あれから数ヶ月が経った。毎日人間と同じ食事を取っていたのだが、俺の体は人間を食べたいと思うことはなかった。つまり一ヶ月に一度人間を食べなくても、毎日食事を取れば全く問題ないということであった。
このことは喜ばしいのだが、不満がある。それは俺とエヴァの関係だ。数ヶ月が経つのだが、エヴァの俺への態度は大して変わらなかった。けれど我慢するしかないだろう。俺はエヴァに嫌われているというわけではないからだ。まだ十分にそういう関係になれる可能性があるのだから。
「なあ、慎也」
俺はエヴァに呼びかけられて首だけを回した。現在は夜でしかも外。室内ではない。さらに俺は例の狼の姿になっている。そしてエヴァは俺の体を背もたれにして座っていた。これはエヴァが寝るときはベッドで寝るよりもこうして寝たほうがぐっすりと眠れるということでこの姿になっている。
俺はエヴァに触れることができるという下心もあってそれを受け入れたのだ。なので毎日寝るときはこの姿になってエヴァの背もたれ、枕、ベッドになっていた。
「こうして旅をするのはいいが、正直に言っていいか?」
しゃべることのできない俺はうなずく。
「暇だ。とてつもなく暇だ! やることがない! 第一、旅なんて私一人のときにやった! だから別のことをやるか目的が欲しい!」
なるほど。エヴァの言いたいことは分かったし、共感できる。俺も主にヨーロッパを中心にだが、何度も旅をした。何度もやってきたのは昔と比べてどう変わったのかという楽しみがあったからだ。こういう昔のことは前世の知識でしか知らなかったので実際見てみるのだ。
実際に見てみると色々と違って面白い。まあ、違うのはこの世界が俺のいた世界と違うからということもあるが。
「慎也だってそうだろう? お前の噂は私が人間だった頃のときから轟いていたんだ」
エヴァの気持ちは分かるが先のとおり俺は知識との違いを楽しんでいたので別に暇ではなかった。
「あ~暇だ暇だ~!」
エヴァが俺の体にうつ伏せになって上半身だけを乗せる。そして手足をバタつかせた。見た目が見た目だけにその行動はひどく似合っていた。もしもそんなことを言えばエヴァが殺す気で怒るな。
だが、こんな無防備な姿を見せてくれるというのは、少しは俺のことを信用してくれているからだろう。それがうれしかった。だが、見た目とは反対に服が大人を意識してなのか露出度が高いのだ。おかげで下着などが時折チラチラと覗くのだ。
相手は異性で俺が好きになった子である。なので正直に言って、ほぼ毎日が欲と理性の戦いだ。もういっそのこと一度でも欲を発散すれば楽になるのだが、俺とエヴァの関係はまだ旅仲間でしかない。そういう関係ではないのにそういうことはできない。
「いっそのこと世界征服でもやれば面白いかもしれないな」
おい、なんて物騒なことを言うのだ。確かに俺とエヴァなら簡単に実現できる。たとえ前世の文明力があったとしてもできるだろう。だがな、俺にそんなことをする意思はない。そもそも戦いなどということはあまりやりたくはないのだ。そりゃあ、転生したばかりは若気というか、死んだときは大人だったから若気と言っていいのか分からないが、まあ子どもみたいに戦いたいなんて思っていたさ。
でも、色々な経験などしたり長生きするとそんな気が失せた。そんなことよりものんびりとしたほうが面白いと感じた。故に『力』と名の付くことに関してはほとんど無関心なのだ。
それに世界征服をするということは歴史を大きく変えるということだ。それは俺にとって望ましくない。未来を知っているからこそ俺はやりたくない。俺は魔力弾をいくつも周囲に展開させた。全ては俺を、いやエヴァを囲むように展開している。
「わ、わああっ!! 嘘だ嘘!! 冗談だから止めろ!!」
その言葉を合図に全て消す。もちろんのこと俺にエヴァを傷つけるなんてことは無理なので、見かけの脅しだ。
「だけど、それほどやることがないんだ。私も考えるが慎也だって何か考えてくれよ。ふわあああ~~~。眠くなった……」
エヴァは大きくあくびをしてそのまま寝る準備に入った。空には星空が広がっていた。前世では見られない光景だ。転生してよかったと思えることの一つだ。
「おやすみ」
エヴァはそれを言うとすぐに眠りについた。俺は約三十分ほどその寝顔を見て満足して眠りについた。それはもうぐっすりとだ。本来なら猛獣や物取りに襲われないようにどちらかが起きておくのだが、残念なことにここにいる俺たち二人には無意味だ。
ぐっすりと寝ていてもすぐさま対応できる。そして余裕を持って圧倒できるのだ。なにせ冗談抜きで世界征服できるのだからな。奇襲などの不意打ち程度は片手でも、いや指一本でも十分だな。
寝ている間何もなかった翌日、まず最初に俺が目を覚ました。これはいつものことだ。エヴァはあと一時間ほど寝る。俺よりも先に寝ていて起きるのが遅いというのはどうなのだろうかと最初の頃は思っていたのだが、最初に起きることによりすばらしいものがあると分かった。
それはもちろん好きな相手、エヴァの寝顔である。寝る前に見るのだが、朝見る寝顔は別である。寝る前に見るのは寝たばかりの寝顔で、こちらはぐっすりと寝て夢を見ていた後の寝顔だ。ちょっと難しく例えればこの寝顔を歴史のある寝顔とすれば、寝る前に見た寝顔は歴史の始まりの寝顔だ。
「ん……」
エヴァの小さく開いた口から小さな声がこぼれる。その声は大人びた色気を持っていた。ちょっとドキッとさせられる。エヴァの見た目は幼いがそれでも大人びた雰囲気を持つ。
「ん、寒、い……」
エヴァが俺の尻尾を掴み布団代わりにする。いつもこうだ。朝は寒い。それをエヴァは分かっているはずなのに露出度が高い服を着ているのだ。今まではまあいいかと思っていたが、エヴァの体調が崩れるは避けたい。今度からは小屋を作ってその中で寝よう。
というか、俺よ。なぜそれをしなかったし。まあ、まだエヴァが体調を崩す前に気づいたのだ。気をつければいい。さて、十分にエヴァの寝顔を堪能したことだし、そろそろ起こそうか。俺は布団代わりに使われている尻尾を動かし、エヴァの体を少し強めに叩く。
一度叩くだけではエヴァは手を少し動かすくらいの身動ぎしかしない。これはいつものことだ。往復ビンタのように何度も尻尾で叩いた。それでようやくゆっくりと目を開けた。
「ん、ああ……もう朝か。おはよう~」
エヴァが俺の体の上で目元をこすりながら言った。そういう仕草も可愛い。
「なあ、いつも思うんだが、こんなに乱暴に起こさなくていいんじゃないか? そんなにしなくてもちゃんと起きるぞ」
起きなかったからこんな風に起こしたんだ。エヴァが体を起こしたので俺は四肢で立ち上がり、全身を使って伸びをする。伸びをし終わると魔法と具現化能力を同時使用した。俺の体は狼から人になったと同時に服を着た状態になる。うん、やっぱり人型のほうが楽だな。
さてと、まずは朝食だ。俺は俺たちの近くにある袋を手に取る。この中には袋いっぱいに食べ物が入っている。袋の口に手を入れてそこからいくつか掴み取った。取り出したのは俺の前世に劣る硬くて味の悪いパンだ。だが、その感想はこれらのパンよりも美味いパンを食べた俺だからこそ思うものだ。
他の者たちはそこまでまずいとか思っていないだろうな。それはエヴァもまた含まれる。ああ、なんだかエヴァにもっと美味しいものを食べさせたい。こんなパンを食べさせたくない。どこか安住の地でも見つけたら米や小麦でも自分で作ろうか。そっちのほうがいいかもしれない。
俺はエヴァに軽く投げる。それを両手でキャッチした。
「いただきます」
「い、いただきます」
エヴァも俺につられてそう言った。俺はパンに噛り付く。硬いパンを一口噛み切ると何度か咀嚼した。うん、やっぱり硬いな。あと不味い。やっぱり貴族あたりはもっと美味いパンを食べているのだろうか。
そういえば、エヴァを追う中に貴族がいたな。ちょうどいいな。襲ってから屋敷の食べ物を奪おう。うん、そうだな、そうしよう。そんなことを考えている俺の隣で、エヴァは両手でパンと取って硬いパンをどうにかして食べようとしていた。
「くっ、いつも思うがちょっと硬くないか?」
「そうだな」
「うう~~~!!」
力を込めて噛み切ろうとするがやはり中々そうはならない。エヴァはついに噛み切ることをあきらめた。そして、俺にパンを差し出す。
「慎也! 千切ってくれ!」
そう言った。俺は受け取って一口サイズにするとそれをエヴァに与える。一口サイズのパン屑を受け取るとエヴァは満足そうに食べ始めた。エヴァの口の中のパン屑を食べ終わるとまた俺が千切ってエヴァにそれを渡す。それをエヴァが食べる。エヴァのパンが全部なくなるまでそれが続いた。
「ふう、えっと、ごちそうさま」
「ああ」
食べ終わると俺も食べた。俺はすぐに食べ終わる。もちろんのこと腹は膨れることはなかった。仕方ない。
「ごちそうさま」
俺もそう言う。こういう礼儀は大切だ。人間を食べるときもちゃんとしていた。
「さて、私もお前も食べ終わったことだしもう移動するのか? それともまだここで?」
「そうだな。移動しようか。エヴァはいつもヨーロッパあたりを旅していたんだろう」
「ああ、そうだな。ヨーロッパとかいう地域を旅をしていた……と思う」
エヴァはあまり勉強をしていなかったようだった。なので、俺が計算と地理だけは簡単に教えた。ただまあ、この時代にヨーロッパとかそういう言葉が存在しているかどうか怪しいが。
「だから今度はアジア、特に西アジアに行こうと思う。どうだ?」
「え、えっと、どこだったか?」
「ここだ」
すばやく地図を具現化して西アジアを指差す。この時代だからもしかしたらインド辺りはすでに占領されていて、ヨーロッパ人がうようよしているからもしれないな。
「ふ~ん、ここか。ちょっと楽しみだな。で、ここには何があるんだ?」
「さあな。知らん」
「適当だな!!」
だってそれはしょうがないだろうが。前世で習ったことは主に将来に関係することであって、国の歴史についてはあまり学んでいない。それに資料とかだけじゃ今の時代のことを詳しく知ることはできない。
だから、もし学んでいたとしても役に立つことは少ないだろう。中で役に立つのはその土地に群生する草木くらいだろう。
「はあ……それでここに行くんだろう? 大体どのくらいかかるんだ?」
「ふむ。そうだな。歩くなら年単位だ。だが、本気なら一日もかからないだろうな」
「極端過ぎる!!」
そうだろうか。
「もっと何かないのか?」
「う~ん、ないな。馬車を使うにしても色々と邪魔だしな。だから単純にゆったりとした旅か、一気に目的地に行くかだ。それでどっちがいい?」
「……じゃあ、歩きで」
エヴァは少し悩んでそう答えた。
「私はこれまで色んな奴に追われていたから色々とゆっくりと見れなかったけど、お前がいてくれるから今ではその余裕がある。だからのんびりと歩きたい」
「分かった」
あれから70年経った。今は北アメリカだ。
「おい慎也。お前なぜ生きているんだ?人間の寿命はとっくに過ぎているはずだろう」
「おいおいエヴァ。今ごろ聞くか?」
「だって、ただずっと若いだけかと思っていたからな」
「そんな人間もいるかもな。ただ俺のは違う。俺はお前と同じ吸血鬼だ」
「なに!私以外のにも吸血鬼がいたのか!?」
「さあな、知らない。それに俺はお前と同じというわけではない」
「どういうことだ?」
「それはな。こういうことだ!」
俺は近くの岩山を殴る。岩山は一部を残して吹っ飛ぶ。
本気では殴らない。殴ったら地球がどうなるか、心配だからな。
「エヴァにはできないだろう?これが俺の吸血鬼の身体能力だ」
「・・・・・魔力なしでこれか。は、はは、たまげたな」
「さて、次はどこへ行く?エヴァ」
「どこでもいい」
「またそれか。そういえばこの頃あまり襲われなくなったな」
「それは、慎也のせいじゃないか?私一人だったら勝てると思って私を襲ってきたが
今は慎也がいる」
「はは、うれしいことをいうな、エヴァ」
「バ、バカ!そういう意味じゃない!」
「おいおいどういう意味だったんだ?俺はただうれしいなって言っただけだぜ」
「~~~!!」
怒ってポカポカと殴ってきてるが痛くはない。
そんなエヴァの頭を撫でる。
「子供扱いをするなー!今の私は大人だ!」
「幻術だろ?」
「ふ、ふふ、慎也。今日という今日は怒ったぞ!『リク・ラク ラ・ラック
ライラック!!契約に従い 我に従え 氷の女王 来れ とこしえの やみ えいえんのひょうが!!』」
150フィート四方を絶対零度が発生する。俺の体が凍る。
普通の相手ならこれでやられるだろう。
だが俺はその普通の相手ではない。
体から魔力を放ち吹き飛ばす。
「おい、エヴァ。俺が死んだらどうするんだ?」
「ふん!知らん!バカ!」
さてと、次はどこに行こうか。
アフリカにでも行くか。
「エヴァ、次の行き先が決まった。南のほうだ」
「そうか。それは楽しみだな」
俺たちは今、海にいる。
もちろん船の上だ。船は帆船のフリゲートだ。もちろん作り出した。
蒸気船とかでもよかったんだが、ゆっくり旅をしたいなどという理由から
帆船にした。船員は人形だ。エヴァが人形使いなので俺が人形を作り出し
エヴァが操る。
「遠いな」
「ああ、今向かっているのはほとんど未開の地で、誰も踏み込んでいない場所も
あるところだ」
「そ、そんなところなのか。大丈夫なのか?そこは」
「俺たちなら問題ない。敵なしだぜ」
「わ、私たちなら、か」
エヴァが赤くなっているが、気にしないでおこう。
アフリカはあと数日で着くだろう。あそこなら襲ってくる回数も減るだろう。
数日が経ち目的のアフリカ大陸に着いた。
やはり未開の地を呼ばれるだけあるな。雰囲気が違う。
「なんか私たちが見てきたものとは違うな」
「ああ、森の中には誰も見たことがないような動物もいる」
「見てみたいな」
「ああ、そうだな。だが今日は森へは行かないぞ。準備はしていないし、日も落ちて
きたしな」
「そうか、分かった」
俺たちは吸血鬼だから夜でも問題ないが、明るいほうが景色がいいだろう。
俺たちは船の中で寝ることにした。
さて、朝になった。
「おいエヴァ、起きろ」
「う~ん、もう少し・・・寝かせ、ろ」
「起きろ!エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル!!」
「だーーーー!!分かった、起きるから大きな声で叫ぶな!」
「ようやく起きたか。行く準備ができたら、出発だ」
「準備といっても、何もないだろう」
「心の準備だ」
「そんなものはもうとっくに準備できている」
「そうか。なら出発だな」
森に入ってみたが、不気味だな。吸血鬼の俺が言うのもなんだがな。
まあ、中心に行けば何かいいところがあるだろう。
「エヴァ、中心に向かうぞ」
「なぜだ?」
「まあ、行ってみればいい」
「てきとうか」
「ああ、俺もあまり詳しくはないんだ。なんせここは未開の地だからな」
「本当は知っているように感じるぞ」
「気のせいだ」
確かに知っているが未来のだからな。今はどんなのがあるか分からない。
こうしてまだ知らない未開の地に行ってみると、探険家はすごいなと思うな。
何があるか分からないのに。
しばらく歩いてみると動物が俺たちにおびえているように見える。
やはり動物たちにはわかるのか。
「おい、なんか動物が怯えていないか?」
「ああ、怯えているな。多分俺たちが吸血鬼だからだろう」
「なあ、空を飛んで行かないか?」
「ん?疲れたのか?」
「そういうわけではないが、こうも同じような風景だとな。さすがに飽きる」
「そうだな。そうするか」
俺は翼を生やす、エヴァは蝙蝠のマントだ。
やはり空からのほうがいいな。木の高さがよく分かるから、飽きはしない。
「ふわ~~」
「やっぱり眠いか?」
「ああ、眠い」
「そう睨むなって。しばらくの辛抱だ。いい場所を見つけたら、城でも要塞でも
作ってやるから」
「なんか、誰にでもできないことを誰にもできるように言われたぞ」
しかし、一日で見つかるかな?
アフリカも大きいからな。急いでいこう。
「エヴァ!少しスピードを上げるぞ!」
「分かった」
数時間後。
いい場所を見つけた。結構、景色もいいな。
決めた。ここにしよう。ここも結構奥地だしな。滅多にこないだろう。
「エヴァ。ここにしないか?」
「ああ。ここがいいな」
「では、さっそく城を作りますか」
一気に作り上げる。その間わずか10秒。
われながら見事だな。一応、防備も調っている。それに人払いの魔法をかけてある。
見つけられるのも難しい。
「さて、エヴァ。できたぞ、俺たちの城だ。鉄壁の要塞といっても過言ではないがな」
「本当に慎也は規格外だな」
「お褒めに上がり光栄です」
「褒めてない」
「で、この城の名前はどうする?エヴァが決めていいぞ」
「そうか。そうだな・・・レーベンスシュルト城にしようか」
こうして、俺たちはレーベンスシュルト城に住み始めた。
「おい、慎也!見ろ!私の従者を作ったぞ!」
「うん?従者か?見せて見ろ」
「これだ。チャチャゼロだ」
「へえー。これが」
今思えば、チャチャゼロが出てくるのが遅いな。
まあいいか。
「オマエガ御主人ノ仲間カ?」
「ああそうだ。よろしく、チャチャゼロ」
「アア、ヨロシクナ」
最近、エヴァが俺にベタベタくっついてきているような気がする。
まあ、可愛いから許すがな。そんな生活が数年が経った。
襲ってくる人間もいなくなった。
最近、エヴァが俺の顔を見ると顔が赤くなっている。
俺もその顔を見るとつられて赤くなる。どうしてだろう?
「オイ、慎也。最近、御主人ヲサケテネエカ避ケテネエカ?」
「そ、そんなわけないだろう」
「オイ、動揺シテイルゼ。マア、俺ニハ理由ガ分カルガナ」
「お前には分かるのか?」
「俺ハ第三者ダカラナ。ヨク分カルゼ」
「教えてくれないか?」
「自分デ気ヅケ」
分からない。チャチャゼロは教えてくれないしな。
エヴァを避けているのも事実だ。顔を合わせると気まずくなるから。
本当はちゃんと会いたいんだがな。
そうして、数ヶ月。あまり話さない。
しかし、今日は違った。
「な、なあ、慎也。今日の夜、話したいことがある」
「ああ、分かった」
「ケケケ、ヨウヤクカヨ」
エヴァは何を話すんだ?
もしかして、いなくなるのか?それだけは嫌だ。
あいつがいなくなるのはなぜか嫌だ。待て。なんで俺は嫌なんだ?
別に俺とエヴァはずっといるなんて約束もしていない。
いなくなっても本来普通のはずだ。確かに悲しいが、ここまでじゃない。
俺はなんで・・・。
夜になる。
俺の目の前には、幻術を解いているエヴァがいる。
顔は赤い。
「話とは・・・・なんだ?」
「そ、そうだな。し、慎也。今日の月はきれいだな」
「ああ、満月だからな」
「そうだったな」
話を逸らしているのか?今日のエヴァはおかしいな。
「で、話とは?」
「そ、それはだな。慎也、お前は私を救ってくれたな。私は感謝している。
みんな私を殺そうとしてきた。そんな中、私を救ってくれた。
お前は私の救世主だった。その後私と旅をした。そして、ここで暮らしている。
ここ数年、一緒に暮らしてきたが、私は今の関係が嫌だ」
「どういう関係だ?」
「旅仲間という関係だ。だから、私は決心した。自分の気持ちを伝え、新たな関係に
なろうと」
俺はドキッとした。ここまでくれば大体わかってくる。しかしエヴァが俺のことを?
「ここまでくれば・・・・分かるだろう?
私はお前のことが好きだ」
そのこと言葉を聞き、俺が考えていることが本当だということになった。
そして、俺の気持ちにも気づいた。俺も好きだからこそいなくなるのが嫌なんだ。
「お、おい慎也。私の告白だぞ?答えてくれ。お、ねが、い・・・だ」
エヴァが泣き出す。
そんなエヴァを見るのが嫌で、エヴァを腕で包み込む。
「エヴァ、俺もお前が好きだぞ」
「い、いのか?」
「エヴァから告白してきたんだろう?それに俺はOKしたんだ。良いも悪いもない」
「では、私たちは?」
「恋人だ」
俺とエヴァの唇が重なる。
数分間そのままだった。
「オイ、御主人タチ。イツマデソウシテイルツモリダ?」
「「!!」」
「驚クノモイイガ、気ヅイテイナカッタノカ?ズットココニイタゾ」
「私は気づかなかった」
「俺もだ」
「オイオイ、平和ボケカ?」
恋人になって百年。
俺たちは幸せに暮らしてきた。自分で言うのもなんだが夫婦みたいだなと思った。
「御主人タチハマルデ、夫婦ダナ」
「ゲホッ!チャチャゼロなにを言ってるんだ!」
「・・・・・・」
エヴァは赤くなってうつむいている。
最近、キャラ変わってないか?
「エヴァ、俺は魔法世界へ行こうと思う。お前はどうする?」
「なんでだ、慎也。私のことが嫌いになったんじゃ?」
「それはない。ただ、見に行ってみようかと思ってな」
「そうか。それならいい。私は行かない。お前がいない間てきとうにぶらつくと
しよう」
「そうか。ならまず日本に行って見るといい。あそこにはおもしろい武術が
あるぞ。きっと役に立つはずだ」
「武術か。そんなもの役に立つのか?」
「行ってみろ。そして気に入った武術を習え」
「そうか。なら行ってみよう」
俺は魔法世界に行った。