翌日、救出作戦に備えて、頼んでおいた防具を取りに来た。ここが何処かと言うと…。
〜ドワーフ工房連合〜
そう。ドワーフ工房連合だ。シルさんは、勇者であると同時に腕利きの職人でもある。武器や防具の作成から、日常を豊かにする道具の開発、更には魔道具の作成もやってのける人だ。今はシルさんの工房に向かっている。……文にするとより万能感が増す。
アラン「いやほんと、すげぇわあの人。」
ステラ「まあ…エル・ステラ神聖連邦には軽く千年は生きる長命な種族しかいませんので…。皆、時間が有り余っているのです。」
ココ「仕事もほとんど趣味でやってる人がほとんどだしね…。」
アラン「要するに暇人か。羨ましいねぇ、こちとら最大でも百年ちょっとしか生きれない種族だからな…。」
ココ「ぅぅ…。やだ、ヤダよぉ…もっと生きてよ…勇者様ぁ…。」グス
イオ「あるじぃ…。」ガシッ
ちなみに、今回のメンバーはココとイオだ。イオは単純に離れたくないようで、ココはサソリ達の一件で俺が一人になった結果攫われたのをかなり気にしている。
ステラ「……主様。実は人族でも私達と同様の時間を生きられる手法があるのですが…。その、あの…主様にも、その施術を受けてほしいのです。」
アラン「…考えとく。ま、今は邪神だしな…。」
ステラ「そうですね…その施術を受けても、寿命の概念が無くなるだけで外的要因による死が無くなる訳ではありませんし…。」
ココ「…それまで死んじゃダメだよ。」ギュッ
イオ「いきてね…あるじ…。」
アラン「……分かってる。お、ここだ。」
石レンガの壁にいくつもの金属製のパイプが付けられている廊下をしばらく進むと、鈍く銅色に輝く扉があらわれた。そして、扉にかけられている看板には…勇者シルの名がある。
アラン「よし。すいませーん!アランです!防具の受け取りに来ましたーっ!」ゴンゴン
シル「開いてるよ…入って。」
アラン「失礼します!」グイッ
扉を押すと…大きな炉と金床、そして金属の匂いが漂う、鍛冶場が広がっていた。
〜フリエ視点〜
私とサラは、救出作戦に向けて魔道具屋に来ていた。と、言うのもマグマスライムとの戦闘で壊してしまった音飛ばしの魔道具の買い替えと、あとは…スクロールと呼ばれる物を買いに来た。
サラ「音飛ばしは…これで良いでしょう。あとは…スクロールですね。」
フリエ「そうッスね…あ、あっちみたいッス。」
スクロールのコーナーに来た。色とりどりのスクロールが置いてある。
サラ「欲しい物は…魔力補充に、氷属性の魔法のスクロールですね。」
フリエ「氷属性は…あ、アレっすね。えーっと…アイスブラストにアイスボム。それに、アイスバインドなんてのもあるッス。」
サラ「魔力補充もありました。氷属性は…アイスバインドを多めに買っておきましょう。他は5個ずつで良いでしょう。」
フリエ「攻撃系はイオちゃんがいるッスからね…。」
ここで、スクロールについて説明しておこう。スクロールとは紙に魔法の術式が刻まれた巻物である。このスクロールの便利な所は発動しても使用者の魔力を消費すること無く発動できる所で、発動も念じて巻物を広げるだけなので詠唱も必要無く、咄嗟の発動にも向いている。
フリエ「ま、あんまり持っていくとかさばるッスからね。サラのストレージに何でもぶち込めるとは言え…。」
サラ「ストレージに入れると発動が遅れますから…。」
そして当然弱点もある。まず、さっき言ったとおり、サイズ的に大きめの巻物なのでかさばる。とにかくかさばる。ストレージに入れると取り出しの分発動が遅れるし、リュックやカバンにいれると重くなる…。たくさんは持っていけない。
フリエ「ま、スクロールなんて使い捨てッスからね。あまり強力な魔法は刻めませんし…。」
サラ「あと、ダンジョンの中とはいえ火山ですからね…燃える可能性が高い。」
スクロールは使い捨てであり、一回使ったらただの白紙の巻物になる。あと、強力な魔法は紙に負荷がかかりすぎて暴発する可能性があるので刻めず、おまけに此処は火山。雑に扱ったら簡単に引火して燃えてしまう。使い捨てである以上、攻撃よりもサポートに使ったほうがいい。
フリエ「よし。これぐらいで…。」
サラ「はい。これぐらいで良いでしょう。魔力補充のスクロールはあくまで保険なので…。」
フリエ「キングの時は魔力切れで不覚をとったっスからね…。」
魔力補充のスクロールは、本来魔法発動の為にスクロールに刻まれている魔力を、そのまま使用者に移すスクロールである。
サラ「さすがにあの数は想定外な所もあるのでしょうがないのでは?」
フリエ「甘いッすサラ。そんなんじゃまた勇者様がケガするッス。」
サラ「………フリエ。警戒するのは大事ですが…警戒しすぎても逆効果ですよ?」
フリエ「それでも。もう、あの人にはケガして欲しくないッス。確かに勇者様に強くなってもらうのも大事ッスけど…打てる手は打っておきたいんす。」
サラ「…分かりました。」
フリエ「…やっぱり武器屋に寄っていって短剣の一つぐらい買っておくッス。近接もある程度できないと…。」
失敗はしたくない。もっと頼られたい。もう…嫌だ。
〜ドワーフ工房連合 勇者シルの工房〜
シル「久しぶり…でも無いね。防具はできてるよ。とりあえず…そこに座って。」
アラン「早いッスね…。よっと。」
指定された場所に座ると、防具が謎の機械にセットされた状態で出てきた。
ココ「何…アレ?」
シル「自動調整装置…私が作った。防具をセットして、ボタンを押すだけで細かいサイズ調整とか、関節部分の稼働調整とかを自動でその人に最適な状態にしてくれる。」
ステラ「便利な物があるのですね…。」
イオ「ステラお姉ちゃんオバサンみたーい。」
ステラ「がっあ…!?」ガタン
ステラが年寄り発言でダメージを受けているのを横目に、機械が動き出した。
アラン「うぉ…これ結構くすぐったいな…。たぶんココはやめておいたほうがいい。」
ココ「え〜。そんなに?」
ココはくすぐりに弱い。前にサラのオヤツを食べてしまった時に、サラに捕まってあられもない姿にされていた。正直言ってイロイロとキツかった。
イオ「へー。イオもココお姉ちゃんをくすぐってみたいなー。」ニヤッ
ココ「やめてね!?」ブルッ
イオ「へっへっへ…。」ワキワキ
イオがココにジリジリと近づいている。……イオって契約結ぶ時もだけど、割と図々しいと言うか…たくましい所があるな。
シル「はいはい。そこまでにして。此処には暴れられて万が一が起きたらマズい物がたくさんあるから。」
ステラ「……シル。ちなみにそれはどんな物なのですか?」
シル「んー。爆発する魔石とか、触ったら皮膚が溶ける石とか…あ、ステラが前に塗られてた奴もあるよ。」
ステラ「っひ!?」ガタガタ
アラン「ステラ…お前いったい…。」
ステラ「聞かないでもらえると…助かります…。」ガタガタ
……ステラがガチ震えするような物だ。絶対碌でもない物だろう。
アラン「………あ、終わった…っぽい?」シューッ
シル「ん。あ…終わったみたいだね。もう立ってもいいよ。」
立つと機械のアームと扉が後ろに下がる。すると…。
ココ「わぁ…。勇者様カッコいい…。」キラキラ
イオ「………///」カオマッカ
ステラ「イオー?……駄目ですね。完全にメスの顔してます。」
シル「こんな小さい子どもも…やっぱり女癖が悪いのも先代にそっくりだね。」
アラン「あー。やっぱり俺って先代に似てるんですかね…。ステラもなーんか最初っから距離近いなコイツって思ってたけど…。」
シル「……ステラ?もしかして…前の事、詳しく話してないの?」
ステラ「はい…。」
シル「いずれ話さないとだよ。ツラいのは分かるけど…。」
ステラ「すみません…。」
ココ「………。」
イオ「?」
アラン「…ともかく。これで防具もできたし…あとは心の準備だけだな。」
ココ「…そうだね。絶対…絶対助けようね。勇者様。」
アラン「ああ。チームボルケイノも…イオのお母さんも。」
イオ「うん…。」ギュッ
シル「…私も、できる事があれば手伝うから。勇者アラン。正直貴方には期待してる。貴方ならきっと…邪神を…この世界を救ってくれるって。だから…負けないで。」
アラン「はは…責任重大だなぁ…。ま、何時ものこと何ですけどね。まあ…大丈夫ですよシルさん。俺…気絶したり、ピンチになったりはしますけど…最終的に勝ちはするんで。」
シル「……ぁ。…うん。それでこそ…導きの勇者。私達が…1000年の間待ち望んだ人。」ギュッ
アラン「ぅっえ!?シルさん!?ちょっ…離れて…あばばばばば…。」ガクガク
どこかのブレイドさん程では無いが…凄い。やわらかさの内に確かに筋肉がある。腹筋はバキバキだ。
ココ「コラーッ!何してるのっ!」グイッ
イオ「ダメーッ!あるじはイオのあるじなの!」グイッ
シル「ぁ…フフフ。女性への耐性が無いところも…そっくり。頑張ってね。」
アラン「うっあぁ…。ヤバかった…。……はい。頑張ります。」
ココとイオが引き剥がしてくれたおかげで何とか持ち直した。……まあだが、シルさんに言われなくとも、俺はできる事をするだけだ。
〜宿屋 アランの部屋〜
あれから、個人用のポーションなどを買い足して帰った。途中でサラとフリエにも合流したが…何か…フリエがやけに大荷物だったな。……まあ良いか。
イオ「あるじぃ…ねむいよぉ…。」ペタペタ
歯を磨いたイオが目を擦りながらベッドの方に歩いてきた。
……今日はもう寝よう。その方が良い気がする。
アラン「ふぁぁぁぁぁ…。寝るかぁ…。」
イオ「うん…ねむいよぉ…。」ギュッ
アラン「おやすみぃ…。」
イオ「おやすみ…あるじ…ステラお姉ちゃん…。」ギュゥゥゥッ
ステラ「おやすみなさい。」