銀英伝で波動砲を撃ちたいTS科学者   作:ヤキブタアゴニスト

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そろそろ章分けを考えようかなぁ.....



感想楽しく読んでいます。推薦も誠に感謝です!!!!





衛星を砕く者

帝国暦486年4月、クロプシュトック候領 シルトシュテルン星系 side: 惑星ペルスフェルト

 

 

敵に使用されることを避けるため、数少ない無事だった宇宙港を砲撃で破壊した後、全艦隊を率いてリリーナは惑星ペルスフェルトを後にした。

 

リリーナは悩んでいた。それは、状況を打開するための秘策を得るための悩みではなく、むしろ証明の道筋が見えた定理をどうきれいに証明するかを考えるのに似ていた。

 

しかし、そんなリリーナにある妙案が浮かぶ。

 

「ミッターマイヤー少将を呼んで頂戴」

 

 

リリーナの視線は静かだったが、その内奥にある温度は低くはなかった。

 

リリーナは艦隊の指揮にさしたる興味はない。艦隊戦闘の合理性よりも艦艇の性能向上とシステムの高度化を追求したいリリーナにとって、新鋭艦艇の一通りの戦闘が済めば次からそれは面倒な作業になり下がった。

そして、この艦隊にはそれを任すのに十分な相手がいる。リリーナにはそれで十分だった。

それに、リリーナにとってはクロプシュトック候が逃げ回って艦隊の手があかないことが最悪のシナリオだった。敵を逃がすことがないだろうという点で、ミッターマイヤーは最適な人選であっただろう。

 

「ミッターマイヤー少将。この先の本星攻略、あなたに任せるわ」

 

リリーナは、静かに、しかし断固として告げた。

 

「三百隻を除いて、残りの艦隊すべてを――あなたが好きに使って構わないわ」

 

「はっ……!?」

 

一瞬、言葉を失うミッターマイヤー。それは命令として、あまりにも大きな裁量であり、同時に明確な信頼の表れでもあった。

だが、リリーナにとっては、それはあくまで、役目を終えたおもちゃの片付けを押しつける程度の、冷静で実利的な判断にすぎなかった。

それでもミッターマイヤーは、わずかな逡巡も見せずに、姿勢を正して敬礼したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国暦486年4月、 クロプシュトック首都星系 首都星クローネンブルク side:クロプシュトック艦隊

 

 

「敵艦隊、前面宙域に集結。推定二千隻──確認しました!アイルシュトック・シルトシュテルン両星系で遭遇した新鋭戦艦かと思われます」

 

報告と同時に、戦術スクリーン上に赤い光点が密集する。クロプシュトック侯爵が各地からかき集めた艦艇群はミッターマイヤーの迅速な艦隊運動によって星系からの脱出を封じられ、ついに首都星クローネンブルクの正面にまで追い詰められていた。

数の上ではなおもクロプシュトック艦隊が勝っていたが、ミッターマイヤーに率いられた新鋭艦艇と寄せ集めの艦隊では比べるまでもない。

 

第四惑星の軌道を通過しながら、ミッターマイヤー艦隊は緻密な陣形で接近を続ける。中央には戦艦を、左右には駆逐艦と砲艦中心の快速部隊を配置し、圧倒的な速度と機動力で敵陣の懐を衝く準備を整えていた。

 

クロプシュトック側の艦隊はメルゲントハイム艦隊の長射程を警戒し、艦隊を広く散開させる。極端に広がったその陣形は命中率の低下を意図した急造の作戦だった。

 

そして、ミッターマイヤー率いる艦隊が接近し、まさに開戦の時を迎えようとした、その刹那。

 

敵の背後の宙域が、まばゆい白に染まった。

 

「な……っ!」

 

スクリーンが白で埋め尽くされる。

太陽かと思わせる閃光が迸り、指揮所に警報が轟いた。光の奔流。それはまるで、神の怒りが直線となって宇宙を穿ったかのようだった。

 

「背後から高出力熱線! いえ、違います、強力な電磁パルスとイオン乱流を伴っています! 通信網、センサー一部使用不能……全ての帯域で通信障害が発生!」

 

オペレーターの報告は悲鳴と化す。

 

クロプシュトック側が足を止めて状況の把握に動く中、艦隊指揮所のスクリーンにはこちらに向けて突撃してくるミッターマイヤー艦隊の姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国暦486年4月、クロプシュトック首都星系 第四惑星宙域 side: リリーナ

 

 

 

「さあ、始めるわよ!」

 

リリーナがつぶやいたその瞬間、宇宙に新たな審判が下されようとしていた。

 

リリーナの目的は、首都星の0.7AU外側を公転するガスでできた巨大な第四惑星──その周囲を回る直径1200kmの衛星だった。

 

この衛星は、表面こそケイ酸塩の岩石で覆われていたが、その下には異常なほど巨大な金属核が存在していた。観測によれば、この核は衛星全体の質量の95%以上を占め、高密度の鉄・ニッケル合金に加え、通常の衛星ではほとんど見られないような重ランタノイドやトランスウラン元素が含まれていた。

 

「地殻が薄くて核が大きい、改めて見ても理想的すぎるわ。これほどの天体、そうそうないわね」

 

かつて、直径100km程度の小惑星を爆破・解体して金属資源を回収していたリリーナにとって、この衛星はまさに“神の残した鉱山”だった。

天体の分化が進むほど巨大でありながら、岩石層はたったの数十kmしかない。その下にある濃縮された金属核は、技術さえあれば一気に剥き出しにできる。

 

 

 

ただし問題もあった。

たとえケイ酸塩の層が薄くても、採掘には長い時間がかかる。それに、その下の金属層も内部ほど重金属元素が多いため、効率を上げるにはより深く掘り進める必要があった。他人の領地でそのような悠長な採掘は現実的ではなかった。

 

だが、リリーナにはその常識は通じなかった。

 

「こんなこともあろうかと――この”きれいな炭素爆弾”を用意しておいたのよ!」

 

スクリーンに映し出されたのは、直径3kmに迫る漆黒の球形艦艇だった。

その構造の大部分は、極限状態に圧縮された高純度炭素であり、その外殻には幾千にも及ぶきれいな水爆、すなわち純粋水素爆弾が取り巻いていた。指向性を持たせつつ高度に制御した純粋水爆の安定性によって、以前の炭素爆弾と比較しても安全性の向上とエネルギー変換効率の向上を達成していた。

 

設計思想はただひとつ──「艦ごと暴走核融合させる」。

 

数千基の水爆が内側へと爆縮し、中心の炭素核を臨界点にまで圧縮。核融合反応を暴走させ、一瞬にして艦全体を恒星に匹敵する火球として爆発させる。

わずか10秒間なれど太陽の数倍に達するエネルギーを放出し、それはこの衛星の全重力エネルギーをも凌駕する。もっとも、全エネルギーが伝達されるわけではない。衛星の解体のためには更なる工夫が必要だった。

 

「一発目で岩石層を吹き飛ばし、二発目で核を砕く。完璧な二段破砕計画よ」

 

第四惑星の陰に入りながらリリーナは準備完了の合図を待つ。

球形艦艇から脱出したシャトルを収容したリリーナはいよいよ爆破へ向けた最終調整に移る。

 

「高度15km、爆破地点に到達」

 

「純粋水爆群、起爆準備完了」

 

その声を聞いたリリーナは大きく頷く。

 

 

そして、リリーナは一言命じる。

 

 

「起爆──実行」

 

 

 

そして宇宙が白く染まった。

 

閃光。膨張。歪曲。空間と時間にさざ波を起こし、光と電磁パルスが空間を駆け巡る。衝撃波がイオンとともに宙域に躍り出てあらゆるものを遠方に運び去る。

 

視認すら許されない白熱が視界を貫き、中継していた無人観測艦が予定通りに破壊される。

 

衝撃が収まった後に惑星の影から再び姿を表した衛星は変わり果てた姿だった。

 

衛星の先行半球には高温で煮えたぎる巨大なクレーターが形成され、その深さは金属核を露出させるのに十分であった。巨大な破片が不気味なほどゆっくり弾き飛ばされ、一部は惑星の重力から飛び去り、一部は砕かれながら惑星に落下する。クレーターからは気化した岩石が穴を覆うように湧き出していた。そこから外側には高温プラズマが大気の代わりに宙域を満たし、元素特有の発光輝線でもってその存在を主張していた。

 

 

 

 

「第一段階、成功! 金属核の露出を確認!」

 

「……ふふ、教科書に載せてあげたいくらいね」

 

家臣のひとりが声を震わせながら問うた。

 

「か、閣下……第二弾は、本当に実行されるのですか? 衛星そのものが……!」

 

「もちろんよ。最初からそのつもりなのよ。これからが本番じゃない」

 

リリーナは迷いなく答えた。

 

「岩を吹き飛ばすだけじゃ足りない。核を、運ぶのに丁度いいところまで砕くのよ」

 

誰かが小さく息を呑んだ。

 

宇宙が再び白く染まった。

 






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衛星吹っ飛ばすための1e28J級の爆発でもまじめにやると結構大変だなぁ.....
ここにはノイズになるので書きませんが、いろいろ落ち着いたら注釈にするような内容をあとがきと一緒に書こうかな。まあ、大半はそんな計算はしないので一部だけですが...
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