記憶喪失系勇者の旅路   作:一般通過社会人

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獄氷竜

 

〜ダンジョンの中 ボス部屋〜

 

ステラ「イオ!右に!」

 

ドラゴンイオ『わかった!』ビュン

 

ドラゴンイオの背中にしがみつく。凄い速度だ。

 

フリエ「も、もうちょっと速度落とせないッスか〜!?」ゴウゴウ

 

アラン「バカいうな!今の速度でギリギリ避けられてるんだぞ!くっそ…イオの母親だからとんでもないのを予想してたが…まさかこれほどとはな…。うおっ!?」ゴウゴウ

 

ドラゴンイオ『あるじ!?だいじょうぶ!?』

 

アラン「俺達の事は良い!避ける事に専念してくれ!じゃないとどのみち全滅だ!」

 

ドラゴンイオ『わ、わかった!っと!』ビュン

 

攻撃が頭上に飛んでいく。当たったら確実にアウトだろう。

 

ステラ「残り2kmです!皆頑張って!」

 

ココ「くぅっ…耳が…痛い〜!」

 

吹雪の中をかなりの速度で飛んでいるのだ。寒さで耳が真っ赤になる。特に耳の長いエルフ族はキツいだろう。

 

アラン「くっそ…10kmがこんなに長く感じたのは初めてだ…。」

 

サラ「いつもはイオちゃんの背中に乗っていればあっという間に着いてましたからね…。」

 

シル「……やっぱりアシがあると便利だね。」

 

フェール「そうだね…私もフレイを仲間にするまでは遠方には徒歩だったから…あの頃はキツかった。」

 

フェールさんの現役時代…気になるな。いや、今は戦いに集中しよう。

 

ステラ「……!残り二つの魔力反応が攻撃を!!」

 

アラン「っ!イオ!激しくなるぞ!がんばれ!」

 

ドラゴンイオ『うんっ!』ビュン

 

氷魔法の攻撃が増える。また、吹雪に混じってかまいたちも大量に飛んでくる。

 

フェール「!アネモスが戦闘を開始した!」

 

アラン「ステラ!向こうの状況は!」

 

ステラ「魔力反応が3つとも動きました!これは…かなり激しいです!」

 

フェール「くっ…悪い知らせだ。敵はイオちゃんのお母さんと思われるドラゴンと、例のダンジョンコア…それに、悪魔族が居る!」

 

ココ「そんな…。」

 

アラン「何だと?悪魔族!?……って何だ?」

 

フリエ「え…。まさか知らないんスか?勇者なのに?」

 

アラン「知らん。と、言う事で…オッケーステラ!悪魔族って何?」

 

ステラ「…そう言えば説明していませんでした。悪魔族とは、エル・ステラ神聖連邦のお隣の国…マリス帝国に多く存在している種族です。特徴は、曲がったツノに青か赤、それか黄色の肌で、そして全ての個体が闇属性の魔法を使えます。」

 

ココ「マリス帝国は、エル・ステラ神聖連邦の首都にある邪神が封印されているダンジョンを、聖なる土地として常に奪還を目論んでいるんだよ。千年前の戦いでも聖戦として襲いかかってきたらしいんだけど…。」

 

シル「各種族の騎士団と冒険者、それと私達勇者が共闘して、一時期は最終防衛ラインまで押し込まれたけど…何とか勝った。」

 

ステラ「………っ、しかし、その代償として、貴方の先代…勇者クレイと、数多くの戦闘員、民間人を犠牲にしてしまいました。」

 

フェール「その戦いで我々は、エル・ステラ神聖連邦の総人口の八割を失った。戦闘員は…ほぼ壊滅だ。」

 

シル「ぅ…っ。だ、だけど、マリス帝国の方もかなりの痛手を負った。この1000年は音沙汰なしだった。」

 

フリエ「……でも、ここってマリス帝国の国境からかなり離れてますよね?悪魔族が此処に居るってことは…。」

 

シル「……マリス帝国の戦力が復活しつつある。」

 

アラン「マジで時間無いんだな…。っと。」

 

ドラゴンイオ『アレだっ!』

 

前方を見ると、巨大な氷の闘技場のような施設が現れた。既にアネモスが激戦を繰り広げているようで、流れ弾がこちらにも飛んできている。

 

アラン「あ、出入り口っぽいな、あそこ。イオ。」

 

ドラゴンイオ『わかった!』バサッ

 

少し開けた、出入り口っぽい所に着陸する。

 

アラン「よし…到着っと。」

 

イオ「ふう…やっとだね…。」

 

ステラ「既にアネモスが戦っています。急ぎましょう。」

 

走って出入り口を抜ける。すると……。

 

アネモス「ガウッ!」

 

フェール「アネモス!こっちだ!」

 

アネモス「ガウッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

????「おやおや。お客さんだね。」

 

アラン「……。」

 

ブリトル「はじめまして。僕はブリトル。へぇ…コイツは良い。まさか鋼の勇者だけじゃなくて…導きの勇者まで来てくれるとは。」

 

シュタール「貴方が…今回の騒ぎの元凶ね。」

 

ブリトル「その通りだとも鋼の神器。ヴァルカン火山にダンジョンコアと、それに寄生する魔物をばら撒いた。最初は十分に育ったダンジョンコアと一緒にドワーフの街を落とすつもりだったが…。厄介な事に獄氷竜に見つかってしまったからね。おかげで保有していた魔物の半分を失ってしまった。」

 

ステラ「獄氷竜!?まさか…イオ。貴方のお母さんは…。」

 

ブリトル「そうさ導きの神器。そこのアイスドラゴン…イオちゃんだっけ?そのイオちゃんの母親は、かつての導きの勇者の従魔にして、竜族の青龍院の長…獄氷竜シエロさ。と、言うか気づいて無かったのかい?てっきり分かってて此処に来てるのかと思ってたよ。」

 

ステラ「くっ…シエロが…何が目的ですか!?」

 

ブリトル「おいおい言っただろ?ドワーフの街を落とすって。ま、魔物が半分に減ってしまったが、獄氷竜を不完全とは言え従える事ができた。プラスマイナスゼロ…いや、大幅にプラスだね。」

 

シル「でも、これで終わり。魔物をばら撒いてしまった以上、貴方の戦力は此処のダンジョンのコアと、シエロ、そして貴方しかない。」

 

ブリトル「……ああ。言ってなかったね。別に君達を消すなんて一匹いれば十分なんだ。だって…魔物は魔力を吸い取る煙を吐かせる事ができるからね。だって君達、まだあの煙を克服できて無いんだろ?いくら勇者シルと言えどあの煙をずっと吸いながらシエロを相手にするなんて無理なはずだ。」

 

シル「っ…。」

 

ブリトル「ま、そう言う事だ。鋼の勇者と今代の導きの勇者は、このブリトルによって討ち取られる…実に美しい事実だ。それじゃ、僕の出世と芸術の為に…死んでくれ。

 

ステラ「来ます!構えて!」

 

 

 

ドラゴンシエロ「グァァァ…GAAAAAAAAAA!!」

 

 

ダンジョンコア「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ダンジョンの中 闘技場〜

 

今、俺は皆と別れて闘技場の裏手に行っていた。

 

アラン「くっそ…。」

 

寒い。カイロがまるで効いていない。5時間も経っていないはずなのに。

 

ステラ「恐らく…いえ。確実にシエロの魔法によるものでしょう。」

 

アラン「獄氷竜…だっけか?物騒な二つ名だ。」

 

ステラ「実際にその通りです。圧倒的な低温で相手を瞬時に凍らせ、逃さない…氷の監獄を量産しているような光景から、獄氷竜の二つ名が付けられました。」

 

アラン「そんな奴を相手にしてるのか…あいつら大丈夫かな…。」

 

ステラ「少なくともすぐ死ぬ事は無いはずです。彼女達は、スピード、耐久、サポート…どれも一線級の実力を持ったスペシャリストが揃っています。たとえレベルが不足していても、時間を稼ぐ事はできます。」

 

現在、俺以外のメンバーには最前線で時間を稼いでもらっている。と、言うのも、ダンジョンコアとブリトルはともかく、イオのお母さん…シエロだけは正攻法で倒すとそのまま消滅してしまう。なので、ステラの光魔法で、とりあえずブリトルの支配魔法(契約魔法と闇魔法を合わせた魔法。対象を強制的に従わせる)を打ち消す事にした。

 

アラン「光魔法で闇魔法を打ち消せる事自体初耳だったけど…。」

 

ステラ「本来は神聖魔法の方が得意なのですが…一応光魔法でもできます。但し、神聖魔法よりも魔力が倍必要になります。」

 

アラン「ま、打ち消せば少なくとも攻撃は止めてくれるはず。再びブリトルに支配魔法を使わせなければあとはダンジョンコアとブリトル本人だけだ。」

 

ステラ「そのダンジョンコアも問題なのですが…。」

 

ダンジョンコアは現在魔力を吸い取る煙を垂れ流している。ここ、闘技場の通路にもその煙は流れ込んでいて早くシエロの元にたどり着かなければステラの魔力が底をついてしまう。

 

ステラ「ぐっ…あ、主様。もう少しです。」

 

アラン「大丈夫か?今回導きの力も使いっ放しだったし…魔力的に相当キツいだろ。」

 

ステラ「はい…やはりダンジョンコアを吸収して総魔力量は上がったのですが、依然として連続使用は…。」

 

アラン「やはりか…。っと。ここらへんじゃないか?」

 

ステラ「そうですね…ここの壁を破壊すれば、シエロのちょうど真後ろに出れるはずです。」

 

アラン「よし。なら、サラからもらったこの魔石で…。」

 

爆発する魔石を壁に貼り付け、用意する。そして…。

 

ステラ「それでは…ってちょっと待って!?そんな距離で起爆したら…。」

 

アラン「え!?」カッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜サラ視点〜

 

寒い。カイロがほぼ機能していない。

 

フリエ「サラ!大丈夫ッスか?」

 

サラ「は、はい…。」ガチガチ

 

チームスピードクロウの中では、私はマスターについで経験が少ない。と、言うのも、一度改造手術を受けてしまったので、記憶…もっと言うと寒さへの耐性の記憶がほぼ失われてしまった。

 

サラ「くっ…。」

 

水魔法が撃ったそばから凍ってしまい、役にたたない。故に熟練度の低い風魔法で対処するハメになった。

 

サラ「ゲホッ…。」

 

おまけにこの煙…サソリ達の使っていた物のように、脱力の効果は無いようだが…確実に魔力が削られている。

 

フリエ「くっ…キツいッスね。って…サラっ!?」

 

サラ「ぐっ!?」キィン

 

マズい。足がもつれた。そこに攻撃が飛んでくる。これは…。

 

サラ「くっ…ウォーターブラスト…。」ガキン

 

咄嗟にウォーターブラストを出し、凍らせて即席の壁を作って防御する。危なかった。

 

フリエ「サラ!サラ!?大丈夫ッスか!?」

 

サラ「大丈夫…です…。」フラッ

 

フリエ「そんなフラフラで何言ってるッスか!くっ…とりあえず闘技場の通路に…。」

 

サラ「っ!フリエっ!」

 

フリエ「え?ッキャッ!」キィン

 

マズい。フリエが被弾した。当たった所から凍っていく。

 

フリエ「く…火魔法で…。ぐっ…。」ジュウ

 

サラ「フリエっ!大丈夫ですかっ!」

 

ココ「フリエ!?フェールさん!フリエが被弾!」

 

フェール「フレイ!」

 

フレイ「キィン!」ゴウッ

 

フレイが患部を温めてようやく氷の侵食が止まる。とりあえずはこれで大丈夫だろう。

 

ブリトル「おやおや。こっちはまだまだ余裕があるよ?大丈夫かい?」

 

サラ「っく!黙れっ!」ビュン

 

ブリトル「おっと。」

 

思わず当たるはずの無い反撃をしてしまう。……未熟だ。私のせいで…。

 

フリエ「大丈夫ッスよ。サラのせいじゃ無いっす。」ギュッ

 

サラ「フリエ…。」

 

フリエ「私達はチームっす。助け合いは基本ッスよ。」

 

サラ「はい…。」

 

そうだ。私達はチームだ。迷惑はかけて当たり前。そのカバーをしてもらった恩を返したいなら行動で示す。

 

サラ「…もう、大丈夫です。」

 

フリエ「うん。それでこそサラッス。もうちょっとッス。頑張るッスよ。」

 

サラ「はい!」ビュンビュン

 

ウインドカッターで弾幕を張る。とりあえずイオちゃんのお母さん…シエロの攻撃を何とか相殺しなくては。幸い、ダンジョンコアは煙を垂れ流すだけで攻撃してきてはいない。ブリトルも飛んで冷やかしてくるだけ。

 

サラ「そろそろ…っ!」ドォン

 

シエロの後ろの壁が大きく爆ぜる。爆煙の中から…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アラン視点〜

 

アラン「あっつ!?あっついんですけど!?」

 

ステラ「我慢してください!そもそも主様があんな近距離で起爆するからでしょう!?」

 

アラン「いやそうだけどぉ…って、やっべ!」ヒュン

 

サラ「マスター!」

 

すぐ目の前に氷の衝撃波が迫る。咄嗟にかがんで回避する。

 

アラン「っく…ステラっ!!」

 

ステラ「分かっています!『光よ…我が身に集い、邪悪を打ち払え!ライトニング…インパクト!!』」

 

ズバァン!!

 

ドラゴンシエロ「GAAAAAAAAAAAAA!!………ァ?」

 

ブリトル「なっ!?まさかっ!?」

 

シエロ「ぁ…ぁ…?あ、ある、じ…さ、ま…?」フラッ

 

アラン「おっと…。」パシッ

 

ドラゴンシエロが竜人の姿になる。終わったようだ。

 

アラン「気を失った…か。よっ。」

 

とりあえずおぶってあらかじめ持ってきておいた布紐で固定する。………くっそやっぱりデカい。理性がががが…。

 

イオ「おかあさんっ!」ビュン

 

アラン「イオ!こっちだ!」

 

イオ「ぁ…あるじ…おわった…?」

 

アラン「終わったよ。お母さんも無事だ。」

 

イオ「ぅあ…よかっだぁ…。」グスグス

 

イオが泣き出す。無理もない。

 

アラン「よしよし…。」ナデナデ

 

ブリトル「くっそ…放置するべきじゃなかったか。まあ良い。おい!」

 

ダンジョンコア「GAAAAAAAAAAAAA!!」ビュン

 

アラン「っとっ!」

 

イオ「うわっ!?」

 

イオを抱えて咄嗟に後ろに跳ぶ。すると…。

 

ズドォン!

 

地面が凍りついた。これは…。

 

ステラ「どうやらあの個体は氷魔法を使うようです。……そして魔力の中に微妙にシエロの魔力が混じっています。おそらく、イオの中に居た個体と同じように、十分に育つまでシエロの体内で魔力を吸って育ったのでしょう。」

 

アラン「うわキッツ。獄氷竜の魔力吸って育ったとか絶対強いじゃん…。」

 

ブリトル「それだけじゃないよ。」

 

ダンジョンコア「GAAAA…GUAAAAAAAAA!!」バリバリ

 

ダンジョンコアが咆哮すると、突然煙が濃くなった!

 

サラ「ゲホッ、ゲホゲホゲホッ。」ゴホッ

 

フリエ「サラ!くっ…ぁぁ…。」バタン

 

フェール「これは…マズ…い…。」ガクッ

 

フレイ「キィン…。」バタン

 

アネモス「グァァァ…。」ガクッ

 

シル「くっ…。」ガクッ

 

イオ「うぅ…くるしい…。」

 

ステラ「あ…るじ…さま…。」カタン

 

皆が倒れていく。立っているのは俺だけだ。

 

ブリトル「HAHAHAHA!!絶対絶命だね!もう逃げなよ。君じゃこのコアには勝てない。彼女達は良い素体になりそうだ…彼女達を置いていけば見逃してあげるよ。」

 

アラン「逃げたいとこだがな…皆見捨てて生き残った所で後悔が残るだけだ。」

 

ブリトル「そうかい。じゃ…死ね。」

 

ダンジョンコア「GAAAAAAAAAAAAA!!」ビュン

 

 

ダンジョンコアが触手を伸ばして襲いかかって来た!

 

 

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