旅の唄 ~赤毛の少女と共に~   作:シロとクロ

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015 厳しい道中

 

 なんでこんなことになっちまったのか…。

 

 わかってる、俺が弱かったせいだ。

 

 怒鳴られて怖かった。殴られて心が折れた。仲間が酷い目にあわされているのに、何もできなかった。助けを求める目、懇願する眼差し…、そして何もしなかった俺に向けられるようになった感情の無い視線。

 

 だから逃げたアイツを責める資格なんて俺にはないし、この状況も自業自得だ。あの野郎はどうなったのか…、捕まったんだろうか。まあ今さらか。

 

 衛兵から逃げて、町を飛び出して。追手がいつ来るかもわからない。とにかく町からできるだけ離れた。食うもんがない、寝床だってありはしない。ひとりじゃ魔物に襲われたらひとたまりもない。だから頼った、縋るしかなかった。

 

 魔が差し悪事に手を染めて、今度はそれをネタに強請られて…、さらに悪事に手を染める。バレて捕まりそうになったら逃げて、いよいよ行き着くところまで行っちまう。

 

 ………俺も墜ちるとこまで墜ちたなぁ。

 

 

 

「おいジャリル、本当に噂の二人組はいるんだろうな?」

 

 周りの奴らに怒鳴り散らされる。仕方ない、こっちは新入りの身分だ。

 

「う…。はい、大トカゲの片方に乗ってたのは"狂犬"と"カイヌシ"だったのは間違いないです」

 

 俺は答える。

 運が良かったのか悪かったのか。昼間偵察に出された時にたまたま見つけた。こっちは風下、岩場の陰、察知はされなかった、たぶん。

 

「しっかし噂になってるとは言えガキ2人だろ? 金目のモンなんかあんのかね?」

「いやいや、俺ぁ買い出しに町に入ったときにその2人は見かけたけどよ、大そうな業物を持ってたのは確かだゼ。それにその2人以外にも獲物がいるって話じゃねえか」

「ひとりは女だろ? 最悪お楽しみはできるだろうな」

 

 卑下た話、あの野郎のようだ。………俺も同類か。

 

「ホントにやるんですか? 噂の2人組は低ランクだけど相当強いって聞きますよ?」

 

「バァーカ、こっちが何人いると思ってる。テメエはさっさと案内すればいいんだよ」

「ここらは俺たちのナワバリだ。やって来るなら誰だろうと歓迎するのが俺らの流儀だゼ」

「襲って殺す、奪って犯す。人生楽しまなくちゃなあ」

 

 …ため息が出そうだ。

 

 でも俺は引き返せないところまで来ている。

 そうだ、もうやるしか道はないんだ。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、地面にうつ伏せになって両手を頭の後ろで組んでください」

 

 俺は襲ってきた野盗たちにそう告げる。

 指示に従がって動く野盗は、4人か。他はうずくまって苦しんでる者、血を流して痙攣している者、おそらく致命傷だ。そして、倒れてピクリとも動かなくなった者たち。

 

「ふんっ」

 

 エリスが剣を振って血糊をとばす。まだ終わったわけではないので、警戒はしたままだ。

 

 さて、どうするか。

 

 バチロウの警告が聞こえた後、俺たちの行動は早かった。俺たちは基本的に夜襲への備えとして、焚火を消さず寝ずの番を2人1組、早番と遅番の2交代で配置している。索敵に優れたバチロウが当番のひとりだったのは運がよかった。

 

 俺とクルトで素早く意志疎通して、撤退準備をしつつ迎撃の用意。迎撃できればそれでよし。最悪は妨害用の魔術をばら蒔いて大トカゲで全力の撤退をするつもりだった。

 

 相手はどうやら魔物ではなく、人。おそらく野盗だとバチロウは言う。

 夜襲は襲う側にもリスクはある。襲う側は灯りをつけられないし、暗闇で視界が悪いのなら知覚できないだろうと、野盗たちが接近してくる方向に泥沼でトラップを即席で仕掛けた。

 

 あとは簡単にことが運んだ。奇襲を仕掛ける側が勝手に泥沼に嵌って、勝手にパニックに陥った。それでも抜け出して襲い掛かってくるヤツはエリス、クルト、バチロウが前衛として迎撃した。俺も魔術を使う用意はしていたが、ほとんど出番はなかった。ガブリンは最後尾で大トカゲの守りだ。

 

 そうして何人かを打ち倒した後は大半が逃げ出していった。

 

 それにしてもお粗末な野盗だな。逃げ出したヤツラも含めれば人数は多いが、それだけ。もちろん襲ってきた全員武器を所持しているし、下手をすればこちらに犠牲がでることはわかってる。ただ手練れの戦士もいなければ、魔術師もいない。弓矢などの飛び道具もなかった。暗くてわかりづらいが、刃物に毒が仕込まれている様子もない。ああ、そうか。こっちの身柄を確保しようとしたのか。奴隷として売り捌くつもりだったか。

 

「ふぅ、ルーデウス、どうしようか」

 

 息を整えたクルトが尋ねてくる。

 

「町の衛兵に突き出したいところですが、ここからでは町まで距離があります。身柄を拘束しつつ移送するのも大変ですし、このまま放っておきましょう」

 

「えっ!? このままで?」

 

 俺の返答にクルトが驚いた反応を見せる。

 たしかに負傷している連中は手当てしなければ命にかかわるだろう。でも相手は野盗でこっちは襲われた側だ。治療してやるいわれはない。

 

「ルーデウス、せめてうつ伏せにさせた連中の片足ぐらいは切り落とそう」

 

 違った。クルトはより過激な想定をしていた。

 

「いや、いやいや、片足を落とすって…。こいつらに治癒魔術の使い手がいるかどうかわかりませんし、下手すれば死んじゃいますよ」

 

「それでかまわないと思うけどね。むしろ後腐れなしって意味なら、ここできっちり殺しておいたほうがいい」

 

 ええ…、いや、殺すのは…

 

「いいかい、ルーデウス。こういった連中にはぬるい対応をしちゃいけない。ここで捕らえた奴に何もせずに帰したら、こいつらはこっちを舐めてすぐに仕返しにくる。やり返させないためには殺すか、満足に動けないぐらい痛い目にあわせないと」

 

 う…、それは、そうかもしれない。

 

「逃げた野盗もこっちがそういう奴らだってわかれば、もう手出しはしてこないだろうしね」

 

 クルトの言うことは正論だ。

 他のメンバーの様子を見る。エリスは言葉を覚えきっていないせいか、今の会話を理解していない。ガブリンとバチロウは…、どうやらクルトの意見に肯定な感じだ。

 

 俺が甘いのか?

 

「待て! 待ってくれ! 仕返しなんかしねえ、絶対に。だから殺さないでくれ!」

 

 うつ伏せにさせた野盗のひとりが叫ぶ。すると、他の面々もつられて叫びだす。助けてくれ、やり返したりしない、足を切り落とさないでくれ、と。

 

「ちっ」

 

 クルトが舌打ちをする。

 ああ、わかってる。こいつらは意見が割れたこちらを見て命乞いをはじめた。強硬な意見のクルトより、穏便…かどうかはわからないが、俺に対して言ってるんだ、俺の情に訴えるために。

 

 どうする? やるか?

 殺さないまでも、片足ぐらいは奪っておくべきか?

 

 野盗を見る。こいつらは変わらず俺を見て懇願してくる。

 

 くそっ、こんなことなら捕らえず適当に魔術で手傷を負わせてれば、悩むことはなかったのに。…ん? 魔術…そうか。

 

「クルト、そういうことなら彼らには土魔術で枷を作っておきます。硬い石枷なら簡単には壊せませんし、重量もあるので当面は行動の阻害になるかと」

 

「ルーデウスなら、そういう方法もあるのか…。

 うん、それでいいんじゃないかな」

 

 野盗たちは状況をわかってないようで困惑した表情をしている。しかし何もされず解放してもらえるわけではなく、魔術を使われると察すると先程以上の命乞いの言葉を俺に向けてくる。

 

 やめてくれよ、こういうのは苦手だ。

 

 俺は魔術をかけるためにうつ伏せにさせた野盗たちに近づく。隻眼のいかにも盗賊っぽい男、一本角に紫色の肌の生意気そうなヤツ、太ったスキンヘッド、緑のトカゲ頭…

 

 あれ? こいつ…

 

「あなたたしか、冒険者ギルドで不正を働いたっていう…」

 

 ペット探しのマッチポンプで………

 俺は振り返ってガブリンを見ると、ガブリンも気づいたようで頷いている。どうやら間違いないようだ。

  

「『ピ-ハンター』のジャリルさん、でしたっけ?」

 

「………はい、そう…です。…その節はすみませんでした」

 

 俺に謝られても。

 

「で、でもっ、別にアンタらには迷惑かけてねえだろ? たのむ、見逃してくれ…いや、見逃してください」

 

 しまったな、話しかけるべきじゃなかった。やりにくくなった。

 

「いえ、何も処置しないわけにはいかないので。それにあなたも不正に襲撃ですから、自業自得でしょう」

 

「うぅ…仕方なかったんだ。そりゃはじめに不正をしたのは俺だけど…でもその件でロウマンに脅されて、殴られて、従うしかなくなって…。ヴェスケルがあいつにヤられてても怖くて動けなかったんだ、本当だ、信じてくれよぉ………」

 

 いや、そんなこと聞かせるなよ。

 エグい内容だとは思うが…。

 

 思わぬところで不正の真実を知ってしまったが、これ以上は会話しないほうがいい。俺は魔術をかけるべく一歩踏み出した。

 瞬間、物音がした。

 

 辺りが一瞬で真っ暗になる。

 

 

 

 えっ

 

 

 

 暗い、見えない。

 

 

 

 野盗の叫び声。

 

「ジャリル! 魔術師のガキを押さえろっ!」

 

 っ、こっちにくるっ?

 俺は慌てて後ろに下がる。

 

「避けテ!」

 

 ガブリンの警告。

 

「くっ!」

 

 反射的に身をよじって倒れる。

  

 ヒュ

  

 顔に何かがかすめた。

 

 ダッ ガッ

 ドカッ

 ダダッ バキッ

 ダダダッ ガサ

 ーーー ーーー

 ーーー!

 

 物音、喧噪、でも何が起こってるかわからない!

 くそっ、慌てるな、落ち着け。

 

 俺はすぐに火魔術を使ってあたりを照らす。

 近くにエリス、クルト、バチロウ、倒れているトカゲ頭。後方の大トカゲの傍にいるガブリン。他は倒れて動かなくなった奴を除けば、………野盗はいなかった。

 

 

 

 

 

 

「ニゲタ、モウトオイ」

 

 バチロウが言う。

 

「こいつは見捨てられたみたいだね」

 

「そのようデスネ、囮に加えて捨て石のようデス」

 

 クルトとガブリンが警戒しながら、状況を確認している。

 エリスも俺のすぐ隣で同様に周囲を警戒している。

 

 俺も今さらながら何が起こったのかわかってきた。

 

 あの暗闇。近くに潜んでいた野盗………違う、はじめの襲撃で倒れて動かなくなった野盗の数が減ってる。おそらく死んだフリをしていた奴が焚火の火を消したんだ。それからあの指示の声。俺の頬を掠めたのはジャリルが俺を攻撃もしくは捕まえようとした腕か何か。

 そうして俺たちとジャリルがやりあってるわずかな時間と暗闇という状況で、野盗たちはジャリルを使い捨てにして逃げだした。たぶん、こんなところだ。

 

「…ぐっ、痛い、痛い。なんでだよ、なんでだよう、…うぅ」

 

 俺はジャリルを見る。肩が折れてる。片足も太ももあたりであらぬ方向に曲がっている。2つとも斬撃ではなく打撃を受けたような傷だ。エリスかクルトが誤射、というか誤斬での致命傷を避けるため峰打ちか剣の腹で叩いたんだろう。バチロウの棍棒だと骨折ではなく潰れるような傷痕になるだろうし。

 

 うつ伏せで苦しんでいるジャリルを見る。

 見捨てられたこいつには同情………

 しちゃいけない。

 

 俺は手早くジャリルの無事なほうの足に土魔術で枷をつくる。片足だけなので動きの制限自体はないが、重石としての行動阻害だ。

 

「まて、まってくれ、助けてくれ」

 

 聞いちゃいけない。

 

 まわりを見渡す。

 また死んだフリでやられるわけにいかない。最初に襲撃してきた倒れた野盗は…

 

「こっちで確認した、他は死んでるか死ぬ寸前のヤツだけだ」

 

 クルトが言う。俺が足枷を作っている間に確認してくれたようだ。

 

「じゃあ、さっさと出発しましょう」

 

 元々襲撃される前に荷物はある程度まとめて撤退準備をしていたので、時間はかからない。

 エリスとクルト達も了承し、すぐに大トカゲに乗り込む。

 

「まって、たのむ、まってくれよお」

 

 聞くな。

 

 逃げた野盗がまた襲ってくるかどうかはわからないが、野営地の場所を知られている以上、移動しなければならない。

 

 肩と片足の骨折、さらにもう片方には重石。追ってくることはもちろん移動することも、まずできない。無事な片手で、いや、そもそも一人では枷を壊すことは難しい。

 逃げた野盗が戻ってきて治療する可能性は…

 ジャリルが生き残れる可能性は………

 考えるな。

 

「 …まって… …いやだ… …し…たくねえ… …ち……ょう… …俺だ…て… 」

 

 背後からは何も聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 あれから夜を通しての移動、日が昇ってからも移動を続けて今は正午を過ぎたあたりだ。昨夜の野営地から次の町までの最短ルートだと、仕返しにきた野盗の待ち伏せも考えられたため、大きく迂回するようなルートを選択した。

 だいぶ距離も離れたし、無理矢理の行軍で大トカゲが潰れても困るので今日は早めに野営することになった。

 

 ここまでの道中では全員会話らしい会話はなかった。ルート確認や索敵の状況確認ぐらいで数回言葉を交わしたのみだ。エリスでさえ話しかけてこなかった。

 

 ………空気が重い。

 

 今回の件、明らかに俺のミスが大きかった。グダグダと判断に迷った挙句に、捕らえた野盗と特に利益もない会話をしたせいで2度目の奇襲を許した。おまけにその時に狙われてロクな反応もできなかった。

 

 はぁ……… わかってる、わかってるさ。ここで何も行動しない、って選択肢はない。前世とは違うんだ。俺はこの世界で本気で生きていくって決めただろ?

 

 よし、謝るなら早いほうがいい。

 

 意を決して口を開く。

 

「すみま…」 「みんな、ごめん!」

 

 俺が謝ろうと口を開いた瞬間、クルトが頭を下げて言った。

 ん?

 

「…えっと?」

 

 気づけばガブリンとバチロウも頭を下げている。

 んん?

 

「焚火を消した野盗は俺が斬った、いや斬ったと思って倒れてたヤツだった」

 

 えっ、そうなの?

 クルトが続けて言う。

 

「ちゃんと確認してなくて、それであんな手を食らってみんなを危ない目にあわせて、ごめん」

 

 いや、そんな。あんな夜襲の迎撃戦でそんな確認なんかとれないだろ。

 

「クルトチガウ。サクテキハ オデ。オデガ ワカッテナイト ダメ」

 

 バチロウが主張する。

 それは索敵とはまた違うんじゃないか。あんな死んだフリなんかわかんねーよ。

 

「すみませんデシタ。ワタシ暗くても見えてマシタ、一番後ろにいて全部見えてマシタ。でも、ちゃんと指示だせませんデシタ」

 

 ガブリンが謝罪する。

 いやいや、あんな一瞬で的確な指示なんてできないって。それに俺に避けろって警告もしてくれたじゃないか。  

 

「いえ、それを言うなら捕らえた野盗に対して判断を迷った僕にそもそもの責任があります。クルトに言われた通りさっさと片足でも切り落としていれば…」

 

 俺がそう言うとクルトが反論してきた。それは違うと。切り落とすにせよ魔術を使うにせよ野盗はどのタイミングでも仕掛けられたから関係ないと。

 いやいや反論に反論を返す。時間を与えなければ、あのような手をあっさり許すこともなかったと。

 反論の反論の異見を言われる。その前にきっちりと致命傷を与えたかどうかわかってれば、そんな状況には陥らなかったと。

 異見の反論を誰かが言う。戦いの最中、さらには薄暗い中でそこまでの確認はとることは難しいと。

 さらに別角度の意見が飛ぶ。不意打ちされてもきちんと対応がとれていればまた違ったと。

 さらには…

 

 なんだこれ?

 責任のなすれ合い、の逆。 背負い合い? 抱え合い? とでもいうのだろうか。

 なんだか収集がつかなくなってきた。

 

 ひとまず不思議そうにこっちを見ていたエリスに改めて皆の意見を伝えると、俯きながら言葉を返す。

 

「あれくらいの奴ら、やっぱり全員首を斬り落としておくべきだったわ。ルーデウスのおかげでバラバラに襲ってきたから余裕だったのに…」

 

 それもちょっとどうかと。

 クルト達に伝えると…うん、引いてる。

 

 あれ? そうするとここまでの道中で空気が重かったのは、ひょっとしてみんな自分の責任だと思って落ち込んでたってこと?

 なんだろう、俺も含めてみんなバカなんじゃないかな、カナ?

 

「「「 ………………… 」」」

 

 沈黙。

 言いたいことはあるのにうまく伝えられないっていう、おかしな空気だ。この場の全員で。

 

「なんだかみんな反省点があるって感じだね…、………うん、じゃあさっ、今日は早めに野営するんだし、今後のための作戦会議とか話し合いをしよう!」

 

 クルトがそう言って事態の収集と提案をする。

 

「そうですね。正面からの戦闘はここまでの訓練や狩りでそれなりにできるようにしてきましたけど、もっと全体の方針、ケース別の対応、個々の役割などを今回の件を踏まえてもう少し煮詰めておくべきですね」

 

 俺が同意すると他の面々も賛同する。

 

 それから俺たちは話し合った。

 元は別々のパーティとはいえ今は合同で旅をする1つのチームみたいなものだ。チーム全体の方針、方針に則った対応の仕方、優先すべきは何なのか、切り捨てるライン、各個人の役割、etc。 俺たちは様々な議題について話し合った。『デッドエンド』と『トクラブ村愚連隊』は俺とクルトがそれぞれリーダーの役割を担っているが、絶対的なトップというのは存在しない。だから誰もが意見を述べる。この場に自らは進言せずに聞くだけの者はいない。あのエリスだってしっかりと発言してる。まあ彼女の意見は戦闘に関することが大半で、他は難しそうな顔をしていたが。

 

 リカリスの町を出発してまだ数日。これから様々な事態に遭遇するだろうし、今現在想定もしていない状況に陥ることだってあるだろう。その都度話し合いの場を設けることにしようと全員で合意して、この場は終了となった。

 

 

 

 

 

 

 夜もまだ浅い時間、昨夜は夜通しの行軍だったため今日は早めの就寝。

 

 焚火の前、エリスと二人で本日の寝ずの早番につく。昨夜はあんなことがあったばかりだし、疲れは多少あるが交代するまでちゃんと見張りをこなさいといけない。

 

「ルーデウスの言う通りになったわね!」

 

 エリスが脈絡もなく突然そんなことを言う。

 

「えっと、どういうことでしょう?」

 

「意見を言うのが大事って、前に言ってたじゃない」

 

 ああ、それか。確かに以前、リカリスに着いてすぐの頃だ。自分たちの行動をあまりにも俺主体で進めていたので、エリスにも意見、発言をしてほしくてそんなことを言った記憶がある。

 

「そうですね。クルト達も同じ旅をする仲間ですから。だからちゃんと自分の意志を伝えるのは大事なんです」

 

「うん、………ふふっ」

 

 エリスは何故か嬉しそうだ。

 ただ自分で言っといてなんだが、これは俺にも当てはまるな。ちゃんと自分の意志を伝えること、突発的な事態を除けば独断専行は控えること、仲間に相談すること。うん、ホウレンソウは重要だ。

 

「エリスもちゃんと発言して、すごく良かったですよ。いささか戦闘、戦術に関することに傾いてましたが…、でも僕も含めてクルト達にもしっかり意見を伝えられたのは、とても有意義なことだったと思います」

 

「当然よ! 私だってできる………ううん、ちがうわ。

 ルーデウスのおかげでできるようになったわ!」

 

 エリスはちょっとだけ顔を赤らめながら胸を張ってそう言った。

 

 エリスは成長している。身体や剣術だけではない、語学や魔術といったお勉強だけでもない、人として確かな成長の歩みを見せている。

 

 彼女が、眩しいな。

 

 

 

 焚火とエリスと俺。

 

 旅をはじめてから最初に遭遇したトラブルに色んな思いを抱きながら、夜も深けていった。

 

 

 





 原作での旅ではリーダーこそルーデウスでしたが、シビアな部分はだいたいルイジェルドが担ってると思いました。本作ではクルト達がいるとはいえ、ルーデウスが自分で色々な判断、行動しなければならないので厳しいものがありますね。

 次回予告 「力を望むもの 集い」


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