鋼の勇者です。カチッカチです。
〜アラン視点〜
アラン「うおっ!」ズパァン
さっきまで右足があった位置に着弾した。危なかった。
ステラ「くっ…。このままでは…。」
キツい。3kmはキツい。ココのスパルタ訓練で敏捷も鍛えられてはいるが…。反射神経はどうしようもない。カンとステラの導きの力による未来視で何とか避けている状態だ。
アラン「クソっ。足場も悪い。」
オマケに下は溶岩の川。下手な避け方をすれば足が溶ける。グラップルワイヤーがなければソッコーでドボンだった。
ステラ「!? 危ない!」
アラン「ガッ!?」ズパァン
ステラ「そんな…。」
左腕が逝った。完全に穴が空いている。熱のせいで止血はしなくても良さそうだが、片腕が使えなくなったのは痛い。
アラン「ぐっぁ…。くっそっ!」ズパァン
痛みで足が止まりそうになるが、動かさなければ死が待っている。必死に足を動かす。
アラン「……!あそこだ!」
丁度よく地面に窪んだ穴が空いていた。咄嗟に転がり込んだ。
アラン「っ…。ハァ、ハァハァ…。」
息が苦しい。しばらくは休憩が必要だ。
ステラ「主様!とりあえず冷やさないと…魔石を!」
アラン「ハァハァ…。っらぁ!」ガシャァン
保険であるスライムの魔石を取り出し、患部の上で握り潰す。水が出てきて、患部にかかった。
アラン「ぐっ…あぁぁ…。」ジュウ…
ステラ「くっ…まだ牽制の為に撃ってきています。」
アラン「いったいどいつだ…。!あの溶岩…スライム状だ!」
必死過ぎて気づかなかったが、やけにドロドロしている。犯人は…キングマグマスライムだ。
ステラ「しかし…キングマグマスライムがどうやってこんな長距離を…。」
そう。問題はそこだ。どうやって3kmと言う長距離で俺達を捕捉し、狙撃したか。探知系の魔法…いや、スライムは魔法は使えないはず。体は魔力で構成されているが、術式を組む知能が足りない。
アラン「別の魔物と組んでる…?」
ステラ「…いや、遠すぎます。流石に3kmは…。」
アラン「じゃあ…人間か…。」
ステラ「あるいは…人間に匹敵する知能を持つ…魔物でしょうか。」
アラン「そうだな…。よし。そろそろ出るか。不安要素が多すぎてあまり時間はかけられない。」
ステラ「…大丈夫ですか?もう少し休んでも…。」
アラン「息は整ったしな。それにここで休んでも疲れは取れないさ。」
ステラ「…分かりました。導きの力を再起動。未来予知開始。」
アラン「よし。頼むぞ。……GO!」
〜フリエ視点〜
あれからどれぐらい時間が経っただろうか。1日?一ヶ月?1年? ……いや、流石にそこまででは無いだろう。食糧もまだある。しかし、それほど長く時が経ったように感じた。
フリエ「……。あ…。」
今すぐにでも、この穴に飛び込みたくなってくる。だが、ダメだ。帰ってこれなくなる可能性がある。
フリエ「……うぅ。」
サラ「……フリエ?…ぁ。行かないで…。」ギュッ
ハッ。どうやら理性は働いているようだが、身体は正直なようだ。飛び込もうとしていた。サラが抱きしめてくれなければ…いや、止めよう。少しでも明るく気持ちを…。
ココ「……。」
ココさんは完全に黙っている。三角座りで頭も下を向いていて、動かない。
フリエ「誰か…。……!」
足音が響いてくる。魔物ではない。金属製の…ブーツだろう。
フリエ「ここッス!助けて!」
足音が近づいてくる。影から出てきたのは…大盾を背負った鎧姿のドワーフの女だった。
シル「……貴方達が勇者アランのパーティーメンバー?勇者アランは…この中だよね?」
フリエ「そうッス!扉を開けようとしたら突然壁が降りてきて…分断されて…急いで壁を壊したんすけど、もう居なくて…。」
シル「…そう。…ごめんなさい。私が依頼を出さなければ…。」
フリエ「…! そうッスか。貴方が勇者シルっスね。」
ココ「」ピクッ
シル「えぇ。私が…ギルドマスターと相談して出したの。」
フリエ「……ッ!よくも…。」ブンッ
杖を振り上げ、勇者シルを殴ろうとする。が…。
ココ「……。」ガシッ
フリエ「ッ!?何するッスか!コイツが…コイツが依頼を出さなければ…。」
ココ「やめて。私達は皆、指名されたとは言え、ちゃんと了承して受けたはず。…落ち着こう。フリエは溜め込みやすいのは分かってるけど…ダメだよ。」
フリエ「……ッ。すみませんッス…。」
シル「いや、コチラが無理を言った結果こうなったのは事実。私こそごめんなさい。…そして、ありがとう。止めてくれて。」
ココ「いえ。…それじゃ。勇者様を助けに行こうよ。もう…限界だよ。」
シル「……いや、そんな顔の貴方達は連れていけない。ここは私に任せて、帰って休息を…。」
サラ「嫌ですっ!!ッ。ぁ…。」フラッ
フリエ「サラっ!」パシッ
サラが倒れるのをギリギリでキャッチした。危なかった…。
サラ「いや…。もう…役立たずは…嫌…。」ブツブツ
シル「……酷い顔だよ。貴方達。クマもできてるし、食べてないでしょ。そんな状態じゃ無理だよ。少なくともこの下は。」
フリエ「……。」グウッ
どうやら、食糧が減ってないのは食べていなかったかららしい。
そう言えば…お腹が空いた。
ココ「……なら。」
シル「?」
ココ「…なら、確実に連れて帰ってよ。無事に。…私も、正直もう動けない。ゴブリンぐらいなら倒せるけど…この下はたぶん、それぐらいじゃ無理。だから…ッ。だからさ…。お願い…助けて。私達の大切な人なの。あの人じゃなきゃ…。」グスッ
シル「…私も、勇者だから。必ず助けるよ。ただ、それだけ。」
ココ「…ッ。あ…。ぁぁあ…。お願い…しますッ。」アタマヲサゲル
フリエ「ぁ…。よろしく…お願いしますっ…。」
シル「任せて。……それじゃ、もう行くね。…必ず連れて帰るから。」タッ
……穴に、降りていった。あとは任せるしかない。
フリエ「勇者様っ…!」
どうかご無事で。