俺の『個性』は天候を操る能力   作:上澤予報

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天候予報(ウェザー・リポート) その1

 

 『雄英高校』

 今宵その門の前には、無数とも言えるほどの受験者が群れをなして歩いていた。

 

 それもそのはずだ、この日はヒーローを目指す者達にとって最高峰の学び舎。雄英高校の受験日なのだから。人混みも一層高くなる。

 

 何せ、倍率300倍、生半可な人数ではない。その中の何割かが『記念受験』でなく、本気で雄英高校を目指しているのか知るすべはないが。

 

 その場に足を踏み入れる者達の中には、上澤の姿もあった。彼は手荷物をぶら下げながら、受付へとスタスタを足を進ませる。

 

「受験票をどうぞ。」

 

 受付の人間に対して、上澤はそっと受験票を差し出した。受付係は受験票をしっかりと確認して、説明会の会場への案内図を手渡す。

 

「案内板の通りに進めばたどり着きますが……案内は必要ですか?」

「……いや、大丈夫だ。空気感で分かる。」

(空気感?)

 

 空気感と言う聞き慣れないぬ言葉に、受付係の頭に一瞬ハテナが浮かぶが、直ぐに雰囲気的な意味だと理解し、呼び止めることもなく去りゆく上澤に「頑張ってください」と心からの言葉を送り見送る。

 

 上澤は軽く手を振り、その場を後にして説明会場へと向かう…………向かおうとしていた、だが次の瞬間彼の目の前を歩いていた小柄の、茶髪に目を隠した少しだけ陰気そうな少女がつまずいてしまったのだ。

 

「のこっ!?」

「っ!」

 

 このままでは少女が顔面から地面にずり落ちてしまう……流石にそれを見て見ぬふりフリは出来ない上澤だ。

 

 上澤は咄嗟に雲を生み出して、少女の顔面に潜り込ませる。少女はモフッという高反発な感覚を身体に受けてから、なんとか身体を起き上がらせる。

 

「こ、これは……」

「……俺の個性でエアバッグを作った。大丈夫か?」

 

 上澤は自分のほうが一回りふた回りほど背丈があるのをみこして、そっと少女の足もとへとひざまずく。

 

「だ、大丈夫……ノコっ。」

「そうか……気をつけろ、こんな所で転ぶと縁起が悪い。」

「う、うん……」

「じゃあな、お前も受験生なら、お互い頑張ろう。悔いは無いように、な。」

 

 そう言って上澤は助けるだけ助けると、少女からのお礼も聞かずに立ち去ろうとする……だが、それは少女の気持ちが許さなかった。少女が咄嗟に呼び止める。

 

「あ、あのっ!君、名前は……?」

「……上澤李東だ。上澤でいい、名字の方が呼ばれ慣れてる。」

「っ!私は小森希乃子で……ノコッ!本当にありがとう!助かったよ!」

 

 丁寧口調から少しどもってから、明るく声を上げた小森の言葉に、上澤は軽く笑みを浮かべて「よろしく。また会おう。」と一言つぶやいて、少女に手を振りながら歩き去っていく。 

 

 「また会おう。」その言葉に上澤は複数の意味を込めた、一つはそのままの意味を、持つ一つは頑張って受かって高校でまた会えるといいな。そんな意味を込めた別れの言葉だった。

 

「……!!のこっ!?」

 

 すると、小森はあることに気がつく。先ほど自分を助けた雲のエアバッグが2つに分かれ……手のひらに収まる水量の小さな小雨を浮かべて……虹を雲の間に虹を掛けたのだ。

 

「お、おぉ……!!」

 

 これは、上澤からの応援のエール。()()()()()()()()()()()だ。

 

 お礼される側って言うのは、かなり嬉しいものであるから……その気持ちを胸にヒーローを目指すものもいるほどお礼を言われるのは心地の良いものなのである。

 

 特に、雄英高校を目指す者にとっては。

 

 

―――

 

『今日は俺のライヴにようこそォッ!エビバディセイヘェイッ!!』

 

 実技試験説明会の場……ドームのような空間で一人まるで掛け持ったラジオかライブのような声を上げるのは、プロヒーローが一人『プレゼント・マイク』。

 

 彼としては緊張に殺気立った受験生の肩の荷を下ろさせる一声でもあるのだろうが……その重々しい空気感と、マイクの独特なテンションにより生み出されるのは……

 

「「「………………。」」」

 

 完全なる静寂だけだった。

 

『おぉっと!こいつァシヴィィィィ!!』

 

 だが、プレゼント・マイクはキッチリ正常運転。流石にパーソナリティのプロだ。

 

 ――そこから始まるのは、プレゼント・マイクによる実技試験の内容の説明。1から3Pの仮想敵ロボットを破壊し、ポイントを稼ぐのが主なシンプルなルール。

 

 ちょっとした揉め事がと同時に追加で説明されるのは、書類に記載された4体目の仮想敵ロボット。これは0ポイントらしく、所謂お邪魔虫的ギミックだ。

 

(ロボット……()()()が気になるな。)

 

 生半可な防水ならば、上澤は能力で幾らでもやりようはある。そうでなくても、物理で殴ればいい、そういう攻撃手段も彼は持っているのだ。

 

『最後に―――リスナーへ我が校の『校訓』をプレゼントしよう!かのナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』だと……!』

 

 プレゼント・マイクの会場に響き渡る声が、受験生達の耳を劈いた。

 

『更に向こうへ……Plus Ultra!皆、良い受難を!』

 

 その言葉に、受験生達が胸を貫かれ背を押される気分になったのは、言うまでもない話であろう。

 

 

 

 

 

 

 そこから幾千の受験生を乗せたバスが移動し、たどり着くのは雄英高校の構内に設置された『巨大な街そのもの』だ。

 

 その光景に口をあんぐりするものは少なくない……寧ろ多いくらいだ。上澤も、あまりの規模に発想のスケールで負けた気がしていた。

 

 だが、なんとか平然を装いスタート開始の合図を待つ。ここまで実戦に寄せた実技試験内容……1秒たりとも気が緩める時間はないと、上澤はなぜか言い切れる気分だ。

 

(何か分からんが……必ず何か雄英側から仕掛けてくる。()()()()()()()()()

 

 上澤が感じる空気感のままに、身体を準備させる……すると、ガヤも収まらぬうちに、プレゼントマイクの声が響き渡った。

 

「ハイ!スタートォッ!」

 

 多くの受験者がそのあっけらかんなスタートの合図に足をすくませる。

 

 だがその空気感を感じ取り、反射的に地面を蹴りあげ進む者が居た……上澤だ。彼は他の受験者と差をつけて、試験会場の街の中を突っ切っていく。

 

 

『HEYHEY!どしたどしたぁ!実戦じゃスタートの合図はナッシング!走れ走れェッ!」

「マジかよぉ〜!?」

 

 後方で聞こえる慌てた足音を振り切って、上澤は前へと進むと……やがて、仮想敵と遭遇する。

 

「標的発見!捕捉!ブッコロ――――」

 

 だが、それよりも早く上澤は動いていた。仮想敵の頭上には小さな黒雲が蠢き……やがてそこから稲妻が仮想敵目掛けて降り注いだ。

 

 稲光と共に衝撃と電撃が仮想敵を襲い、その動きを停止させる。黒焦げだ。

 

「……俺の『個性』は天候を操る能力。」

 

 天候を操る能力。それは雲を生み出しクッションを作るだけにはとどまらない。雨、雷、風等すらも発生させる事ができる個性。

 そして、その個性を応用した能力が一つあるのだ。

 

 

 次の瞬間、窓ガラスをぶち破り様々な仮想敵が現れ、目の前にいる上澤を取り囲むように現れる。

 

「標的……単体!」

「ブチ殺ス!」

「潰ス!!」

「……数が多いな、使うか。」

 

 彼の静かなるつぶやきとともに、彼の顔の横にまたも雲が作られそれはだんだん肥大化に形作っていく。

 

 作られるのは、全身が真っ白の、赤い瞳を持つ人型の幽霊のような存在だった。所々に雲を象ったパーツが施されている。

 

 上澤の個性は天候を操る、そしてそれを応用し、雲を操り人型にして分身のように操る事ができる。彼は、その能力を彼の個性と合わせてこう名付けていた。

 

天候予報(ウェザー・リポート)!!!」

 

「ブチ……!!殺ス!!」

 

 上澤の叫びとともに、仮想敵達が襲いかかってくる。

 

 

 そしてその仮想敵を、雲が生み出した守護霊――ウェザー・リポートが、その拳の連打で顔面を拳で撃ち抜いて、全機を沈黙させる。

 

「これが……俺の個性、俺の能力……ウェザー・リポートだ。」

 

 改めて、紹介しよう。

 

 上澤李東!

 個性『天候予報《ウェザー・リポート》』

 天候を操る事ができる!雨を降らせたり雷を落としたり、風を吹かせたり、その気になれば毒蛙も降らせられるらしいぞ!

 

 また、『ウェザー・リポート』と言う名の守護霊の様な分身も操ることができる!

 




第一話に耳郎との絡みを持って来といてアレですが、主なヒロインは小森ちゃんになると思います。
耳郎とは飽くまでも良き友人枠……的な感じで。
黒色くんェ……
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