旅の唄 ~赤毛の少女と共に~   作:シロとクロ

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003 ミグルド族の里

 

 ミグルド族の里。十数軒の家は亀の甲羅を被せたような構造。畑にはしなびた葉っぱの植物。

 寂れた田舎、取り残された集落、言っちゃわるいが"貧しい"って言葉があてはまる。

 

 村の端の方で中学生ぐらいの娘たちが火を囲んで何かをやっている、食事の準備だろうか。

 そこで気づいた。音がない、話し声が聞こえない、会話しているようには見えない。

 

 師匠が作成してくれた魔神語の資料には、ミグルド族にはテレパシーのような念話という種族固有の力があるらしい。師匠は生まれつき念話の力がなかったため、故郷では疎外感を感じていたと同封の手紙には書いてあった。なるほど。こんな感じで普段は念話を使っているなら、使えないロキシーは精神的に相当キツイとは想像できる。

 

 そういえばここに来てから門番のロインと里長を除けば、男を見かけていないな。

 

「ルイジェルドさん、先程から女性ばかりで男をほとんど見ないのですが…。ひょっとして男は狩りにでも出ているんですか?」

 

「ああ」

 

「このあたりで狩れる獲物ってなんですか?」

 

「魔物だ」

 

 ルイジェルドとのやりとり。

 うん、会話のキャッチボールが実に苦手そうだ。

 

 もう少し詳細を尋ねる。一応気をつけてやんわり、ソフトな言い方で。ルイジェルド曰く、狩りで狙っているのは大王陸亀という魔物とのこと。肉は食料に、他の部位は道具や建材に使えるそうだ。村の所々に見える甲羅のようなものも家の建材として使用しているらしい。先程は畑なんかを見かけたが、狩猟文化が主体なんだろうか。

 

 しばらく歩いていると一軒の家まで辿りつく。里長とルイジェルドがその家の中へと入っていく。

 

「お邪魔します」

 

 挨拶をしつつ、中へと入る。中は想定よりも広い。床には毛皮、壁には色彩豊かな壁掛け、部屋の中央には囲炉裏がある。家の中に区切りは無く、狩猟文化らしい武器が端に置いてあった。

  

 印象としては昔のモンゴル遊牧民のテントみたいな感じだ。色彩としては白基調ではなく、もっと暗色だけれども。

 

「さて、改めてミグルドの里へようこそ。ロインの娘の弟子、ということでしたが、どういった用件でここまで?」

 

 里長は囲炉裏の近くにどっかりと座り、そう言った。俺とエリスとルイジェルドも座って、話し合いをはじめる。

 

 さて、どこまで話して何を訊くか。これはここまでの道中で考えはまとめておいた。

 

「僕たちは中央大陸アスラ王国のロアという町から来ました。ある日突然、空が異様な色に染まって…、僕たちがその空模様に注目していたら、光を発しはじめました。その光は急速に広がっていき僕ら自身が包まれたと思ったら、次の瞬間にはこの魔大陸で目を覚ましました」

 

 これは、ほぼ正確にこちらの事情を話している。にわかには信じがたい話ではあるが、見たままのこと以外は説明できない。

 

「これが信憑性のある話ではないことは、わかっているつもりです。ですが、僕とエリスに起きた現象なのは事実です」

 

「………」

 

「………」

 

 里長もルイジェルドも返事はない。まあ無理もないか、こんな話は普通信じられるもんじゃない。

 

「ご迷惑をおかけするつもりはありません。もしよろしけば最寄りの町まで行く道順を教えてください。そこで手紙をだすなり、さらに中央大陸方面に進むための手段を模索します」

 

 里長はそれを聞いて、顎に手を当てて考えだす。

 

「………ふーむ」

 

 結論を待っていると、エリスが隣でウトウトとし始めた。昨晩もあれからずっと起きていたのだから無理もないか。

 

「僕が話を聞いておくから、寝ててもいいですよ」

 

「…寝るって、どうやって?」

 

「多分ここじゃ床で寝る文化だと思うよ」

 

「…枕がないじゃない」

 

「僕の膝を使いなよ」

 

 顔が食べられてしまうヒーロー風に言って、太ももをぽんぽんと叩いた。

 

「………う、うん。ありがと」

 

 特に抵抗もなく言葉を受け入れて俺の膝に頭を載せた。

 なんだかエリスが本当に素直だ、正直可愛い。

 

 眠気が限界だったのか、数秒もしないうちに眠りに落ちてしまった。

 

 膝枕で眠るエリス。彼女の髪を優しく撫でる、彼女はむず痒そうに身を捩る。

 ふふ。

 

 ん? 視線を感じて顔を上げる。

 

「…なんでしょうか?」

 

 里長になんとも微笑ましいものを見る目で見られていた。

 

「仲がよろしいようで」

 

 いかん、ちょっと恥ずかしい。

 

「さて、道を教えるのはかまわないが、君たちはまだ子供だろう? お金はあるのか? 移動するにも手紙をだすにも必要になるだろう。それに外には魔物だっている。大人でも危険はたくさんある」

 

「お金は町で稼ごうと思います。僕は魔術師なので稼ぐ方法はあるでしょう」

 

 里長にそう言うと、無詠唱で水玉をいくつか作って浮かばせてみせる。 

 

「治癒魔術だけでなく、攻撃魔術も使えます。あと僕は系統によっては、このように無詠唱魔術もできるので道中もどうにかなるかと」

 

「子供だけでは危険だ、俺が付いて行く」

 

 と、ルイジェルドが口を挟んだ。

 むぅ、反対されるか。 

 

「ルイジェルド、町に入れないお主が付いて行ってどうするつもりかね?」

 

 里長が難色を示した。

 むっとするルイジェルド。

 

 んん? 町に入れないって?

 

「100年前、衛兵と討伐隊に追われたことを忘れたのか? 子供と一緒に町に近づけばどうなるかわからんわけではないだろう」

 

 100年前? 衛兵と討伐隊?

 

「それは、だが…」

 

「それとも旅の間ずっと町や人里には近づかないつもりか? 子供達もいるのだ、それが現実的ではないのはお主もわかっておるだろう」

 

 呆れ顔になる里長。

 ルイジェルドはぐっと歯噛みした。

 

 スペルド族は嫌われていると聞いていたが…、それほどまでに周囲に拒絶されているとは正直予想外だ。

 

「しかし子供だけではやはり心配だ。外の魔物や町の人間が襲ってくるなら…、皆殺しにしてでも二人を守る!」

 

 こ、怖えぇ。目が本気だ。

 

「子供のこととなると見境がない奴め。…思えば、この里で認められたのも、魔物に襲われていた子を助けてくれた事がきっかけだったか」

 

 ロキシーから聞いていたスペルド族は、何が刺激するか、どんな言葉がキッカケで爆発するかわからない。おそらくこの男にとっては子供というキーワードがそうなのかもしれない。

 

 正直怖いとは思うが、ルイジェルド自身は決して悪人というわけではないようだ。だたそれでトラブルが起きるのは避けたいし、彼が暴走したら止められる気がしない。ここは断るのがベターだろう。

 よし、

 

「ルイジェルドさん、ありがとうございます。ただこれは僕がやるべきことであり、やりたいと思っていることです。僕は子供かもしれませんが、同時に騎士でもあります」

 

「騎士? 人族の戦士…という意味だったか?」

 

「国の守護や軍隊に所属しているというわけではありません。僕は彼女の個人的な騎士です」

 

「…ふむ」

 

「彼女とは将来を約束した仲です。(15歳になったら性的な意味で大人になる約束をしてます)

 彼女を守るために研鑽を積んできました。(家庭教師としてむしろ研鑽を積ませました)

 彼女と共にある、それが僕の夢です。(ハーレムって男の夢だよね)」

 

 矢継ぎ早にまくしたてる。心の声は、もちろん心の中だけだ。

 

「………そうか、わかった。おまえは戦士なのだな。ただ、最寄りの町リカリスまでは3日ほどかかる。そこまでは同行させてくれ。お前たちはこの魔大陸のことはほとんど知らないのだろう」

 

 まあ、このあたりが落としどころか。知識を教えてもらうことは悪くない。

 

「はい、そういうことなら是非おねがいします」

 

 話はまとまった。

  

 そのあとは里長にミグルド族の文化、風習の話をきいた。聞いたといっても小さな里の話であるため内容はごく簡潔だ。やはり狩猟文化が中心であること。男は狩りに出かけ、女は里内での作業をすること。畑の野菜は主に香草的な扱いで、単体で食すものではないこと。

 あとはミグルド族の一般的な容姿と年齢についても教えてくれた。なんと彼らは成人しても中学生ぐらいの見た目にしかならないらしい。合法〇リかよ。

 

 今日はこのまま里長の家で寝かせてもらうことになった。膝を枕にしてぐっすり寝ていたエリスを起こして、借りた毛皮でそれぞれ寝床をつくる。

 

 目を閉じながらこれからのことを考える。次の町まではルイジェルドが同行するとはいえ、やるべきこと知るべきことがたくさんある。地理、気候、魔物の種類と強さ、道具の調達方法。狩りの獲物は魔物らしいがどの種類が食べられるのか、食べられないのか。町のことはルイジェルドは知らないかもしれないから明日里長に聞くか。

 

 そして旅の目的。

 

「エリスを絶対にロアまで無事に帰す」

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 起きてから里長に話を聞いた。町の様子、町での生活、宿場、飯屋、道具屋、貨幣価値、etc。簡単にでも説明を受けておけば、多少は不憫が減るはずだ。隣で一緒に聞いていたエリスは言葉がわからないので、つまらなそうではあったが。

 

 さらにはお金と例の畑で採れたという野菜まで渡された。

 

「宿に数日泊まれるだけはある。あと道中で獲物を狩るなら、これと一緒に調理するとよい」

 

「よろしいのですか?」

 

「なに、君は若いのに随分としっかりとしている。魔術だけではなく、受け答えも心構えもだ。遠慮することはない、それで彼女を守るのに役立てるとよいだろう」

 

 悪い感情を抱かれているとは思ってなかったが、想定以上に好印象を残せていたようだ。

 

「ありがとうございます。そういうことでしたら頂いておきます」

 

 俺は頭を下げて礼を言った。エリスもつられて頭を下げる。

 大人の真似をする子供のようだ、おもしろい。

 

 

 

 村を出る時に、門のところに立っているロインが話しかけてきた。

 

「おはようございます、今日も門番ですか?」

 

「ああ、狩りの連中が戻るまではね」

 

 そういえば、昨日は夜になっても男衆が戻って来なかった。狩猟文化だからか狩りも数日がかりで遠出するのだろう。

 

「もう行くのか? 娘の話を聞きたかったんだが…」

 

「ええ、昨日のうちに話もまとまりましたし。僕も師匠のことをお聞きしたかったのですが…。のんびりしていられる状況でもないので、すみません」

 

「そうか…」

 

 残念そうだ。

 

「師匠に会ったら連絡を取るように伝えておきます」

 

「頼む………」

 

 深く頭を下げられる。ロキシーに出会った時には忘れずに伝えよう。

 

「あ、そうだ、ちょっと待っていてくれ」

 

 ロインはそう言うと、村の中へと駈け出した。

 数分後、ロキシーによくにた女の子と一緒に戻ってきた。

 

 誰かを呼び出すなら念話を使えばいいのではないかと思ったが、何か剣のようなものを持っていた。え、刃傷沙汰は勘弁してください。

 

「こちらは家内だ」

 

「はじめまして、ロカリーです」

 

 ロキシーのお母さん?

 

「ルーデウスと申します。お若いですね」

 

「そんな若いだなんて…、今年でもう102歳ですよ」

 

「ま、まだまだ十分若いですよ」

 

 マジかよ、どう見てもそこらの中学生にしか見えないんだが。

 

「ロキシー師匠には世話になりました」

 

「師匠…、あの子が人に教えられるような立場になるなんて。あの子は頑固なところもあるから大変だったでしょう…」

 

「いえいえ、師匠には魔術だけでなく、たくさんのことを教えてもらいました。僕の尊敬する偉大な師匠です」

 

 笑ってそう言うと、ロカリーはうれしそうな顔をした。うん、家族だな。

 

「はは…、あのロキシーがこんなにも慕われるようになるなんて…。あっ、そうだ。これを受け取ってくれ」

 

 ロインはそう言って、先程の一振りの剣を差し出した。

 

「外には魔物も多い。丸腰じゃ心もとないだろ?」

 

 渡された物を受け取り、鞘から抜いてみる。片刃、幅広、刃は60cmぐらいでやや小ぶり。若干湾曲しているな、前世でいうカトラスって刀剣に近いかな。年季を感じる傷が各所についているが、刃こぼれは一切ない。

 

「長年使っていたが刃こぼれ一つないほど頑丈だ。昔、フラっと集落に寄った鍛冶師にもらった物だがね。よかったら使ってくれ」

 

「そうですか、ではありがたく頂戴します」

 

 俺はともかく、エリスは丸腰だ。木剣すら持っていない。武器は確実に必要になるだろう。あとで土魔術で剣でも作ろうかなと考えていたから、ちょうどいい。彼女だって、剣神流を扱えるんだ。

 

「それと金だ。大して入ってはいないが、何かの足しにしてくれ」

 

「お金は先程、里長にも頂いたのですが…」

 

「あって困るもんじゃない、受け取ってくれ」

 

「ありがとうございます」

 

「本当は、もっとゆっくりロキシーの話をしたかったのだけれど」

 

 ロカリーもロインと同じようなことを言った。ロキシーは44歳という話だが、人族に換算すると…20歳ぐらいか? やはり、娘の事は心配なんだろう。

 

「そういうな。彼らだってやらねばならないこともある。無事だとわかっただけでも十分だ」

 

「ええ。あの子は、この里ではあまりうまくやっていけない子でしたから。外の世界でやっていけてることは、とても嬉しいことです」

 

 うまくやっていけない、というのはあの念話の力の問題なのだろう。ロキシーはこの念話が出来ないと言った。会話に混ざれない、他人の会話が聞こえないとなると、確かに家出もしたくなるかもしれない。

 

「わかりました。それではこれで、また会いましょう」

 

「ああ。ロキシーに会えたら連絡だけでもくれるように伝えてくれ」

 

「はい、必ず」

 

 

 

 最寄りの街までは、徒歩で3日。

 

 道中はルイジェルドに案内をしてもらいながら色々と教わる。長年一人で旅をし続けてきたという彼は、地理地形、天候、野営の仕方とさまざま知識を持っており、非常にタメになる。

 

 そして索敵。額の赤い宝石はどうやら生体レーダーのような性能を持っているらしい。すごいな、この人。ハイスペックにもほどがある。

 

「ルイジェルドさん、僕らに狩りの仕方を教えていただけませんか」

 

「………狩り、か」

 

「はい、今後僕らは2人で旅をすることもあると思います。ルイジェルドさんがいるうちにこの魔大陸での戦闘を経験しておきたいです」

 

「………そうだな、お前は戦士だったな」

 

「はい、エリスも剣が使えます。まずは2人で戦ってみて、何か至らぬ点があれば教えてくださると有難いです」

 

「わかった」

 

 というわけで、俺とエリスは狩りの仕方と戦闘を教わることにした。

  

「魔大陸では薪となる木は無い。だから薪となる魔物を最初に狩ることにする」

 

 そういえばルイジェルドと出会った時も、最初は焚き火だった。あの時燃やしていたのは乾燥した小枝に見えたが、実は魔物の死骸だったのか。

 

「この少し先に魔物がいるな。ちょっと待っていろ」

 

 魔物の気配を捉えたらしい。前方にすばやく移動すると岩場ごしに遠くを見つめる。

 何かを確認できたのか、こちらに手招きをする。

 

「見えるか?あれはストーントゥレントだ」

 

「ストーントゥレント?」

 

 トゥレントというのは、木の魔物だ。木が魔力によって変異して、人を襲うようになったもの。世界中に生息しており、それらを一括してトゥレントと呼んでいる。

 

 トゥレントの種類は多岐にわたる。若木が変化したもので、レッサートゥレント。大樹が変化したもので、オールドトゥレント。大森林にある妖精の泉より養分を吸い取ると、エルダートゥレント。枯れ木が変化したゾンビトゥレント。

 

 しかし、このストーントゥレントはちょっと特殊だ。なんと岩に擬態している。でも考えてみれば、おかしなことではない。木の生えていない魔大陸では木に擬態する意味がない。そこらに転がっている岩と似たような、丸くてゴツゴツした形状だ。灰色のでかいジャガイモが一番似ているかもしれない。

 

「戦う上で注意点はありますか?」

 

「ルーデウス。魔術師のお前は火を使うな」

 

「効かないんですか?」

 

「燃えては薪にならん」

 

「なるほど」

 

「水もやめておけ」

 

「濡れると薪として使いにくいからですか?」

 

「そうだ」

 

 うん、言われてみればそのとおりだ。

 ルイジェルドは必要なことを簡潔にレクチャーしてくれる。

 

「じゃあ、試しに僕とエリスで戦ってみます。エリスが危なくなったら助けてください」

 

「わかった」

 

 よし、まずは奇抜なことはやらずにオーソドックスな戦法でやってみよう。フォーメーションはエリスが前衛、俺が後衛という形。攻撃手順とパートナーに伝えることは…

 

「じゃあエリス、僕が遠距離から一発デカイのをぶちこむから、弱ったのを叩いてください。一応、使う魔術の名前だけは言うようにするけど、急いでるときは端折るから」

 

「わかったわ!」

 

 エリスはもらったばかりの剣の振り心地を確かめながら、やる気満々で頷いた。

 

 俺は杖を構える。

 

 火と水はだめ。なら土か。土は得意だ。なにせフィギュアを作りまくっていたからな、ロキシー人形を思い出す。ああ神よ、我に力を。

 魔物相手の戦闘ははじめてだ…、最初は全力でいこう。

 

「ふぅー…」

  

 肩の力を抜く。

  

 生成、砲弾型の岩石、拳大よりやや大きめ

 硬さ、できるだけ硬く

 変形、刻みを入れ、先端はより鋭く

 変化、高速回転

 速度、最速! 

 

「『岩砲弾(ストーンキャノン)』!」

 

 杖の先から、ゴゥと空気を切り裂いて、岩の砲弾が飛び出した。砲弾はすんげー速度で水平に飛んでいき、まだ擬態しているストーントゥレントに着弾。

 

 カァァァン!

 

 高音を立ててストーントゥレントに大穴が空いた。

 しかし、まだ死んでいない。貫通力を上げすぎた、先端の形状はもっと平たくしとくべきだった。

 

 エリスは砲弾が発射されたのを見て走りだしていた。

 着弾から間を置かずに接敵。

 

「ヤアァァァッ」

 

 裂帛の気合と共に一閃。  

 ストーントゥレントの1/4くらいを切断。

 

「『岩砲弾(ストーンキャノン)』!」

 

 今度は3発同時に。

 エリスに当たる角度ではないが、エリスもこちらを見ずに横に逸れる。

 

 バカァァン!!!

 

 初撃には速度も硬度も劣るが、今度は先端を若干平たくした3発の岩砲弾(ストーンキャノン)を受けて、魔物はバラバラになった。

 

 魔物が動かないことを視認して、

 

「やったわね!」

 

 エリスが満面の笑みで飛び跳ねている。

 俺は安堵のため息をついた。

 

「やるな。おまえも、エリスも」 

 

 いつの間にか横にきていたルイジェルドが言った。

 

「当然よ。ルーデウスはすごいんだから!」

 

「おまえもなエリス。悪くない一撃だった」

 

「そ、そう? でもギレーヌにはまだ勝てないわ!」

 

「慢心しないのはいいことだ」

 

 エリスは非常にご機嫌のようだ。

 やっぱり得意の剣術で結果を出して、それを褒められればうれしいだろう。

 

「ルーデウスも見事な魔術だった」

 

「ありがとうございます」

 

 へへ、俺も人に認められるのは悪い気はしない。

  

「そういえば昨日の水玉もそうだったが、無詠唱が基本なのか?」

 

「はい、攻撃魔術は全4系統無詠唱ができます。治癒魔術と解毒魔術は詠唱が必要ですが」

 

「なるほど、末恐ろしいものだ」

 

 なんだかルイジェルドからの高評価がむず痒さすら感じる。

 

「その腕なら、たしかに旅でもやっていけるだろう。その年で十分研鑽を積んでいるようだ」

 

「はい、師匠の教えのもと自分でも練習してきました」

 

「戦士の…、いや騎士の心構えか」

 

 ちょっと待って、ルイジェルド。

 

「いや~、エリスの前でそれはちょっと…」

 

「…ふっ」

 

 今、絶対何か誤解されたよ。昨日のアレは方便…でもないけれど、信用されるためにわざと大見得きったんだよ。

 てゆーか、ルイジェルドよ。そんなナリで人の色恋に興味あるの? 年頃の女の子なの?

 

「騎士、ってなんの話?」

 

 ダメよ、エリス。喰いつかないで。

 

「なんでも、なんでもないですよっ、エリス。

 さあ、早く魔物の死骸を回収しましょう。薪にするんでしょう」

 

 おれは慌てて会話を打ち切る。

 恥ずかしいったらありゃしない。

 

「…ふっ」

 

 

 

  ルイジェルドーーー!  

 

 





 20250510:句点、読点、改行を修正しました。内容に変更はありません。

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