なんとびっくり、原作既知転生。恋愛コメディ漫画の未来を知ってどうするってばよ。
転生の代償は、超不幸体質。幸運ではないため、当然運命の人なんていない――のだが。
原作彼女と一緒にぶつかったことで、恋太郎に運命の人と勘違いされてしまう!
幸薄さによって、「付き合わなければ死ぬ」という設定に対する納得感もある!
どうなる、虎天子!
完結作ではありませんが、読んでいただけたら嬉しいです。
なお、あとがきには作者の妄想が含まれますのでご留意ください。
「あっすいません…!」
「いえ…こちらこそすみません」
「いったいわね!ちゃんと前見て歩きなさいよね!」
「うわ、わ、わ私のせいで、私のせいで すみません……」
ビビーン!!
ーーその光景を見た時、私は彼らに釘付けになった。
あぁ、勘違いしないでほしいけど、断じて一目惚れしたわけではない。
花園羽香里。
院田唐音。
……愛城恋太郎。
不幸にも廊下でぶつかってしまった三人を見て、電流が走る。魂の奥底に刻まれた記憶が鮮明に蘇ったのだ。
見つめ合う男女の間に挟まって何と邪魔な奴だとは思うが、私も羽香里や唐音と同じように、まじまじと恋太郎を見つめてしまった。
ここ100カノの世界かーい!!
◇
私の名前は虎 天子(とら てんこ)。
転生者であることを先程思い出した者だ。
「大丈夫?3人とも」
「あぁっ…すみません、足をくじいてしまったみたいで…」
「えっ!?」
「保健室まで肩を貸していただけますか?」
衝撃から立ち直ってまず考えたのは、「彼らと友達になりたい!」ということ。
何故なら『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』は私の大好きな漫画だからだ。
私がこの漫画を知ったきっかけはアニメだ。
1話を見て、そのテンポの良さに心をつかまれ、ネットの反応集をみて「ラブコメ界のボーボボ」と呼ばれていることを知り、ずんずんとハマっていった。
絶対に彼女達を幸せにする、という恋太郎のかっこよさ、彼女達の可愛さ、ギャグの面白さ、シリアスの塩梅。どれをとっても最高の作品で、私が好きになるのは当然だった。
(読んだこと見たことない人はこんな小説を読まずブラウザバックして必ず見てきてほしい)
そんな作品の幕開けを……彼らと仲良くなれればこの先も……どんな幸運か特等席で見ることが叶うかもしれないのだ。
そんなの……!
細かい疑問すべて放っておいて、関わりを持つ1択に決まっているでしょう!!
蘇ったばかりの記憶の整理は後回しでいい。
今は彼らと誼を結ぶのだ。
「うわあああーーッ!!!!」
いや、ちょっと待てェい!
まだ地の文で説明してるところなのに!
いつの間にか恋太郎が自分を殴りだすシーンになっていた。打撃音が重い。
……か、会話の流れに入れないっ!
先程から、地の文の裏でお構いなしに会話が進んでいた。
これがギャグ漫画の世界……!
テンポが良すぎて考える暇もない。
今世の私はぼっちオブぼっち。
先生と家族以外の人と話すのはいつぶりか思い出せないくらいで、話しかけ方がわからない極度のぼっち。
そう!漫画でこの流れを読んで知っていても、それを活かせる能力がないぼっちなのだ。
例えるなら、絵の技術を素人にすべて話したところで、最初から上手い絵をかける訳ではない、みたいなことだ。
この場を乗り切る対処法はないか、と痛む頭を堪えながら前世の記憶を頼るが、前世も今世ほどとは行かずとも、交友関係が少なかったようで全く参考にならなかった。
これは詰みかもしれない。
戸惑っているとまた会話が進んでいたようで、こちらに手が差し伸べられた。頬を赤く染め(殴ったから)、太眉を心配そうにハの字にしていた。
「その……君も足を挫いてたりする?」
そういえば、まだ座り込んだままだった。
愛情モンスター恋太郎が、もし私が足をくじいていたらまた自分を殴りだしそうな誠実な瞳でこちらをじっと見ている。
それほどまっすぐな瞳で見つめられたのは久しぶりだったから、少し顔が赤くなってしまう。
……彼を傷付けるのは本意ではないな。
「いや……し、しし心配ありがとうございます。平気です……ッ!」
このように!と素早く立とうとして、途端足首にズキン!と痛みが走る。膝立ちの状態で一瞬顔をしかめてしまった。
すぐに取り繕ったけど、恋太郎は顔を青ざめさせた後、思いっ切り舌をかんだ。
血が飛び散る。
「ん゛ん゛んんんんーッッッッ!!!!」
……え?
予想を超えた自傷が目の前で行われていた。
「ギャーッ何してるのあんたーっ!!」
「うおおおおーっ!!!!一度に3人も怪我させるなんて現行犯逮捕どころか現行犯死刑だーッッ!!!!」
「お、落ち着いてください!私たちは平気です!早く手当を…!」
彼女達であればキュン♡出来たかもしれないその行動を、私はただ呆然と見ていた。
うん。私にギャグ漫画は無理だ。
私は恋太郎の運命の恋人ではない。
わかるのだ。あの時確実に目があって、恋が訪れなかったということ。100人の彼女が控えていて私が押しのけられるわけがないということが。そして、それに不満はない。ノリについていけないし!
……うおやっべ吐きそう。
今少し恋人関係について考えただけで吐き気がした。
恋太郎が100人の運命を得た代償は重い。
……最善は友達。最低でも知り合いに。
会話を振られたら話せるように脳内シミュレーションだけはしておくが、今回接点を持てたことが望外の幸運だと考えて引くことも考えなければならないだろう。
でもやっぱいつかはぼっち脱却してぇよなぁ……。
結局恋太郎の狂乱は羽香里が恋太郎をなだめてくれて、何とか一段落した。
「本当にごめんね、俺がちゃんと前を見ていれば、君は怪我しなかったのに……」
「うーん……?ひ、人とぶつかったのに足首を挫くだけで、す、済んだんですよ?ああ愛城さんの幸運を分けてももらってしまったのかもしれません」
私がそう言うと、恋太郎は感激したように目をキラキラさせた。まだまだ女性慣れしておらず初々しい恋太郎に頬を緩める。
「この世では突然、ぼ、暴走トラックに引かれそうになるような不運が何度だってあるんですから」
「そんな転生ものの小説の導入みたいなトラックが何台もいてたまるもんですか」
唐音のツッコミが冴え渡った。
ほんとだよ。
「別に本当に怪我してるなら嘘ついてる場合じゃないし肩を貸してあげようと思ったわけじゃないんだからねッ!」
と唐音がツンデレを発揮して私を立ち上がらせ、恋太郎と羽香里がその後を続く。
「愛城くん、もう怪我は大丈夫ですか?」
「心配してくれてありがとう……ッ!?」
後ろでなんかやってる。多分羽香里がしがみついてる。
となりから唐音の歯ぎしりと「ふん!」が聞こえてきてほんの少し罪悪感が刺激された。
……私がいなければ君も銀河一幸せな電信柱にしがみつくセミになれたからね。
何を言ってるのかわからない人は原作かアニメ見てくれ。
「俺は一年四組愛城恋太郎。三人は?」
「私は一年四組の花園羽香里です。同じクラスなんですね」
「私は一年四組の院田唐音よ。ふん!同じクラスなのね」
「一年四組の虎天子です……こここの度はごご迷惑をおかけししまうま……」
「聖徳太子向け自己紹介ッ
も、もう一度だけ俺にチャンスをください…」
唐音に掴まって歩く。
不意に「裏庭にピンクのクローバーが生えていて、その中の四つ葉のクローバーを渡しながら告白すると必ず付き合える」という話が聞こえてきた。羽香里も唐音もピタリと話をやめたから、余計によく聞こえた。
キュッ!と滑り止めもないスリッパが廊下と擦れる音が聞こえ、羽香里がものすごいスピードで方向転換したのがわかった。
「私ちょっと用事が」
真っ先に羽香里が駆け出し、唐音が悲鳴をあげる。唐音は悩んだ末、「……ご、ごめん!」と、1言謝り、私を恋太郎に預け「私も本当は用事があるんだからね!」と駆け出していってしまった。
……嵐のようだった。
もう少し唐音の優しさを堪能していたかった気もするが……。
原作の流れからわかっていた離脱だ。今回は彼女たちとではなく、恋太郎に友達になってもらえないか機会を伺ってみよう。保健室につくまで……!
保健室につきました。
ぼっちなのでそんなこと不可能でした。
……恋太郎は律儀に手当がされるのを見届けようとしてくれているようだ。
保険室の先生が湿布を取りに行ってくれている間。今が、ラストチャンスだ。
落ち着きなさそうにしている恋太郎の名前を呼んで、きゅっと唇を噛んだ。
「わ、わ、わたしと……」
顔が赤くなる。まるで一世一代の告白をするかのように、大きく息を吸い込むと、彼は釣られて押し黙った。
言うぞ言うぞ。
「わたしと、と、とトトロロロロロロロ」
「さっきから会話が溶けて何もわからない、ごめんね!?」
「はい、湿布」
ペタッ!
そんなことをしている間に先生の無慈悲な湿布が貼られてしまった。
軽く捻っただけなら冷やして安静にしていれば治る。手当は終わりだ。
柄にもなく友達を作ろうと奮起した挙句何の成果も上げられなくて、胸の奥が冷たく感じる。
……あぁ、やっぱり私は……。
「愛城くんも怪我してるみたいだから手当させてね」
「先生、ありがとうございます」
無慈悲だと思った先生に感謝の祈りを捧げたくなった。まさか延長されるとは……!!
だが、同じ手を使えば同じ結果に陥るだけだ。
どうする。どうすれば、恋太郎に意思を伝えられる……?
「とにょたちぇ、ふりぇにゅむ、しにゅー、ずっちょま……ぐぅぅ!」
「なんの呪文かな?」
友達もフレンドも親友もズッ友も言えない。
単語で伝える作戦もだめだ。
どうして口の筋肉を鍛えてこなかったのだろう。
頭を抱えていると、ふと恋太郎が引き締まった凛々しい顔になって、私を見据えた。
「その、虎さん」
「はははははい」
何言われるんだろう。怖いな。
「今無理して話そうとしなくてもいいんだよ。同じクラスで、話す機会はたくさんあるんだから、虎さんのタイミングで話してほしい。俺はいつでも待ってるから」
「いつでも……?」
「うん」
「私がはは話しかけても疫病神だとおいはらったり無視したりしませんか?!」
「するわけないじゃないか!」
……いつでも、と貴方は当たり前のようにこれきりじゃないと考えてくれるんだな。
鼻の奥がツンとして、ますます言葉が出てこなくなった。
「むしろ今までどんな扱いを受けてきたのか疑問に思う所存」と眉を寄せる恋太郎へ、やっぱり思いを伝えたくて、椅子から立ち上がって、けんけんして机へ。
まだ持っていたクラスの書かれた紙の裏に、文字を書いた。
『私と友達になってください〜〜』
文末がぐにゃりとしたが、読める。伝わる。
恋太郎へ突きつけた。
さっと目を通した恋太郎の顔つきが怪訝そうになる。
……やはり、だめだろうか。
「こちらこそ、友達になってくださいっ!虎さん!」
怪訝な顔つきは一瞬のことで、嬉しそうに笑った恋太郎が快諾してくれた。
恋太郎の笑顔は素敵だ。
胸が暖かくなって、OKしてもらえた事実を噛み締めた。
「短い付き合いになるとお思いますがよろしくお願いしますねっ!」
「えっ?」
◇
私はよく怪我をするので、市販で買える大抵の薬は家に常備してあるし、サポーターも足首、膝、肘、腰……と様々な部位のものを用意している。
放課後、捻った足に湿布の上からサポーターをつけて、足をかばいながら歩く。
今羽香里も唐音も、恋太郎に告白しているところだろう。
けれど今、私はそれを見ようともせず、学校から離れた場所へ向かっている。
一度落ち着いて記憶を整理した。
そして、100カノを見ることより優先しなければならない目的の場所があることに気付いた。
ただ、願うように、歩いて、歩く。
私はいわゆる不幸体質だ。
よく怪我をする、という表現は生ぬるいほどの。
世界は常に死の危険に満ちている。
家から3歩出れば、異世界ものの冒頭のようなトラックが突っ込んでくるし、人混みの中を歩けば石に躓き通り魔に遭遇する。
だからといって公共交通機関に頼れば待っているのは事件か事故。修学旅行などクラスでバスに乗れば必ず横転するので学校行事に参加したこともない。
別に私だけならそれでいいのだ。
けれど不幸は周囲にも及んで、人を巻き込んで怪我をするので、次第に友達がいなくなってしまった。皆いい人だったので、いじめられることはなかったが、誰とも話せないというのはしょうがないとはいえさみしくて。
年々酷くなる不幸。
あまりにも酷いのでお祓いにも行ったが効果はなく、家族を守るため、私は中学の時点で独り暮らしを始めた。
対人経験が少なければできないのは当然である。
私は人付き合いが苦手なぼっちになった。
いつ死んでも悔いのないように生きる。
そう誓って一生懸命に生きてきたつもりだが、願わずにはいられなかった。
普通の人と同じように生活できたら、と。
けれど、何度願っても神様は叶えてくれなくて……
ーーけれどもし、神様がすでに願いを叶えた後だったとしたら?
「恋愛の神よ……は、畑違いだとは思いますが、ぜひともお話をお聞かせください……」
今日記憶を思い出して、自分の不幸の原因に思い当たってしまったら。
確かめなければならない、と私は神様の元へ……神社を訪ねた。
恋愛の神を選んだのは簡単な理由だ。
私の知る会話できそうな神様が恋愛の神だっただけだ。
「話をき聞いてくれないと……
全国の神社で恋愛の神がラピュタをみてたせいで一人の男の子に運命の人を100人設定してしまったと訴えて回りますよ」
「やめんか!なんて脅しじゃ!」
真摯に祈りを捧げるとすぐに神様が壁から顔を出した。物理的に。顔を出すって表現が物理的なことってあるんだ……。
しかし、やはりフレンドリーな神だ。
「おぬし、何故それを知っておる?わしは誰にもその事を話しておらん」
まぁ、現実的に考えて全国を巡ることは無理である。全国踏破する前にトラ転する。ハッタリだ。
「……そうかおぬし。転生者じゃな?」
だから勝手に会話が進むのやめて!?
まだ何も説明してないというのに神様が私の特異性を見抜く。慌ててコクコクと頷いた。
「一目見ればわかる。この世界を漫画として観測していたのじゃろう?だからわしの重大な秘密を知っていた。納得じゃ」
重大というほど重大な秘密でもないけど。
「けれど、納得できぬこともある」
「そ、そそれは一体……?」
壁から全身を出して、私の目の前におわす神様は、視線を彷徨わせている。
言うか、言わざるべきか。逡巡の後。
困りきった顔でそれを言った。
「おぬし、何故まだ生きているんじゃ?」
やっぱりか。
それを聞いて、胸中に深い納得が満ちた。
「死から蘇り第二の人生を得る。それ自体はとても幸運なことじゃが… 魂を漂白しなければ、生まれなおすために一生分では補いきれない“運気”を費やすことななる。運気は0を下回ってマイナスになり、その人物は必ず不幸体質となるのじゃ。
ほら、転生ものの主人公がいくらスローライフをしたいと言っても厄介事に巻き込まれるみたいなやつじゃよ。……そこが面白いんじゃがな?」
「も、ものすごい納得感でですね」
理不尽なまでの不幸の暴力に理由がついて、安心さえする。
というか神様ラノベも守備範囲か。俗っぽい例えを出すのがすごくこの神様っぽい。
「転生ものの主人公は大抵チートスキルを持っておるから何とか立ち向かえるが、おぬしにあるのは恋愛コメディ漫画の原作知識のみ。一生分以上の幸運を使い切って、自衛手段もないおぬしは、今15歳になるまで生きていることが不思議なくらいじゃ」
くそ、100カノがシリアスな漫画じゃなかったばっかりに、本来十分チートなはずの能力がハズレみたいになってるじゃないか!
100カノって何故かみんな第四の壁認識してるし、せいぜい狭い範囲の未来予知くらいにしかならなさそうだ。
「いや、違うな。前世で望んだか望んでいないかは知らんが、原作知識をチートとして授かったおぬしは、チートを活かせる愛城恋太郎と出会う機会を得るまで、辛くも生き延びることができた。
じゃが、出会った以上その補正も消える。おぬしに残された運命は……」
思考を読んだのか私の考える速度が遅いのか、神様は自分の言葉を勝手に訂正している。
必死に思考を巡らせているうちに、シン、と春という季節に似合わない張り詰めた空気が満ちている。
神様は重々しく、杖を石畳に打ち付けた。
「おぬしに残された運命は……
1年以内に不幸な目にあって死ぬ。それだけじゃ……」
……それは、神様からの余命宣告だった。
「ま、まぁ、推測に過ぎんがな!ワハハ!
わしは恋愛の神じゃから、専門知識はない!きっといいことあるじゃろう!なぁ……?」
気遣わしそうな神様に、私は首を傾げた。
「べ別に死と隣合わせの今までと何もか変わりませんよ?
いつ死んでもいいように悔い無く生きる!
それが私のモットーですから、ら。
むしろ知れてよかったです。今までは転生者といいう自覚がなくて、納得、く、いってませんでしたが……好きな漫画のせ世界に触れて死ぬ。十分な幸運です。い、いいじゃないですか」
「おぬし前向きじゃの……」
今が楽しくて満ち足りているならそれでいいのだ。
実は今幸せを感じている。自分に長文を喋る才能があったことが判明したからだ。
神様相手だからだろう。こんなに話せるなんて嬉しい限りだ。
「むむしろ聞きたいのは対策です。不幸から逃れる術はあ、ありませんか?」
若干引き気味の神様に質問すると、神様はゆるく首を降った。
「おそらく、ない。転生に加え……
原作知識を“使う”ことではなく、原作知識を“得る”ことで幸運を使い切っていて、もう復活する見込みもなさそうじゃからのう……」
「わわかりました。では残りの人生を精一杯謳歌したいと思います」
原因も、対策がないこともわかれば十分だ。
これからは今日得た久しぶりの友達と、短い余生を全力で楽しもうと思う。もちろん、なるべく長く生きられるよう努力した上でだ。
勘違いしないでほしいが、別に自殺願望者じゃあないぞ。
「それと、その……。誠に言いづらいのじゃか…」
お礼を言って帰ろうと決意したら、まだ何かありそうに神様が汗をかいていた。
「ど、どうされましたか?」
「……転生に関しては専門外じゃが、恋愛の神として言えることがある」
「……別に私、れ恋愛願望はありませんよ?」
置いていくことがわかっていながら恋するつもりなんて欠片もないので。
「それならいいんじゃが、忠告だけはするぞ。……おぬしが恋愛するのは推奨できぬ」
「? 1年以内に死ぬからですか?」
「いいや、違う。
おぬしがパートナーをつくれば、パートナーにひとりで抱えきれなかったおぬしの不運が流れ込み、パートナーを道連れに死ぬことになるからじゃ」
「私は歩く地雷ですか?」
ひでぇこった。
「……一応き聞きますが、私に運命の人はいませんよね?
私に対してい、一生分の幸運を使って、そのまま死ぬような可哀想な人がこの世に存在していませんよね……?」
「それは安心していい。おぬしに運命の人はいないぞ。おぬしは幸運がすっからかんで、運命の人を設定しようにもできんかったからのう」
「よかった……」
ふぅ、と安堵の息を吐いた。
恋太郎の運命の人ではないと公認が出たぞ。
「な、なら、こんなぼっちに告白する人はいないと思いますが、万が一が起こってもこっぴどく振ってやれば問題ありませんね、ね」
「……非常に物申したいところじゃが、それで間違っておらんよ」
確実な対処方法に、恋愛の神は項垂れるように同意した。
◇
気がつくと、もう夜になっていた。
私は神様にお礼を言うと、暴走トラックを含めた多くのトラブルに警戒しながら神社を出る。
……ちなみに、この神社についたのは夕方だ。特に家から神社まで遠いというわけではない。普通の人なら学校から帰ってまっすぐ神社を目指せばまだ明るいうちに神社にたどり着けるだろう。
けれど私は体質的に普通ではない。
そんな私からしたら、「今日1日足をくじいただけの負傷」で済んでいて、「周囲に気を張りながら進んで夕方である」ということは、非常に幸運だ。
このペースなら今日は睡眠時間も取れそうである。勝ったな。
……まっすぐ帰ろうとしたら、帰り道に暴走トラックが何台も突っ込んだようで、道が何本も通れなくなっていた。
本当に補正切れてるんだな……。
行きが軽快(当社比)だっただけに、落差に青褪める。今までここまでのことはなかった。もっと防げば済むような直接的な危機だった。いやこんな回りくどい追いつめ方する?
いつどこで何に遭遇しても逃げられるようこの街のすべての道は把握しているが、今日突然起こった事故までは把握できない。
嫌な予感がして仕方なく1度神社に戻る。遮蔽物がある場所のほうが落ち着いて情報を検索できるからだ。
「「あ」」
鳥居の下で、難しい顔をした恋太郎に出会った。
そうだった。恋太郎は二人に告白され、どちらを選ぶべきか迷って神様に相談しに来るはずだったのだ。
時間をかけすぎたらしい。
「どうしたの虎さん。こんな夜更けに……」
……神様に口止めしたっけ。転生者で恋太郎の事情を深く知っていることがバレたら?人格者の恋太郎は気持ち悪がったりしないだろうけど!推しに推していることがバレるのは心の準備が……。
補正がきれたことによる極度の動揺とほんの少しの恥ずかしさ。
カァアと顔を赤くすると、「もしや虎さん……!」と信じられないように目を瞬いている恋太郎がいた。
……バレた!?
「恋愛祈願に来たの……?!」
恥ずかしさに思わず顔を隠し、2秒後に言われたことを理解する。
……あぁ、そっか。恋愛の神を祀る神社に向かっていたら、そう見えるよね。
恋太郎視点だと友達となった女の子がその日のうちに恋愛の神社に来たことになるのか。思わせぶりすぎる友達だな。
……やばい、吐き気が。
神社の目の前、そして人の目の前で急に吐くなんて失礼である。私は顔を隠した手の平をそのままに、口を抑え急いで走り出す。
「待って!君は足が……!」
……あ。
頭が回っていなかったのだ。
恋太郎の出現がトドメとなり、警戒を怠った。
警告虚しく、足にズキンと痛みが走り、派手にすっ転ぶ。
受け身は取ったが、そこに運悪く、暴走トラックが突っ込んでくる。今日何台目だよ!!
トラックの死角に倒れ、足は怪我していてすぐには動けない。一刻の猶予も、ない。
……まずい。
出かかっていた吐瀉物を飲み下して、私は叫んだ。
「転生するーーーーッッッッ!!!!」
ライトが眩しく、目が眩む。
目を瞑ると、視界が真っ白になった。
『短い付き合いになるとお思いますがよろしくお願いしますねっ!』
……悪くなかったよ、人生。
「うおおおおおおーーーっ!!!!虎さぁぁぁああん!!!!」
挫いていない方の足が掴まれて、引きずられる。
男子のというのはかくも力が強いのか。
トラックを、回避した。
九死に一生を得たらしい。
ガシャーン!と大きな音を立てて、トラックはガードレールに突っ込み、止まった。
今日だけで罪のない何人ものトラック運転手の未来が閉ざされた。
トラック運転手だって生きてるんだど。
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!生きてる……!?大丈夫……!?」
「ああああありがとうごごござざざざざ」
心臓の鼓動が止まらない。
死にかけるのは日常茶飯事だが、警戒を怠ったことはなかったから、不意にあんなことになって動揺したのだ。
……深呼吸。動揺は死に直結するんだ。
わかりきったことだろ。
そう心がけながら、膝に手をおいて呼吸を整える恋太郎をなんとなく見ていた。
彼は迫るトラックの前に飛び出して、私を助け出してくれた。1歩間違えば死んでいてもおかしくなかったのに。
ふと恋太郎の顔が上がり、目が合う。
途端に頬の周りに熱が集まり、気恥ずかしくなってふいっと目をそらした。
……いや、まじで心臓止まらんけど?
先程の思索はどこへやら、意味がわからない自体に混乱する。
ちょっと待て、私は神様からお墨付きを得たnot運命の人だぞ……?運命の人以外の女性に恋愛対象として見られない呪いにかかってる恋太郎に対して、対象外の私が推し以上の恋心を抱くわけがないだろ……。
そもそも私は前世も含めて恋愛経験ゼロなのだ。こんないっときの感情で愛とか恋とか判断できるわけないだろう。馬鹿なのか?
ハイハイ吊り橋効果吊り橋効果。
目を回していると……至近距離に恋太郎の顔があって、ピキ、と石化した。
「ごめん、引きずったときに顔に傷をつけちゃったみたいだ。
……これ、ガーゼ。次人を傷つけちゃった時すぐ手当できるように持ち歩くことにしたんだけど、こんなに早く役に立つとは思わなかったよ」
憂う表情で、不器用ながら丁寧に消毒とガーゼを貼ってくれた。
別に救急セットは私も持っているが、今日の出来事をすぐに改善に移しているのが紳士で恋愛モンスターな恋太郎らしい。
……こんなことがあっていいんだろうか。
友達がいなくて、人との関わりが家族以外と濃くなくて、家族とも離れてしまって。
なのに、こんなに急に、“友達”ができてしまって……。
幸せを噛みしめ、笑うと、恋太郎の顔が赤くなったのがわかった。
「虎 天子さん」
名前を呼ばれる。まっすぐ心配を伝えてくる瞳。
「俺はあなたを守りたいです。
俺と付き合ってください」
その真剣な顔を見て……
彼に私への好意があることがわかってしまった。
私は……堪えきれなかった。
「オロロロロロロロロロロ……」
「2連続で確かな手応えからの嘔吐ッッッッ」
私は吐いた。
「高低差……高低差が辛い……っ」
「違……オエッ……違うんです、愛城さん……ウプッ」
ここは地の文でも時間経過するギャグ漫画の世界だ。早く否定しないとまずい。
「ご、ご、ごめんなさい……い、命の危機にあった実感がい、今更湧いて、きて……オロロ」
「! そ、そっか…!死にかけたところだったもんね……」
なんとか理由を絞り出すと、恋太郎は納得したようでホッとしていた。だが、一時凌ぎだ。
……さて。断言しよう。
恋太郎は私のことを運命の人だと勘違いしている。
タイミングだ。
出会ったタイミングが悪すぎた。
私が恋太郎と出会ったあの場所には、本来の運命の人がいて、ビビーンが発動してしまった。私に対しては発動していないことに気付かなくてもおかしくない。
そして、栄逢凪乃に冷たくされた愛城恋太郎が、本当に運命の人なのか疑ったことから、ビビーンは一度しか発動しないことがわかる。
その後ビビーンがなくても不思議に思われない……!
さらに、本当は別件だが、まだ付き合っていない私に不幸が降りかかり、死にかけるのを恋太郎は見た。
そりゃ勘違いするだろう。私が100人の内の一人だ、と。
……まぁ、勘違いしていると知ったおかげで、神様が私の特異性を恋太郎に漏らしていないことはわかったけど。
「虎さん……?」
しかし私が彼女になる選択肢は絶対にない。
私が抱く感情は100カノに対する箱推し!ヒロインは100人で十分(?)だし、100人の中に割り込むなんて言語道断である。
そして私と付き合ったものは私と道連れになると神様に忠告されている!
以上のことから付き合うのは絶対になしであるQ.E.D。
「その……えぇと……」
問題は振り方だ。
『こっぴどく振ってやれば問題ありませんね、ね』
無理だろ。これほど真剣な恋太郎を振るなんて。プロローグの浅川さんの凄さが身にしみる。優しい人だったんだろうな。
恋太郎がつらそうに唇を噛んている。
断られる雰囲気を察していそうだ。彼は愛情モンスターで、別に鈍いわけではないのだ。
……。
「ごめんなさい。私は愛城さんとは付き合えません」
「……教えてくれて、ありがとう。虎さん」
きっと、中途半端な関係は双方のためにならない。
結局、素直に断るのが一番である。どうしようもない。
「けれど、あ、ありがとう、ございました。愛城さんがいなければ、わ、私は……
私は、さっき死んでいました」
私は断りの言葉の後すぐ、出来る限りの感謝を伝えた。
自分が不幸体質なこと、友達になってくれて嬉しかったこと、助けてくれて嬉しかったことを……。
「そ、その…暴走トラックが突っ込んでくるのは、に、日常茶飯事なのであまり気にしないでく、ください。わ、私は物流を歪めてしまうんです」
「それが日常と化していることに危機感を覚えざるを得ないッ」
キレのいいツッコミの後、恋太郎は鼻をすすった。
「付き合えなくても……グスッ、守るから!友達としてっ!絶対に死なせないから……ッ!」
「と、と、到底出会って1日目の友達にかける言葉とは思えま、せんけど」
断れたけど、これ誤解解けてないっぽいな。
どうしよう。
「わ、私は疫病神みたいなものですよ。一緒にいると愛城さんまで不幸にな、なります。
……ひ、昼間の様子だと花園さんと院田さん、愛城さんに告白したんじゃな、ないですか?
二人を、だ、大事にしてあげて、ください。
私はそれを見ていられれば、幸せだから」
歴然とした事実を恋太郎に告げると、私は微笑んだ。すべてをひっくり返す恋愛モンスター恋太郎相手に何を言えばいいのか結局わからなかったが、断固拒否の姿勢は見せられたはずだ。
……はずだよね?
その後。警察からある程度事情聴取を受けた後。パトカーによる送迎を鬼気迫る勢いで断り、恋太郎に、「こっちは、う、運気が良さそうです」とひたすら回り道の指示を出しながら、なんとか徒歩で帰宅した。
(当たり前のように送ってくれるのな……)
道中やたら突っ込んでくるトラックに恋太郎が愕然としていた。
「こ、ここです。愛城さん、あ、ありがとうございました」
「なんだこの要塞みたいな自宅!?」
「DIYで、つ、つくりました。生き延びるために」
「まさかのDIY!?」
……ピンク色の四つ葉のクローバーを探すための時間がなくなっていないか心配だ。
◇
翌日。
「トラックの事故頻発と物流の滞り」を報じるニュースに申し訳ない気持ちになりながらも登校。
今日も無事に学校にたどり着く。とても幸運だ。帰り道に気をつける必要があるだろう。もう二度と昨日のようなヘマは踏まない。
そのまま裏庭へやってきた。そこには羽香里と唐音がそわそわと待っており、こちらに気付くと心配そうな顔を浮かべた。
「おはようございます。昨日は最後まで付き添えず申し訳ありませんでした。もう足は大丈夫ですか?」
「べ別に、本当に怪我人だった虎置いて突っ走っちゃって申し訳ないとか1ミリも思ってないんだからね!」
「というより、足以外にも怪我が増えていませんか……?」
「ま、まだ痛みますが、すべて手当は済んでいます。い、生き延びているので無事です」
「無事の基準低すぎよ」
「心配していただいて、ありがとうございます」
そう言うとホッとした顔をしてくれるのが、恋太郎ベストパートナーって感じである。優しい。
「けれどどうしてこんな早朝に裏庭へ?なにか用事でも?」
「まさか、あんたも愛城に告ったんじゃ……!?」
「うーん……?虎さんからは院田さんのような好き好きオーラが出てなかったので、可能性は薄そうでは?」
「なっ!べべべつにそんなんじゃ……」
流石お互いにもビビーンしたのではと噂される初期2人だ。相性バッチリである。
しかし、まだ恋太郎が来ていないなら、告白の答えの前に二人と誼を結びたいところだ。
チャンスは逃すべからず、だ。
「い、いいえ……告白なんて、とてもとても……。そ、それより、伝えたいことがあって……」
二人に昨日書いた『私と友達になってください〜〜』を見せる。
自分が口下手だということを久々に思い出したので引き続き持ってきていたのだ。
「えぇ、もちろん!同じクラスですから、これからよろしくお願いしますね!」
「……ふん!別にあんたのこと友達だなんて思ってやらないんだからねっ!」
羽香里は快く、唐音はツンツンと了承してくれた。思わず満面の笑みになった。
「で、では、友達権限で告白の結果をみ、見届けさせてもらいますね」
「え?」
「は?」
二人に視線で恋太郎が来たことを教えてやる。すると二人揃って一気に顔が赤くなった。
私はひらりとみんなに手を振って、声が聞こえるギリギリの距離まで下がった。
……なんか羽香里が一瞬「あれ?」って顔をしていた。どういう意味だろう。
「……おはようございます、愛城君」
「……そ、その。来てやったわよ。
ってなんて格好してんのよあんたっ!」
「あ……ごめん……ちょっとな……」
ボロボロの風体に、土で染まった指先。無事に四つ葉のクローバーのクローバーは探せたらしいと推測する。
……隈が濃い。まだ本格的に人間をやめてないから、希少なクローバーを2つも探すのはきつかったろうな。
「それで…決めていただけましたか…?告白の答えは…」
「うん…」
「二人とも、俺と付き合ってくださいっっ!!!!」
「はああああああああ!?」
うっひょー!!!
これでもかってくらい濃厚な100カノを、啜るーっ!死ぬぞーっ!!
今日も生き延びてよかった。今日も悔いはない……!と幸せを噛み締める。
私の生きる目標は恋太郎ファミリーを、死ぬまで眺めて楽しみ尽くすことだ。
けれど、もし長生き出来たら……
もし長生き出来たら、恋太郎ファミリーの結婚式の友人挨拶をするのだ。
神様に直々に余命宣告されていて、可能性は低いけれど……
夢を見ることは人類に許された自由なのだ!
鼻血がぶしゃーっと飛び散ると、二人はここで腕に抱きついて承諾を……。
「貴女もそれでいいですか?虎さん」
「あんたもそれでいいの?虎」
と、恋太郎にピッタリと抱きついて、承諾する前に羽香里と唐音が私に問う。
「……ど、どういう意味、でですか?」
「あなたは私達が言わずとも裏庭で何が起きるか知っていた。なら、時系列的に保健室で気持ちを伝えたのでしょう?」
「友達といえどこんなに堂々と宣言して恋模様を見ようだなんて思わないでしょ?バレバレなのよ、あんた」
……なるほど、告らなければ知らないはずの情報を知っていたから、私も告白結果待ちだと勘違いされたのか。
出ていくか迷い、けれど恋太郎に手招きされる。仕方なく近付くことに。
……昨日振ったばかりなのだ。きっと恋太郎が否定してくれる。
私は木陰から出て、しかし会話するには少し遠い位置に止まった。
すると、恋太郎がゴソゴソとポケットを探り始める。
「虎さん、これ。会えた時に渡そうと思ってたんだ」
ポケットから出てきたのは、3つめの四つ葉のクローバーだった。
why?
「え……?昨日言ったように、わ、私は……」
「その、振られたことは理解してるよ」
「「え゛っ」」
めちゃくちゃドン引きしたような声が2つ聞こえてきた。どこが不満なのか?と驚愕しているのが伝わってくる。
ごめんて。コメディ漫画のスピードについていけないんや。
「俺、昨日、恋愛の神を祀る神社に行ってね……
たまたま出会ってその時告白して、振られたんだ……うっ」
「完全に私達が告白した後じゃねーか!脳みそ腐ってんのか!?」
「神社で私達の縁が良いものになるよう願ってくれていたんですか……?!」
汗をダラダラと流しながら素直に告げる恋太郎に先を越され、ごまかすことは叶わなかった。誠実さをアピールするならかなり都合の悪い情報……いや、恋太郎だったわ……絶対そんなこと考えない。
恋太郎は私との距離を詰めるべく歩いてくる。一体何が起きるのかと警戒して足を退く。けれど恋太郎のほうが早い。
友達から逃げるのは失礼かも。そう迷っている間に彼は近くにいた。
「このクローバーは告白じゃないよ。
ほら、クローバーって幸運の象徴でしょ?」
恋太郎は安心させるように微笑むと、私の手をとる。ピンクのクローバーを乗せ、そのまま両手で包み込んだ。
「友達として、虎さんが少しでも幸運が訪れるようにって思って、探したんだ。受け取ってくれないかな?」
「え……」
「その上で聞いて、信じてほしい。虎さんは人に不幸をもたらすって思ってるみたいだけど……虎さんがもたらすのは不幸だけじゃない」
久しく感じていなかった人の体温が手のひらからじんわりと伝わってくる。
「俺は虎さんから幸せをもらったよ。
こうして友達になってくれたじゃないか」
「君は疫病神なんかじゃない」
…………息が、止まるかと思った。
恋太郎は真っ直ぐな瞳で、私を見つめる。
「だからこれから、よろしくね」
「……う、ん」
うららかな春の風が私の頬をなでる。
躊躇いがちに頷いた。
「「キュン!!」」
……恋太郎の後ろの二人のキュン顔にハッとして、慌てて頭を振った。
「あ、あああくまでととととと友達ですからね!友達からですから!わたわたわ、たわし!」
「たわしってシンクに住む気なの?」
◇
「振られてしまってお付き合いできないことと比べれば……ニ、三股程度至極些細な問題でしかありません!これからよろしくお願いしますね?恋太郎君♡」
「しっ…幸せにしなかったら承知しないんだからねっ!!」
「誓うよ。3人とも、絶対に幸せにする……!!」
恋太郎に羽香里と唐音がぴっとりとくっついているのを私は眺める。
原作では徹夜して2つだったはずのピンクのクローバーが、私に時間を削られた上で3つ。並大抵の努力ではない。
……そのうち、私の不運は運命の人云々とは無関係に不幸体質であるということを伝えなければならない。
けれど今は、おもわずネットに書き込みたくなるほど化物じみた愛のモンスターを特等席で見れるこれからがあること……そして、手の中にある幸福を感じて、はにかんだ。
「ありがとう、恋太郎」
かくして私は、恋太郎、羽香里、唐音と友達になった。
ちなみにピンクのクローバーは押し花にして持ち歩くことにした。縁起が良すぎるので。
・虎天子
「転生するぅぅーッッッ!!!」
原作知識を持って100カノ世界に転生した幸薄前向きゲロイン。
恋太郎ファミリーを観測することに強い幸せを感じている。
今後は恋太郎ファミリーを不幸に巻き込んでしまいつつ、みんなに助けられながら、原作知識やサバイバル経験でほんの少しだけファミリーの誰かの救いになったりするかもしれない。目指せ友人挨拶まで生存。
(多分いつか惚れて選択を迫られる)
この世界線におけるネットの反応
「100カノ一身持ちの固い女」「トラック運転手の死神」「もらいビビーン」
・愛城恋太郎
運命の恋人でないことは原作のかなり初期の時期で気づく。
気付いたうえで誠実にそのままを選びそう。