今日はクラス成績発表日だ。朝起きたとき、すでにエヴァは起きていた。俺が起きる時間は早い。エヴァと一緒に朝食を取るのでまず俺が起き、俺の準備が終わったあとにエヴァを起こす。だが今回は違う。ちょっと早く起きただけではなく、完全に目が覚めた状態だった。
「今日はどうした? もしかして眠れなかったのか?」
「い、いや違うぞ。別に今日のテストの結果が気になって眠れなかったとかじゃないんだ。ほ、本当だぞ!」
エヴァは顔を真っ赤にし言う。いやいや、もう自分から言ったようなものじゃないか。まさかエヴァがこういうことで眠れなくなるとはな。やっぱり体が10歳だからか? 魂は体に引かれるとか逆に体に魂は引かれるやらがあるからな。
「そうか。まあ、あまり授業中は居眠りするなよ」
「分かっている。できるだけ我慢する」
「まあ、午前中までだけどな」
「む。そうだったのか?」
「そうだ。午後はテスト成績の発表があるから」
この学園では午後は授業をし、午後からクラス成績が発表される。答案用紙はそのあと返却されるのだ。
「ふ~ん、そうだったか。まあ、クラスの成績など興味がなかったからな。私が興味を持っているのは自分のテストの成績だけだ。くくく、楽しみだな」
エヴァの目的は自分の成績だけ。理由はその成績で春休みにデートをするか決まるからだ。俺も楽しみだ。俺はベッドから出る。エヴァは未だ上半身だけを起こしているだけだ。
「じゃ、起きるぞ」
「ん、分かった。だがその前にすることがあるだろう。ん」
エヴァが目を瞑り、唇を突き出す。俺も目を瞑り、顔を近づける。俺の唇とエヴァの唇が一瞬だけ重なる。
「ちゅ……」
「……おはよう、エヴァ」
「ん、おはよう。けど、ちょっとだけか? もうちょっと、その、やってもよかったんじゃないか?」
顔を逸らし目線だけをこっちに向け、布団を指で弄りながら言ってきた。そんな可愛いしぐさをされ、その頼みを拒否することはできない。
「ん、ちゅ……ちゅう、んん……んむ……むちゅる……んむ……はむ……」
さっきは一瞬だったが、今度は深く深くキスをする。互いの唇は唾液により濡れる。
「ちゅ……あん……はむ……んく……んじゅ……」
さらにと舌と入れる。
「んんっ!? んん……ちゅ……あむ……んく……んく……」
一瞬、驚くエヴァだが、自分の舌と俺のと絡ませてくる。
「ちゅ……ぷはっ」
唇を離す。興奮したせいでエヴァの体温は高くなる。その額には汗が流れていた。俺もまた汗を流していた。エヴァの目はとろんとしていた。自分たちの体勢をよく確認すると俺がエヴァを押し倒していた。
「気持ちよかった……」
「俺も気持ちよかった」
「だが、やっぱり朝は最初の軽いのがいい。興奮しすぎて色々と濡れたからな」
少し、恥ずかしげに言う。俺もこういうキスは朝にしないほうがいい。朝してしまうと興奮して、エヴァにそういうことをしたくなってしまう。
「シャワー浴びるか?」
「そうしたいが、この家のは使えないからな」
「ああ、そうだったな」
「だけど、やっぱりちょっと浴びたいな」
う~ん、俺がエヴァに内緒に作った風呂を使ったほうがいいかな。でも、それを言ったら比喩なくぐちゃぐちゃにされそうだ。だが、あまり彼女を汗だくのままにしておくのはちょっと耐えられないな。
「なあ、なら家の傍にある建物の中にある風呂場に入るか?」
「ん? そんなものがあったか? 15年くらいここに住んでいるが、見たことがないぞ」
「それは当たり前だ。俺がここに来たときに作ったからな」
俺はエヴァの次の行動に警戒した。だが、何もない。
「ふーん、そうか。そんなのを作っていたなら言ってくれ。毎日あの大浴場に行くのは疲れる」
ただそう言うだけだった。俺はなぜか聞きたかった。
「おい、怒らないのか? これを作ったのはエヴァと風呂を一緒に入らないようにするために作ったんだ」
「ふん。そのくらいで怒るか。私としても前はああ言ったが、いざ入るとなると恥ずかしいからな」
ちょっと頬が赤いまま言う。一緒に入るというところを想像したのだろう。俺もまた想像する。確かに恥ずかしいな。俺も顔が熱くなる。それを誤魔化すために時計を見た。
「ほら、そろそろ時間だ。入ってこい」
「分かった。入ってくる」
エヴァはベッドから出て、外の俺が作った風呂場へと向かう。さて、俺は今日の用意をするか。俺はスーツを取り出し、それに着替える。これが俺の職場の服装だ。ちょっと若い人間には似合わないが、肉体操作で年齢を上げる。だから、これでいいのだ。
俺はリビングに行く。テーブルにはすでに朝食が用意されている。全てゼロが作ったものだ。
「今日はちゃんとやっているな」
「当タリ前ダ。コノ前ハ酔ッテイタカラダ。ソウイエバ、御主人ハナンデソトニ行ッタンダ?」
「ああ、シャワーを浴びに行ったんだ。あの外にあるな」
「ケケケ、御主人ハ怒ラレタンジャナイノカ?」
包丁を持ち、笑いながら言ってきた。ゼロよ。残念だな。お前の読みははずれているぞ。逆に俺も笑みを溢す。
「エヴァは別に怒らなかったぜ」
「ウ、ウソダ! アノ御主人ガ怒ラナイナンテ! ソレハ本当ニ御主人ナノカ?」
どうやら怒らなかったのが、それだけ信じられなかったようだ。おい、エヴァ。お前はなんでそんなに従者に信じられてないんだ? 逆に本当にお前たちはそういう主従関係にあるのか信じられないぜ。
「あれはエヴァだ。偽者じゃなかった」
「……ナンデ分カルンダ?」
「逆になんで従者なのに分からないんだ?」
「…………」
「…………」
互いに無言になる。別に俺のせいではない。ゼロが何も言えなくなったせいだ。そうなっていると誰かが外から入ってきた。見ればバスタオルを体に巻いたエヴァだった。
「おい! どんな格好で来ているんだ!」
「し、仕方がないだろう! 着替えがないんだ! 慎也かゼロを呼ぼうにも聞こえない! だったらもうもうこの格好で行くしかないじゃないか!」
「なら、早く取りに行け。風邪引くぞ」
エヴァはバスタオルがはだけないように慎重に取りに行った。あんな姿のエヴァもいいな。
「オイ、テメエ何御主人デ発情シテンダ?」
「いきなりなんてことを言うんだ。別に発情なんてしてない。ただあんな姿もいいなと思っただけだ」
「ソノコトヲ言ッテンダ。全ク、イクラ恋人デモ一応俺ハ御主人ノ従者ダゼ。御主人ヘノ危険ハ排除スルゼ」
持っていた包丁の先を俺に向けてくる。全く危ないな。包丁を人に向けるなと教わらなかったのか? いや、教わっても向けるだろう。こいつは悪人であることを誇りに思っているようだからな。
俺は気にせずに椅子に座った。ゼロは包丁を仕舞う。さて、もう料理はできている。あとはエヴァを待つだけだ。
「待たせた」
制服姿のエヴァがリビングに来る。手にはさっきまで体に巻きつけていたバスタオル。それをゼロに渡した。
「持っていってくれ」
「人使イガ荒イ御主人ダゼ」
そう言いながらも受け取り、持って行く。
「ではいただこう。いただきます」
「ん、いただきます」
ちゃんと手を合わせたあと、エヴァは朝食を食べ始める。俺もまた食べ始めた。少し時間もなかったのですぐに食べた。食べた後、その皿などをキッチンの流しに片付け、家を出た。
「ふわあああ~」
隣でエヴァが大きく口を開け、あくびをする。
「でかいあくびだな」
「!! み、見てたのか。だが、そうはっきりと言うな。私は女の子だ。そういうのを見られるのは恥ずかしいんだ」
少し頬を染めチラッと俺を見る。それに対し俺は頭を下げた。
「すまん。デリカシーがなかったな」
「別にいい。だが、今度は言うなよ」
エヴァに注意を受ける。今度から気をつけないとな。
「な、なあ、今日のテストの結果が良かったら、アレをするんだろう?」
テストの成績が良かったらデートをする。それがテストでやる気を出した理由。俺の作ったテストでもいい点を取っていたので、確実にデートに行くことが確定だ。俺はエヴァをからかうためにわざととぼける。
「ん? アレってなんだ?」
「そ、そのアレだ! アレ! 分かるだろう!」
「う~ん、分からないな。口ではっきり言ってくれ」
そう言うと恥ずかしいのか足と足を合わせもじもじとする。おい、ちょっと待て。そういうポーズというかそれもいいんだが、デートと言うのがそこまで恥ずかしいことか? やっぱり乙女心というのはよく分からん。
他の子もそうなのだろうか? あまりこういう経験はないからな。いや、大学時代に同級生の女の子から誘われたことがあった。もちろん俺はエヴァ一筋なので断った。先生になってからもそういうことはあったが、もちろんそっちも断った。
さて、そろそろからかうのを止めよう。またこの前みたいになりたくはないからな。俺はエヴァの頭に手を乗せる。
「冗談だ。デートだろ?」
「そうだ! 全くどうしてそう意地悪するんだ! からかわれる私を見るのがそんなに楽しいか!?」
エヴァが顔を赤くし、頬を膨らませ怒る。
「ごめんごめん。デートではどこにでも連れて行ってやるから」
「……甘い物をたくさん食べたい」
「分かった。なんでも頼んでもいいし、買ってもいい。これでいいだろう?」
「それでいい。ほら、行くぞ」
エヴァが俺の手を引いて先に行こうとする。どうやら怒りが収まったらしい。まあ、本当に怒ればこんなに簡単には収まらないし、殺気が入り混じるだろう。この怒りは恋人同士での怒りだ。
他の奴が俺と同じことを言ったら、あっという間に殺気に飲まれるだろう。その後はもう知らん。言ってみれば分かる、だ。前を歩くエヴァのチラッと見える顔は頬をほこらばせていた。
「さて、問題は超だな」
「ん? 何か言ったか?」
小さく呟いたが、どうやらエヴァに聞こえてしまったらしい。
「いや、なんでもない」
「そうか」
超のことを言うわけにはいかない。もしかしたらエヴァが嫉妬に狂い、超を殺すかも知れない。俺にとって大事なのはエヴァとアスナくらいで他はどうでもいいのが、超は俺の生徒でもある。それだけではなく、超には親近感がわくのだ。
頭の中で超とのことを考え、登校した。途中でエヴァと別れ、30代の姿になる。ここからは先生だ。気持ちを切り替える。
「おや、慎也先生。おはようネ」
「超 鈴音、か」
「む、せっかくの美人にあいさつされたのにその態度はないヨ」
超は頬を膨らませ言う。
「自分で美人とか言うな」
「ふふふ、冗談ヨ」
手を口にあて、微笑む。
「そういえばもう少しで春休み。いや~、楽しみネ」
わざとらしく俺のほうを見て、言ってきた。ふむ。ちょっとこいつにもエヴァみたいにからかおうか。こいつには色々と脅されたりとあったからな。
「なにが楽しみなんだ?」
「おや、忘れたカ? ほら春休み最初の日。これで分かるはず」
「いや、分からないな。教えてくれ」
「さすがに泣くヨ!」
目に涙を溜めながら言う。ちょっとやりすぎたか? いや、まだだ。でもあまり意図的に女性を泣かすという趣味はない。そこまではならないようにからかおう。
「冗談だ。覚えている。だから、超 鈴音の口からそれを言ってくれ」
「うう~、分かた。言うヨ~」
こちらもまた足と足を合わせ、もじもじとする。だからなんでデートという単語を言うのに、そんなに恥ずかしがるんだ? 本当によく分からん。やっぱり男の俺では一生乙女心を理解できないだろう。いや、そもそも男に理解できないものだろう。
「で、デート……」
それは小さな声だった。だが俺にははっきり聞こえた。俺は恥ずかしながらそれを言った超が可愛く思ってしまった。だから、さらに続けた。
「うん? もうちょっと大きな声で言ってくれ」
「で、デート!! これでいいカ!? 聞こえなかったら今すぐ私の作た機械を頭に埋め込んでやるヨ!」
うん。さっきのエヴァみたいだ。だが、こっちの場合、脅してきたが。
「すまないな」
「ならデートで甘い物をたくさん食べたい」
「いいだろう。他に何かあればそれもできるだけ買ってやろう」
しまった。つい男の意地として張り切ってしまった。まあ、いいか。金だってほとんど使っていないのでたくさんあるからな。
「それを言てしまていいのカ? 私は甘いものとなると、暴食になるヨ?」
「それでもだ。だが、もちろん自重してくれよ」
そうこう話しているうちに時計を見ると、そろそろ急がないといけない時間だった。あと5分で朝礼が始まる。急がなくては。
「超 鈴音、俺はもう行く。言いたいことがあれば、放課後だ。午後はほとんどなにもないから、そこでな」
「もうないヨ。楽しみにしているカラネ」
超は微笑みながらどこかへ去った。それを見届け、俺も職員室に急いだ。着いた時にはもうみんな集まっていたが、ギリギリ朝礼が始まる前に来ることができた。