〜イオ視点〜
イオ「ふーんっ………キャッ!?もうっ!いったいなに…………ぇ…?」
かぜがふいたほうにめをむけると…おおきな、それでいてこわいオーラをまとった…あおいドラゴンが、たっていた…。
イオ「ぇ…?ぇ?お、おかあさん…?」
まちがいない。うろこも、ツノも、おかあさんのものだ。だけど…オーラは、ぜんぜんちがう。あんなに、くろくて、こわいオーラじゃない。もっとぎんいろで…やさしくて…きれいな、オーラだった。
イオ「おかあさん!イオだよ!どこにいってたの!?さみしかったよ…。」グスッ
おかあさん?「グルルル…。」ブワッ
イオ「ぇ…お、おかあさん?イオだよ!わからないの?うそだよね!」
おかあさん?「グルルルルルル……グアァァァァァァァアアア!!」ドォン
イオ「キャッ!!ぅぅ…おかあさん!おかあさん!イオだよっ!!イオだってばっ!!」
いくらさけんでも、おかあさんはこうげきをやめてくれない。ドラゴンのすがたじゃないとわからないのかな?きっと…そうだよね…?
ドラゴンイオ『ふんっ!おかあさん!イオだよっ!これでわかるよね!?』
おかあさん?「グルルル…グァ…?グッ、グアアァァァァァァアア!!」ドォンドォン
ドラゴンイオ『キャッ!?クッ!?そんな…おかあさん!おかあさん!しっかりして!?』
いっしゅんだけオーラがよわまったけど、すぐにもとにもどっちゃった。そして…まほうがとんできた。
ドラゴンイオ『キャッ!ぅぁ…。!? あッ!?キャアアァァァァァァァァアア!!』ドゴォォォォン!!
おかあさんのとくだいのまほうがあたった。いたい。いたいいたいいたいいたい!!
イオ「ぅっ…あぁ。いたい…いたいよぉ…。」グスグス
からだもいたいけど…こころがいちばんいたい。なんで…なんでおかあさんが…。
おかあさん?「グアッ!グ…ァ?グァァァ…。」バサッ
おかあさんが…つばさをひろげた。いっちゃう。おかあさんが…やっとあえたのに…。
イオ「おかあさん…まって…まってよぉ…。」グスッ
おかあさん?「グアァァァァァァァアア!!」バサバサ
あぁ…いっちゃった。やさしくて…きれいなおかあさんが…なんであんなに…。
イオ「グスッ。ぅぅ…いたい…いたいよぉ…。」グスッ
……とりあえず、あるじのところにいこう。もう…なにがなんだかわからない。
イオ「ぅぁぁ…。」グスグス
〜ココ視点〜
ココ「これで…おしまいっ!」ズバァン
キング「ギッ…ギァァァァアァァァァ!!」ドォン
サラが水魔法でキングの体を固めて、私が斬る。それを繰り返すだけ。だが、体のほとんどをマグマと魔力で構成しているキングマグマスライムには最も有効な方法だ。
サラ「やった…やっと終わりましたね…。」ホッ
ココ「はぁ…キング自体はそんなにだったけど、途中の妨害が厄介すぎたね…。」
サラ「そうですね…マグマスライムの群れに、自身の体を分裂させて索敵…かなり厄介でした。」
ココ「なんか…スライムもだんだん賢くなってるような…これも邪神の影響なのかな…。」
サラ「そこらへんは…ステラ様にお任せしましょう。……さて。そろそろ戻りましょ…」チャクシンアリ
戻ろうとしたその瞬間。音飛ばしの着信音が鳴った。…嫌な予感がする。
ココ「サラ。貸して。」
サラ「は、はい。」パシッ
サラから携帯用の音飛ばしを貰う。そして…通信に出た。
ココ「こちらココ。どうしたの?」
フリエ「こちらフリエ!こちらフリエ!ココさん!ヤバイっす!200を超える数のマグマスライムが襲ってきて…勇者様と抵抗してるッスけど、正直言ってステラ様も私ももう魔力が…至急応援をお願いしますッス!」
ココ「ッ!サラ!聞こえたね!急いで行くよっ!フリエ。なるべくもたせて!」
フリエ「りょ、了解ッス!って…あっ!?」ブツッ
ココ「フリエ!?フリエっ!返事して!っく…サラ!急ぐよ!」
サラ「了解っ!」
〜アラン視点〜
アラン「くっそ…多いな…っと。」ズバァン
ステラ「あれから更に増えている…っ!主様!後ろっ!」
アラン「うぉっ!?」ビュン
危ない。右腕を持っていかれるところだった。さすがに利き腕はマズい。
アラン「くっそ…フリエ!ココ達は!?」ズバァン
フリエ「りょ、了解ッス!って…あっ!?」ガシャァン
ステラ「あ、音飛ばしが…。」
音飛ばしがマグマスライムによって壊された。これでギルドに助けを呼べなくなった。
アラン「すまん、一匹通しちまった…。」
フリエ「いえ、もう終わるところだったんで…っと!」ドォン
アラン「それで…ココ達は何だって?」ズバァン
フリエ「急いで向かうからもたせてくれって言ってました…くっ!」ドォン
アラン「大丈夫か?魔力とか…。」
フリエ「ハァ、ハァ…。くぅ…正直…あと3発くらいが限界ッス…。」
ステラ「主様、そろそろ未来予知の維持に必要な魔力が無くなりそうです。…正直、もう大型の武器への変形もままならないでしょう。」
アラン「今日はじっとしている事が多かったからな…正直俺はまだ体力的に余裕があるんだが…。」ズバァン
フリエ「くっ…すみませんッス…。………うあっ!?」ドパァン
アラン「フリエっ!?くっそ…4体同時かよ…。」
フリエに4体のマグマスライムが同時に突進してきた。魔力装甲で防御したようだが…。
フリエ「ぁ…すみません勇者様…さっきの魔力装甲でもう…。」
アラン「くっそ魔力切れか…。分かった。寝てて良いぞ。」
フリエ「すみませんッス…。」バタッ
フリエがダウンした。ここからは俺一人で、倒れてるフリエをかばいながら200体以上のマグマスライムを捌かなければいけない。……文字にするとより絶望感が増す。やめておこう。
アラン「よっ、ほっ、!?ハァっ!!」ズババァン
ステラ「くっ…数が多い…。!?主様っ!避けてっ!」
アラン「なに…っが!?」ドパァン
ステラ「ぁ…主様っ!」
ヤバい。頭部に被弾した。火耐性が無ければ右目も失明してただろう。
アラン「くっそ…危ねえ。両目失明は笑えないぞ…。」ズババァン
ステラ「あぁ…良かった…。」
若干頭が痛いが、まだ動ける。斬る。斬る。受け流して…斬る!
アラン「あと何体だ!?ステラ!」ズバァン
ステラ「あと…100!さすがにあちらも打ち止めですね…。」
アラン「そうか…。ぐっあ!?」ドパァン
ステラ「主様っ!もう少しです!しっかり!」
アラン「わかっ…てるっ!」ズババァン
だんだんと被弾が増えてくる。だが、それはあちらも同じ。数が減っていることに焦って、単調な攻撃が増えてきた。
アラン「がっあ!?ぐっぅ…あああああ!」ズバババァン
ステラ「主様っ!」
ついに右腕に穴が空く。だが、左手に持ち替えて攻撃を続けた。
アラン「95っ!96…97っ!」ズバババァン
スライム「「「キィッ…。」」」シュウ
アラン「98…99っ!………100ぅ!」ズバァン
スライム「キィッ…。」スパン
スライム「キッ…」シュウ
スライム「キィーッ!」スパァン
ステラ「……やりました!マグマスライム…全滅です…。お疲れ様でした!」
アラン「ぐっあ…ぁあ。お疲れ…。」フラッ
ステラ「早く手当てを…ッ!主様っ!」
疲れが溜まっていたのか、思わずふらついてしまう。地面は岩場。気絶は必死だろう。……あれ?
ココ「勇者様っ!」ガシッ
サラ「マスターっ!」ドタドタ
アラン「ぁ…ああ。ココか…悪いな、全部…片付けちゃったよ。」
ココ「ううん…良いの!勇者様が…無事で居てくれた…。」グスッ
サラ「マスターっ…!良かった…。あ、ポ、ポーション…。」ガサゴソ
地面に倒れる寸前にココがキャッチしてくれた。ナイスタイミングだ。
サラ「マスター。ポーションです。かけますね…。」キュポン
サラがポーションを取り出して、かけてくれる。右腕の穴が塞がった。
アラン「うっ…ふぅ。あー。終わったのか…。」
ステラ「お疲れ様です。……主様。私は…嬉しいです。主様の…成長が。」
アラン「あぁ…思えばピンチになって気絶せずに終われるのはこれが初めてか…。」
サラ「毎回酷い目ばかりでしたからね…お疲れ様です。」ギュッ
アラン「アッアッアッ。やわらかかかかか。」ガクガク
サラが抱きついてくる。急にやるのは心臓に悪いのでやめてほしい。
ココ「んふふ〜!私もっ!」ギュッ
アラン「お前もかバーニィ…アッちょっ…まっ…アッアッアッ。」ブルブル
ココも抱きついてくる。こいつら…俺が動けない事を良いことにやりたい放題だ。…ヤバい。理性がゴリゴリ削れていく。このままではアレが立ってしまう。
サラ「良いんですよ…私達に全て委ねてください…。」ナデナデ
ココ「そーだよ。勇者様は頑張ったんだから…帰りはおぶって行くね。」トントン
サラに撫でられ、ココに背中をトントンされる。だんだん眠くなって来たが…。
アラン「あ…ヤバい。まだイオが来てない。」
ステラ「そう言えば…もう到着しても良い頃なのですが…。」
ココ「イオちゃん?……あ。2体目だね。」
ステラ「はい。2体目のキングが出てしまいまして…対処をお願いしたのです。戦闘開始は確認できたのですが…。」
サラ「場所を知らないのでは?」
ステラ「それはありません。ちゃんと伝えてますし、伝えた位置からほとんど動いていません。」
ココ「じゃあなんで…。」
ステラ「分かりません。とりあえず導きの力で…っ!?」
アラン「おい…アレって…イオ!こっちだ!」
イオの姿が見えた。見えたが…やけに服がボロボロだ。それに目が虚ろで、下を向いて元気がなさそうに歩いている。……少なくとも、この火山でイオにあそこまで傷を負わせられる魔物は居ないはず…。
イオ「ぅあ…。あるじ…あるじぃ…。」グスグス
アラン「……どうした?何があった?」ナデナデ
イオ「おかあさんが…ヘンなくろいオーラに…。ひっしによんだけど…わかってくれなくて…わたし…まほうにあたって…ぅぁぁぁ…いたい…いたいよぉ…。」グスグス
……どうやら緊急事態のようだ。だが、今はイオを落ち着かせなければ。
アラン「……そうか。よく頑張ったな。……たくさん泣いて良いぞ。」
イオ「うん…うぁ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁあん!」ポロポロ
ココ「イオちゃん…辛かったね…。」ナデナデ
サラ「イオ…大丈夫です。あなたは一人じゃないですよ。おかあさんも…きっと元に戻るはずです…。」ナデナデ
イオ「う…ぁぁぁ。うわぁぁぁぁぁ…。なんでぇ…どうしてぇ…。おかあさん…おかあさぁぁぁぁぁん!」ポロポロ
ステラ「………イオ。大丈夫です。あなたのおかあさんは…絶対に助けます。今はただ…ただ、ちょっと悪い人に無理やりやらされているだけ。別に、イオの事を嫌いになった訳ではないですよ。」
イオ「うん…そうだよね…そうだよねぇ…。おかあさん…やさしくて…きれいで…いつかあんなドラゴンになりたいっておもってたのに…あんなに…こわくて…。」ポロポロ
……ダメだ。腹の奥が…煮えたぎるように熱い。イオの手前必死に抑え込む。
アラン「……大丈夫。俺達が…助ける。」ギュッ
イオ「うん…おねがい…あるじぃ…たすけて…。」グスッ
アラン「任せろ。」
イオ「うぁ…うわぁぁぁぁぁぁあん!」ポロポロ
イオがとうとう本格的に泣き出した。……これは長くなりそうだ。
〜帰り道〜
結局、あの後イオはひとしきり泣いて、何とか持ち直したようだ。だが…以前として表情は暗い。
アラン「イオ。とりあえず…今日は休もう。疲れただろ。一緒に…寝ようか。」
ドラゴンイオ『うん…。』バサバサ
ココ「勇者様…勇者様も疲れてるよね…。」
アラン「あぁ…だが…今は…イオの傍に居たい。」ナデナデ
ドラゴンイオ『ありがと…。』バサバサ
〜宿屋 アランの部屋〜
あれから、俺達はギルドに行って報告と、魔石の換金を済ませて宿屋に戻ってきた。ギルドマスターは色々と聞きたそうにしていたが…イオの泣き腫らした顔を見たら、そんな気持ちも失せたようだ。
イオ「あるじぃ…。」ギュッ
イオが抱きついてくる。だが、力が弱々しい。身体も震えている。
アラン「よしよし。疲れたな。いっぱい寝ような。」ナデナデ
イオ「うん…ごめんね…ちょっと、はなれないでほしいな…。」ギュッ
アラン「あぁ。大丈夫だ。ほら。もう寝よう。おやすみ。」ギュッ
イオ「うん…おやすみ…。」ギュゥゥゥッ
こうして俺達の忙しい一日が終わった。そう、終わったのだ。終わったのだが……こんなに、気持ちの悪い夜は初めてだった。