銀英伝で波動砲を撃ちたいTS科学者   作:ヤキブタアゴニスト

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同盟領侵攻作戦4

帝国暦487年8月、自由惑星同盟 シヴァ星域 惑星カルティケーヤ side:シヴァ星域臨時艦隊

 

惑星サラスヴァティ占拠さる。

この報は、シヴァ星域を超えて自由惑星同盟全体に動揺をもたらしていた。

 

確かに、大規模な宇宙海賊が航路の中継拠点を襲撃すること自体は、絶対にあり得ないことではない。辺境宙域ではありえる話であった。

 

問題なのは、その出現位置だった。惑星サラスヴァティは、航行不能宙域に接する外縁宙域に位置する。

 

帝国側から何らかの方法で未知の回廊が繋がっていて侵入された可能性を考えざるを得ない。

 

その事実は、同盟軍の参謀たちの心胆を寒からしめるに十分だった。

 

なにしろ、現在の同盟はその艦隊戦力のほとんどすべてを帝国領侵攻作戦に送り込んでる。

 

自由惑星同盟軍の制式艦隊は第1艦隊から第13艦隊まで存在するが、そのうち八個艦隊の大兵力がすでにイゼルローン回廊を越えて帝国領へ侵入している。

 

さらに、国内防衛戦力として残されていた艦隊も万全ではなかった。

第2・第4・第6艦隊はすでにアスターテ会戦をはじめとした戦闘で損耗し、第13艦隊として再編され消滅している。

その結果、本国で即座に動かせる艦隊は、首都ハイネセン防衛を任務とする第1艦隊と、再編途中の第11艦隊程度しか存在しなかった。

 

 

とはいえ……ハイネセンが動くほどの危機感は生まれていなかった。

 

不幸なことに、中央に届いた情報は極めて断片的だったからである。

未知の艦隊、二百隻。

 

それ以上の情報はほとんどなかった。

 

艦種不明。兵装不明。国家所属も不明。

 

そのため政府は、これを大規模海賊あるいは局地的事件として扱い、本格的な艦隊派遣を決断するには至らなかった。というよりも、図体が大きすぎて動くほどの素早さが足りていなかったのかもしれない。第11艦隊の一部から分艦隊を急遽動かそうとしていたが、現場の混乱がそれを許さなかった。

 

 

一方、シヴァ星域では事情が違った。

 

シヴァ星域最大の惑星カルティケーヤ。

 

人口五千万に迫るこの惑星には、星域全体の行政管理と軍事補給を担う大規模後方基地が置かれている。制式艦隊すら受け入れ可能な補給施設を有するこの惑星は星域防衛の中枢だった。

 

サラスヴァティ陥落の報を受けて、この基地はただちに非常動員体制に入った。

 

各個撃破を避けるために周辺宙域の警備艦艇が呼び戻され、整備中の艦艇まで引っ張り出される。二日という短い時間で結果として集められた艦艇は、二千五百隻。

 

数字だけ見れば、空になった同盟領内では有数の大艦隊である。

 

もっとも、その内実は決して楽観できるものではなかった。

 

多くは旧式艦。あるいは輸送艦や警備艦を急造改装したものだった。実戦に耐える戦力は限られている。

 

その中核をなすのは、正規戦闘艦である戦艦二百隻だった。シヴァ星域司令部は正面から互角以上の戦力で釘付けにし、その他の中小艦艇で包囲すれば殲滅が可能だと計算していた。

 

哨戒網を張り巡らせ、敵艦隊を発見し次第出撃する。シヴァ星域司令部は、その準備をほぼ整えていた。

 

周囲の宙域には多数の哨戒艦が散開し、航路の要所には臨時観測網の展開が準備されている。未知の艦隊が星域を横断するなら、必ずどこかで捕捉できるはずだった。

 

だがその発見は、予想していた形とは少し違った。

 

星系外縁部。周囲の星系に散開しようとしていた哨戒艦から、緊急通信が飛び込んできた。

 

「敵です!!」

 

通信士官の声が艦橋に響く。

 

「敵艦隊、その数――」

 

一瞬、言葉が詰まる。

 

「一千を超えています!!」

 

「何!!」

 

臨時艦隊旗艦、戦艦スミュルナの艦橋がざわついた。司令官であるグスタフ・ハーゲン少将が身を乗り出す。

 

「一千だと?」

 

「間違いありません!」

 

電測員が叫ぶ。

 

「反応多数! 少なくとも千二百隻!」

 

艦橋に動揺が走った。

 

惑星サラスヴァティから届いていた情報では、敵は二百隻だったはずだ。

 

「聞いていたより数が多いぞ……」

 

参謀が低く言った。

しかし、ハーゲン少将はすぐに表情を戻した。

 

「構わん、こちらは二千五百隻だ」

 

それは多分に周りを勇気づけるという目的がまみれていたが事実だった。カルティケーヤで急編成された臨時艦隊は、隻数だけなら敵を大きく上回っている。

 

「のこのことこちらの目の前に出てくるとはこちらから探す手間が省けた」

 

敵が自ら星系へ接近してくるなら、迎撃は容易だ。

 

「全艦隊に命令」

 

ハーゲンは言った。

 

「戦闘隊形に移行」

 

スクリーンに艦隊が艦列を整える様子が表示される。二千五百隻の艦隊が、ゆっくりと広がり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

帝国暦487年8月、自由惑星同盟 シヴァ星域 惑星カルティケーヤ side:リリーナ

 

「敵艦隊、散開しつつこちらに向かってきます」

 

その報告に、リリーナは星図から視線を外さなかった。

 

「接近する必要はないわ。駆逐艦と砲艦を上下左右に展開。背後に回り込まれるのを阻止しつつ、戦艦中心に遠距離で仕留めるわ」

 

メルゲントハイム艦隊の外縁に、数百隻の小型艦が広がっていく。

惑星サラスヴァティで補給を終えたリリーナ艦隊は、ほとんど休むことなくカルティケーヤ星系へ向かっていた。

 

そして今、同盟軍臨時艦隊と遭遇している。カルティケーヤ防衛のために集められた艦隊。その数は二千五百。小艦艇が多いが、数だけなら二倍を超える規模だ。だがリリーナの視点では、それは単なる数の集合でしかなかった。

 

背後に守るべき惑星を持つ同盟軍は、徐々に隊形を広げながら距離を詰めてくる。

 

「敵艦、主砲に反応あり!あちらから撃ってきます!」

 

そして、メルゲントハイム艦隊の動きを牽制するためか、それとも焦りからか通常の交戦距離をはるかに超えて砲撃を始める。

 

「あんなへなちょこ大砲で、こちらの装甲を貫けるわけないわ」

 

同盟軍の艦隊から、無数の砲撃が放たれる。しかし距離が遠すぎる。

 

エネルギー光条は途中で減衰し、艦隊に届くころには威力をほとんど失っていた。

命中するものもある。だが、青白い防御シールドに触れた瞬間、静かに拡散して消えた。

 

艦隊指揮所の空気は静かなままだった。リリーナは指揮席から立ち上がった。

 

「初撃で大型艦をすべて吹き飛ばしなさい。敵戦艦、巡航艦を戦艦の全主砲で刈り取りなさい!!!」

 

リリーナは手を振った。

 

「撃て!!!」

 

その瞬間。

 

メルゲントハイム艦隊の前面が、一斉に光った。

 

無数の主砲が同時に発射される。宇宙に走る青白い閃光。

 

前衛に展開していた同盟軍戦艦が、ほぼ同時に爆散する。

 

装甲を貫かれ、内部反応炉が誘爆し、火球となって宇宙に広がる。同盟艦隊の前列が、文字通り刈り取られていた。

 

「敵大型艦、壊滅!」

 

スクリーンに爆発が輝き、宇宙の藻屑に消える。

リリーナは冷静に言った。

 

「続いて第二射用意!!敵艦隊全周に向けて砲撃、離脱する艦を逃がさないように!!」

 

戦艦が砲門を再調整する。今度は、逃げ道を潰す射撃だった。主力艦を吹き飛ばされた艦隊は散開のまま逃走に移ろうとしていたが、リリーナは逃がすことになんら利益を感じなかった。

 

第二斉射が放たれた。

 

光条は同盟艦隊の側面を切り裂く。離脱を図ろうとしていた艦艇群が、一斉に爆散する。

カルティケーヤ沖の宇宙は、いまや一方的な殲滅戦の様相を呈していた。

 

 

 

 

 




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