空を突き抜けるほどの青空が広がるとある休日。
私は長楽天の書店、「三余書肆」に居た。
「はい、こちらですね。」
三余書肆で店番をしている隠書さんが本を渡してくる。
「はい!ありがとうございます♪」
「百珠さん今日はお休みなんですか?」
「ええ、これから金人港に行って美饌閣のケイおばちゃんの料理を食べに行ってからゆっくり本を読もうと思いまして」
「良いですね。お楽しみくださいね。」
「はい♪」
たわいもない会話をしながら私は本を受け取った。
「では失礼しますね」
「はい、いってらっしゃいませ」
そうして私は三余書肆から振り返って歩き始めた。
長楽天から金人港に行けるから取り敢えずそこまで・・・
ドスッ!
「きゃっ!?」
「ふぎゃっ!?」
そんな事を考えながら段差を登ろうとしたら足元に衝撃が走った。
幸いバランスを崩さずにすんだ私を足元を見た。
そこに居たのは薄紫の髪、薄ピンクのツノ、そして紫色の龍の尻尾を持った小柄な少女だった。
「あいたたたた・・・」
「だ、大丈夫ですか・・・?」
頭を抱えて痛がってるその子に手を差し出しながらながらそう尋ねた。
「む、すまんのうおぬし・・・」
そう言いながらその子は私の手に捕まりながら顔を上げて・・・
空色の瞳を私に向けてきた。
???side
その日、ワシはいつものように医館を抜け出し街に繰り出した。
のじゃが・・・
「白露様!」
遥か後ろからワシを追いかけてくる声。
ええい!こっそり抜け出したというのに何故バレた!
上手いこと物陰や狭い道を利用して何とか逃げ続けようやっと長楽天にまで辿り着いた。
「お待ちください白露様!!!」
が、それでもやはり追いかけてくる者を撒くことは出来ておらんかった。
ワシがその声に釣られて走りながら後ろを振り向いた時じゃった。
ドスッ!
「きゃっ!?」
「ふぎゃっ!?」
注意が後ろに向いたことで何かにぶつかってしもうた。
「だ、大丈夫ですか?」
ワシが痛みに悶えてある中ワシを心配する様な声が降ってきた。
目線を少し上に向けると屈んであるのかすぐそこに手が差し伸べられておった。
「つ、すまんのうおぬし・・・」
これ以上心配させまいとワシはその手を取った。
その者は髪や尻尾が薄紫で何処か優しげな雰囲気・・・以上に何処かワシに似たような感じのする狐族の者じゃった。
「いえいえ大丈夫ですよ〜あなたこそ大丈夫ですか?」
ワシの目を覗き込みながらそやつはそう尋ねてきた。
「うむ!礼を言うぞ。」
「それはよかったです♪」
そやつはニコニコと笑いながらそう言った。
「はじめまして。私は百珠と言います。」
百珠、そやつはそう名乗った。
「ワシも挨拶しよう。ワシの名は白露じゃ」
「白露・・・あ、もしかして丹鼎司の・・・?」
「む?ワシの名前を知っておるのか?」
「はい。白露様はとても有名な方なので・・・あれ?今日はどうして長楽天に?」
そやつは不思議そうにワシを見つめてきた。
「それはじゃのう・・・街を散策にきたんじゃ。」
「散策ですか!いいですね。私も今日はお休みで街に出てきたんですよ。」
「おお、なんと!それは良いな。外は気持ちが良いしな」
「はい。今日は天気が良いですしね。」
お互い笑いながらそう話す。中々話が合うのう!
こうも話しやすいやつは将軍以来じゃ!
「うむ!医館に籠っておるのは勿体ないからのう」
「医館に・・・ですか?」
「うむ・・・毎日毎日勉強や診察、おまけに大人どもの相手をさせられて退屈でかなわん!じゃから今日は抜け出してきたんじゃ」
「そうなんですね、・・・?あの、白露様。」
「む?なんじゃ」
「遠くの方から白露様を呼ぶ声が聞こえてくるのですが・・・」
あ・・・そうじゃった!今のワシは追われる身じゃった!
ドタドタドタ・・・
耳をすませば遠くから誰かがこっちに向かってきているのが耳に入ってきた。
さしてその音はこっちにどんどん近づいてきていた。
慌てて周りを見回すと書店の側に巻物が入った壺が置かれているのが目に入った。
「百珠よ!ワ、ワシのことは黙っててくれい!」
「ええっ!?」
戸惑う百珠の声を置き去りにしてワシは壺に身を小さくして潜り込んだ。
sideOUT
「ええっと・・・どうしましょう・・・」
突然慌てた様に隠れた白露様に置いて行かれた私は困惑していた。
するとドタドタと足音が聞こえたかと思うとそれが急に止まった。
見て見ればそこには医官のような格好をした人が周りをキョロキョロと見回していた。
(あ・・・恐らく白露様が言っていたのはあの人のことですね・・・)
「あのー、どうなさいました?」
意を決してその人に話しかけるとその人は慌てた様子でそう聞いてきた。
「あ、申し訳ありません。私は医館で働いている者です。医館から抜け出したびゃ・・・コホン、持明族のお方を探しております。」
「持明族の方ですか・・・」
「はい。すぐに連れ戻さなくては全く・・・」
(ど、どうしましょう・・・)
その方の様子と白露様との会話を思い出しながら悩む。
本当ならすぐに白露様の居場所を教えるのがいいんでしょう。
でも・・・
『外は気持ちが良いしな!』
『退屈で叶わん』
(・・・・・・)
「あの、その方ならさっき見ましたよ」
「本当ですか!どちらに!?」
私がそう話すと後ろの壺が微かに揺れたような音が聞こえた。
「ええっと、その方はあちらに隠れてました。」
私が指さしたのは・・・三余書肆の正面にある空いたスペース。そこは壁や門、小屋があるところだった。
「ありがとうございます!」
そう言うと医官の人はすぐにそこを探し始めたものの・・・当然そこには誰もいなかった。
「あれ?ここには誰も・・・」
「あれ?すみません。確かにここに隠れていらっしゃったのですが・・・いつの間にかいなくなったんでしょうか?」
「い、いえ。情報ありがとうございました。では!」
そういうと医官の方は直ぐに立ち去って行きました。
「白露様。もういってしまいましたよ。」
医官の方の背中が見えなくなったのを見計らって壺に向かって声をかけると壺が大きく揺れたかと思うと白露様が出てきた。
「ぷはぁ!おぬし!ワシを売ったのかと驚いたではないか!」
「す、すいません。こうした方がいいかと思いまして・・・」
「むぅ・・・まあよい。おかげで助かったぞ。百珠ただ・・・」
「?」
「何故嘘をついてまでワシを庇ったんじゃ・・・?」
「それは・・・白露様が楽しそうだったからです。」
「たのしそうじゃったからじゃと?」
「はい・・・楽しそうな白露様の顔を思い出したらついあんなことを・・・」
「そうか・・・改めて礼を言うぞ。ありがとうな、百珠」
「はい♪」
そう言って白露様はうーん。と体を伸ばしはじめた。
「白露様、これからどうするんですか?」
「うむ。おぬしのおかげで追ってくるものもおらなくなったからな。ただ・・・何をするのか全く決めておらん」
「そうですか・・・出したら白露様、よろしければ私と一緒に過ごしませんか?」
「何?」
白露様は驚いた表情で私を見た。
「良いのか!?」
「はい♪元々私1人でして・・・白露様と一緒でしたら楽しいかなたら思いまして。」
「よし!そう言うならば仕方ない!ワシも同行するぞ!」
「わぁ!ありがとうございます。
「待て」
「え?」
「様付けはやめよ。その・・・今日のワシ達は運命を共にするのじゃからな!す、好きに呼んでくれ」
どこか恥ずかしがりながらそう言う白露様。
「では・・・今日私は
「!初めてじゃ、ちゃん付けで呼ばれたのはな。」
「どうですかね・・・?」
「気に入った!それで頼むぞ!」
「分かりました!では行きましょう、白露ちゃん!」
「う、うむ!」
そうして偶然出会った私たちの休日が始まった。
百珠と白露の口調、これでいいんかな・・・