あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!気付いたらこの作品がだいぶグロくなっていた!な⋯何を言っているのかわからねーと思うが、俺もどうしてこうなったのかわからねー⋯頭がどうにかなりそうだった⋯ポケモンが目の前で炎に焼かれて灰になるだとか主人公の片腕無くすだとかそんなチャチなものじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わわせることになったぜ⋯
(要約:気付いたらグロくなってたから苦手な人は頑張ってね)
「ふぁぁあ⋯お゙あ゙よ゙ゔ」
「ビガビ」
「おはよ。相変わらず寝起きの声酷いね⋯」
「ブイブイ」
しゃーないじゃん。そういう体質なんだもの。
てかなんか静かだな。
普段ならこの時間は親父が飯作ってるはずなんだが⋯。
疑問に思いつつ、リビングに降りると、そこには誰も居なかった。
「あれ?親父まだ起きてないのか?」
「え、珍しいね。おじさん早起きなのに」
「ビガァ⋯」
腹ペコのピカチュウが不満げな声を上げるが、俺に文句を言われても困るぞ。だから尻尾でペシペシすんな。
しかし、普段はテレビの音やコンロの音が聞こえてくるはずなのに、妙に静かだな。
気になって親父の部屋に向かってみたが、物音一つ聞こえない。
「親父ぃ?寝てんのか?」
扉越しに声をかけてみるが、何も帰ってこない。
不審に思ってドアを開ける。
「あれ?親父居ないのか⋯」
「どっか出かけたのかな?」
「この時間に?」
「うーん⋯たしかに⋯」
親父が俺達に何も言わずに朝早くから出かけるなんて今まで無かったからなぁ。
「まぁ晩飯までには帰って来るべ」
「小学生かな?」
「ビガァ?」
親父のことは置いといて、朝飯どうしよ。パンまだあったっけか。
「げぇっ、パンもうねぇじゃん」
「ありゃ。買いに行くしかないね」
「めんどくせぇ〜!」
「ビガッ」(特別意訳:はよ行くぞ)
仕方がないので、軽い財布を持って家を出た。ちなみに財布にはギリギリパン買えるくらいしか入ってない。財布が軽いと心が重い。悲しいね。
ちなみに言っておくと、うちで一番食ってるのはカランだ。
「⋯なに、私の顔ジッと見つめて」
「いやぁ⋯こいつの食ったもんどこに消えてくんだろうなぁって」
「そりゃぁ勿論身体に吸収されるに決まってるじゃん」
「その割には胸部装甲が貧相すぎじゃ⋯」
「イーブイ、”たいあたり”」
「ブイッ!」
「ごめんごめんごめっ」
「ピィカァ⋯」
いくらイーブイといえども、ポケモンの攻撃は普通に痛い。まぁ俺が悪いんだけどさ。
「いっでぇ⋯」
「フン!自業自得でしょ?」
「悪かったって」
その後、なんとかカランの機嫌を取りながら歩いていたら、いつの間にかパン屋に着いていた。
焼き立てのパンのいい匂いが鼻腔に広がる。
焼き立てのパンってなんであんなに美味いんだろうか。
ドアを開けると、カランカランとドアの上についてる鐘が鳴る。オシャンな店ってだいたいこれあるイメージだわ。
「いらっしゃいませ~」
白いシェフっぽいあの服を着た若いお姉さんが厨房から顔をのぞかせる。
しかし、確かこの店の店主はゴツいおじさんだったと記憶してるんだが。娘さんかな?
「あれ?ブロットのおじさん、今日いないの?」
「あ、カランちゃん!そうなの、お父さん流行り病で倒れちゃって⋯ほら、最近テレビでやってるやつ」
どうやらカランとここの娘さんは知り合いらしい。見た感じ年代も近いしな。
「そっか⋯大変だね。ミッシュも気を付けてね」
「うん、ありがとう。カランこそ夜出歩いちゃだめだからね?お父さんみたいになっちゃう」
「わかった。ところでおじさん何の病気になったの?」
「えっとね、最近この街で出始めた――」
「く、黒いビビヨンだ!」
「なんでこんな昼間に!?」
店の外から聞こえたその大声に、全員が思わず外に視線を飛ばす。
窓から見えたのは、ビビヨンから逃げる沢山の人たち。
そして空から降り注ぐ黒い鱗粉。
中にはポケモンを繰り出して立ち向かって行った人もいたが、全てビビヨンの巻き起こした風に吹き飛ばされてしまう。
「な、何あれ⋯!?」
「ビビヨン、あいつ⋯!!」
「ちょ、なにしてんの!?」
「ビガァ!?」
気付けば俺は店を飛び出していた。
禍々しい黒の羽に、薄っすらと纏われた黒いオーラ。久々に見たビビヨンはまさにヴィランといったような風貌だった。
「何やってんだビビヨン⋯!」
俺が叫ぶと、ビビヨンはゆっくりと振り返ってこちらを見つめる。
深淵を覗き込んだような真っ黒な複眼に見つめられ、生きた心地がしない。
冷や汗を垂らしながら負けじと睨みつけていると、突然ビビヨンが俺に向かって突進してきた。
眼前まで迫るビビヨンに腰を抜かしそうになる。
「フィルァ」
「な、なんだ⋯?」
ビビヨンが顔を近づけて俺の顔を覗き込む。
失くなった左腕がズキズキと痛みだした。呼吸が荒くなる。視界がぼやけて平衡感覚がおかしくなりそうだ。
「⋯え?」
「フィァ」
次の瞬間、身体に違和感を覚えた。
地に足がついていないというか、浮いてるというか⋯
「レン!?あんたなんで浮いてんの!?」
「ファッ!?クソッ、サイキネか!」
「フィララァ」
ビビヨンの”サイコキネシス”!!
「ちょっ、何するつも―――」
「フィルァ」
ビビヨンの発するサイコパワーによって身体を浮かされた俺は、そのままビビヨンに連れ去られてしまった。
ビビヨンに連れ去られた先は、なんとうちだった。
「フィルァ」
「え、な、なんでうち?」
「フィララ」
「え、ちょ、ハァァ!?」
困惑して棒立ちしていたら、しびれを切らしたビビヨンが壁を破壊して部屋に侵入していった。
頭おかしいんかこいつ。
てかそこ俺の部屋じゃん。やめてくれや。
「おい待て待て待て。それメガストーンじゃねぇか。ビビヨンナイトなんてねぇから意味ないぞ。だから返してくれ、な?」
「フィラァ」
ビビヨンは そっぽをむいた!
次の瞬間、メガストーンとビビヨンが共鳴し、眩い光に包まれた!
「フフィィィィィィィィルルルルァァァァァァァァッッッッッッ!!!!」
メガビビヨン(???の姿) めいかいポケモン タイプ むし・ゴースト
歪な進化を遂げたビビヨンがメガストーンの力を浴びてメガシンカした姿。冥界を経由しての高速転移を利用して敵を撹乱し仕留める。敵のその後は誰も知らない。
殻を吹き飛ばし、雄叫びを上げるビビヨンの姿はまるで死者を誘う冥界の蝶のようだった。
ビビヨンの雄叫びに応じて辺りが闇に覆われていく。燦々と照りつける夏の太陽は、ビビヨンから溢れ出す瘴気によって隠れてしまった。
「ひっ、ひぃぃぃ!!」
「ば、バケモンだ!」
突然の脅威に怯え、逃げ惑う人々には目もくれず、空中で悠々と黒い鱗粉を撒き続けている。
ビビヨンから溢れる瘴気と撒かれる黒い鱗粉によって、どんどんと街中の光が失われてゆく。
「カエンジシ!”かえんほうしゃ”!」
「フィアァァァァ!?」
突然燃え上がるビビヨン。
声のした方を振り向くと、バイクに乗った赤い服の男とカエンジシがビビヨンを睨みつけていた。
「街で暴れている黒いビビヨンがいるとの通報を受けて駆けつけた。黒いビビヨンよ、それ以上人とポケモン達の生活を脅かすというのならば、我々ポケモンレンジャーが黙っていないぞ!」
「ガオォーン!」
カエンジシ(オスの姿) おうじゃポケモン タイプ ほのお・ノーマル
オスのたてがみは戦いになると摂氏2000度の高温になる。
「フィ⋯フィ、フィルルルァァァ!!」
燃やされた恨みからかカエンジシに襲いかかるビビヨンだが、それを異形の岩の怪物が受け止めた。
「ガメッシュ」
「よし、ナイスだガメノデス」
ガメノデス しゅうごうポケモン タイプ いわ・みず
手のひらの目玉が前後左右を見張る。ピンチになると手足が勝手に動いて敵を倒す。
「フィィィラァァァ!!」
「ッ!こいつ、まだ戦うってのか!!」
「仕方がない、最悪捕獲できなくてもいい!なんとしてでも止めるぞ!」
レンジャーの人たちの声に応じるように、カエンジシとガメノデスが雄叫びを上げる。
「カエンジシ!”だいもんじ”!!」
「ガメノデス”シェルブレード”!!」
「グァァオーンッッ!!」
「ガァメェッシュ!!」
カエンジシの口から吐き出された大の字の灼熱の炎がビビヨンに迫る。
それを避けようとするビビヨンだが、退路を塞ぐように立ちはだかったガメノデスが水をまとった手刀を振り回しそれを許さない。
次の瞬間、ビビヨンに大文字が命中し、爆発した。
「よし、小さくなって逃げる前に捕獲するぞ」
「そうだな。黒焦げになっていなければの話だが―――」
「フィア」
「⋯⋯⋯え?」
今、俺は有りえない光景を目にしていた。
何故、だいもんじが直撃したはずのビビヨンは当たり前のようにレンジャー達の眼の前に立ちふさがっているのか。
ビビヨン程度の耐久ならば、カエンジシの炎技をそう何度も耐えられるわけがない。
「⋯ッ!カエンジシ!”かえんほうしゃ”!!⋯⋯⋯カエンジシ?」
その時、レンジャーはありえない光景を目にした。
すぐそこにいたはずのカエンジシとガメノデスは、何故かビビヨン交戦した所で気絶していたのだ。
「嘘だろ⋯?一体何をしたと言うんだ!」
ビビヨンはただ何も言わずに不敵な笑みを浮かべていた。
俺はレンジャーさんとビビヨンとの戦いを少し離れたところで見ていた。
そしてビビヨンにカエンジシのだいもんじが命中する瞬間、ビビヨンは大量の鱗粉を撒き散らし、どうやってか離れたところにいたカエンジシと位置を入れ替えていた。
この一連の行動によって、大量の鱗粉に塗れたカエンジシとガメノデスにだいもんじが直撃する構図が完成。そしてだいもんじが可燃性(恐らく)の鱗粉に発火したことによって粉塵爆発が起きた。
一瞬にして鮮やかな手付きで勝利を納めたビビヨンに、俺は命の危機だというのに最早感動すらしてしまった。
「フィルァ」
ビビヨンの”サイコキネシス”!!
「う、うわぁぁっ!?」
「駄目だ、やめろぉ!」
俺の制止も叶わず、サイコパワーによってレンジャーが物凄い勢いで吹き飛ばされ、建物に衝突した。
レンジャーのぶつかった壁は大きく亀裂が入り、衝撃で落ちてきた瓦礫がグシャリと鈍い音を立ててレンジャーの頭を押し潰した。
「⋯⋯⋯は?」
「フィララララ」
「ッッッ!!行け!ヘルガァー!!!」
ビビヨンの―――
ヘルガーの―――
”めいふのまい”!!
”あくのはどう”!!
地面から放出された霊気と体から溢れ出す悪のオーラがぶつかり合う。
拮抗状態から、徐々にヘルガーの悪の波動が押していく。
「ヴウゥゥゥゥ⋯ヴァァァァンッッ!!!!」
「フィィ⋯ラァァァァアアアア!!!!」
二匹の全力のぶつかり合いを横目に見ながら、吹き飛ばされたレンジャーを助けようと近付くが、すぐにそれを後悔した。
腕や足はありえない方向に捻じれ、ありとあらゆる筋肉は潰れ、頭部は降ってきた瓦礫に押しつぶされ原型をとどめていなかった。
胸から気持ちの悪いものが込み上げてきて、その場に膝をついて吐いてしまった。
四つん這いになって肩で息をする俺の隣に、突如ヘルガーが吹っ飛んできた。
「ちぃっ⋯ヘルガー!”かえんほうしゃ”!!」
「ヴッウゥ⋯⋯ヴァ、ヴァアアァァ!!」
よろけながらも立ち上がり、口から高温の炎を吐き出すヘルガー。
それを避けようとしたビビヨンだったが、完全には避けきれず、羽の端を炎が掠める。
しかし、状況は依然として劣勢のままで、直ぐ様体勢を立て直したビビヨンが発した音波が俺とヘルガーを襲う。
「フィララアアアアアアアアァァァァ!!」
ビビヨンの”むしのさざめき”!!
「があぁっ!?」
羽を振動させることで発された音波が、俺の鼓膜を通って脳にダメージを与える。
脳が揺さぶられ、意識が遠のいていく。
(あ、やば⋯落ちる⋯)
白く染まってゆく視界の端に、黄色い閃光が見えた。
「ビィガァ⋯ヂュウウウゥゥゥゥ!!!!」
ピカチュウの”でんきショック”!!
突如、予期せぬ攻撃を受け、たじろぐビビヨン。
でんきショックを放ったのは勿論、相棒のピカチュウである。
しかし、所詮はでんきだまも持たないピカチュウのでんきショック。大した脅威ではないと悟ったビビヨンの放ったむしのさざめきがピカチュウに直撃するが――
「ビガッ!」
ピカチュウの”かげぶんしん”!!
むしのさざめきが当たったピカチュウは霞となって消え、本体のピカチュウがビビヨンの懐に潜り込み、頬を擦り付ける。
ピカチュウの”ほっぺすりすり”!!
「フィ、フィラ⋯」
「すっげぇ⋯」
「ちょっと!どうなってんのこれ!?」
「カラン!?なんでここに!?」
「ビガッ」
「え!?イーブイの鼻で探したぁ!?スゲェな」
「君たち!!世間話は後でしてくれるかな!?」
『ヴァアアァァン!!』
『フィルァァァ!!』
レンジャーさんにツッコまれ、戦闘に視線を戻す。
ピカチュウがビビヨンを麻痺状態にしたお陰で、ヘルガーに戦況が傾き始めている。
「あのピカチュウは君のポケモンかい?」
「あ、そうですけど⋯」
「そうか⋯一般人を巻き込むのは忍びないのだが、力を貸してくれないか?」
そう言ってレンジャーさんがポーチから出した黄色の球とディスクを差し出して言った。
「これはでんきだまと言ってピカチュウの攻撃と特攻を倍にする道具だ。そしてこっちは”10まんボルト”のわざマシンだ。これを使って俺達のサポートをしてくれないか?」
正直言って、今すぐ背を向けて逃げ出したい。
だって嫌じゃん。痛い思いするのも、怖い思いするのも。人の頭が潰される現場見ちゃったんだぜ?逃げ出したいよ。
でもなぁ⋯⋯
「わかりましたよ。その代わり、生きて帰ってそれなりの報酬くださいよ?」
「勿論。大人として、一人の人として、レンジャーとして、君たちは絶対に死なせない」
俺、頼まれると断れないんだよなぁ。
「ピカチュウ、行けるか?」
「ビッビガヂュウ!!」
さて、生きて帰れると良いな。
Q「なんでレンはビビヨンを前にして結構余裕そうなんですか?」
A「緊張感とか色々キャパオーバーした結果、テンションがおかしくなってるだけです」
Q「レンジャーさんマジで死んだの?」
A「頭潰れても死ななかったら人じゃないでしょうよ」
Q「死んだレンジャーはカエンジシ連れてた方?ガメノデス連れてた方?」
A「カエンジシ連れてた方です」
Q「レンの初戦闘これってマ?」
A「トレーニングでカランとやったの除いたらこれが初です」
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