絶飯巡礼 ― JKが『日本一飯のマズイ店』を追い求める   作:

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>感想
何かの間違いでアニメ(実写)化したら、絵面が終始絶望的すぎる……


第7軒:まごころ亭

 

【葵視点】

 

「“まごころ”って名前の店で外れたらもう、どこにも行き場ないと思うんだけど」

 

「大丈夫。名前がやさしいほど、期待を裏切るときの破壊力が強いの」

 

「ねえそれ、名言風だけど嫌な予感しかしない……」

 

駅の南口からバス通りを10分。

住宅街にぽつんと現れるのが、今日の目的地――『まごころ亭』

 

外観は小奇麗で、遠目には普通の定食屋に見える。

のれんは真っ白で「まごころ亭」とだけ手書き。横には控えめに“家庭の味”とある。

 

くれはは言った。

 

「Googleマップのレビューに、“味は無害、記憶には有害”って書かれてた」

 

「それもう詩でしょ……?」

 

照真くんが苦笑する。

 

「でも葵、前回よりはマシそうじゃん? 看板も新しいし、匂いもしない」

 

「……それが一番不安になるやつなんだよ……」

 

店に入ると、まず、人がいない。

 

いや、店員がいない。

代わりに、受付カウンターに**“自動配膳対応:ご注文はタッチパネルにて”**と貼られていた。

 

奥の厨房からも音はせず、代わりに無人で動く小さなロボットが皿を運んでいる。

 

「わぁ……なんか未来感ある……」

 

「でもこれ、“まごころ”って言っていいの……?」

 

***

 

【タッチパネル:メニュー選択画面】

 

> ◆まごころ定食(注文できません)

◆焼き魚(風)定食 ¥880

◆しょうが焼き(風)定食 ¥900

◆唐揚げ(風)定食 ¥850

◆味噌汁(風)単品 ¥180

 

 

 

「ねぇ、くれは……“(風)”ってなに!?」

 

「葵ちゃん、冷静に。これはつまり、“それっぽい何か”が出てくるっていう、店側からの事前の謝罪。」

 

「いや謝られてもさ!!」

 

照真が肩をすくめながら言った。

 

「たぶん……法的リスクを回避しようとしてるんじゃないかな。“本物のしょうが焼きじゃありません”って予防線」

 

「どうして本物を作ろうとしないの……?」

 

そして極めつけが――

 

「“まごころ定食”が注文できません、ってなってる」

 

「えっ、店名のやつじゃん!? なんで!?」

 

「……これはたぶん、“幻の定食”ってやつだね」

 

「デジタルメニューに幻入れないで!!」

 

***

 

【料理登場:自動配膳ロボット】

 

15分後、小さな配膳ロボットが音もなく私たちのテーブルへ身を滑らせてきた。

 

■ 焼き魚(風)定食(照真)

・白身魚と思われる何か。焦げ目なし。

・中は明らかに冷凍魚特有のゴム質、塩気はゼロ

・添え物の大根おろしは“ゼリー状”

 

「これ……“ただ焼いただけの魚”って感じ……」

 

■ しょうが焼き(風)定食(くれは)

・豚肉のような何かが5枚、透明なタレで泳いでいる

・タレの味は砂糖と醤油だけ、しょうがの風味は行方不明

・キャベツは水分過多、ドレッシングなし

 

「しょうが焼きというより、“レンジで3分加熱した肉”って感じかな」

 

「まごころとは……」

 

■ 唐揚げ(風)定食(葵)

・一見、普通の唐揚げ。だが中が“ぬるい”

・衣はべちゃつき、肉はパサつき、そして味が……うっすら甘い?

 

「……え、なにこれ? 鶏肉のマフィン?」

 

「新ジャンル開拓、おめでとう」

 

味噌汁(風)は、もはや語るに値しない。

“具なしで、すまし汁より薄い茶色の液体”。

 

そして、隣の席のサラリーマンがつぶやくのが聞こえた。

 

「……ここ、なんでこんな客多いんだ……?」

 

くれはがぽつりと呟く。

 

「たぶん“味じゃない何か”が刺さるんじゃないかな……“やさしい裏切り”っていうか……」

 

「ここに来るお客さん、なんか怖い……」

 

***

 

【完食】

 

いつものように、くれはは完食していた。

 

照真は、8割食べたところで箸を置いた。

 

「……味覚は無事だったけど、色々なものに裏切られた気がする」

 

葵は半分残した。

 

「……私、今日……夢で“(風)”に追いかけられる気がする……」

 

そこで、何気なく視線が交差した。

 

くれはが少し笑って、照真が、その横顔をじっと見ていた。

私はその様子を、真正面から見ていた。

 

言葉にできない、でも確かに芽生えていく何かが、ここにはあった。

それが何かは分からないけど――

少なくとも“まごころ”ではないことだけは、確かだった。

 

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