隣に住んでるウェアウルフは距離感がバグっている   作:エヴォルヴ

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ここまででようやくあらすじに追いつくってマジ?


ハロー、距離感バグ

「……八時か」

 

 碧が目覚めたのは夜。家に帰ってきたのが大体午後五時半くらいだったので、三時間程度寝ていたことになる。

 長めの昼寝から目覚めた碧は、まだぼんやりとしている意識のまま部屋着に着替え、リビングに向かう。

 

 兄は今日も帰っていない。スマホでメッセージを毎日受け取っているが、興味の無いことについてはとことんズボラな碧から見ると、兄はとても律儀な人だなと思ってしまう。

 

「……鶏肉」

 

 リビングにある冷蔵庫を開けると、鶏肉といくつかの野菜と米を炊飯器に放り込んで作った炊き込みご飯モドキがタッパーに詰め込まれていた。それを取り出し、レンジに放り込んで温める。

 数分後、熱々のご飯を前にして、碧は木製のスプーンで口に運び────。

 

「あっっづっ!?」

 

 予想以上の熱さによって口の中が灼熱に支配され、吐き出しそうになるが、水を流し込むことでそれを回避する。ただ、口の中がヒリヒリしているので、口内火傷回避とはならなかったようだ。

 

(……次は一分半にしよう)

 

 さすがに三分は長すぎた。面倒くさいが、小分けにして温めるようにしよう。

 面倒くさいがそうしよう。そう決めた碧は慎重に炊き込みご飯モドキを口にする。今度は水を流し込むことがなさそうだ。

 

「……そういえば」

 

 現在プレイしているゲームは追加ダウンロードコンテンツが存在していたのを思い出す。

 頭痛も収まったところで、少しだけゲームをしようか。

 いや、食事が終わったら風呂に入ってさっさと寝るべきだ。ゲームは明日でもできる。

 しかしながらゲームは唯一と言ってもいい趣味であり、無二の娯楽だ。楽しめる時に楽しんでおくべきでは? 

 それで体調不良となって明日の時間の大半を睡眠で潰すことになれば、ゲームを楽しむ時間は減るのではないだろうか。

 

 碧の頭の中で、真っ赤な瞳の蛇が数匹議論を行っていた。そしてその議論の結果は。

 

「寝よう」

 

 ダウンロードコンテンツの情報を確認することなく、風呂に入って眠ることが決定された。貴重な休日を寝過ごすわけにはいかないのである。

 タッパーに詰め込まれた炊き込みご飯モドキを半分食べた碧は、残り半分を小分けにしてラップに包む。明日の朝、昼、晩は小分けにされた小さなおにぎりで乗り切るつもりだ。

 

「寝る前に風呂……」

 

 風呂を沸かすためにスイッチを入れ、お湯張りを行う。

 お湯張りが完了するまで時間がかかるため、その間に洗い物を済ませていると、隣から何やらカタカタと音が聞えた。

 

「……?」

 

 音が聞えた方向を見ても壁があるだけ。しかし、カタカタと何かが動く音が聞えてくる。

 耳を澄ませてみると、カタカタという音と共に、何やら言い合っているような声が聞えている。

 

 このマンションには亜人も人間も住んでおり、一人暮らしか二人暮らしを行う世帯で利用することを前提に設計されている。また、結構広く、そして亜人の身体的特徴や身体能力に対応した頑丈な構造なので、ロックフェスで絶叫するくらいの声量で騒がない限り、隣には声が聞こえてくるはずがないが……言い合っている声が聞こえてくる。

 

「……どんな声量で騒いでるのやら」

 

 兄弟喧嘩もあまりせず、防音に優れた壁を貫くような声量など出したことがない碧にとって、微かに聞こえてくる言い争う声の主は疲れないのかという変な感想が浮かんでいた。

 何にせよ、自分には関係の無いことだ。他所は他所、うちはうち。大きな声で叫びながら喧嘩することも他所ではよくあることなのだろう。

 

 そう結論付けて、お湯張りが完了するのを待つ。しかし、ただ待つというのは中々退屈なもので、ゲーム機を起動しようとしては頭を横に振るを繰り返す。さっきゲームはやらないと決めたではないか。決めたことを曲げるのは良くないことだ。

 

 自分に言い聞かせ、風呂のお湯がどれくらいになったのか確認する。……まだ二割程度しかお湯張りが行われていない。

 

「うーん……うーん……うーん……うーん……」

 

 現在プレイしているゲームのキャラクターのように唸り続ける碧は、お湯張りが完了するまでどうしたものかと考える。

 

 考えて、考えて、考えた末に、財布を手に取り、パーカーを羽織って外に出る。コンビニに向かうことでゲームの誘惑から逃れる算段だ。

 

「……湿っぽい」

 

 雨が降るという予報は出ていなかったはずだが、それでも梅雨入り宣言が成された今、湿気に覆われた空気がこの街を包んでいた。

 薄く雲が張っている空は星の光を通さず、月の光がぼんやりと街を照らしている。

 

「エナドリ……は買ったし……」

 

 コンビニに向かうと決めたが、何も買わずに時間を潰すというのは、コンビニの店員に少々失礼だろう。コンビニに入るのなら、少なくとも一つは何か買わなくては。

 そんなことを考えながらエレベーターを利用しようと夕方、月宮美歌と話をしたロビーに向かうと────。

 

「……あ」

 

「…………む」

 

 エレベーターを待つ月宮美歌がいた。

 何だか最近よく出くわすような気がすると思いつつ、夕方のことを謝ろうと口を開く直前にエレベーターのドアが開く。

 

「……乗る?」

 

「ああ、うん。乗る」

 

 学校や夕方ここで見た快活そうな雰囲気は鳴りを潜め、どこか暗い雰囲気を纏っている美歌に問われ、エレベーターに乗り込む。

 何かを話すわけでもなく、沈黙が保たれたエレベーターの密室で碧は口を開いては閉じる、を繰り返していた。こんな時間にどこに行くつもりだとか、さっきまで言い争いをしていたのはそっちかとか、色々聞きたいことはあるがまずは謝らなくては。

 

「なぁ────」

 

 ポーン。エレベーターが最下層に到着した音が聞え、何か言う前に口を閉じる。

 ほぼ同時にエレベーターから降り、外に出ると歩き出す。雨は降りそうではないが、やはりジメジメと気持ちが良くない空気に碧は目を細める。

 

「……ねぇ」

 

 エレベーターの中と同じように沈黙を保って同じ道を歩いていると、不意に美歌が声をかけてきた。

 

「……何か?」

 

「その……夕方のこと。亜人と勘違いしてごめんね」

 

 黄金の瞳に申し訳なさそうな光を宿して呟いた言葉に、碧はパチパチと目を瞬かせた。

 

「ああ、いや……別に気にしてない。夕方の件はむしろこっちが悪かった感じだし。ちょっと寝不足でイライラしてた」

 

「いやでも、私が勘違いしてたのは本当だし」

 

「いや、勘違いしてたとしてもあんな別れ方した俺が悪い」

 

 いやでも私が、いやいや俺が。

 美歌が自分に非があると言えば、碧が否定して自分に非があると言う。碧が自分に非があると言えば、美歌が否定して自分に非があると言う。

 お互いに自分に非があったとして、向こうに何か非があったとは言わない二人。お互いに相手の非を認めず、謝罪合戦をすること数十秒。

 

「……ふひっ」

 

「……くはっ」

 

 ほぼ同時に笑いが零れた。

 

「じゃあ、御相子っていうことで!」

 

「そうだな。それがいい。うん、御相子だ」

 

 くぐもった声で笑いながら、お互い様だったと結論を出した二人は、コンビニに入る。

 

「月宮は何を買うつもりで?」

 

「んー……あんまり考えてないんだよね。ちょっと家の中が気まずくて出てきたから」

 

「ふーん……」

 

 洗い物をしている時に聞えたあの言い争うような声からして、家族と喧嘩でもしたのだろうか。

 その件について踏み込めるような胆力も無神経さも持ち合わせていない碧は、少々割高なお菓子類やジュースを籠に放り込んでいく。

 

「蛇ノ目君はそういうことないの?」

 

「そもそも両親が完成された放任主義というか……」

 

「放任主義に完成とかあるの!?」

 

「あるんだな、これが」

 

 碧の両親は放任主義だ。両親曰く、子供が自分で道を見つけたのなら、それが公序良俗に反していない限り尊重し、応援する。ただし、間違えていたら殴ってでも止める。そんな人間である。

 その結果育ったのが蛇ノ目兄弟である。ただし、碧はQOLもへったくれもない生活をしているため、一度両親の生活指導が入った。それでもそこまで変わっていないが。

 

「ある程度自由にやらせてもらってるのは、結構ありがたいよ」

 

「そうなんだ。いいなあ……」

 

 心底羨ましそうに笑みを浮かべた美歌に首をかしげながらも、籠に入れたお菓子やジュースをセルフレジに通していく。

 

「月宮、何か買うなら一緒に支払いしちゃうけど」

 

「え、いや、それは悪いよ」

 

「これくらいなら問題なし。……夕方のお詫びとしては安すぎるかもだけど」

 

 美歌が手に取っていたアイスとジュースをひょい、と取り上げて、碧はセルフレジに通して会計を行う。

 

「あ、ありがとう……でもあとで返すからね」

 

「いや、返さなくていいから。……実はそれ購入するとグッズの応募券が手に入ってだな」

 

「へ?」

 

 コンビニを出てからアイスとジュースを受け取った時、碧の言葉に首をかしげてパッケージを確認すると、確かにゲームのキャラクターらしきイラストが描かれており、『購入時のレシートのQRコードで応募しよう!』と書かれていた。

 

「そのキャラ、凄く好きだから、グッズ欲しかったんだよ」

 

「えー……? 何か丸くてあんまりカッコよく見えないけど……」

 

「そこがいいんだよ」

 

 丸々としたデザインの鎧に身を包んだ騎士のイラストを見て、微妙な表情を浮かべる美歌に対して、碧はまぁ、知らないならそりゃカッコよくは見えないか、と苦笑する。

 

「そいつ、その見た目で超軽快にローリングして大剣振り回すからな」

 

「えっ、こんな丸っこいのに?」

 

「ああ、しかも結構強い」

 

 ボスとタイマンさせても意外とやられないそのキャラクターは、陰鬱とした世界を舞台としたゲームでは類を見ない程明るい性格だ。ゆえに、その世界の清涼剤のように認識しているプレイヤーが多い。

 

「これ、どういうゲームなの?」

 

 アイスを頬張りながら、美歌が問いかけた。耳や尻尾の動きを見る限り、そのゲームについてまずまずの興味を示しているらしい。

 新規を心暖かく迎え入れるのも、ゲーマーとしての役目であると恵が言っていたことを思い出し、碧はそのゲームについてどう説明すればいいか考える。

 考えた末に出た言葉は一言。

 

「んー……死にゲー」

 

「しに……?」

 

「死んで覚えるゲームで、死にゲー」

 

 ゲームが得意な人間でもそう簡単にクリアできない代わりに、ボスを倒した時やゲームそのものをクリアした時の強烈な達成感を味わえるのが、死にゲーというゲームジャンルの魅力なのだ。

 

「トライ&エラーを繰り返し続けて、自分の動きを洗練させていくあの感覚が堪らないんだよなぁ……!」

 

「何度もやられてイライラしないの?」

 

「するぞ」

 

「するんだ!?」

 

 碧の何を当たり前のことを、と言わんばかりの口ぶりに、ガガンッ! と衝撃を受けたように耳と尻尾を天高く伸ばす美歌。

 

「そりゃイライラするけど、その分、クリアした時の解放感が最高なんだよ」

 

「うーん……? そうなの?」

 

「やってみないことには分からない魅力だしなぁ……月宮はゲームとかやらないのか?」

 

「やったことないや。お父さんもお母さんもゲームには縁遠い人だから」

 

 まぁ、そういう家庭もあるよな、と頷きながら購入したチョコバーを口に放り込み、噛み砕かずに飲み込む碧。

 それを目撃した美歌は、疑うような眼差しを碧に向けた。

 

「……何だ?」

 

「やっぱり君、亜人じゃないの?」

 

「いや、人間だが?」

 

 確かに両親は亜人だが、自分は亜人ではない。それは間違いない。

 そう言って碧亜人説を否定する碧だが、美歌は納得がいっていないようである。

 

「丸呑みしてたよね今!?」

 

「丸呑みくらい誰でもするだろ」

 

「しないよ!? って、ほらまた!」

 

「癖だよ。兄さん達はご飯を丸呑みすることが多かったから」

 

 それを見て成長した結果、食べ物を丸呑みするようになったと主張する碧。

 事実碧の周りは親戚親類を含めて爬虫類や両生類の亜人が多く、咀嚼する者よりも丸呑みする者が多かった。

 

 もちろん人間の体なので咀嚼はできる。しかし、研究者肌や趣味に生きる者が多いからなのか、食事の時間が惜しいと言って食事を丸呑みする者が多かったのだ。

 ちなみに数年来の友人家守恵はしっかり咀嚼する側の亜人である。親の教育が行き届いている。

 

「月宮だって肉を豪快に食うくらいはするだろ? それと同じだろ」

 

「ステーキよりハンバーグがいい。煮込みハンバーグ」

 

「何だそのこだわり。ハンバーグは何でも同じじゃないのか?」

 

 食べられるなら何でも美味いという認識の碧の言葉は、美歌にとって聞き捨てならない言葉だった。

 

「全然違うよ! お肉の割合とか、材料とかによっても全然味が変わってくるんだから!」

 

 ギュンッ!! と急速旋回するように碧の方を向いた美歌の耳や髪、尻尾は興奮を示すように逆立っている。

 

「牛肉! 豚肉! 鶏肉! 魚肉! どの肉を使うか、繋ぎに何を使うのか、スパイス類はどのくらい入れるのか! 配合がちょっと違うだけでハンバーグは全然違うんだよ!?」

 

「お、おお……そうか……」

 

 可愛らしい顔をぶつかりそうになるくらい近付けてハンバーグの魅力を力説し始めた美歌に対して、碧は少し気圧されていた。この少女、ハンバーグへの情熱が凄まじい。

 朧げに覚えている学校内での美歌の噂に、ハンバーグ好きというのは無かったような気がする。覚えていないだけかもしれないが……こんなに興奮している彼女を見たことがあるのは自分だけなのでは? と考えつつ、今にも顔と顔がぶつかりそうになっていることに気付いていない美歌の肩を掴んで少し距離を取った。

 

「分かったからちょっと離れてくれ。激突しそうだったから」

 

「え? あ、ごめん!」

 

「ぶつかってないし、そこまで謝らなくても……」

 

 そこからは適切な距離を保ち、話を続けた。五分で帰ることができるマンションまでの道を話しながらゆっくり歩いていたからか、マンションに到着するまでに十五分程度もかかってしまっていた。

 エレベーターでも会話を弾ませ、家のドアの前まで到着した二人は、ここでお別れということで互いに会釈をしてドアの鍵を開ける────はずだったが。

 

「あれ?」

 

「どうしたよ」

 

 キョロキョロと辺りを見回し、ポケットをガサゴソとまさぐったりする美歌を見かねて碧が声をかける。

 一分半程度、その動きを見せた美歌はやらかした、と言わんばかりの表情で碧を見た。

 

「カードキー、家の中だ……」

 

「えっ」

 

 濁点が付きそうなくらい驚きの声を上げた碧は、どうしよう、とオロオロする美歌を見る。

 このマンションは家の鍵を通常の鍵ではなく、カードキーにしている。亜人の中には手が大きくて鍵を掴みにくいという人もいるため、社員証のように首にかけたりすることができるカードキーを採用しているのだ。

 ホテルのカードキーのように、部屋の中に置いていくと部屋の鍵を開けられないため、この部屋を借りる際に、マンションの大家から外出時、カードキーを忘れないようにと言い含められているのだが……。

 

「お母さんと電話で喧嘩しちゃって、勢いのまま出ちゃったから、カードキー忘れちゃったんだ、多分」

 

 ああ、あの時聞えた、言い争うような声の主はこの少女だったのか。言い争った後、飛び出した結果、カードキーを置いていったと。

 

「どうするんだよ。大家さん、もう寝てるぞ」

 

 納得しつつ、焦りを見せている美歌に問う。

 ライオンの亜人である大家は、この時間帯もう寝ている。マスターキーを持っている大家が寝ているこの状況、美歌はどう足掻いても家に入ることができない。

 野宿、という言葉が二人の間に浮かんだが、このいつ雨が降ってくるか分からないジメジメした環境で野宿は過酷すぎる。

 

「そうだ。蛇ノ目君の部屋に泊まればいいんだ」

 

 碧がどうしたものかと思考を回し始めようとした矢先、美歌はとんでもない発言をした。

 

「気は確かか?」

 

 その発言に間髪入れずに変なものを見たような視線と共に碧が問いかけた。

 

「あれ!? 結構いいアイデアだと思ったんだけど!?」

 

「なぜ男の部屋に上がり込むという選択肢が出るのかが分からん」

 

 興味のないことはすぐに忘れる碧だが、恋人でもない女性が男性の部屋に上がるのはよろしくない、ということぐらいは理解していた。

 

「いいじゃん泊めてよー! こんなジメジメしてる中で野宿はやだよー!」

 

「気持ちは分からんでもないけどさ……」

 

 だからと言って男の部屋に泊めろと言うだろうか、普通。

 

「入れてくれないなら君も道連れにして野宿してもらう……!」

 

「いや、俺はカードキー持ってるし……じゃ、そういうことで」

 

 夕方と同じように鍵を開けて逃げようとした直後、体が岩に挟まれたかのように動けなくなった。

 

「泊ーめーてーよー!」

 

 その原因は美歌が碧の左腕を掴んで部屋に入れないようにしていたからである。

 

「ええい、離せ! 俺は風呂に入って寝るんだよ!」

 

 ドアを開けるには左手で持っているカードキーを使わなくてはならない。しかし、その左手は今、美歌によって掴まれている。

 

「私だってお風呂入ってないもん! お風呂入って涼しくてジメジメしてないところで寝たいもん! 泊めてよー!」

 

「人狼は力が強いな……!」

 

 振り払おうにも、亜人である美歌の膂力と人間である碧の膂力には天と地ほどの差がある。例えるなら、何の装備も持たない人間が空腹で苛立っている獣に挑むようなものだ。

 あまりにも脆い均衡は一瞬で崩れ、碧の手にあったカードキーが美歌によって奪われてしまう。

 

「いただきぃ!」

 

「貴様ァ!?」

 

 思わずいつもなら使わないはずの言葉を発するくらいには動揺している碧を尻目に、美歌はそのカードキーを使って部屋の鍵を開けてしまう。

 

「お邪魔しまーす! お風呂も借りていい!?」

 

「…………もう好きにしてくれ……」

 

「やった!」

 

 もうどうにでもなれ、と言わんばかりの声音で許可された美歌は機嫌が良くなったのか、耳を動かし、尻尾をブンブンと振っていた。

 

 蛇ノ目碧、十五歳。彼女いない歴=年齢及び、色恋よりもゲームな少年は、人生で初めて同年代の女性を家に入れた。

 

 初めて会話して、ここに至るまで僅か数時間の出来事であった。

 

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