銀英伝で波動砲を撃ちたいTS科学者   作:ヤキブタアゴニスト

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感想楽しく読ませてもらっています!!




カストロプ動乱2

帝国暦487年3月、カストロプ公爵領 side: リリーナ

 

リリーナの動きは早かった。

 

観艦式に参加した艦艇群のうち、非武装艦を除いたシュタウフェン級小型球形要塞十基、および新型のプロシア級戦艦二十隻とブランデンブルク級戦艦六百隻を基幹とする攻撃集団が即座に編成された。

 

通常であれば、こんな規模の動員には少なくとも一週間の調整と補給が必要だろう。だが、リリーナにとってそれは観艦式の後片づけにすぎなかった。

 

多少の整備と補給を同時に進めながら、 半日後にはメルゲントハイム領を離脱。

太陽系とアルデバラン星系での短期補給を経て、 昼夜を分かたぬ連続ワープを実施。わずか二日で、艦隊はカストロプ領宙域へと突入した。

 

艦隊指揮所の空気は、冷たい金属のように張り詰めていた。リリーナはスクリーンに表示された、光速を越えて伸びる恒星の流れを見つめ、その眼差しを逸らさぬままに命じた。

 

「カストロプ本星以外に興味はないわ!補給線の構築は無視して、カストロプ本星に突っ込みなさい!」

 

その言葉に指揮所が小さく息をのんだ。

 

「ですが、姫様、カストロプ領のいくつかの恒星系は防衛設備をそなえており、配備された艦隊の数も不明です。周辺宙域の制圧をせずに突入すれば――」

 

「問題ないわ。早さが命よ!!本星を落としてしまえば他の星系は抵抗をやめるはずだわ。そこまで艦隊が動けばいいのよ!!」

 

リリーナは、わずかに笑った。

 

リリーナは立ち上がり、前方スクリーンに歩み寄る。そこには、赤い警戒線で囲まれたカストロプ星系の星図が映し出されていた。中央の一点、カストロプ本星が、淡い青光で点滅している。

 

「さあ行きなさい!!」

 

 

 

帝都オーディンではカストロプ討伐のための会議がようやく始まろうとしていた。だがその議題が議場に届くより早く、リリーナの艦隊はすでにカストロプ星系外縁部で陣形を展開しつつあった。

 

「シュタウフェン級、展開して先行!!戦艦は半分は正面に向かって横陣を展開!残りは50隻単位で側面に展開!!」

 

リリーナが命じた通り分艦隊は、光の筋を引きながら急速に軌道を変える。通信網には短く鋭い命令が飛び交い、戦術スクリーン上では数百の識別点が無機的に動きを合わせていく。

 

 

 

 

 

帝国暦487年3月、カストロプ公爵領 side: カストロプ公爵マクシミリアン

 

これに焦ったのはカストロプの本星、第四惑星軌道上で艦隊の集結を進めていたカストロプ公マクシミリアンだった。マクシミリアンの命で、カストロプ軍は補給や再編成を打ち切り、直ちに出撃態勢に移行した。

 

その命令は怒声とともに全艦隊へと送信され、わずか数分で惑星周辺宙域が慌ただしく動き出した。

 

「おい!!そんな報告は聞いていないぞ!!!帝国軍の出撃にはまだ時間がかかると言っていたではないか!!!」

 

通信室の若い副官が声を震わせて報告する。モニターには接近する艦影と、返ってきた識別データの断片が点滅していた。

 

「そっ、それが、展開しつつ接近しているのはメルゲントハイム伯の艦隊のようです。帝国軍ではありません。」

 

「どういうことだ?あの貧乏小娘がどうしてここに?第一、なぜここまでくるまで気づかん!?して規模と目的は?」

 

副官は言葉を噛みしめながら数字を拾う。

 

「目的は……不明です。一方的に通信が…。数は千程ですが、未確 ぐふっ」

 

マクシミリアンの拳が報告してきた副官を殴り飛ばす。

 

「なんだ、高々千隻とは。目をかけてやった恩義に報いに援軍にでも来たというのか?ともかく、さっさと艦隊を展開しろ!!その小勢で何かができるわけではないだろうが、舐められる訳にはいかんからな」

 

マクシミリアンの命で、カストロプ軍は補給や再編成を打ち切って直ちに出撃した。だが一万隻弱、戦艦、巡洋艦、駆逐艦が混じり合う大群ゆえ陣形の整備には時間を要し、艦列はゆっくりとだが確実に第五惑星軌道へと進んでいく。借金のかたにメルゲントハイムから受領したという陽電子砲を搭載した艦艇十五隻も、異物のようにその側面に配された。

 

 

 

カストロプ艦隊が第五惑星軌道にさしかかろうというところ、星系外縁部から急速に進撃するメルゲントハイム艦隊がカストロプ側のスクリーンに鮮明に映し出される。センサーパネルには多数の異様な艦影が重なり、距離計の数字が緊張を帯びて跳ねる。

 

「ここで停止だ!!近づきすぎるな!!」

 

メルゲントハイム艦隊の異様さに気が付いた、マクシミリアンが叫ぶ。

 

「おいっ!!なんだあれは!!報告になかったぞ!!」

 

声が艦橋に轟く。だが彼の目の前に映るのは、通常の軍列ではなかった。先頭を十基の球形要塞が切り開き、その陰に続くのは帝国規格を遥かに凌駕する超大型戦艦が二十隻、太い影を引きずるように並んでいる。艦体の表面は砲門で覆われ、どの艦も正面に向けて巨大な砲列を凝縮していた。

 

そして、マクシミリアンの視界を引き裂いたのは、その要塞主砲群の奥底に揺れる光だった。砲塔の奥から、まるで小さな昼のように白く、熱を感じさせる光が膨らんでいる。充填か、あるいは照準のためのエネルギー収束か。距離を詰めたら、そのまま撃ち出されるのではないか、と思わせるに十分な輝きだった。

 

「こっ、この距離で撃ってくるつもりか?何を考えているんだ!!!いや、メルゲントハイムの事だ、何を持ってくるか分からん!!!!おいっ、通信回線を開け!!!早くしろ!!」

 

「はっ!!」

 

通信を繋ごうとするコマンドが飛び交い、スクリーンの向こうに小さな少女が映し出される。少女の目線は世話しなく手元の別のスクリーンを見ており、慌ただしく何かの状況の確認をしているようだった。

 

「メルゲントハイムの気狂い娘がこれは何のつもりだ!!!わが艦隊に加わり共に帝国に巣食う君側の奸を討つというなら、この非礼を許してやってもよい。だが、さもなければこの艦隊の餌食にしてくれる!!」

 

異様な艦隊を前にして、しかしマクシミリアンは強気に出た。それは貴族としての生き方と何より一万隻に迫る大艦隊が可能にさせていたものだった。

 

だが次の言葉は、それらをすべてかき消した。

 

「えーっと、これね…………。

私はメルゲントハイム家を代表し、この場に立っています。まず明確に申し上げます。わたくしの行動は感情ではなく、法と記録に裏づけられた正当な措置です。

先刻、わがメルゲントハイムの輸送艦団が、自動防御システムの起動中にカストロプ公からの不当な攻撃を受けました。複数の独立した監視装置と通信記録が、攻撃の瞬間を明確に示しています。」

 

感情の籠っていない声でリリーナは続ける。

 

「帝国貴族に与えられた自衛の権利は、気まぐれな権限ではありません。領民と資産を守り、秩序を保つために、帝国が認めた正当な義務です。その権利を放棄することは、すなわち皇帝陛下から与えられた領土と人民を見殺しにすることに他なりません。

 

さらに今回の一連の攻撃は単なる武力行使の一形態を越え、皇帝陛下に対する重大な挑発、すなわち皇位と帝国の統治体制を揺るがす可能性のある行為として看做され得るものです。明らかに意図的な政治的敵対行為であり、皇帝陛下への反乱行為に他なりません。わがメルゲントハイムは銀河帝国と皇帝陛下に忠実な帝国貴族として、そうした事態を放置するわけにはいかないのです。」

 

リリーナの目線は明らかに正面を向いておらず、手元のある一点を見つめていた。

 

「反乱の鎮圧や皇位に対する挑発の処理は本来、帝国軍の管轄であります。私どもも、可能な限り中央の判断を仰ぎ、帝国の正統な手続きを尊重したいと考えております。ですが現時点においては、我が輸送艦と保護下の民が直ちに危害を受ける恐れがあり、迅速な対応を待つ余裕がありません。したがって、帝国の秩序と人民の保全を第一に考え、やむを得ず先手を取って正義の執行を行う所存であることを、ここに付記します。」

 

リリーナはわずかに息を整え、低く締めに入る。

 

「ゆえにここに宣言します。メルゲントハイム輸送艦への攻撃をもって、カストロプ公マクシミリアンの艦隊を敵対勢力と認定します。 帝国貴族に付与された自衛権に基づき、我が艦隊はやむを得ず武力行使を行います。これは報復ではなく、秩序を守るための行為です。」

 

「なんだとっ!!」

 

当然、マクシミリアンは激高するもリリーナは意に介さない。

 

「えっと、終わったから切っていいわよ」

 

とリリーナが呟くと、次の瞬間通信が切れる。

 

 

「ふざけやがって、全艦前進、あの女を血祭りにあげろ!!」

 

こうして、両艦隊は正面からぶつかることになったのだった。

 






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