記憶喪失系勇者の旅路   作:一般通過社会人

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調査 1日目 夜

 

〜冒険者ギルド 医務室〜

 

あれからゴブリンに捕まっていた三人を連れてギルドまで帰って来た。さすがにブランケットを羽織っているとは言え裸の女性を堂々と表口から入らせる訳にはいかないので、裏口からだったが。今は医務室でユーリアさんを診てもらっている。

 

医者「ふむ…問題ないでしょう。普通医者でない方が刺し傷を縫ってポーションで塞ぐと跡が残ってしまうのですが…全く跡が無い。見事な腕前です。勇者様。」

 

アラン「仕事上怪我が多くて…エルフの聖女…アリシア様に教わりました。ま、それ抜きにしても女性の肌ですからね。跡はなるべく残しませんよ。」

 

事実、縫う時は自分の時よりも慎重にした。

 

医者「なるほど…最優の聖女様に…。私も医者としてかれこれ200年近くやってきましたが…全く跡を残さない技術を習得したのは最近です。さすがですな。師匠と弟子…二人とも優秀だとこういう事が起きるのでしょうな。」

 

アラン「いやぁ…それほどでも…。」メソラシ

 

言えねぇ。上手くなるまで自分の腕を犠牲にしたなんて。痛いの嫌だからそれで頑張って上手くなったなんて。口が裂けても言えねぇ。

 

ステラ『主様?反省しましょうね?』ゴゴゴ

 

分かってます。(もうしないとは言わない)

 

医者「?とりあえず…これでユーリアさんの診察は終わりです。お疲れ様でした。」

 

アラン「ありがとうございました。」バタン

 

ユーリアさんを医務室のベッドに置いて退室する。次は…シグネさんだ。

 

アラン「シグネさん。次お願いします。」

 

シグネ「了解した。…あの、今回は本当にありがとう。何か手伝える事があったら…赤竜院に来てくれ。シグネの名前を出してくれれば通してくれる。今日は疲れただろう?ギルドへの説明は私がしておくから…帰って休んでくれ。」

 

アラン「じゃあ…お言葉に甘えて…。お疲れ様でした。お大事に。」

 

シグネ「君も、あまり無茶はしないようにな。」

 

アラン「はは…努力します。」

 

 

 

 

 

 

〜帰り道〜

 

シグネさんに任せて帰る事にした。セレスさん達はそれぞれの組織の上に報告する為に先に帰っている。

 

ステラ「何とか1日目は無事に終われましたね…。」ハァ

 

アラン「まあまだあるけどな…しかし、悪魔族と戦うとなるとやっぱり不安があるな…。」

 

最後の砦は使えば使うだけ消耗するスキルだ。悪魔族と戦うとなると…前回のように栄養失調と疲労でぶっ倒れるだろう。

 

アラン「そうだ…サソリ達の裁判が終わったって言ってたな…。」

 

実は、ドワーフの街を出る直前にエテルさんから連絡があった。

 

ステラ「そうですね。こちらの要求は全面的に通ったようです。と、言っても…隷属の首輪を付けるのが条件になりましたが。」

 

隷属の首輪。実は、このエル・ステラ神聖連邦の前身となった国に、バエル帝国と言う国がある。その国は悪魔族の頂点…魔王バエルによって建国され、他の種族…エルフ、ドワーフ、竜族、神獣族…さらには天使族までも奴隷化し、苛烈な統治政策を敷いた。最後は各種族の反乱によって国が分裂、崩壊し、魔王バエルも討たれて残党がマリス帝国に流れたらしいのだが…。その時代に作られ、今日までマリス帝国、エル・ステラ神聖連邦両国が利用してきたのが…隷属の首輪だ。

 

アラン「あんまり好きじゃないな。奴隷って。」

 

ステラ「この国では重犯罪を犯した者に対する罰でもありますから…。」

 

エル・ステラ神聖連邦の奴隷階級は重犯罪を犯した者に与えられる罰だ。この奴隷階級になってしまえば、決められた年数国に奉仕するか、もしくは…特定の人物に奉仕しなければ抜け出せない。

 

アラン「特定の人物ねぇ…普通は貴族に対して重犯罪を犯した時に使うらしいけど…。」

 

ステラ「主様の場合はケースが特殊ですからね…。」

 

実際、勇者と言う立場は貴族でも平民でも奴隷でもない特殊な…独自の階級だ。その階級に奉仕させる…勇者がほんの一握りしか居ない事を考えてもかなり特殊なケースだ。

 

アラン「ま、無事裁判が終わったんだ…たっぷり利用させてもらうさ。」

 

ステラ「主様?前々から思っていたのですが…彼女達の身柄を受け取ってどうするおつもりで?」

 

アラン「そりゃもちろん…。」グヘヘ

 

ステラ「まさか!?私達を差し置いてあんな事やこんな事を…。主様!何故…何故なのですか!」プンプン

 

アラン「違うよ…全く頭真っピンク神器なんだから…。戦力として運用するんだよ。ちょうど今回みたいな…人手不足な時みたいに。」

 

ステラ「す、すみません…/// な、なるほど…確かに予備の戦力は確保しておくべきですからね…。」

 

アラン「ま、急ぎで送ってもらってるしそろそろ到着すると思うけど…シエロさんには伝えてあるし、調査に間に合うなら誰か1人連れて行くよ。っと、もう青竜院か…。」

 

 

〜青竜院 寝室〜

 

あれから夕食を済ませて部屋に帰ってきた。……帰ってきたのだが。

 

サソリ「あ、主様!この度はお情けをくださりありがとうございます!これから誠心誠意お仕えさせていただきますので、どうぞ私達をボロ雑巾のようにお使い下さい!」ドゲザ

 

クモ「久しぶりね勇者君…ずいぶん逞しくなっちゃって…ウフフ…。」ジュルリ

 

ハチ「……。」ムッスー

 

ココ「勇者様!なんでこいつらが…!説明してっ!」ドンッ

 

フリエ「そうッスよ!いきなり押しかけてきて奴隷なんて…説明してくださいッス!」ガンッ

 

サラ「マスター。貴方の奴隷は私だけでは?説明を。」ゴゴゴ

 

シル、イオ「?」

 

シエロ「あの…皆さん…説明はさっき…。」アワアワ

 

アリシア「とりあえずは…何か飲み物でも…。」アワアワ

 

やべ。やらかした。もうちょっと来るの遅くなるって思ってたからココ達にはまだ説明してなかった。

 

ステラ「ハァ…主様?早めの報連相は大事ですよ?」

 

アラン「えーっと…ごめん。ちょっと…説明してなかったんだけど…。」

 

〜説明中〜

 

ココ「…つまり、勇者様は非常時の戦力としてサソリ達を運用したいって事?……ふーん。」ゴゴゴ

 

フリエ「考え方は理解できるッス。実際私達は動けないッスから。でも…それ以外の時はどうするッスか?まさか…あんな事やこんな事を?勇者様…。」ジトッ

 

アラン「まあそれは…雑用って事で…。」

 

サソリ「いえ主様!主様さえよろしければぜひ!性奴…。」

 

アラン「アンタはだーっとれい!」

 

それ以上はいけない。

 

クモ「でも勇者君?今回の奴隷の罰…特定の人物に奉仕は、殆どの貴族がソウイウコト目的で使うそうよ?なら…。」ジトォ

 

サラ「マスターの性奴…いえ。奴隷なら私で間に合ってる。マスター。今すぐここで致して証明しましょう。」ギロ

 

アラン「致さないよ!?っ!おいハチ!お前の家族だろ!?何とかしてくれ…。」

 

ハチ「死ねっ!」ハクシン

 

イオ「あ?あるじ。コイツコロすね。」ブワッ

 

アラン「待て落ち着け餅つけイオ。確かにロリ枠は被ってるが…お前の立場が脅かされる事は無い。お前は唯一無二だ。」

 

やべぇよやべぇよ…これは無限喧嘩編か…?

 

 

 

 

 

 

 

 

           ドォン!

 

 

 

 

 

 

 

 

シエロ「おい…。

 

アラン「ヒィッ!?」

 

皆「え…!?」

 

シエロさんが机を叩き割った。怒らせたようだ。

 

シエロ「お前ら…いい加減にしろよ?今何時だと思ってんだ?あ?

 

皆「夜の…10時です…。」

 

シエロ「だよな?そんな時間に大声出しやがって…クレーム対応するの私達だからな?

 

皆「いつもお世話になっております…。」

 

シエロ「分かってんなら良い。もうちょっとボリューム下げて喧嘩しろ。良いな?

 

皆「はい…。」ショボン

 

シエロ「アラン様?これからはこういう事が無いようにお願いしますね?」ニッコリ

 

アラン「イェスマム!」ピシッ

 

シエロ「そんなお母さんだなんて…悪くないですね…///」

 

アラン「はは…。」

 

シエロさんのガチギレ…ヤバかった。

 

アラン「えーっと…じゃあ…うん。これからよろしく…。」

 

サソリ「は、はい…。」

 

クモ「ウフフ…。」ペロッ

 

ハチ「フン!」プイッ

 

アラン「ご飯は…。」

 

クモ「もういただいています。本来は奴隷のご飯なんてパン1個だけ何だけど…。」

 

サソリ「あんな豪華な食事を…ありがとうございます。」ドゲザ

 

アラン「まあ…俺勇者だし…あんまり酷い扱いすると周りの視線がアレだから…。」

 

ハチ「…やっぱり変わってるよ。お前。」

 

サソリ「おいっ!主に向かってお前なんて…。」

 

ハチ「お前の事。認めた訳じゃないから。」

 

アラン「…分かってるよ。」

 

ハチは…まあ酷い事言っちゃったし…。うん。これからだな。

 

アラン「えーっと…とりあえず…明日着るもの買いに行こうか。」

 

夕食時にセレスさんに会ったのだが、囚われていた三人の事実確認と諸々の手続き、あとはあの遺体の回収の為にギルドから調査を一旦ストップして欲しいと言う通達があったそうだ。と、言っても1日程度だが。

 

ココ「あれ?調査は?」

 

アラン「なーんかキナ臭い事になっててな…3人ほどゴブリンに囚われてた。まあ…そして…2人ほど犠牲になってしまった。その事実確認と遺体の回収の為に明日1日ストップだってさ。」

 

ココ「……。」

 

ココはゴブリンの被害者だ。色々と思う所があるのだろう。サソリ達も…。

 

サソリ「……すみません。」

 

クモ「ごめんなさい。」

 

ハチ「……ごめんなさい。」

 

未だに溝は深い。これから埋めていく必要がある。

 

アリシア「と、とりあえず!明日は服を買いに行くんですよね!早く寝ましょう!ね?」

 

フリエ「そうッスね!寝不足はいけないッス!じゃ、ベッドに…。」

 

サラ「…ところでマスター。サソリ達は何処で寝るのですか?」

 

サソリ「え?床ではないのですか…?」

 

アラン「あ…。どうしよ。」

 

忘れてた。床は俺の立場的にマズい。…同じベッドか?いや…。

 

アラン「じゃ、俺ソファーで寝るから…。」

 

クモ「は?主をソファーで寝かせて自分達はベッドで寝る奴隷なんて居ないわよ。いい加減な事言ってると…縛るわよ。」ギロッ

 

アラン「サーセン。えぇ…じゃあ…どうすれば…。」

 

ハチ「……一緒のベッドで良いよ。」

 

アラン「あーそう一緒のベッド…え?ハチさん!?」

 

驚いた。ハチからそんな言葉が出るとは。

 

ハチ「お前が酷い事しないのは分かってる。だから…良いよ。」

 

アラン「…分かった。ありがとう。」

 

ハチ「……ふん///」プイッ

 

今夜は皆一緒のベッドで寝た。…サソリとハチは静かだったのだが、クモはかなり寝相が悪かった。もう絶対近くで寝ない。(守れぬ誓い)

 

 





バエル帝国はこれからちょくちょく出てきます。
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