銀英伝で波動砲を撃ちたいTS科学者   作:ヤキブタアゴニスト

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感想欄に所々頭リリーナになっている方が....








クロプシュトック討伐軍

帝国暦486年4月、メルゲントハイム伯爵領 首都惑星トワングステ side: リリーナ

 

ブラウンシュバイク公爵の邸宅での爆破テロはその首謀者がクロプシュトック候だと分かると新たな局面を迎えていた。もともとは皇帝フリードリヒ四世が参加予定だったということもあり、事は大きくなる一方だった。

爆弾テロの直後に領地に戻っていたクロプシュトック候は大逆罪の未遂犯として爵位を剥奪され、正規軍と貴族の私兵を混成した討伐軍が派遣されることになったのだ。

 

討伐軍の総大将には被害を受けたブラウンシュバイク公がつくと、討伐軍への参加を貴族社会にも呼びかけることになる。そしてブラウンシュバイク公は、怒りと復讐心を込めた強烈な檄文を貴族社会全域にばらまいた。

 

「大逆無道の逆臣クロプシュトックから、名誉も土地も財産も、その命すらも、余すことなく奪いつくせ!」

 

檄文はたちまち伝播し、帝国貴族が続々と討伐軍へ参加することになる。それは、復讐のみならず、クロプシュトック候の持つ膨大な利権と領土、財産によるものも大きかった。

 

そして、リリーナもその刺激を強烈に受けた一人だった。

爆発に巻き込まれたリリーナにとって、クロプシュトックはまさしく敵であるというのはもちろんのこと。しかし、そんなことより、クロプシュトック候領の名はリリーナの欲望を刺激するものだった。以前ひそかに行っていた星系調査の結果を呼び出して確認すると、リリーナはクロプシュトック討伐軍への参加を決めたのだった。

 

 

そうして、参加を決意したリリーナは直ちにブラウンシュバイク公に参加の意思を表明した。

 

「おおっ、ヴァンフリート星域で名を挙げた新鋭艦とあれば心強い。共にあの下劣卑劣なるクロプシュトックの賊徒どもを、灰燼に帰してくれようぞ!」

 

心中がどうであれ、ブラウンシュバイク公は少なくとも表面上は快くリリーナの参加を認めることとなった。

リリーナとしてはクロプシュトックについては大した感情を持ってはいなかった。むしろ、テロを許したブラウンシュバイクへの軽蔑の方が大きかったかもしれない。しかし、この討伐軍へ参加できたことを心からうれしく思っているのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからのリリーナの動きは、まさに電光石火であった。帝都オーディンを離れるや否や、リリーナは一路、自らの領地メルゲントハイムへと向かう。首都惑星トワングステへの到着後、休む間もなく各部署へ命令が飛ばされた。

 

就役したばかりの艦艇群、そして数隻の特殊艦。さらに領内に分散していた工作艦と輸送艦をかき集め、戦時即応体制の大規模艦隊を編成したのである。

 

 

「とにかくありったけの輸送艦を回しなさい!!商人から徴発してもよいわ!!遅れた分は第三陣以降として随時送り込むこと!!!これはチャンスなのよ!!」

 

誰もが、リリーナの目に宿る鋭い光を見逃さなかった。

 

「ひっ、姫様。輸送艦の方をですか?クロプシュトック候を討ちに行かれるのでは?」

 

 

リリーナとしてはこの戦役は降って湧いた絶好の機会であった。彼女の頭の中には、三つの計算があった。

一つ、就役したばかりの新型の中性子衝撃砲搭載艦の実戦データ取得。

二つ、見込まれる戦勝による領民にくすぶり始めた不満へのガス抜き。

そして三つ目、その目的が何であるかは、リリーナは誰にも語らなかったが、リリーナにとっては最も重要な一点であった。

 

 

 

「説明は後よ!!とにかく急がせなさい!!」

 

 

リリーナが主要な戦闘艦を集めてメルゲントハイムを発ったのは、帰還からわずか三日後のことである。

 

 

 

第一陣は戦艦七百隻を基幹とする戦闘部隊であり、側翼を駆逐艦と砲艦、各六百隻が固めていた。戦艦はすべて、新造された八門の中性子衝撃砲を装備した最新鋭艦。駆逐艦と砲艦も、規模こそ異なれど同様に中性子衝撃砲を搭載していた。

 

続く第二陣はやや性質が異なる。百隻の駆逐艦を除けば、残るは膨大な数の輸送艦と工作艦。戦闘以外に特化した支援艦隊である。そして、その中心にはひときわ異彩を放つ艦、巨大な球体構造を持つ特殊艦が随行していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国暦486年4月、フルギタ星系 惑星ホルフバーデン

 

惑星ホルフバーデン、クロプシュトック候領からほど近いこの保養惑星には、今や平和の面影はほとんど残されていなかった。

 

討伐軍に参加した帝国貴族たちの艦隊が続々と集結し、かつて観光客で賑わったリゾート地は、戦争のための前線基地へと変貌していた。

各地から集められた物資が集積所に積み上げられ、宇宙港では輸送艦がひっきりなしに離着陸を繰り返す。そして、軌道上では三万隻を超える艦艇群が、静かに威容を誇っていた。

 

 

「ははは、クロプシュトックめ、本星に立て篭もる気らしい」

 

艦橋に立つブラウンシュバイク公は、満足げに頷いた。クロプシュトック艦隊が出撃してくる気配がないと見るや、ブラウンシュバイク公はますます自信を深めていた。

 

その背後で、まだ若い声が上がる。

 

「伯父上、一丸となって本星を目指すのが最善では?この大艦隊なら一気呵成に攻めこんで、決戦で打ち破ることも可能でしょう!!」

 

声の主は、ブラウンシュバイク公の甥であるフレーゲル男爵。血気に燃える若者である。

 

 

「周囲の星系を無視するわけにもいくまい。クロプシュトックの領土は広大だ。そして豊かでもある。本星を落とすにしても、周囲の拠点を潰さねば逃げられかねんからな」

 

実際、クロプシュトック侯領は複数の有人星系と、採掘・工業・軍事の拠点を含む十数の恒星系にまたがっていた。その中核である首都星系を攻略するには、背後を突かれないためにもいくつかの星系を制圧しなければならない。それに、貴族たちにとって美味しい星系は本星だけではなかった。

 

そうして三つの進軍ルートが示される。

 

向かって左を進むルートには、クロプシュトック候領の中でもとりわけ豊かな穀倉星系群が多い。広大な農業惑星群は食糧生産に長け、略奪に適した都市インフラも整っており、門閥貴族たちにとってはまさに「合法的略奪」の好機と映っていた。

中央を進めば伝統的なクロプシュトックの中心地であり、本星へ圧力をかけることができる。なにより、経済的に繁栄した交易ルートが通っており、それが貴族たちの興味をさそう。

対照的に、右は資源の乏しい辺境星系を進軍しながら、鉱業施設や戦略拠点の制圧を担当する。このルートに必要なのは地味な拠点制圧であり、有人星系が無いため華々しい略奪の機会もほとんどない。そのうえ、中央のルートから大きく外れるために連携がとりにくく、各個撃破される恐れがあった。

 

案の定左と中央に貴族が殺到するも右翼方面だけは最後まで手が挙がらない。

静寂が落ちるその場で、ようやく一人、手を挙げたのはリリーナだった。

 

「右翼方面、私のメルゲントハイム艦隊に任せてもらえないかしら」

 

一瞬、空気が止まる。しかし、そこに集った門閥貴族たちの損得の天秤が傾くまでに時間はかからなかった。

 

「おお、それは心強い」

 

誰かが調子よく相槌を打つ。

 

「それはいい」

 

また別の者が追従する。そこには自分が負け組の右翼を担当しなくてよかったという安堵が透けて見えていた。

 

 

「うむ。ではメルゲントハイム伯に右を任せよう」

 

そうして、右翼方面の任は、何の異議もなく彼女に決まりかけていた。

 

 

「ブラウンシュバイク公、お待ちください」

 

発言したのは、一人の若い帝国軍士官であり、階級章は彼が少将であることを示していた。

場の空気を読めば沈黙すべき場面で、あえて声を上げたその姿勢には軍人としての責任感がにじんでいた。

 

「メルゲントハイム艦隊はわずか二千隻。クロプシュトック艦隊は最低でも五千隻。これでは各個撃破の恐れがあります。ここは」

 

しかし、貴族たちの総意を覆すような進言をこの公爵が聞き入れるはずもない。

 

「うるさい。もう決まったことなのだ」

 

ブラウンシュバイク公の声が重く場を圧した。

 

「戦力差が気になるというのなら、貴様が行け。右翼軍の戦闘技術顧問として同行し、万全を期すがよい」

 

もっとも、ブラウンシュバイク公にもそうせざるを得ない理由があった。討伐軍に参加する多くの貴族にとって、この戦いは必死になって戦いたいものではない。ただ楽に略奪できるから従っているだけだった。

仮に、無理に右ルートに割り当てたとしたら、それを不服としてブラウンシュバイク公の指揮下を離れかねなかった。本星に到達する前に帰還されては困る。それがこの無茶苦茶な配置を是とする空気を生み出していた。

 






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