キラキラホープ☆プリキュア! 作:西堂みずみ
郁からプレゼントを受け取った翌日。
丁度その日は休日であり、切奈は私服姿で外へと出かけていた。
白地に赤い縁が入ったミニスカート、白と赤のセーラー服のようなシャツ、背中にはぬいぐるみっぽいバックという女の子らしいファッション。
――そしてその胸元には先日貰ったブローチがつけられていた。
「郁君からの贈り物、似合ってますか……ふふふーん!」
意中の相手から贈られたプレゼントを身に着けて嬉しそうにスキップしていく切奈。
……そう、切奈にとって郁は大好きな人なのだ。
きっかけは何時だったか、彼と初めて出会ってまだ間もない頃に起きた出来事がきっかけで気になる存在になったのが始まりだったか。
彼の事を思うだけで元気がわき出し、力がもらえる……それくらいに切奈の郁へと思う気持ちは強かった。
まさに恋慕の気持ちが
「大切な人からもらった物を嬉しがっているのはいいが、そんなに浮かれると落とすタッツ」
浮かれている切奈へ叱咤するように声をかけたのは、東洋の龍を模したぬいぐるみのような愛らしい姿をした存在だった。
このデフォルメ化した龍の名前は『タッちゃん』、切奈達にプリキュアへと変身するアイテムを渡した張本人である。
なんでもタッちゃんはかつてのプリキュアと共に"オロチ"なる存在と戦った伝説的存在だったという。
今は現代のプリキュアである切奈達と共にネタムーと戦っているのだが……生真面目すぎる性格ゆえにおせっかいが玉に瑕。
ついたあだ名が『オカンドラゴン』、とプリキュアをはじめとしたタッツンの存在を知る者達からは呼ばれているという。
そんなタッちゃんの言葉を聞いて、切奈は慌ててブローチを抑える。
「あわわわわ……! ブローチ、ブローチは……よかった、まだ落としてない」
「うぐっ、そんなに慌てることないでタッツ。お節介がすぎたでタッツ。悪かったでタッツ」
いつも真面目な彼女の慌てる様子を見て申し訳なくなったのか、タッちゃんは謝罪を述べる。
そうして切奈とタッちゃんは徒歩でとある場所へ向かっている最中なのだが、確認するようタッちゃんが目的地へ訊ねた。
「そういえば、何処で向かっているタッツ?」
「今日は鏡花ちゃんとミタマちゃんと一緒にショッピングのお出かけ。待ち合わせ場所は確か……そう、商店街入り口だよ」
「なるほどタッツ。あの"こうみょう商店街"でタッツね」
切奈が答えた目的地を聞いて、タッツは納得したように頷く。
光明市に存在する商店街……"こうみょう商店街"。
学園近くに存在するその街は八百屋や魚屋に肉屋をはじめとした色んな店が入っていた。
最近では各地でお店を開いているというコスメショップ『Pretty Holic』、味の評判がいいたこ焼き屋の第3号店『TAKOCAFE こうみょう商店街支店』、壊れた物は何でも直すという『四葉科学ハンディーマン』などといった新進気鋭なお店も増えているという。
二人が楽しそうに話題を広げていると、いつのまにか商店街の入り口近くまでやってきていた。
切奈がふと入口付近を見ると、そこには見知った二人の顔があった。
「あら、さっそく彼からのブローチつけてるかしら。似合ってるわ、切奈」
にっこりと笑みを向けて微笑むのは鏡花。
紺色の長いスカートをメインとしたファッションをしており、肩からショルダーバックを下げている。
「というか、今日はタッちゃんと一緒に来たのねー。ねえ、切奈に変な事言ったかなぁ?」
切奈と一緒に来たタッちゃんを怪しむのはミタマ。
彼女ハーフパンツにショートストッキングというボーイッシュっぽさを醸し出した服装をしていた。
「失礼な、ちゃんと謝ったタッツ! ……と、いけないタッツ」
そんな3人が揃った所で、タッちゃんは何かを思い出したように掌を拳で叩いた仕草をする。
するとタッちゃんの姿形が揺らぎ、すると一人の銀髪の少年へと変わっていく。
……どうやら周囲の人達に配慮して、幻惑として自分の姿を変えたのであった。
「タッツはちょっと行きたい用事を思い出したでタッツ。皆は三人水入らずで楽しむタッツ!」
「「「用事って?」」」
「タッツの推しているお店が今【おにぎりフェア】なるお祭りをやっているでタッツ!」
そういうと何処からか取り出したチラシを見せた。
それはとある街から暖簾分けしたという多国籍飲食店『プチおいしーなタウン』のフェア開催告知であった。
招き猫が特徴的なそのお店に向かうと告げた後、目にも止まらぬ速さで去っていくタッちゃん。
神秘と不思議を体現する龍のはずの彼の行動力を見て、切奈・鏡花・ミタマの三人は思っている事を異口同音で告げた。
「「「お、オカンドラゴン……」」」
まるで嵐の如く去っていたタッちゃんを見送った後、切奈達3人は向かうことにした。
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こうみょう商店街とは遠く離れたとある場所。
そこでは怪しい影が思案の声を上げながら悩んでいた……それは、ネラムーの幹部であるヤートンである。
「くっそぉ、昨日はプリキュアに負けてしまったが今回は違うところを見せてやる!」
昨日ネタミードを倒したプリキュアの光景を思い出しながら、ヤートンは次の標的を狙っていた。
何処かに妬ましい心を持っている存在はないか……そう考えていると、誰かの声が耳に入ってきた。
「くぅぅぅ……なんなんだ、あの商店街……一致団結にもほどがあるだろう!?」
「ぬぬっ、あの男は……?」
ヤートンが声のした方へ振り向くと、そこにいたのは一見普通のサラリーマンな男。
彼は悔しそうに商店街が賑わっている光景を見ており、その手には何らかの書類がぐしゃりと歪んで握られていた。
その書類には『ショッピングモール新プロジェクト』なる文字タイトルがチラリと見え、ヤートンは男が何となく察した。
サラリーマンの男は"ぐぬぬ"と顔を歪ませて、絞り出すような声を出した。
「なんなんだよ、ホントに……こんなんじゃ、こんなんじゃせっかく新規プロジェクトを任されたのに果たせないじゃないか!」
今にも男泣きしそうなほど悲痛な声を上げるサラリーマン……その彼を狙って、近づいてきたヤートンの甘く心地よい声音で呟いていく。
「いいじゃないか、その妬み……活用させてもらうぞ!」
「うわっ、なんだ、お前は!?」
悪魔が囁くような声音の言葉にサラリーマンが驚いて振り向くと、こちらに手を向けるヤートンの姿。
その手にはサラリーマンから漏れ出したであろうどす黒い何か――『妬みの力』が集まっており、そこを黒い種のようなアイテム・ジェラシードへと変えて、空高く解き放った。
……その先にあったのは、公園に設置されたパンダ型の遊具だった。
「さぁ、芽生えよ! ネタミード!」
そう言いながら拳の力を込めるヤートン。
彼の力と呼応するようにジェラシードはパンダの遊具へと入り込み、その姿を変えていく。
やがて、一匹の蛇を巻いたパンダのような見た目の新たなるジェラシード……『ユウグネタミード』がその姿を露わにした。
『ネタミード!』
ユウグネタミードは咆哮を上げた後、そのまま重い足取りで走り出していく。
目指す先はこうみょう商店街、サラリーマンが嫉妬の感情を募らせていたその場所であった。
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一方その頃、こうみょう商店街。
切奈・鏡花・ミタマの三人はたまに軽食を口にしながら散策していると、とあるお店が目につくのであった。
女の子達が出入りしているそのお店を見た鏡花が最初に提案した。
「今日はココにしましょ」
切奈達三人がやってきたのは、女の子に大人気なアクセサリーショップ『ナッツハウス in Kou-myo』。
なんでもとある街で【イケメン店長】で有名になったお店……の、精神を受け継いだお店の一つという触れ込み。
"なんだろうその謎の触れ込み……"、と思いながら切奈達はお店の中に入った。
店内に入ってきた彼女達を出迎えたのは、皆が思い浮かべるようなイケメン……ではなく。
「いらっしゃいませ! って、あっ、三人とも!」
三人にとって、それも切奈にとっては見知った人物の笑顔だった。
そこにいたのは接客している郁であり、体に身に着けているのはナッツハウスのロゴが入ったエプロン姿。
彼の意外な一面に頬を染めながら見惚れている切奈に変わってミタマが質問を投げかけた。
「なーにやってるんだよ、堂本君」
「ああこれか? 店の手伝いだ。ちょいとここの店主に頼まれしまってよ!」
ミタマの質問に対して自分の身に着けているエプロンを広げてそう答える郁。
ニカッと元気よく笑っている郁の笑顔を見て、さらに顔を赤く染める切奈……。
そんな働く郁君の姿にお熱な切奈を鏡花は肘でこずいて正気を取り戻させると、わざとらしく訊ねる。
「ねえ、切奈さん。エプロン姿の堂本君、素敵だと思わないですこと?」
「ひゃうわっ!? きょ、鏡花ちゃん!? いいい一体何を言いだしますの!?」
鏡花の言葉を聞いてあたふたと慌てふためく切奈。
そんな彼女を見て、首を傾げながら郁はふと訊ねる。
「なあ、光馬。オレの恰好って似合ってるのか?」
「ええ……えっと、その、私、その、ど、どう、もと、くんの、かっこ、その」
「おーい、光馬! 光馬! 深呼吸、深呼吸、さんはーいッ!」
挙動不審に混乱している切奈に対し、郁は彼女を落ち着かせるべく大ぶりなジェスチャーをしながら落ち着かせる。
彼のお陰か、すぐさまいつもの落ち着きを取り戻した切奈はもしわけなそうに頭を下げる。
「あ、ありがとうございます。堂本さん」
「いいって事。オレはいつもの落ち着きのある光馬の方が好きだからさ」
切奈にお礼を言われてニカッと笑う郁。
その後彼は思い出したかのように店の中を見せ始める。
「ああそうだ、折角来たんだから何か見て行ってくれよ!」
「ふふん、ちゃんと切奈に似合うもの選びたまえだよ。
「おうっ! あっ、まずはこれなんてどうだ! 桜色の真珠風なネックレスでこっちが……」
ミタマの茶化し混じりの言葉に対して全力全開の返事で答えると、さっそく店の商品を紹介し始める郁。
天真爛漫という言葉が似合う彼の様子に、鏡花はこっそりと切奈へ喋る。
「彼、純粋というか何というか……」
「でも、私はそんな彼がいいと思ってます……」
チラリと見えたのは意中の人への真直ぐ見つめる切奈の目。
しっかりとした何らかの強い意思を感じ取った鏡花は何処か嬉しそうに口元を綻ばせてた。
「私は、そんな恋に真っすぐなアナタがちょっとだけ羨ましいと思いますね」
誰にも聞こえないそんな声の大きなで、ニッコリと笑みを浮かべる鏡花。
郁・鏡花・ミタマと三人がかりで切奈の似合いそうなアクセサリーを選ぶ中……。
それは突如、やってきた。
それは大きな揺れだった。
巨大なものが歩く様な足音が聞こえてくる。
その足音と揺れに店内にいた切奈とはじめとした一同は異変に気付く。
「な、なんですか? この揺れ?」
「なんだ? 外から聞こえてくるが……」
一体何の揺れなのか、と郁は思わず店の扉を開ける。
すると、外から聞こえてきた声に一同は顔をしかめた。
「パンダが出たぞぉぉぉぉぉぉ!!」
謎の言葉を聞いて思わず驚く切奈、鏡花、ミタマの3人。
郁が何かと外を見れば、そこには大きなパンダの怪物……ユウグネタミードがこちらへと近づく姿だった。