銀英伝で波動砲を撃ちたいTS科学者   作:ヤキブタアゴニスト

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同盟領侵攻作戦5

帝国暦487年8月、自由惑星同盟 シヴァ星域 惑星カルティケーヤ side:リリーナ

 

 

 

「メルゲントハイム伯リリーナはここに告げる」

 

宣言するリリーナの映像は、旗艦ヴュルテンベルクから全方向へ超高速通信で発信された。

暗号化もされていない公開通信。自由惑星同盟のあらゆる通信網で傍受可能な回線だった。

 

「神聖なる銀河帝国の皇帝陛下に楯突き、恐れ多くも帝国領を幾度となく侵し略奪を重ねてきた、自由惑星同盟と称する叛徒どもよ」

 

宇宙に、リリーナの声が広がる。

 

「直ちに降伏せよ」

 

わずかな間。

それから続けた。

 

「速やかに降伏するならば、帝国法および我がメルゲントハイムの法に基づき、罪なき者には栄えある銀河帝国の恩寵が、罪ある者にはそれにふさわしい裁きが与えられるであろう」

 

艦隊指揮所ではリリーナ以外誰も言葉を発しない。ただ、幾人かが各方向への送信状況を確認している。

 

「しかし」

 

リリーナの声が少しだけ低くなった。

 

「これに応じぬならば我が艦隊は、賊の拠点をことごとく焼き滅ぼす」

 

スクリーンには、カルティケーヤの姿が映っている。

人口五千万を数えるシヴァ星域最大の惑星だ。

 

「これはハイネセンに居を構える自由惑星同盟を称する叛徒の首領が、武装解除と降伏の意思を示すまで一切の弛緩なく継続される」

 

リリーナはゆっくりと言った。

 

「繰り返す!!全領土および全武装の解除が行われるまで、我が艦隊は反乱拠点を速やかに掃討する」

 

通信は終わらない。

 

今度は惑星の映像だった。

リリーナ艦隊は、カルティケーヤを完全に包囲している。上下左右、あらゆる方向からの映像。

巨大戦艦群とそこに据えられた合計数千の砲門。それらが、すべて惑星へ向けられている。その映像が、同盟軍のあらゆる通信網へばらまかれた。

 

リリーナは静かに言った。

 

「反乱軍の首領よ!よく見よ!」

 

リリーナの視線はスクリーンに向けられていた。

カルティケーヤ。巨大な青白い惑星。

 

「悪逆なる貴様らの拠点が、いま私の前にある。これより、この惑星を手始めに砲撃する。そしてこれが終わり次第、他の拠点にも同様の攻撃を行う」

 

リリーナは最後にもう一度言った。

 

「繰り返す。我々は即時の降伏と武装解除を要求する」

 

一拍置いた。

 

「では、砲撃開始!!!!」

 

次の瞬間。メルゲントハイム艦隊の主砲が、一斉に発光した。

青白い閃光が宇宙を切り裂き、惑星カルティケーヤへ向かって落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

帝国暦487年8月、自由惑星同盟 

 

 

自由惑星同盟にとってそれは悪魔としか思えない存在だった。

 

突如として同盟辺境に現れた所属不明の艦隊。

 

航行不能宙域を越えてきたとしか思えない位置に出現したその艦隊は、そのまま同盟領の惑星サラスヴァティを占拠し、シヴァ星域最大の惑星カルティケーヤに集結していた警備艦隊をも打ち破った。

 

時期も最悪だった。

 

よりにもよって同盟のほぼ全艦隊戦力はイゼルローン回廊を越え、こともあろうかメルゲントハイム伯領へ向けて侵攻していたのである。

 

即応できる有力な艦隊が少ないため、ハイネセンではこの不明艦隊にどう対処するのかがようやく議論され始めた矢先だった。

 

そして、同盟に、いや全宇宙に向けて放たれた通信は、恐るべき内容だった。

自由惑星同盟に対する即時全面降伏要求。

 

それ自体は、帝国の宣伝放送としてあり得ないものではない。実際、銀河帝国は同盟に対して降伏を勧告する声明を発していたことがあった。

 

だが、今回のそれは性質がまるで違っていた。

 

それは単なる宣伝ではない。宣戦布告でもなかった。

むしろ、処刑宣告に近いものだった。

 

通信の主は、自らを

 

銀河帝国貴族、メルゲントハイム伯リリーナ

 

と名乗っている。

 

 

帝国貴族の名を公然と掲げている以上、これは単なる海賊の犯行ではない。少なくとも発信者は、自分が帝国の権威を背負っていると主張している。

 

しかし、問題はそこではなかった。

 

通信内容は、帝国政府の公式立場よりもはるかに苛烈だったのである。

 

建前上、銀河帝国政府は自由惑星同盟を「国家」とは呼ばず、「叛徒」と呼んでいる。しかし、その扱いは事実上国家としての扱いであり、軍隊、民間人、外交官が存在することを暗に仮定した交渉を行ってきた。帝国政府は事実上は同盟を「敵対国家」として扱い、外交や戦争にも一定の国家間ルールを適用してきたのだ。

 

しかし、リリーナの宣言は、それを完全に無視していた。リリーナは同盟を完全に国家として扱っていない。

 

もし同盟が国家ならば、そこには民間人が存在する。都市があり、政府があり、軍隊がある。戦争とは、その軍隊同士が戦うものであり、非戦闘員たる民間人は戦闘員たる軍人と区別され、捕虜には最低限の扱いがなされる。

 

翻って反乱軍には、民間人という区別が存在しない。そこにいる者はすべて、反乱の支援者とみなされる。したがって、彼らの拠点はすべて軍事目標となる。

 

それが反乱鎮圧の基本原理だった。リリーナの宣言は、その論理をそのまま適用している。

 

つまりリリーナは、同盟領の惑星を都市でも植民地でもなく反乱拠点として扱うと宣言したのである。

 

その結果どうなるか。答えは単純だった。

 

宇宙海賊の拠点を掃討するのと同じ方法が適用される。軌道からの無差別砲撃。都市インフラの破壊。補給網の消滅。住民の殲滅。これらが全て容赦なく惑星を襲うことになる。

そしてカルティケーヤは、その最初の実例となった。

 

リリーナ艦隊の砲撃は、軍事施設だけを狙ったものではない。

都市も、港も、発電施設も、交通網も、すべてが破壊対象だった。

 

その理由は単純である。

そこにいるすべての者が、反乱軍の構成員だからだ。これは単なる軍事攻撃ではなかった。法的に正当化された殲滅作戦だった。少なくとも、リリーナはそれを宣言していた。

そして何より恐ろしいのは、それが隠されていないことだった。リリーナは、この理屈を公開通信で宣言している。

 

つまりこれは、秘密の虐殺ではない。公開処刑である。

 

そしてカルティケーヤを破壊することは、その第一の例であると宣言した。

 

リリーナの宣言は明確だった。

ハイネセン政府が武装解除し、降伏するまで。同盟領の反乱拠点は順次掃討される。

すなわち惑星単位で。

 

 

 

その宣言が終わると同時に、惑星カルティケーヤへの砲撃が始まった。

 

結果は、悲惨の一言だった。

 

 

精密に計算された全方位砲撃。

 

プロシア級戦艦二百隻とブランデンブルク級戦艦六百隻、さらに多数の駆逐艦と砲艦から放たれた中性子衝撃砲は、大気圏を貫通して地表へ到達する。

 

都市。宇宙港。発電施設。交通網。それらは次々と破壊された。

 

軌道からの観測映像には、巨大な光柱が惑星表面へ突き刺さる様子が映っている。

 

そして次の瞬間、都市が崩壊する。カルティケーヤの地上は、瞬く間に地獄と化した。

だが、それだけでは終わらない。

 

リリーナ艦隊は、惑星全域を精密観測していた。

 

動くものがあれば砲撃する。それが車両であれ、人間であれ、軍施設であれ、区別はない。

 

結果として惑星は、作業的に破壊されていった。

 

そしてその様子は一ミリも逃すことなく、複数の角度からの映像として、同盟の通信網へ送りつけられていた。

 

 

 






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