〜サラ視点〜
マスターが、マスターが居なくなった。怖い。怖い怖い。
サラ「マスター…。」カタカタ
いつも傍に居てくれた。貴方が居ないと私は…。
サラ「どうしたら良いのですか…マスター。ご命令を…。」
まだ私の機能が停止していないから、生きている事は分かっている。それでも気が気でない。もしかしたら…強い魔物にやられそうになっているかも、もしかしたらトラップに引っ掛かってしまっているかも、もしかしたらもう…。
サラ「っひ…。」ガタガタ
フリエ「サラ…ダメっすよ。今は…信じて待つッス。」ギュッ
サラ「り、了解…。」
フリエが抱きしめてくれている。少し…落ち着く。大丈夫…そう大丈夫だ。きっと帰ってきてくれる。
サラ「早く…マスター…。」
〜アラン視点〜
部屋から出て、さらに奥に進む。何故か魔物はスライムが多くなって来た。と、言うかスライムしか出てこない。
ステラ「これは…いくら何でも…。」
アラン「多すぎる。」
スライム「キィア!!」✕7
スライムは基本的に群れない。キングが居るなら別だが、それでも近くに居るはずで、ましてや狭いダンジョンの中ならあの巨体はすぐ見つかるはず。だが、少なくとも俺の視界には映っていない。
ステラ「それに…これは、何かを守っている様な…。」
アラン「あー。やっぱりステラもそう思う?」
何か…このスライム達、何かを守っているような…そんな配置だ、やはり奥に何かあるのだろう。
アラン「進むか…?」
ステラ「この道中でかなり魔物を倒しました。レベルは…56ですか…。」
アラン「う〜ん…。クッソ微妙だ…。」
ステラ「ここまでほとんどスライムでしたので…。やはりレベルは上がりにくいですね…。」
アラン「奥にあるであろうボス部屋の中身もキングマグマスライムだったら良いんだが…。」
ステラ「それでも危険には変わりありません。キングマグマスライムはAランク相当の魔物です。」
アラン「それでもワイバーンよりかは可能性がある。」
ステラ「ですね…。」
ワイバーンは爆撃戦法もそうだが、単純にレベルが足りていない。ボルケイノタートルなんてもっての他だ。
アラン「…行くかぁ。鎧があるとはいえ胴だけだし、体力も無限じゃない。救援を待つ間の戦闘も考えると…。」
ステラ「…そうですね。」
仕方なく進む事にした。
〜ココ視点〜
ココ「着いたっ!よし、早速…。」カチャカチャ
行く前にダンジョンの中でも使えるようにとギルドから借りた長距離用の音飛ばしの魔道具でSOS信号を打ち、状況も伝える。また、迷わず進めるように目印を着けたことも伝えた。
ココ「これで…。よし。」
とりあえずフリエ達の所に戻ろう。後は待つだけだ。
ココ「早く来て…。」
〜アラン視点〜
拝啓。何処にいるかも分からないお父様お母様。私は今…。
アラン「この…扉だな。」
ステラ「ええ。間違いないですね。」
ボス部屋の扉前に居ます。
アラン「さて、大天使が出るか邪神が出るか…。」
ステラ「大天使が出ることは…無いのでは?」
アラン「確かに。じゃあ、ワイバーンが出るかキングマグマスライムが出るか…。」
ステラ「キングの方である事を祈りたいですね…。」
アラン「……よし。行くぞ、ステラ。」
ステラ「はい。行きましょう。」
扉に手を当て、思いっきり押す。すると…。
ギィ…。
ゆっくりと扉が開いた。中には…煮えたぎる溶岩が広がる、火山地帯が広がっていた。
ステラ「これは…!?」
アラン「おいおい…ダンジョンの中だよなここ…。どういう事だ…。」
ステラ「分かりません…。空間魔法にしても温度や湿度、空気の流れまで完璧に再現されている…。こんな精度の魔法は人では不可能です。」
アラン「…とりあえず。ボスが何処かにいるはずだ、探し…うおっ!?」
その時。矢のように圧縮された溶岩が飛んできた。咄嗟に身を伏せて躱す。
ステラ「いったい何処から…。っ!?」
二発目が飛んでくる。胴に当たるが、鎧が防いだ。
ステラ「3時の方向。距離は…4km!?」
アラン「何だと…バカな。いくら何でも離れ過ぎてる…。グッ…!?」
マズい。左腕に掠った。火耐性のお陰でギリギリ火傷で済んだが…。無かったら確実に穴が空いていた。
ステラ「主様!くっ…。とりあえず走りましょう!回避を!」
アラン「クソッタレ!」ダッ!!
〜冒険者ギルド フェール視点〜
職員「救難信号です!場所は…そんな…。」
フェール「どうした?早く…。……マズいな。」
よりにもよって導きの勇者が調査に向かったダンジョンだ。困った。人員が居ない。ギルドのAランク達は皆他のダンジョンの調査に駆り出されている。Bランク…実力的にはAランク相当のチームスピードクロウが救難信号を出すような事態だ、Bランクを向かわせても状況を悪化させるだけだろう。
フェール「勇者が落下トラップで行方不明…。…下層に落ちたのか?だとしたら急がないとマズい。送られてきた情報によると、モンスターはあまり強くないようだが、下層はどうなっているか分からない。こうなったら…。」
秘匿回線を使うギルドマスター専用の音飛ばしを手に取る。連絡先は…ドワーフ工房連合だ。
フェール「こちらギルドマスター、こちらギルドマスター。応答を頼む。」
工房連合「こちらドワーフ工房連合の通信室です。どうされましたか?」
フェール「会長室に繋いでくれ。緊急事態だ。」
工房連合「了解です。お待ち下さい………はい。今から繋ぎます。どうぞ。」
フェール「勇者シル。私だ。フェールだ。」
シル「…こちら勇者シル。何?調査終わったの?」
フェール「実はその事なんだが…。トラブル発生だ。」
シル「…勇者アランだね。どうしたの?」
フェール「調査中のダンジョンで大穴に落ちて行方不明だ。報告によるとモンスターは強くない。だが…君が落ちたダンジョンのように、下層はどうなっているか分からない。至急救助に向かって欲しい。」
シル「ん…。Aランク相当だったよね?その勇者アランのパーティー。」
フェール「ああ。だが、穴が深すぎて救助もできないそうだ。底も見えないらしい。」
シル「……ふぅ。分かった。場所は…ポイント3だったよね?」
フェール「ああ。…すまない。」
シル「私達が共同で出した要請だから…。それに、レベルが足りていないのに無理させちゃったみたいだし。……久しぶりにステラの声も聞きたいし。気にしないで。」
フェール「ありがとう。…頼んだぞ。」
シル「任せて。」ブツッ
フェール「ふう…。これでどうにかなる…だろう。」
職員「お疲れ様です…。」
フェール「ああ。…こんな時間か。今日はもう帰って良いぞ。」
職員「ありがとうございます。失礼します。」
これで解決するだろう。しなかったら…もはやそれまでだ。勇者アラン。死ぬなよ。