魔法先生ネギま 吸血鬼x吸血鬼   作:謎の旅人

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第12話 仲直り

昼になる。つまり、昼食のときだ。俺は何気なく外を歩いていた。午後は何もないし、仕事もほとんどない。俺の手にはパンが2つと牛乳だ。これを見ればどこの張り込みの刑事だとつっこみたくなるだろう。

 

これにした理由は特にないのだが、食べ歩くにはこれのほうが楽だからというのがある。もし理由があるならこれだろう。教師としてはどうかと思うが、そういうことは俺には関係ない。

 

俺はパンの袋を開け、パンを食べる。口の中にパンの中に入っていたクリームの甘みが広がった。ほとんど和食の俺もパンくらいは食べる。そういえば、エヴァはどうしているだろうか? 一応、ゼロが作っているはずだ。そう昨日伝えたから。

 

さて、午後からはどうしようか。超との約束も刻々と迫っている。デートといえば遊園地だろう。超が喜ぶとは思えないが、どうだろうか? ダメだったらダメでそれでいい。俺の目的はその先なのだ。

 

なぜ俺が吸血鬼だと知っているか、だ。超はきっとまだ俺について知っているに違いない。最終的には超から目的を聞き、内容次第で決める。もしかしたら―――――――

 

 

「このバカああああぁぁぁぁっ!!」

 

 

そんな罵声が響いたと思ったあと、何かがぶつかり体に衝撃が走る。俺は何とか踏ん張り、耐えた。見れば金髪の少女。つまりエヴァだ。服は制服だが、髪の毛はボサボサだった。予想では起きてすぐに俺のもとへ来たのだろう。

 

 

「ここは学校だぞ。いきなりぶつかってくるな」

「貴様! なんで私を置いていったんだ!! 起きて横を見てもいなかった!! この寂しさが分かるか!? 分からないだろう!! 分からせるには一度、私がいなくなればいいのか!?」

 

 

エヴァが俺の胸倉を掴む。だが、身長の差があって俺がかがむようになる。周りからの視線も増えてきた。とりあえず口を塞ごう。

 

 

「この気持ちをむぐっ」

「さて、続きは別の場所で話そうか」

 

 

俺は手で口を塞ぎ急いでその場を後にした。後に残されたのはそれを見ていた生徒たちだけ。

 

 

 

 

 

 

 

俺は口を塞いだまま屋上に着いた。そのときにはすでに本来の姿に戻っていた。口をふさがれたエヴァは苦しそうにもがく。おっと、そうだった。このままでは窒息するな。

 

 

「ぷはっ、いきなり口を塞ぐな! まだ途中だったんだぞ!」

「なんでここにいる?」

「隣にいなかったからだ! それに私を起こさなかった! どうしてだ!」

「どうしてって、エヴァはテストでがんばったからな。今日ぐらいは休ませようと思って。それに昨日俺とは話さないと言っただろう。だから、隣に寝ることもできなかった」

 

 

俺はエヴァにそう話す。どこにも嘘はない。いや、あるな。横で寝られなかったのは、俺が酒を飲んだせいだ。これは言えないな。

 

 

「あ、ああ、そうだったな。私は昨日そう言ったんだったな。けど、もうそんなものはどうでもいい」

「でもな。それではあまりすっきりしないな」

「ふむ。そうか、そんなに罰を受けたいのか」

「い、いや、別にそういうわけではないが……」

 

 

少し上機嫌になったようだ。俺に罰を受けさせることで上機嫌になるなんて、エヴァにはS気があるのか? まあ、エヴァらしいが。というかよく似合っているな。でも、俺はMではない。そういうプレイでは相性は合わないな。

 

 

「とにかく! もうアレはどうでもいい! いいな!」

「分かった。だからそんなに大きな声を出すな」

 

 

俺はエヴァを静める。そして、頭を撫でた。相変わらずエヴァの金髪はサラサラとしていた。だが、感触を楽しんだと同時にエヴァと話さなくなりかけたときのことを思い出した。

 

思わず止め手を頭から離れようとするが、その前にエヴァが俺の手を押さえる。これはいいってことか? いや、いいのだろう。俺は撫でるのを再開する。

 

 

「ふふん。もっと撫でてもいいぞ」

「昨日は子供扱いされたと思って怒ったくせに」

「あ、あれは高い高いをされたからだ! 前に撫でられたときも私は喜んでいただろう」

「そうだったか?」

「そうだぞ」

 

 

エヴァが胸を張って言う。確かにそうだったかもしれない。うん、そうだな。だが、撫でられていることを胸を張っていいのか? まあ、可愛いからいいが。

 

 

「それでエヴァはどうするんだ? もうすぐで授業が始まる。俺は職員室に行かなければならない」

「む。そうか。だが別にさぼってもいいだろう。私はさっきまで1人だったんだ。その寂しさをまぎわらせろ」

 

 

いきなりさぼれと言われる。俺だってそうしたい。だが、そうはいかない。一応仕事をしている身。仕事とエヴァ、どっちを選ぶかと言われたらエヴァと即答するだろう。だが、それでも仕事を選ばなければならない。すまない。

 

俺は心の中で謝った。

 

 

「お願いだ。私は昨日の夜からずっと離れていたんだぞ。サボってくれ」

 

 

だが、そんな決意もすぐに崩れるのであった。上目遣いで潤んだ目で言われる。

 

 

「分かった。エヴァといるよ」

 

 

結局俺は仕事よりも恋人を選んだのだった。これは仕方がない。だって潤んだ目と上目遣いで言われたんだ。どんな決意も一瞬で崩れる。俺は携帯を取り出し、しずな先生を呼び出す。数回のコールが鳴ったあと、もしもしと声が聞こえた。

 

 

「ああ、しずな先生。実は急用ができまして、今日はもう帰らなければならなくなったんです」

『はい、分かりました。他の先生方にはそう伝えますわ。荷物はどうします?』

「ああ、置いておいてください。明日やることなどはもう終わっているので、家でやることはありません」

『ふふふ、さすがですわね。では、これで』

 

 

そう言って電話が切れる。はあ~、よかった。おそらく怪しまれていないだろう。それに俺はやることはやっている。何も文句はないはずだ。それに仕事をサボったなんて言われても、俺は吸血鬼。人間のシステムには全く関係ない。仕事は趣味感覚でやり始めた。

 

だが、それでも仕事はちゃんとしている。何の問題もないだろう。そういう意識で仕事をやるなというなら、金目当てで仕事をする奴はどうなる? 俺は人ために働くぞと思って働く奴は逆に少ない。そう考えると動機なんてどうでもいい。そうだろう?

 

ようは結果だ。人のためになる仕事で結果的に人のためになればいい。それに人のために働くという心は、いつの間にかできるはずだ。最終的にはそういう心も生まれる。

 

 

「さて、エヴァ。帰るぞ」

「……お前はそれでいいのか」

 

 

呆れ顔でそう言ってきた。ちょっと意地悪してやろうか。

 

 

「ん? 俺は仕事に戻っていいんだがな」

「くっ! 卑怯だぞ!」

「冗談だ。今は昨日の分までエヴァといるさ」

 

 

そう言うとエヴァは頬を赤くし、顔を伏せてしまう。どうしたんだ? まあいい。俺は周りを見回す。ここは屋上。誰もいない。

 

 

「じゃっ、帰るぞ」

 

 

俺はエヴァの手を繋ぐ。

 

 

「い、いきなり手を繋ぐな! びっくりするじゃないか!」

「別にいいじゃないか。それより俺のオリジナル魔法が使えないからな。別の魔法を使う」

「そうなのか? まあ、あのめちゃくちゃな魔法が使えないのはうれしいな。くくく、これで私に勝機が見えた!」

 

 

ひどいことを言うな。確かにオリジナル魔法はチートだ。その魔法があれば俺に勝つ奴はいない。誰1人としても。だが、もう使えない。いや、どういうわけか使えなくなった。これは神の仕業だろうか?

 

だがまあいい。あってもそう戦闘に関わることは少ないだろう。それにあったとしても使える魔法はいくらでもある。

 

 

「え~と、座標は俺たちの家だな」

「何をする気だ?」

「転移魔法だ。魔法名はトランスポーター。オリジナルではないがな」

 

 

俺たちの足元に魔方陣が現れる。現れた魔方陣は一層輝き、俺たちは光に包まれる。目を開けたとき、次に見えたのは俺たちの家だった。ふむ。どうやら成功のようだ。初めてだったが、上手くできたな。

 

 

「へ~、相変わらず変な魔法を使うな。私も使いたいものだ。なあ、私にもできるのか?」

「多分無理だな。おそらく俺以外に使える者はいないだろう。そして、俺はエヴァたちの魔法を使えない」

「本当に不思議だな。同じ吸血鬼でも色々と違うし、魔法も違う」

「まあ、そうだな」

 

 

俺は転生者だからな。本当は原作知識もあるんだが、700年も生きていたせいでほとんど忘れてしまった。だが、もうどうでもいい。ただ好きに生きるだけだ。それに俺という存在がエヴァと出会い、恋人になった時点でもう原作どおりには動かない。

 

 

「どうした? 考えごとか? やっぱり私のために仕事をさぼったことを気にしているのか?」

 

 

しゅんとなるエヴァ。俺はエヴァの頭を撫で、そうではないと伝える。

 

 

「ちょっと昔のことを思い出しただけだ。エヴァが気にするようなことはないさ。それより今からどうする? まだ昼頃だ。時間はたくさんあるぞ」

「そうだな。なら家でゆっくりしよう。私は登校地獄にかかっているということになっているからな。下手なことをして色々とばれたくはない」

「エヴァにしてはよく考えているんだな」

「む。私をバカにしているのか? こう見えても600年生きているんだぞ。そういうことには知恵が回る」

 

 

俺が一緒にいたときは危険というものは、俺がほとんど請け負ったが、1人だったときは大変だったはずだ。なにせ1人でどうにかしなければならなかった。こんな小さな体でずっと1人で……。

 

 

「エヴァ、これからもずっと一緒だからな」

「い、いきなり何を言うんだ! 一回死んでみろ!」

「俺たちみたいな吸血鬼しか通じない冗談だな」

 

 

顔を真っ赤にし言う。俺と目が合うとエヴァは顔を伏せ、視線が合わないようにした。その両手の指は指先同士をつんつんとしている。これは照れているな。

 

 

「ほら、中に入るぞ。そういえば昼食は食べたか?」

「ちゅ、昼食? い、いやまだ食べてない。起きた時は机には何もなかったし……」

 

 

おい、ゼロ。ちゃんと昼食を用意しとけよ。昨日そう言ったんだかな。じゃあ、昼食を用意しないとな。この前みたいに怒ると怖いからな。手早く作れるものを作るか。俺は家に入り、早速準備をする。

 

 

「作ってくれるのか?」

「ああ、もちろん。すぐに準備ができるからな。テレビでも見ていてくれ」

「いや、私も手伝う。私ももっと料理を上達したいからな」

「熱心だな。なら、お願いするよ」

 

 

2人で料理を作る、か。こういうのは悪くないな。でもこれはどちらかというと、恋人ではなく夫婦だな。俺たちはすぐにできる料理を作った。エヴァには色々と手伝ってもらったので、想定していた時間よりも早く作りおわった。

 

料理を皿に移し、リビングにあるテーブルに置く。ゼロはどこだとついでに探すと棚の上でまだ寝ていた。全く寝すぎだ。一応起こそう。

 

 

「ゼロ、起きろ」

「ン? ドウシタンダ?」

「どうしたじゃない。お前が起きなかったせいでエヴァが飯を食べていない。昨日用意しとけといっただろう」

「アレ? モウソンナ時間ナノカ。昨日飲ンダセイダナ」

 

 

全くこれからはゼロに飲ませないほうがいいな。飲むときは次の日は何もないときに飲もう。ゼロはあくびをしながら起き上がる。人形なのにこういう仕草をするなんてな。やっぱり魂というものはあるんじゃないかな。ほら付喪神だっているし。

 

 

「ソレデナンデ慎也ガココニルンダ? マダ帰ル時間ジャナイダロ」

「エヴァが起きたとき、俺が居なかったのが寂しかったらしく、一緒にいてくれと言われたんだ」

 

 

俺はチラッとエヴァのほうを見る。一応小さく言ったんだが、聞こえていたらしく耳まで真っ赤にしたエヴァが俺たちのほうまで来た。

 

 

「な、なんで言ったんだ!? これじゃチャチャゼロの主としての立つ瀬がないじゃないか! なんだ寂しがり屋の最強の吸血鬼って! 私の面目がない!」

 

 

 

エヴァは両手を胸の前で握り、顔をさらに真っ赤にし言う。思わず、可愛いなと思ってしまった。これが魔法世界で恐れられたあの闇の福音、エヴァンジェリン.A.K.マクダウェル。俺の前ではそのかけらは感じられない。

 

だが、それは俺も同じだ。人間の社会で人間のルールに縛られている。俺は未だに賞金首。そんな俺が教師をやっている。人のことは言えない。というか、俺という犯罪者が生徒の教師をやっているなんて保護者が聞いたら、どうなるだろうか? 

 

考えたくはないな。社会問題どころではない。もしかしたら、軍が動くかもな。魔法世界からも軍が来るかもれない。だが、それでも俺が勝つがな。

 

 

「大丈夫だ。俺だってこんな可愛いエヴァの姿を他の人間に見られたくない」

「か、可愛い……。ふ、ふん! こんな姿は誰にも見せない! 恋人だけの秘密だ」

「そうだな」

 

 

俺とエヴァの距離が近くなり、見つめ合う。その距離はついにゼロになり、エヴァが腰に手を回す。身長の差があるので俺はエヴァの頭を抱く感じになった。

 

 

「イイトコ悪イガ、俺ノコトヲ忘レテナイカ? ソレニ御主人ハ恋人同士ノ秘密トカ言ッテイルガ、俺モ見テタゼ」

「のわっ!? チャチャゼロ! いたのか!?」

「ナンデ慎也ハ俺ノ存在ヲ分カッテイテ、御主人ハ分カラナインダ? トイウカ、俺ト慎也ガ最初ニ話ヲシテイタンダガ」

 

 

どうしてゼロはエヴァに何回も忘れられるのだろうか。ちょっと不憫だ。だが、ゼロ。俺は決してそうならないからな。安心してくれ。心でそう思った。

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