推しの子の巨乳に転生したけど盛大に何も起こらない 作:れいん
「パパもママも、ほなまたなー」
「身体には気をつけるのよ〜!」
「高校生活、楽しむんだぞ〜!!」
「はいはい、わかっとるよー!」
「あとあと〜!!」
「それとそれと〜!」
かったるい入学式も終わり、そんな感じで両親と別れ、うちは一人で教室の方へ。それにしても、そんなに一人暮らしの娘が心配かいな。……いや心配やな。バリ心配やわ。
いくらうちの進学した陽東高校が芸能科のあるタイプの学校とはいえ、大半の生徒は一般科。入学式も、うちが前世で受けてた入学式と大差ない。というか芸能人なんて日頃から浮世離れした生活送っとるんやし、こういうとこくらいまともな青春送らせてもらえた方がありがたいんかな、なんて考えながら歩いてると、あっという間にうちのクラス、F組に到着。かなちゃんが案内してた通り、芸能科はあっち見てもこっち見ても美男美女揃い。新進気鋭のイケメン俳優もこの前M○テに出てた女性ボーカルも、朝ドラ主演のあの子だって目の前におるわけで、「うちこんなとこいてええんかな」なんて一瞬戸惑ってまうくらい。まさかほんとに卑下の意味で「ちょっと乳がでかいくらい」なんて使いたくなる時が来るとは思わんかった。
「いやいや、呑まれたらあかん。そんなことよりうちの席は……っと」
教室の壁に張り出された座席表にはテレビでよく見る芸能人の名前がずらり。いやー、やっぱ気圧されるわぁ。特にこの「星野瑠美衣」って名前イカつ──うわせやったルビーちゃんや隣の席。漢字のイメージが無いねんルビーちゃん。「星野愛久愛海よりマシ」?返す言葉もないド正論やな。兄弟揃って名前どうなっとんねん今更やけど。
しかしもうここまで来たらやるしかない、15年寿みなみ演じ続けた演技力ご覧に入れたるということで、うちは平静を装って教室に足を踏み入れた。
「えっと、「星野瑠美衣」ちゃんよな?隣、失礼しま」
いやぁ無理やわ。あかん、実物ルビーちゃん可愛すぎる。なにこれ目に宝石でも埋め込んどるん?ってかまつ毛エッグ。なにこれ絶対天然芝とか植えとるやろ。いや遺伝子ガチャ大当たりってやばいわー、大成功したメジロリベーラやん。
「むりしぬ」
「いや大丈夫!?」
危うくばたんきゅ~しかけたうちの身体を受け止めるルビーちゃん。ああもう距離近いしお肌やわもち過ぎで気ぃ狂ってまう。流石にこれ以上は致死量ということでうちはベロ噛んで気付けして、なんとか意識を取り戻した。
「いやぁ、クソデカおおきにって感じやわ。ほんまありがとうなぁ」
「わ、思いっ切り血吐いてる……ほんとに大丈夫?」
「全然平気やよー。えげつない美人さんおってビビってもうただけやからー」
「そっか、なら良かった!やっぱり関西の人ってリアクションも派手なんだね!私リアル関西弁初めて聞いた!」
「あ、両親もうちも神奈川出身の純血神奈川県民なんよ」
「えっ、じゃあその関西弁は?」
「……キャラ作り的な?」
まあ二重の意味でキャラ作り的なあれやし。……って、自己紹介盛大に忘れとった。
「そんで、うち寿みなみいいます。よろしゅー」
「あっ、私星野瑠美衣!こっちこそよろしく!……えっと、寿みなみ、寿みなみっと……」
「あっ、初手ググりから入る?」
「……うひゃあ、Hとかエッチな漫画でしか見たこと無いや……」
「よくない!ビバよくない!検索だけならまだしも読み上げんといてー!」
無理や、ちょっと楽しくなって触りすぎて原作より一個上になってるとかとても口にできん。しぬ。あかんマジしぬ。何が自己紹介や、こうなるのは目に見えてたやん自分。その原作知識は何のガラクタや。
「って、一個だけ気になってたんやけど、ルビーちゃん名前バリイカついやん?「星野瑠美衣」て。もしかして兄妹に「サファイア」とかおるん?」
「おっ、いい線いってる!私三人兄妹の末っ子で、お兄ちゃんと双子のお兄ちゃんがいるんだけどね?双子のお兄ちゃんの方、「アクアマリン」って言うんだ!」
「あ、アクアマリン!?嘘やろ!?どんな字書くん!?」
「えっと……こうかな、「愛久愛海」」
「うわさっきの謝っとくわ。お兄ちゃんの方が100倍イカついわ。ここまで来ると親の顔見たくなるなぁ」
「あ、見る?」
いざ実際にアクアマリンという絵面を食らってみると、その想像以上の衝撃に唖然とするうちと、「ちょっと待ってね」とスマートフォンのフォルダを漁るルビーちゃん。数十秒の間が空いて、「あ、あった!」と彼女は声を上げた。
「ほら、これ!」
「うわ、マジで……?」
そこに写ってたのはルビーちゃんのめちゃくちゃ楽しそうな家族写真。ルビーちゃんに、アクアくんに、姫川さんに、アイちゃんに、それに、カミキヒカル。「オタクの願望叶ってるやんけ……」、心の中のうちは涙を流しながら、ばたんきゅ~と倒れ込んだ。
みんなの高評価とか感想、待っとるよー