〜闘技場の中〜
アラン「うぁぁぁ…。」ヒュウウウウ
足が痛い。氷の魔法で消し飛んだので傷口は凍っているようだが…。
シル「アランっ…ぅあ。」フラッ
シルさんも限界だ。最後の方の攻撃は酷かった。アレを捌き切るシルさんは本当に凄い。
ステラ「主様…っ!とにかく身体を丸めてっ!」
アラン「ぐっ…ぁっ!」ドンッ
背中から落ちる事ができた。だが…。
アラン「っ…。ゲホッ。ゲホゲホッ。」
身体は既に満身創痍だ。両足の欠損に加え、脇腹が削られている。おまけに背中も…どうなっているかは分からないが。
ステラ「主様!気を確かに!ここで寝たら凍死しますっ!」
そうだ。イオの魔法を喰らったんだった。どうりで寒いはずだ。
アラン「っあ…。」ズルッ
シル「動いちゃダメっ!」
アラン「くっそ…サラ…サラ起こして…たぶんポーションある…。ゲホッ。」
シル「っ!サラ!おいサラっ!起きろっ!」ユサユサ
サラ「ぁぁ…うあっ。あ、シル…さん…?」
シル「ストレージからポーション出してっ!説明は後ッ!」
サラ「は、はい…。ぇ…。マスター!?」
アラン「や、おはよ…。割とマジで逝きそうだから脇腹にポーション頼む…。」
サラ「っ!わ、分かりました!」ブワッ
サラがストレージからポーションを取り出して此方に来る。
サラ「マスターっ!しっかりっ!かけますよ…。」キュポン
痛い。痛すぎて気が飛びそうだ。いつの間にか胸の炎も消えている。結局時間制限があるのか無いのか分からなかった。
アラン「う…あっ!っ!はぁはぁ…。あー。とりあえず…脇腹は大丈夫か…?」
サラ「いいえ…血が止まっただけで依然として…。やはりポーションでは欠損した箇所までは…。」
ポーションは切断された部位をくっつける事はできるのだが、完全に消し飛んだ部位はどうしようも無い。もっとも、くっつけると言っても素人が適当にやったら腕が使えなくなるので、きちんと医者に縫ってもらった上でポーションをかけて貰うしか無い。
アラン「ふーっ…痛みは無くなったけど…。」
ステラ「まだですっ!背中も…。」
サラ「ぇ…?まだ…マスター。失礼しますね…。」
うつ伏せにしてもらう。すると…。
サラ「ぅぷっ…ぁぁあ…。これは…。」グスッ
ステラ「っ…。」
アラン「え?そんなに…ヤバい?アイスボム直撃したんだけど…。」
ステラ「は!?そういう事は早く言ってくださいっ!くっ…。サラ!ありったけのポーションを…。」
サラ「はいっ!」キュポンキュポンキュポン
背中にポーションがかけられる。…感覚が無いので分からない。
アラン「治った?」
サラ「とりあえずは…しかし、傷跡が…。」グスグス
ステラ「これはもう…神聖魔法でも…。」
どうやら酷かったらしい。
アラン「どんな状態だったの…?」
サラ「ほ、骨が…骨が見えてました…。」ガタガタ
ステラ「主様っ!言わせないで下さいっ!」
おっとグロ注意だ。まあ爆弾が直撃したのだ。死ななかっただけマシだろう。
シル「っ…だ、大丈夫…?」ズルズル
サラ「シ、シルさん…。」
ステラ「脇腹と足はもうポーションでは…とりあえず背中は治せましたが…。」
シル「ぁ…ごめんね…私を庇って…。」
アラン「気づいてたんすか…。ま、治ったんで大丈夫ですよ。」
シル「うん…。」ガタガタ
ステラ「シル…つらいなら見なくても…。」
シル「いや…これも…私が守れなかったからだから…。」グスッ
アラン「シルさんっ!?」
ヤバい。シルさんも泣き出した。
シル「ぅぁ…ごめんね…ごめんねぇ…わたし…鋼の…はがねのゆうしゃなのにぃ…。」ギュッ
アラン「っ…大丈夫…大丈夫ですから…。」ポンポン
シル「また…またまもれなかったぁ…。」グスグス
アラン「………。」ナデナデ
恐らく、先代の事もあるのだろう。今までの話的に、シルさんは近い所…いや、目の前で先代を失ってるはず。それに、盾を使ってるのだ。責任感も人一倍強いだろう。
シル「っ…ごめんなさい…ごめんなさい…。」グスグス
アラン「シルさん。一つだけ。」
シル「………?」グスッ
アラン「また守れなかったってのは違うと思いますよ。少なくとも、キングマグマスライムの時も守ってもらいました。それに、導きの勇者…俺が不在の間、ずっとこの世界を守ってたんでしょ?なら、ちゃんと守れてますよ。」
シル「ぁ…!うん…ぅん…うぁ…うああああああああ!」グスグス
アラン「……俺も、貴方みたいな…。カッコいい勇者に…守れる勇者になりたいです。」
シル「っ…!なれる…なれるよ…貴方なら…。」グスッ
アラン「っははっ!そうッスかね。」
シル「うん…絶対…と言うかもう…。」ボソッ
アラン「え?」
シル「…何でもないっ。」グスッ
何やら大事な事を聞き逃した気がするが…気にしない事にする。
ステラ「……まったく。自覚なしですか。」
サラ「マスターってば…。」ニコッ
アラン「え?……あれ!?サラ今笑った…。」
サラ「……?」スンッ
アラン「シルさん!ステラ!今サラ笑ったよね!?」
シル「……?」
ステラ「え。」
アラン「も〜っ!見てなかったのか〜!?」
前に同じノリをした気がするが、気の所為だろう。そして…。
シル「あ、ダンジョンが…。」
ステラ「消えるようですね。」
周りが真っ白になる。あ、シエロさんとイオも……倒れてるが、あれがチームボルケイノだろうか?まあ、とりあえず全員居る。
イオ「あるじーっ!」ブンブン
シエロ「あれが………ぇ?」ポロッ
何か泣いてる気もするが…もう眩しくて見えない。
アラン「俺これ嫌いなんだよね…。」
目の前が真っ白になった!
〜地上〜
アラン「ぁ…うおっ。えーっと…。よし。全員居るな。」
ココにフリエにサラにステラ…シルさんとシュタール…フェールさん(従魔は消えた。普段は別の空間に入れているらしい。)、チームボルケイノに、あとは…イオにシエロさ…。
アラン「ぐほぁっ!?」
いきなり押し倒される。だが、頭は地面に付く直前に手で支えられた。
シエロ「あ、ぁ…あるじ…さま…?」ポロポロ
アラン「……?何処かでお会いしてましたっけ…?」
シエロ「……ぁ。す、すいません。人違いを…?」ポロポロ
アラン「……?」
シエロ「………!やっぱり…!いえ、すみません!やっぱり人違いではありませんでしたっ!貴方は…貴方はぁ…。」ポロポロ
アラン「……は?」
今、とんでもない爆弾発言が飛び出した。まさか…そんな事が…?
シエロ「ぅぅぅ…。貴方様…。」グスグス
ステラ「………は?ぇ?そ、それは…ほんとうなので…すか?」
シエロ「……あ、ステラ様…。お久しぶりでございます…。」
ステラ「あ…は、はい…。っ!そ、それでっ!本当なのですか!?」
シエロ「はい…このお方は…クレイ様の…勇者クレイ様の…」
転生体…生まれ変わりです。
〜シル視点〜
シル「………は?」
ステラ「あ…、シル…?」
シル「は…?ぇ?それ…ぇ…?本当に…?」
シエロ「私のスキル…霊魂術で確認しました。間違いありません。」
アラン「………ちょっと待て。一旦…一旦整理しよう。ステラ。俺を拾ったのは次元の狭間なんだよな?」
ステラ「はい…次元の狭間で…瀕死の状態で漂っていました。そこから私が…光魔法で連れてきて…そして、私が封印されていたダンジョンの水…あ、あれポーションなのですが…それで回復して、身体を乾かすために、外に出したところで、アラン様が目覚めた感じです。」
シル「……?でも…クレイは…私の目の前で…焼かれて死んだはず…。ぅぅ…。」グスッ
間違いない。彼は…邪神の手によって、焼かれて死んだ。この目で見たのだ。
ステラ「確かに連れてきた時のアラン様にも火傷の跡はありましたが…クレイは全身を焼かれています。傷を負った箇所も、一致しません。」
シル「……でも、シエロの霊魂術は世界一。外した事なんてない。」
シエロは竜族の青竜院…そこに伝わる秘術、霊魂術の名手。霊魂術は魂の色や形、無意識に刻まれた記憶を見て、その人が生前どんな人物だったのか、どんな行いをしていたのかを見れる…占いのような物だ。人によって精度は異なるが、シエロはそれを外した事は無い。
アラン「……ダメだ。情報が足りない。」
ステラ「……そう、ですね。そもそも、普通の人間は次元の狭間には入れません。まずは何故アラン様がそこに居たのかが分からないと…。」
シエロ「……ステラ様。私の拠点…青竜院なら、専用の設備で見れます。彼を…勇者アランを青竜院に…。」
ステラ「そ、それは…。彼の意思で…。」
アラン「いや、俺は過去の事は知っておきたいから…。」
シル「本当に…良いの?」
アラン「え?」
シル「本当に良いの?彼の…いや、あなたの過去を知るって事は、自らの辛い記憶を呼び覚ますって事。次元の狭間であなたが傷を負った状態で漂ってたなら、前の世界での最期も…きっと良い物では無い。それでも…あなたは、自分の過去を知りたい?」
ステラ「……その通りです。あなたの過去は…凄惨で、苦しくて…決して良いとは言えないものです。……主様。いえ、勇者アラン様。引き返すなら今のうちですよ。」
シエロ「………。」
彼は悩んでいるようだ。……少し脅すようになってしまったが、彼の過去が決して良いとは言えない物である事は事実。このまま…彼が忘れたままなら…私も…。
〜アラン視点〜
シル「本当に良いの?彼の…いや、あなたの過去を知るって事は、自らの辛い記憶を呼び覚ますって事。次元の狭間であなたが傷を負った状態で漂ってたなら、前の世界での最期も…きっと良い物では無い。それでも…あなたは、自分の過去を知りたい?」
ステラ「……その通りです。あなたの過去は…凄惨で、苦しくて…決して良いとは言えないものです。……主様。いえ、勇者アラン様。引き返すなら今のうちですよ。」
シエロ「………。」
皆がこちらを見てくる。引き返すなら今のうちか…。確かにそうだ、一度知ってしまったら…戻れない。そんな気がする。だが…。
アラン「皆さんズルいなぁ…。」
シル「……?」
ステラ「主様?」
シエロ「………。」
アラン「俺を…勇者を引き止めたいなら…そんな悲しい顔しちゃダメでしょ。」
シル「………ぁ。」ポロッ
シエロ「……っ。」ポロポロ
ステラ「ぅ……ふぅ…っ。」カタカタ
たぶん…知らなきゃダメだ。取り返しのつかない事になる気がする。それに…勇者がそんな悲しい顔してる人を無視してしまったら、勇者じゃ無くなってしまう。そう、俺は思う。
アラン「いや、ぶっちゃけそんな凄惨な過去なら怖いですよ。でも…俺は…今、自分が勇者じゃ無くなる事の方が怖いです。だから…知りたい。自分が…勇者であるために。」
シエロ「っ…ぅ…ぁっ…わ、分かりました…。ありがとう…ございます。」ポロポロ
シル「……やっぱり、もう、君は…。」グスッ
ステラ「……さすがです。やはり…貴方で良かった。」
アラン「それほどでも…あ、ココが起きた。」
ココ「ん…ぁ〜っ!良く寝たぁ…。って!ダンジョンコアっ!ダンジョンコアは!?……ぇ?」
アラン「や、おはよう。もう全部終わったあとだから休んでて良いよ。」
ココ「ぇ…え?ゆ、勇者様…その足…。」
アラン「………あ。」
フリエ「もう…ココさんうるさいッスよぉ…一体何なんで…は?」
アラン「やっべ…すっかり忘れてた…。」
サラ「………マスター。過去の事の前に…一度今の自分の事を気にされてみては?」ニッコリナデナデ
イオ「サラおねえちゃん…あるじ…あるじのあしがぁ…。」グスグス
サラの顔が怖い。ヤバい。すっかり忘れてた。足どうしよう。
アラン「えーっと…。よし!帰ろうか!」ヒラキナオリ
フェール「おい…。」
アラン「アッ…。」
フェール「お前…。またやったな?」
アラン「いや、あの…今回はほぼ事故なので…。」
フェール「………今回は私にも責任がある。」
アラン「っはい…。」
フェール「だが。帰ったら…話聞くからな?」
アラン「ヒィッ!!」
フェール「返事は?」
アラン「わかりましたぁ!」ピシッ
とりあえず…全員無事に生き残れ…。ステラ「両足欠損は無事ではありませんっ!」……失礼。俺以外は、全員無事に生き残れた。両足は…なんとかなるだろう。うん。
アラン「ふぅ…。ふぁぁ…何か…急に眠くなってきたな…。」
イオ「え!?しんじゃダメっ!あるじっ!」
ステラ「大丈夫ですよイオ。もう寝ても死にません。」
イオ「よかったぁ…。」
フリエ「……すいませんッス。私が…私が起きてれば…。」
ココ「それは皆同じだよ…。」
サラ「はい…。」
……皆落ち込んでいる。無理もない。煙で気絶させられて、目が覚めたらパーティーメンバーの1人の足が両方消し飛んでいたのだから。
アラン「いや、いかにも皆自分のせいですみたいな顔してるけど、そもそも煙が悪いんだよ。なんだあの煙。吸ったら魔力持ってる人全員苦しくなります?チートやチート。」
ステラ「……確かに、あの煙は問題ですね。いい加減対策しなくては…。」
ココ「でも、どうやって?結界貼ってもダメなんでしょ?」
アラン「それは…ふぁぁ…ま、休んでから考えるか…。」
眠い、クソ眠い。何でこんなに眠く………。
アラン「あ…もうげんか…い…。」ガクッ
イオ「あるじ…おつかれさまでした。」ナデナデ
ココ「フフッ。そうだね。いーっぱい頑張ってくれたもんね。」ナデナデ
フリエ「相変わらず…寝顔かわいいっすね…。」ナデナデ
サラ「おぶって行きましょうか。」
シエロ「それなら私が…。」
シル「まずシエロは何か羽織って。」
シエロ「え…?キャッ!」
フェール「気づいて無かったのか…。」
シュタール「天然は相変わらずね。」
何か…暖かい気がするが…疲れた。おやすみ…。