記憶喪失系勇者の旅路   作:一般通過社会人

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前進2

 

〜夜中 寝室〜

 

アラン「ん…?」

 

妙な騒がしさに目が覚める。……アリシアに抱きしめられているからまったく周りの様子が分からない。ココは変わらずに俺の背中のようだが…。

 

ココ「んふ…zzzzz…。」ギュッ

 

よく寝ている。やはり丸薬の効果は抜群のようだ。

 

アラン「っと…よいしょっと…。」スルッ

 

ココとアリシア、イオの抱擁から上手く抜け出して身体を起こす。すると…。

 

シエロ「ふっ…くうっ…ぁぁ…ダメぇ…。」ハァハァ

 

シル「ぁ…嫌ぁ…。」ポロポロ

 

……まさか。

 

アラン「おい。ステラ?」ボソボソ

 

ステラ「……はい。シエロは…あの後、1時間ぐらいしたら部屋に入って来て、シルの後ろで横になったのですが…。」ボソボソ

 

シュタール「しばらくしたら二人ともほぼ同じタイミングで魘され始めたのよね…。」ボソボソ

 

……どういう事だ?シルさんはともかく…妖術が身近にあるであろうシエロさんまで?やはり…俺の過去と関係は無いのか…?

 

アラン「とりあえず…。お~い。お二人とも〜?」ユサユサ

 

ベッドから一旦降りて、端の方で横になっている二人の元へ向かう。

 

シエロ「ぅうう…ハッ!?」ガバッ

 

シル「ぅ…あ?」パチッ

 

アラン「お、大丈夫ですか?魘されてましたけど…。」

 

シエロ「っ!」ギュッ

 

シル「ぁ…アラン…。」ギュッ

 

アラン「おっとっと…。よしよし…。」ナデナデ

 

二人が飛びついてくるので受け止めて頭を撫でる。

 

シエロ「うっ…ふぅっ…。」グスグス

 

シル「うぁぁ…アランっ…。」グスグス

 

これはしばらくかかりそうだ…。アリシア達はもうしばらくは大丈夫そうなので、こっちの二人に専念しよう。

 

〜10分後〜

 

アラン「よしよし…。」ナデナデ

 

シエロ「ぅぅ……う…はい…もう…大丈夫です…。」ブルブル

 

シル「うぅ…グスッ。ふぅ…っ。うん。もう…大丈夫…。」ブルブル

 

まだ少し震えているが…とりあえず落ち着きはしたようだ。

 

アラン「……いったい何が?」

 

シエロ「分かりません…。眠っていたら…主様が…クレイ様が出てきて…。」ブルブル

 

シル「シエロも…?私も…突然…。クレイが…。」ブルブル

 

どうやら、二人が見た夢は殆ど同じ様子。一応、バケツを傍らに置いて、話を聞こう。

 

シエロ「クレイ様が…あの…死ぬ時の…。ぅ…。」

 

シル「ぅぷっ…うぇ…。」

 

アラン「おっとっと…。ほら。バケツ。」

 

シエロ「ぅぇ…うええぇぇぇぇぇ…。」ビチャビチャ

 

シル「うぇぇぇ…うぉぇぇえぇぇぇぇ…。」ビチャビチャ

 

二人とも戻した。……死ぬ時のって事は。

 

ステラ「クレイの…あの…ぅぅ…。」カタカタ

 

シュタール「っ…趣味が悪いわね…。」カタッ

 

どうやら、先代の…勇者クレイの死に様を見てしまったらしい。勇者クレイは…焼死だったはず。それは…こうなるはずだ。

 

シエロ「うぇ…クレイ様が…黒焦げに…私が…守れなかったから…うぁぁ…うぇぇぇ…。」ビチャビチャ

 

シル「ごめんなさい…ごめんなさい…。」ポロポロ

 

……これ以上は思い出させない方が良いだろう。さて…。

 

アラン「とりあえず…二人とも口をゆすいで…。」

 

シエロ「……ぅ。はい…。」トボトボ

 

シル「ぅぁ…あ…ごめん…立てない…。」フラッ

 

アラン「肩貸しますよ。ステラ。皆見といて。」

 

ステラ「了解です…。」

 

廊下に出て、流しを目指す。ここの客室に洗面台は無く、廊下の脇に付けられている物を利用するしかない。

 

シル「ぅぁ…ああ…やっと…やっとアランに会えて…前に…未来に進めるって思ったのに…。」グスッ

 

シエロ「ぅうぅ…。うあぁ…。」グスグス

 

流しに着いた。口をゆすぐ。…やっと立ち直りかけていた所にこれだ。相当ツラいはず。

 

アラン「……大丈夫ですよ。皆で…ゆっくり、乗り越えましょう。今回は…ちょっとタイミングが悪かっただけ。また…美味しいもの食べて、いっぱい笑えば…きっと、乗り越えれる。」

 

シル「っ…うん…そうだよね…乗り越えれる…よねぇ…そうだよねぇ…。」ギュッ

 

シエロ「うあぁ…アラン…様ぁ…。」ギュゥゥゥッ

 

……嫌な夜だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌朝〜

 

結局。あの後ココとイオに場所を変わってもらって、眠りに着いた。……まあ、二人は魘されていて、寝ては起きて、寝ては起きての繰り返しで、あまり寝れていないようだが。

 

アラン「……。」ナデナデ

 

シル「アラン…。」ギュゥゥゥッ

 

シエロ「アラン様ぁ…行かないで…。」ギュゥゥゥッ

 

どうやら内容が変わったらしい。……大方、俺が死ぬ夢か、遠くに行く夢を見ているのだろう。バカバカしい。

 

アリシア「嫌…勇者様…。」ギュゥゥゥッ

 

そう。アリシアも酷くなった。二人がココ達と居場所を交代して…10分もかからない頃だと思う。突然、アリシアが魘され始めた。最近は大丈夫だったのに…それからと言うものの、アリシアも同様に寝ては起きての繰り返しだ。

 

ココ「大丈夫かな…三人とも…。」

 

イオ「おかあさん…おかあさん…。」グスッ

 

フリエ「ほら。こっち来るッスよ。イオちゃん。」ギュッ

 

イオ「うん…。」ギュゥゥゥッ

 

サラ「やはり…何かパターンが…?」

 

サラは薄々勘付いているようだが、この悪夢、規則性が無いようである。シエロさんとシルさんが悪夢を見ている時は、ココ達は見ない。逆に、シエロさん達が見ていない時はココ達が見るのだろう。

 

ステラ「しかし…意図的に作られたパターンにしては、順番が不可解です。消耗させる為にしても、動けなくする為にしても、シエロ達から狙った方が良い。」

 

そこだ。何故、わざわざ弱い方から狙ったのか。ココ達を消耗させても、結局シエロさん達がいたら簡単に逆転してしまう可能性がある。ここの竜族の都での影響力的にも、青竜院の長であるシエロさんを狙った方が良い。

 

アリシア「ぅう…いやっ…嫌ぁぁぁぁぁぁあっ!あ…?あ、勇者様…。」

 

アラン「おはようアリシア。よく寝れては居ないだろうが…朝だ。」

 

それに、アリシアだ。アリシアだけ、このパターンから完全に外れている。これが余計に事態をややこしくする。

 

アリシア「うう…ゆ、勇者様…もう少し…こうさせてもらっても…?」

 

アラン「良いよ。ただし、窒息死だけは勘弁してね。」

 

アリシア「はい…ありがとう…ございます…。」ギュゥゥゥッ

 

アリシアに抱きしめられる。はぁ…こんな状況じゃなきゃ天国何だがなぁ…。

 

アラン「ふむ…。なーんか…気持ち悪いな…。」

 

ステラ「そんな…主様まで…!大丈夫ですか!?」

 

イオ「しっかりっ!あるじっ!」

 

アリシア「勇者様!」グスッ

 

アラン「いや、そう言うことじゃ無くてだね…何か…見落としてる…?みたいな…。」

 

ステラ「あぁ…良かった…。……はい。確かに…。」

 

アリシア「……グスッ。確かに…そうですね…何か…。」

 

フリエ「都の人も同じ症状の人が出てるんスよね?じゃあ…少なくとも、勇者様が直接の原因じゃない訳で…。」

 

アラン「妖術って言ってたが…。何の妖術か分からないんじゃな…。」

 

…まてよ?そもそも…妖術だけなのか…?

 

アラン「……。」

 

ステラ「主様?」

 

イオ「どうしたの?あるじ?」

 

アラン「……なあ、ステラ。」

 

ステラ「何でしょう?」

 

アラン「妖力って…魔力と組み合わせられたりしないか?」

 

ステラ「妖術と魔法は、確かに別の力ではあるのですが…、その、力の源となる妖力と魔力は、非常に混ざりやすいのです。」

 

ココ「それって…水と塩みたいに?」

 

ステラ「そう…ですね。お互いがお互いを受け入れると言いますか…。」

 

アラン「そうか…じゃ、ステラ。導きの力で、魔力を探知してみてくれないか?」

 

ステラ「……今さらですか?」

 

アラン「ただ魔力を探知するんじゃない。闇属性の魔力だけを探知してくれ。どんなカスみたいな魔力でも、逃さないように。……そうだな。ココ。ちょっとこっちに。」

 

ココ「……?うん。」

 

ステラ「ココの…体内ですか?分かりました…。ココのお腹あたりに、私の持ち手部分を…。」

 

アラン「ほい。」

 

ココ「…?」

 

ステラの、鞘に入れている刀身部分がエメラルドグリーンに激しく輝く。…集中しているようだ。

 

ココ「っん…。……ふっ…んぁ…。」ビクッ

 

ステラ「動かないで…。」ピカァ

 

ココ「何か…お腹が…熱い…。」ビクッ

 

フリエ「ひゃぁ…。」カオマッカ

 

アリシア「……///」メソラシ

 

サラ「イオ。見ちゃいけませんよ。」メカクシ

 

イオ「?分かった!」

 

やがて、刀身の光が消えていく。……終わったようだ。

 

ココ「はぁ…はぁ…はぁ…。」ビクンビクン

 

アラン「どうだった?」

 

ステラ「…!探知の結果…。闇属性の魔力を僅かにですが感知しました!」

 

アラン「ビンゴォ!」

 

やっぱりだ。ココ達は以前、闇魔法の煙を吸っている。そして、シエロさんは…言わずもがなだ。

 

アラン「この悪夢の源は…闇魔法だ。闇魔法と、妖術の組み合わせだ。」

 

どうりで周りを探知しても何も無い筈だ。だって、原因は体内にあるんだから。

 

フリエ「……でも、アリシアは?アリシアは別に闇魔法なんてかけられてないはずッスよ?」

 

ステラ「光魔法は、闇魔法を打ち消します。その逆も然りですが…。それでも、打ち消すと言う事は、何かしらの反応が起きていると言う事です。恐らく、アリシアは単純に元々ある光属性の魔力が、皆の体内にある闇属性の魔力と反応。それがトリガーとなって悪夢を見ていたのでしょう。」

 

アリシアは、シエロさん達が悪夢を見始めて約10分後に悪夢を見始めた。逆に言えばそれまでは普通に寝れていたと言う事だ。この説とは矛盾しない。

 

イオ「わぁ…!すごいっ!あるじっ!」ギュッ

 

アラン「と言っても…結局妖術の方を何とかしないと解決しないと思うがな…。」

 

ステラ「そうですね…。恐らく、闇属性の魔力は対象を見分ける為の目印のような物でしょう。魔法を発動させるには少なすぎますし…。魔力を打ち消すにしても本人が気づかないような量です。目印以外の線は薄いでしょう。」

 

フリエ「それでも!一歩解決に向かったのは事実ッスよ!」

 

サラ「そうですよマスター!これで…これで悪夢からの解放に一歩近づきました…!」

 

アリシア「ありがとう…ございます…。」グスッ

 

アラン「ま、確定した訳では無いけどな。セレスさんに相談してみてからだな。」

 

シエロ「ぅあ…あ?あ、アラン様…。」ギュッ

 

シル「あ…アラン…そばに居てくれた…。」ギュゥゥゥッ

 

アラン「どこにも行かないよ。あ、悪夢の件ですけど…。」

 

シエロ「?」

 

〜説明中〜

 

シエロ「なるほど…闇属性の目印ですか…。」

 

シル「盲点だった。妖術だけじゃなかったんだね。」

 

アラン「まだ確定じゃないですけどね。」

 

シエロ「いえ。実は、症状の出ている患者の体内から、微量の闇属性の魔力を検知したと言う報告が上がっています。それでも、魔法を発動するには至らないとの事で見逃されていましたが…。」

 

シル「こっちも、昨日、都で聞き込みしてきた。どうやら、患者は全てダンジョンで、悪魔族を見かけたって話してるみたい。」

 

アラン「うえ…ブリトルのやつ…妖術も使えたのか?」

 

サラ「もしくは…そもそも悪魔族も利用されてたりして。」

 

ステラ「何らかの魔法と共に妖術の術式を刻まれるようにしておけば、悪魔族本人も気づかないまま勝手に術式を刻んでくれるでしょうからね。悪魔族はプライドが高い者が多いので…普通に言っても聞かないでしょうし。」

 

ブリトルの野郎もそうだったが、悪魔族は基本的にプライドが高いらしい。エリート意識のバーゲンセールと言うか…。とりあえず、プライドが高い。

 

シエロ「この情報を今すぐセレスに…。っあ…。」フラッ

 

アラン「おっと。」パシッ

 

イオ「おかあさんっ!」

 

シエロ「んぅ…すみません…思ったより…消耗してしまったみたいで…。」

 

シル「そうだね…かなり…辛い…。」

 

フリエ「私が伝えてくるッスよ。助け合いッス。」

 

サラ「私は…ラズリさんに伝えてきます。それでは仕事は難しいでしょう。」

 

シエロ「っ…ありがとう…ございます…。」グスッ

 

これで一歩近づいた。……こちらも動いてみるか。

 

 

ココ「ふぅっ…はぁぁ…。」ビクン

 

アラン「……あ。ココ忘れてた…。」

 

フリエ「ひどっ!?」

 

うん。まあ…ココ。

 

アラン「ありがとう。」ナデナデ

 

ココ「あ…うん…///」ナデラレ

 

 

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