誠にごめんなさいでした__| ̄|○スイマセン _| ̄|○))ユルシテクダサイ _|\○_ コノトオリデス。
「なんだ…ここ」
目が覚めると、そこは真っ暗な空間だった。辺りを見渡しても一面真っ黒真っ暗。黒色無双ぶちまけたんか?
「誰かいないかー!?ピカチュウー!?カランー!?……いないなぁ」
困ったな。はぐれたか。そもそもここはどこなんだという話ではあるが。
ここに来る前のことを思い出す。
確かビビヨンが突然消えて…空が割れたと思ったら、真っ黒な腕みたいなやつに捕まって、それから…。
ここまで整理した俺は思わず叫ぶ。
「助けて◯ラえもーん!!」
「何…どうなってるの?」
ビビヨンの攻撃を受けたところまでは覚えている。
辺りを見渡すと、そこは綺麗に飾られたテーブルと椅子があった。天井にはシャンデリアがぶら下がっており、かなりの金持ちの家のようだ。そして、私はその部屋の光景に嫌になるほど見覚えがあった。
「
「…っ。お母…さん」
突然の出来事に動揺していると、豪勢なお盆を持った女性が部屋に入ってきた。
白を基調としたワンピースに、純金の指輪や真珠のネックレスを身に着けており、その佇まいからは上流階級のそれが感じられる。
「?そうよ、お母さんよ?どうしたの、そんなに怯えて。具合でも悪いの?今日のレッスンはお休みする?」
「い、いや…なんでもない……大丈夫…」
「そう?なら良いのだけれど」
挙動不審な私を心配する様子のお母さん。ここだけ見ればいい母親なのかもしれないが、そんな母親なら私はああはなっていない。
「ねぇ…カランティバ、この間、街で困ってたお婆さんを助けたそうじゃない」
「え、あ、うん」
パチンッ!
そういえば昔そんな事あったなとか思ってると、突然お母さんに頬を引っ叩かれた。
突然の出来事に頬を押さえた体勢で呆然とする私に、お母さんはヒステリックに叫んだ。
「なんでそんな余計なことするの!?お母さんやれって言った!?助けなさいって言った!?言われてないことを勝手にするのはやめなさいよ!!」
「え…な、なんで…?」
「あのババアが悪い人だったらどうするのよ!!あなたを攫って人質にするつもりだったかもしれないのよ!!そしたらお父さんも会社の評判が悪くなるでしょう!?お父さんに迷惑かけるんじゃないわよ!!!!」
先程の上品さはどこへやら。顔を醜く歪ませ、唾を撒き散らしながらヒステリックに発狂するお母さん。その目にはまるで私は映っていない。
「大体あなたはいつもいつもそうやって!!私に迷惑しかかけてないじゃない!!この前だって、いきなり料理をやらせろと言ってキッチンを汚した上に不味いもの食べさせて!!お勉強が嫌だと言って庭に逃げ出して私を困らせて!!挙句の果てに珍しく仕事が休みのお父さんに我儘言って遊園地だの温泉だのと疲れてるのに振り回して!!もううんざりなのよ!!」
そこまで言い切ったお母さんは、肩を怒らせながら私の顔を一瞥した。嫌な予感がしたが、私の体は恐怖で動かなかった。
「何なのよッ!!その反抗的な目はァ!!」
咄嗟に否定しようとしたが、声を上げるときには、銀色のお盆が私目掛けて投げられていた。
「痛ッッッ!!」
お盆が顔にクリーンヒットして、私は椅子から仰け反り落ちてしまう。落ちた拍子に頭を打ってしまい、上手く喋ることも立ち上がることもできない。
目で助けを求めるも、お母さんの眼中には私は居なかった。
「……あなたなんて産まなければよかった」
部屋から出ていく時、お母さんがボソッと呟いた。
「………」
あの後、なんとか体を起こし、自分の部屋に引きこもっていた。
お母さんの言葉が頭の中で何度も反芻して、こびりついて離れない。
どうしてこうなってしまったのだろう。どんなに思い出そうとしても、記憶の引き出しは軋むばかりで開いてくれない。
バタバタと足音が聞こえて何かと顔を上げると、ドアを激しく開けてお母さんが部屋に入ってきた。
また何か言われるのかと身構えたが、お母さんはそんな私を抱きしめて縋るような声で訊いてきた。
「カランティバ…さっきはごめんね…お母さん酷かったよね…ごめんね…ごめんね…」
何度も「ごめん」と謝るお母さんに、私の心は冷え切っていた。
(あぁ…またこれか)
「ごめんね…ごめんね…」
「うん…大丈夫だよ…気にしてないから…」
子供のように泣きじゃくるお母さんを機械のようにあやす。
今、私の目に写っている光景は、忌々しい過去の日常だ。
壁に立てかけられている大きな姿見に、齢10にして心を壊した人形のような少女が映っていた。
「うーん、困ったなぁ。なぁんにも無いや」
真っ暗な空間を体感一時間程ひたすら歩き続けたが、平衡感覚が死ぬレベルで全方位真っ暗なせいで歩いた感覚がない。
ピカブイズとカランとレンジャーさんとはぐれてしまったのが精神的にキツイものがある。さみちぃ。
にしても何も無いな。ものの見事に何も無い。ミニマリストも泡吹いて倒れるレベルだぞ。
独り言を呟きながら宛もなく歩き続けていると、やがて一筋の光が見えてきた。
「おっ!やっと出口か!?」
光に向かって駆け出す。
やがて視界中に光が溢れて――
「は?」
次の瞬間、俺が目にしたのは信じられない光景だった。
痩せ細り、汚れていて汚いイーブイ、それを抱きかかえる少女。そしてソルロックとルナトーンを側に従えた母親らしき中年の女性。
女性は般若の形相で少女に詰め寄る。
「ねぇカランティバ、今言ったこと、もう一度言ってくれないかしら?」
「ご、ごめんなさ…」
パチィン
頬を叩く鈍い音が響き渡る。
頬を押さえて呆然とする少女を蔑んだ目で見下す女性。
「ごめんなさいじゃない。なんでって訊いているの。答えて?」
これあれですね。毒親案件ですね。しかも娘に手ェ上げるのは見過ごせない。
「おいあんた、流石に躾にしても限度があるだろ…!」
母親の腕を掴もうとしたが、触れた瞬間に体を通り過ぎてしまった。
もう一度触れてみるが、またしても通り過ぎる。
こぉれあれか。今俺透明人間状態か。てかよく見たら体少し薄いかも。
今の俺の状態は把握したが、だからといって何かできるわけでもない。
せめてもの抵抗で母親に向かってシャドーしてたら、少女とイーブイと目が合った。
「よそ見してんじゃないわよ!!」
次の瞬間、激昂した母親が少女を蹴飛ばした。
「あ、ぐぅ……」
「ッ!何やってんだあんた!子供相手に…!!」
「ブ、ブイッ!!」
イーブイがクソババアに向かって突撃していく。しかし、無慈悲にもソルロックがサイコパワーで受け止めてしまった。
「ソルロック、そのまま投げ飛ばしなさい」
「ソル」
「やめて!!」
涙を流しながらソルロックに向かって駆け出す少女。そしてそれをなんともせずにサイコパワーで受け止めるルナトーン。石壁に勢いよく叩きつけられるイーブイ。
それをただ見ていることしかできない己の不甲斐なさに腹が立つ。体がすり抜けるのだからどうしようもないと言えばそうだが、所詮それは言い訳に過ぎない。
額から血を流しているイーブイを抱きかかえて涙を流す少女。
ふと、目が合った。
「助…けて…!」
少女の小さな小さな助けを求める声が、瞳が、俺を奮い立たせた。
右手は脇の下を通して背中を握る。左手は手首を強く握る。右足を左に向けて斜めに置く。左のつま先を右足の踵の隣に置く。左手を引っ張って体を左にねじりながら前のめりになる。それと同時に右足をまっすぐ後ろに振り上げる。
中学の頃から数えて大体五年、ずぅっと練習してきた俺の十八番の技。
「え、は――」
「ぃよぉいっっしょぉい!!」
内股
背中から地面に叩きつけられたババアは、激しく咳き込み、立ち上がることができないようだ。
久々に人を投げた感覚に浸っていると、四つ視線を感じて振り返る。
目を見開いて驚く少女とイーブイ。敵意マシマシでこちらを睨むソルロックとルナトーン。
自分の手のひらを見たら、色戻ってた。
顔を上げると、二匹の目が怪しく光っている。
レンは にげだした!!
しかし にげられなかった!!
ソルロックの”サイコキネシス”!!
ルナトーンの”パワージェム”!!
サイコパワーで浮かされ身動きの取れない体に、宝石から光線が放たれる。
「あっぐあぁ…!!」
胸が焼き焦げるように痛む。ポケモンの技って人間がくらっていいもんじゃねぇな。普通に死ねるわ。
「だ、だいじょうぶ…!?」
地面に落とされ、悶え苦しむ俺に、駆け寄って心配してくれる少女。その後ろに、ゆらりと立ち上がる影が見えた。
「よくもやってくれたわねぇ…!!」
最悪だ。このタイミングでババアが復活しやがった。
ババアが目に憎悪を滾らせながらポケモンに指示を出そうとする。
「ソルロック、ルナトーン、”ストーンエ…」
「やめてお母さん!!」
しかしそこに、俺を庇うように少女が立ち塞がった。
すると、あろうことかババアは少女にも牙を向けた。
「どうしてそんな男を庇うの?お母さんよりもその男のことが大切なの?」
「で、でも…流石にやり過ぎ…」
「やり過ぎ?どこからともなく現れて私に暴力を振るったのよ?このくらい当然だと思わない?」
「それはお母さんも一緒じゃん…」
少女がボソッと呟いた一言がババアの耳に入ってしまったらしく、ババアは顔を真赤にして少女に詰め寄る。
「私と!この男が!!一緒ですって!?!?」
「お、お母さ…」
「どういうことよおぉぉぉ!!!!」
少女の胸ぐらを掴んで激しく揺さぶるババア。少女は苦しそうに顔を歪める。
「や…やめて…」
「ねえカランティバ!!私の方が大切よね!!そんな見ず知らずの男なんかと!!母である私!!ねえカランティバ!!ねえ!!」
「うるせえなぁ…いい年して癇癪抑えられねえのかよクソババア」
「なんですってぇ!?」
地面に仰向けに倒れながら悪態をつく。喋るだけで呼吸が苦しくなるが、別にこの程度慣れっこだ。ババアが鬼の形相で睨んでくるが知らん。図体デカいガキンチョに優しくしてやるほど俺は優しくねぇ。
「なんだもヘチマもねえよクソババア。今何歳だ?50とかか?のクセして癇癪抑えれないとか、どんだけしょうもねぇ人生送ってきたんだ」
「なっ!こ、この…!」
「あっれぇー!?ボケ始まったかぁ!?言い返す言葉も出てこねぇか!!」
「ナンですッてェぇ!?!?」
怒り狂ったババアがこの世のものとは思えないような叫び声を上げる。しかし何故だか様子がおかしい。挙動がカクカクしだしたし、声も合成音声のようなものになってきた。
嫌な予感がすると思ったら、突然金切り声をあげて襲いかかってきた。
「やっぱこんなとこだと思ったぜ…!あでででで…さて、どうしよ」
体は動かない。でもまぁ、ダイジョブだろ。だって――
「イーブイ、”でんこうせっか”!!」
「イィィ…ブィッ!!」
後ろから突如飛んできた茶色の毛玉がババアをぶっ飛ばした。
壊れて動かなくなった機械のようにババアが庭の芝生の上を転がり、そして動かなくなった。
それと連動するようにソルロック、ルナトーンの動きが止まる。
「はぁぁ〜……死ぬかと思ったぜ」
「どうしてそんなに無茶するの…」
「ブイブイ…」
呆れたような顔をして地面に倒れたままの俺を見下ろすカランとイーブイ。その顔には、先程の怯える少女と弱りきったイーブイの面影は無かった。
おそらく、この空間は入り込んだ者の過去のトラウマを呼び起こすものだろう。だからこそカランは毒親に支配されていた子供時代を、イーブイは弱って死にかけていた頃を見せられていたのだろう。
「てかカランさんや、もうあのフリッフリの可愛い服着ねぇのか?」
「ふざけんな!もう二度と着ないよ!!」
「えー勿体ない。可愛かったのに」
カランが来ていたゴシックでロリータな服は気付いたら無限の彼方に消えており、気づけば、見慣れたダボッとした黒パーカーに戻っていた。イーブイもいつも通りのモチモチ具合である。
「か、可愛いって…褒めても絶対に着ないからね?」
「残念だな〜」
「そんなことより、今はどうやってここを脱出するかでしょ?」
「そんなこととはなんだ、お前はもっとゴスロリに誇りを持てよ。でもまぁそうだな。どないしよ」
てかピカチュウどこいんだべ。食われたんかな。
「まずはピカチュウ探さないとね」
「だな。あ、あとレンジャーの兄ちゃんも探したほうが良いかね」
「あー、たしかに」
「ブイッ」
二人と一匹で暗闇の中を歩いていく。右を向けばカランの肩に乗ったイーブイがいる。そのちょっと下を向けばカランがいる。
一人じゃないというだけで、不安はかき消されていた。今ならいくらでも歩いてゆける気がする。
「ところでさ」
「おん」
「私達、いつになったら出られるんだろうね」
「…」
「ピカチュウだって探さないといけないど、すれ違うかもしれないし…」
「……」
「……」
救いはないのか。
ビビヨン編が全く終わる気配がしない。あと二話くらいかかるんじゃなかろうか。今年中に一章まとめまで投稿できるかなぁ。
なんとなくだけどXのURL貼っときます。フォローしてくれたら喜ぶよ。
https://x.com/MARUM0929
何タイプが好き?
-
ノーマル
-
ほのお
-
みず
-
でんき
-
くさ
-
こおり
-
かくとう
-
どく
-
じめん
-
ひこう
-
エスパー
-
むし
-
いわ
-
ゴースト
-
ドラゴン
-
あく
-
はがね
-
フェアリー