああ、マジでうるさくて私の脳が苛立ってる。殺していい? コイツら殺していい? と暴れたいらしい。あ! 黄金のキノコを私は理解する。やっと理解する。脳が小さいのはデメリットしかない、と正常な人間は言うだろうけど違う。違うの。私は口の中に腕を突っ込んで口蓋を掘って穿って脳まで手を伸ばす。届いた! 私は黄金のキノコという名前の拳銃を取り出す。ビチャリと唾液やら血液が地面に飛び散るが気にしない。今はどうでもいい。私マゴリは殺すのだ。今から人を。躊躇するなマゴリよ、と破壊神じゃない破壊神墓石がニヤつきながらタバコを吸っている。なに余裕ぶってんのよ? 私は口を開けて血を吐きながら破壊神墓石を殺害しようとする。タバコの煙に妨害され銃弾が無効化される。ちっクソが! 「マゴリよ、わしには届かんよ、ソレは」「うるさいわね。さっさと死になさい!」50代主婦がそう叫んだ直後、原爆ドームが輝き出して爆発する。主婦は吹き飛んできたドームの欠片を手にして破壊神墓石に斬りかかる。しかし弾かれる。破壊神墓石は美味そうにタバコを吹かしている。私の脳みそは異次元に転移する。脳みそから手足が生えて走り出す。どこへ向かうのか? それは当然、破壊神墓石の心臓がある場所である。マゴリは知っていた。遠い遠い異次元に心臓を隠していることを。やがて脳みそは心臓とキスをする。その瞬間、破壊神墓石の手指がバキボキと折れ出して雑巾絞りみたいになる。死んだ、と私は確信した。
胡麻麦