ウチの勇者君は敵を消す為なら割とえげつない手段も使います。もはやありきたりとはかけ離れてるな(今更感)
〜地下水路第2階層〜
アラン「臭っ。」
ステラ「まあ…下水を流していますからね…。」
臭い。鼻が曲がりそうだ…。
シグネ「はあ…。」
ホン「だから嫌なんだよね…。」
ルイユ「皆こういう調査はやりたがりませんから…赤竜院から派遣されたのも私達最弱の第七部隊だけですしね…。」
…どうやらシグネさん達の赤竜院での立場はあまりよろしく無いらしい。自ら最弱と言ってしまうぐらいには。
サソリ「それにしても…何か嫌な空気が漂っています。」
ハチ「同意。な〜んか…空気が淀んでる…?」
クモ「……若干空気に闇属性の魔力が混じっているわね。」
ステラ「…本当ですね。しかも…かなり新しい物です。」
アラン「じゃ、ここの何処かに悪魔族が居るのは間違い無さそうだな。」
サソリ「悪魔族…。やはりですか…。」
シグネ「ここは入り組んでいるからな、何処から来るのか分からないぞ。」
ホン「常に周囲を警戒しないとね。」
…今回の調査は長くなりそうだ。
〜アリシア視点〜
アリシア「……。」サッサッ
箒で落ち葉を掃く。青竜院の機能がストップしている以上、掃除ぐらいしかやる事が無い。
アリシア「……はぁ。」サッサッ
思わずため息が出てしまう。寝不足なので寝たい所だが…寝たら悪夢を見てしまう。
アリシア「っ。」ブルッ
悪夢を思い出してしまい、背中に寒気が走る。夢で見るあの光景…別の世界とは言え、あんな凄惨な戦場があったとは…。
アリシア「……ぅえ。」
やめよう。吐き気が襲ってきた。ただですら食べれていないのに…。
アリシア「もう…少し。もう少しで…。」
……でも、勇者様。貴方はアレを見てしまったとき…壊れてしまわないでしょうか?貴方は自らの過去を知りたいと言っていましたが…私は、どうしても、どうしてもその判断が正しいとは思えないのです……。
アリシア「勇者様…。」
〜アラン視点〜
ゴブリン「ゲギャア!」
アラン「……。」スッ
ゴブリン「が…。」パッカン
ゴブリンが次々と襲ってくる。まあ、今更手こずる相手でもないので切り捨てているが。
シグネ「……アラン?」
アラン「はい?」
シグネ「いや、その…そう淡々と切り捨てられると怖いんだが…。」
クモ「本当よ勇者君。どうかした?」ガンッ
クモが魔杖でゴブリンを撲殺する。……いや質問しながら殺るのも大概だと思うが…。
アラン「いや?何でも無いですよ。ちょっと集中しすぎただけです。」
ハチ「…本当に?」
アラン「……うん?」
ルイユ「なぜ疑問形なのですか…怪しいですね。」
サソリ「主様?本当に何も無いんですか?」
ハチ「おら。ちゃっちゃと吐いちゃえよ。」ドスッ
ハチがナイフでゴブリンを突きながら言ってくる。
アラン「なあ…クモ?」
クモ「なーに?」ゴンッ
アラン「召喚魔法で呼び出せる魔物って1、2種類だけ?」
クモ「いえ?私の時は魔力的なコスパが良いからゴブリンとハイスパイダーだけだったけど、別に魔力さえ用意できるならドラゴンでも召喚できるわよ?……ってああ。そう言う事ね。」
ホン「え?なになに?」
アラン「何かゴブリンばっかりだなって。自然発生にしては数が多いし、召喚魔法の制約的なアレなのかなって思ってたけど…違うみたいだしね。別に数で圧殺するつもりならゴブリンじゃなくてもフォレストウルフとかマグマスライムとかで良いと思ったんだ。」
サソリ「確かに…別にゴブリンに拘らなくても普通にスライム程度なら魔力的な消費も変わりませんし…。」
何でゴブリンだけなのか。魔力的な事情で無いなら、特に理由は無いはず。単に適当なだけなのか…?
ハチ「ゴブリンばっかりで油断してる所を後ろから…。いや、それだとスライムの方が良いか。」
サソリ「ゴブリン達に何か細工が…いや、だったらダンジョンの調査の時にやられているはず。」
ステラ「恐らく、ゴブリンの他に脅威となる魔物が後に控えて居るのでしょう。」
クモ「まあ…悪魔族は魔力量が多いのが普通ね。消耗戦ならあちらが有利よ。」
いくらこちらが転移装置でいつでも休憩できると言っても、それはあちらも同じ。俺達が帰ってしまえば魔力を回復する時間を与えるだけだ。そして…広がったウイルスは今は何とか抑えられているものの、それもいつか限界が来る。つまり、結局はあちらが有利になるという事だ。
アラン「治療薬も進まないだろうしなぁ…何とか悪魔族の元に最速で行ける方法は無いものか…。」
ステラ「一応悪魔族の魔力反応は探知出来ていますが…。」
シグネ「この長さと複雑さではな…。」
ダンジョンよりも更に複雑な地下水路。せっかく探知できても直線距離で、最短で行ける訳でもない。
アラン「ふむ……あ。」
ステラ「おや?主様。何か思いついたみたいですね。」
アラン「でも…うーんこれは…。」
ハチ「一応言ってみろよ。」
アラン「サソリ。あの煙って使える?」
サソリ「なるほど…!しかし、悪魔族に効くようにするには準備が必要ですね…。」
ステラ「それに…流した後が問題です。主様以外の人物は探索不可能になってしまいます。」
アラン「タイマンか…。」
サソリ「いえ。リスクはありますが、一応対応策は用意してあります。」
アラン「ふーん…………え?」
ステラ「何か…あっさり解決しましたね。」
せっかくアリシアに加入して貰ったのに…出番が無いまま解決してしまった…。
シグネ「じゃあ…一回帰るか。」
アラン「そうですね。」
とりあえず今日は帰る事になった。
????視点
????「あれ?帰っちゃった。」
???「あ?まいったな…。プレイグのジジイから導きの勇者だけは確実に殺れって言われてるんだが…。おい。ニューモ?」
ニューモ「何?」
???「導きの勇者にウイルスは効かなかったんだよな?」
ニューモ「そうだね。夢は見かけたみたいだけど…免疫が強すぎて悪夢って呼べる内容を見る前にウイルスが死滅しちゃった。」
???「チッ。バケモンかよ。ブリトルのバカもアイツの作戦に乗せられて殺られたみたいだしよ…何か企んでやがるな?」
ニューモ「でも、どうするの?付近のダンジョンは閉鎖されてるし、他に隠れられそうな場所は無いよ?」
???「わーってるよ。どのみちここで粘って本国からの迎えを待つしかねえ。俺が空間転移を使えれば良かったんだが…。」
ニューモ「しょうがないよ。無いものねだりしても。まあ…相手のアクション待ちかなぁ…。」
???「ッチ。さすがに竜族と正面から殺り合うわけにもいかねえからな。まあ…これで導きの勇者…アランだったか?を孤立させて2対1に持ち込めれば…まだ勝機はある。」
ニューモ「ま、私とアズマなら大丈夫だよ。同年代じゃ負け無しだったしね。」
アズマ「油断すんなアホ。そう言ってブリトルのバカも殺られたんだろうが。……まあ、アレだ。臨機応変って奴で行くしかねぇな。」
アズマはこう言って聞かないが…所詮は魔力も持たない人族だ。大丈夫だろう。
〜青竜院 研究室〜
サソリ「もうちょっとで…動かないで下さいね…。」ブワッ
シエロ「ふっ…ぅ…んぅ…。」ハァハァ
…何やら文的にいやらしいが、決してサソリがレ◯に目覚めた訳では無い。
クモ「……////」
ハチ「…ハァ。相変わらず乙女だよね〜クモって。」
クモ「し、しょうがないでしょう!?だいたい何で貴方達は男性経験も無いのにそんな平然としていられるのよ!?」
意外…でも無いか。エルフ族は女しか居ないし…。里にもそういう店は無い。ましてやクモ達は迫害されていたのだ。
ハチ「でも、時々我慢できなくなってたら姉妹でシてたじゃん。」
クモ「バッ…おほほほ。勇者君?何でも無いのよ?」
アラン「クモ✕ハチか…?いや、ハチ✕クモと言う可能性もあるな…サソリはどっちだ…?」ウーン
ハチ「ハチ✕クモだよ。」
アラン「!?ハチさんマジすか!?」
ハチ「マジもマジ。大マジ。クモ意外と受けだから…今度見せてあげ…っと!?」ビュン
クモが魔杖を振り下ろした。くっそもうちょっとだったのに。
クモ「見せるわけ無いでしょっ!?////」カオマッカ
サソリ「あの…集中させてくれ…////」カオマッカ
シエロ「ハァ…ハァ…まだ…ですかぁ…////」カオマッカ
…何やら地獄絵図が出来てしまった。
ステラ「はぁ…変わりましょう。」フワッ
サソリ「…お願いします。」
ステラがシエロさんのお腹辺りに持ち手を当てて探知を始めた。さっきから何を調べているかと言うと、ブリトルがシエロさんにかけていた支配魔法……の、魔力の残滓だ。それを元に悪魔族にも効く煙を新しく作るらしい。(煙も開発された時は悪魔族にも効いていたらしいが…直ぐに克服されたようだ。)
ハチ「うーん。時間かかりそうだね。」
サソリ「ああ。支配魔法は大量の魔力を使うから体内に魔力が残りやすいんだが…。それでも1週間以上前の魔法だからな…。」
アラン「単純に残っている量が少ないか…。」
クモ「そうね…。」
まあ、仕方ない。ステラでもあそこまで近づかないと感知できないような量だ。時間もかかるだろう。
アラン「…シエロさんの名誉の為にも俺は部屋に戻ってるよ。」
クモ「………うん。その方が良いわね。」チラッ
シエロ「あっ…!ステラ様…そこは………ッ!〜ぅ!」ビックン
ステラ「ちょっ…主様も居るんですよ!?少しは抑えて…!」
ハチ「あ〜あ…アラン、今夜は慰めてあげたほうがいいよ。」
アラン「えぇ…あの人一応人妻なんだけど…。」
クモ「貴方がクレイの転生体である以上、貴方の妻でもあるわよ。」
……はぁ。責任重大だなぁ…。
アラン「……ま、とりあえず戻ってるよ。」
サソリ「お疲れ様でした。」
バタン。研究室の扉を閉めた。
〜寝室〜
アラン「戻りましたぁ…。」
ココ「あ、勇者様…。シエロさんはどう?」
アラン「ちょっと健全な年頃の男が見るにはツラい光景になってたから避難してきた。」
ココ「ああ…アレスゴいからね…////」
さすが経験者。説得力がスゴい。
フリエ「私もアレは勘弁ッスね…。」
アラン「まあでも…煙が完成すれば打倒悪魔族も夢じゃない。」
ココ「でも…いくらサソリ達も居るとはいえ、本当に大丈夫?」
フリエ「そうッスよ。サソリ達の対策も時間制限があるんでしょ?なら本当に勇者様1人で悪魔族を対処するハメになりかねないッス。」
アラン「とは言っても急がなきゃ犠牲者が出かねないぞ。冒険者で感染した人も、そろそろキツくなってるって話だ。」
ココ達の限界が近いのも事実だが、冒険者で感染した人の限界も近づいている。ウイルスはどうやら竜族に感染した時のみ、悪夢と追加で吐血もするようだ。
フリエ「シエロさんとイオちゃんは体温が低くてそこまでウイルスが活発に動けないから重症化はしないって言ってたッスけど…。」
アラン「それもあくまで推測の話。確証があるわけでもない。」
ココ「そうなんだよね…。」
フリエ「結局…また…勇者様にだけ無茶させてるッス…。」
アラン「そんな落ち込むなよフリエ。運が無かっただけだ。」
フリエ「でも…どんどん勇者様が遠くに行っちゃうみたいで…怖いッスよ…。」グスッ
ココ「私も正直…怖いけど。でも、私は…勇者様が無事ならそれで…。」グスッ
アラン「これだけは言っておくけど。」
フリエ「……?」グスッ
ココ「何…?」グスッ
アラン「俺は…誰も置いて行くつもりはない。いや、あれだけ死にかけておいて何言ってんだコイツって話だが…。それでも、俺はまだ死ぬつもりは無いし、実力の面でも…皆で強くなりたいって思ってる。安心しろとは言わないけど…それは覚えておいてほしい。」
フリエ「……!うん…うん…!ありがとう…勇者様…!」ギュッ
ココ「……大好き。大好き…だよぉ…!」ギュッ
気づいていた。フリエが…シエロさんの救出作戦が終わった時から、浮かない顔をしている事を。フリエの気持ちはよく分かる。俺も最初はそうだった。いきなりこの世界に…自分の事もよく分からないのに、連れてこられて…周りは100年なんか余裕で生きてるスゴい人ばかり。当然そんな環境では焦る。焦ってもっと強くならなきゃと無茶をしまくる。でも…それで怪我をしては周りを心配させるだけだ。
アラン「分かってる…怖いんだよな。置いていかれるのが、周りとの差が。でも…それで無茶して怪我されても俺も…皆も悲しいからさ。だから…一緒に強くなろうな。」ナデナデ
フリエ「はぃ…!うぁ…怖かった…怖かったよぉ……!」グスグス
ココ「ありがとう…。」ギュゥゥゥッ
…ステラも言っていた。1人の英雄では世界を救えないと。なら…英雄と呼ばれる人を増やせば良い。互いが互いをバックアップできるチームができれば…いつか世界も救える。
アラン「その為に…俺は悪魔族を…。」
いつまでも此処で足踏みはしていられない。全力で…目の前の壁を超えるだけだ。