TS憲兵:転生したら上官に激重感情を向けられていますが。俺は普通に嫌いです。生命と社会生命が危ぶまれる中進むサスペンス憲兵ライフ!   作:kisuzu

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第七憲兵局:TSしたらなんか上官に激重感情を向けられているけど、俺は普通に嫌いだから。

 

 霧雨に濡れた石畳の上を、錆びた装甲車の車輪が鈍い音を響かせていた。アーザス市、旧フリュメア王国の第二工業都市。今や帝国第一軍団の支配下にあり、占領の印たる黒鉄色の軍旗が、市庁舎の尖塔にまで打ちつけられている。

 

頭上にあるその軍旗から視線を落とすと、両脇に連なる市庁舎と旧財務局舎の壁には、薄汚れた反帝国スローガンの落書きがいまだに残っていた。上から大部分は軍が黒い塗装で塗りつぶしたはずだが、稀にこうして残っている部分がある。

 

後で修正する必要があるだろう。申請に必要な書類と各種手続き、もらわなければいけない印鑑などの数を数えながら俺は歩いていた。

 

 通りを覆うのは、焦土と化した工場跡地から立ち上る油煙と、瓦礫をよけて並べられた屋台の雑踏。傷ついた建物のあいだには、帝国企業カスティリオ重工の仮設事務所が建ち並び、粗雑な労働契約に署名を強いられる市民たちの列が続いていた。兵士たちは、機械式銃を肩に掛け、交差点ごとに検問所を設け、身分証の提示を求めている。

 

行政区の向こう側に位置するここ、第三労働区では、復興事業の名のもとに帝国企業の支社が立ち並び。労働者たちは黙々と瓦礫を片付け、仮設の市場を作り、鉄骨を積み上げる光景が毎日のように繰り広げらていた。

 

 

 そして地平線の彼方には、帝国軍の駐屯地が灰色の影となって広がり、鈍く光る機甲師団の装甲列車が、沈黙のうちに街の防衛線を走り抜けていく。全域戒厳令下の都市。

 

「おいまた装甲車が増えてないか?」

「最近は治安が悪いからな、路地裏の連中もおっかねぇし。いかれた殺人鬼がマフィア連中をやっちまって悪いのやら、借金がチャラになって良かったのやら」

 

そんな会話が聞こえてくるが、悲しくもそれは事実だ。最近は問題が山積みすぎる。

 

復興の旗印として導入された高速鉄道網も、駅舎は無人だ。

 

 軍専用貨物列車だけが、占領資源と徴発された労働者を乗せて本国へと走る。乗降口には、軍政警備隊が設置した金属探知器と身体検査台。

 

 入れ墨、傷跡、爆薬反応痕――ひとつでも引っかかれば即座に拘束。 

 

 法的手続き? そんなものは無い。

 

 検査官たちの制服のポケットには、摘発ごとに上乗せされる手当のリストが押し込まれ、精力的に働いてるよ。

ついでに横領品と賄賂も押し込まれてるんだろうが…

 

「――まるでここは軍人の街だよ」

 

ふと浮浪者の間で囁かれたその言い草に奇妙なほどに納得感を覚えた。【軍人の街】言い得て妙だ。

 帝国軍憲兵第十二大隊、都市警護司令部、反乱鎮圧特務部隊。誰もが違う腕章を巻き、誰もがまるでここは俺たちの街だぜとでも言いそうな。同じ顔で市民を見下ろしていた。

 

まぁ、俺もそんな奴らの一部な訳で…

 

かく言う俺は、帝国第十二憲兵大隊・第二中隊・第七憲兵局、中央憲兵総司令部第二監察課付き第三巡察小隊長――長いので本人もたまに忘れる。はい、名前より五倍ほど長い肩書きです。

 

このいかにも煩雑な肩書きをぶら下げた役職からも想像できるとおり、堅苦しい仕事だ。

 

――俗に言う、ここでも指折りの“面倒ごとに首を突っ込む役目”を仰せつかっている。

 

アレクシス・リュシア。通称、街の嫌われ者ランキング堂々の上位常連。制服一枚で子どもが泣き、大人が目を逸らす。冗談じゃなく、街の酒場じゃ俺の顔を見ただけで帳簿を隠される。いや、やましいことがあるからだろ。

 

身なりは一応、規定どおり。胸元に小さな徽章を光らせた憲兵おきまりの黒革ロングコート。威厳?そんなもんより、真冬の北風に勝てる厚さをくださいって話だ。

襟元には、凛とした寒気を防ぐための古びた裏地がついていたが、防弾性はない。どっちかっていうとただの威圧用。足元の軍靴はすっかりつま先の皮が剥げかけて、道端の犬にさえ哀れみの目で見られかねないレベル。

防塵ゴーグルは、埃より世間の目を防いでほしい今日この頃、首からぶらさげっぱなしで、もはやアクセサリーの域だ。今だって暇そうに胸元で鈍く揺れている。でもレンズを磨かず曇ったりすると怒られるからね。

 

歩き方?それはもう、嫌でも目立つ“憲兵らしい”足取り。だって目立たないとサボってるって怒られる。理不尽だな、ほんと。

 

ちなみに、俺は今世で女やってる。中身は男、見た目は女。逆コナンだ。けっこう背が高く、体躯もしっかりしているタイプの、いかにも“憲兵”として絵になるような女。突然の性別の変化に戸惑いがなかったと言えば嘘になるが、前世の俺に比べれば、今世は遥かに“まっとう”だ。

 

まぁ見た目のせいで一部から“お局憲兵”とか“死神人形”とかありがたくもない通り名をいただいているが

 

軍に上がる前の学校では「お綺麗ですね」と男どもが花を差し出し、軍の上官からは「お前な、見た目で得してんぞ」と軽口を叩かれる。だがな――中身は酒浸りの元おっさんだ。前世、工場勤務。昼夜問わず油と鉄粉にまみれて働く工場勤務でパチと焼酎に命を捧げた挙げ句、アル中であっけなく死んだ。辞世の句すらない。冷蔵庫には発泡酒、財布には赤い紙(未払督促状)だけが残った。

 

 

そのくせ、来世では女で美少女で憲兵である。どういう人事ミスだ。

 

容姿は赤髪・桃瞳・美少女の三点セット、天が与えたギャグである。赤い髪は日差しで燃えるようにきらめき、風が吹けばサラサラ靡く。手ぐしで払えば、それなりに絵になる。瞳は桜色。うっかり目が合えば、ちょっとした恋が始まるレベル。実際、帝都新聞の記者に「憲兵界の春」とか書かれた。こっちは冬将軍並みに寒い現場を回ってるってのに、呑気なもんだ。

 

しかし、やはり前世の価値観がまだ根強く残っているためか。たまに鏡の前で思う。

 

「これ、ほんとに俺か……?」と

 

しかし、いかに美少女の顔をしてようと、脳内は依然として昭和のパチンカー。差し引きゼロ。なんならマイナス。

 

 

ちなみに前世――あれはひどいもんだった。

 

工場勤務、三交代制、上司は鬼、給料は雀の涙。ストレス発散に安酒をあおって、ギャンブルにドハマり。見事に負けて、借金まみれ。懲りずにギャンブルで一発逆転を夢見ては負け。ついには実親にも三行半を突きつけられ、最後はしょぼくれた犯罪者予備軍コースへ。

 

で、人生のクライマックスが、アル中で孤独死。締めが綺麗すぎて逆に笑えた。

 

 

終わりってのは本当にあっけなかったよ。

人生の幕が下りたのは、気づけばひとり、窓の外に誰の気配もない夜明け前で。

夜、寒さをしのぐために買った最安の酒を、安アパートの一室で浴びるように呷って、そのまま――

 

気づけば病院のベッドでもなく、安宿の床でひとり死んでいた。

 

誰も看取らなかった。

冷蔵庫には腐った豆腐と、飲みかけの焼酎。

ポケットに残っていたのは、折れた定期券と、差押えの赤紙。

そういう人間だったんだ。

 

そんな俺が目覚めた先がここ。貴族主義の選民思想バリバリの世界で貧しい夫婦に育てられた。

まぁ、育ちをひとことで言えば――極貧と喧騒の狭間に咲いた、なんとも愛くるしい雑草系女子である。

 

生家は帝都郊外の工業地帯、通称「灰の谷」。

名の通り、空は年中くすんだ灰色、洗濯物は外に干せば一時間で石炭の香りに染まり、冬場はスープよりも煙のほうが温かかった。

母は昼夜問わずミシンを踏み、父は工場のプレス機と寝食をともにしていた。

兄弟は五人いたが、朝起きるとひとり減っていたり増えていたりしたので、正確な数はいまだに本人もよく分かっていない。

 

家族の愛情はあった。愛情だけは、なぜか無限だった。

食料は有限、電力は有料、水道管は時々爆発。だが愛情は湯水のように注がれた。主に拳と怒鳴り声のかたちで。

 

朝はパンとコーヒー? そんな洒落たものは知らん。と言う感じの家庭だったので育ちがいいとは世辞にも言えん。

朝は石炭ストーブの灰をかき出して、残った微温の空気を吸い込みながら目を覚ますのが日課。

食卓に並ぶのは、謎の缶詰。ーーラベルなしーー刻んだキャベツの芯、なぜか必ず混ざっている豆腐のかけら。それらの朝食を胃袋に流し込んだ後は、学校に片道三十分の砂利道を、底が抜けた靴で通った。帰宅する頃には靴下の方が丈夫だった有様である。

 

ちなみに学費は奨学金。制服は三代落ちのおさがり。全て親父がどこからか調達してきていた。

 

学校に行ってこいと、唐突にありあわせで急造したと思われる制服と渡された筆箱の中身は、鉛筆、消しゴム、ネジ、謎のバネ、金属片――もはや文房具ではなく、ちょっとしたサイボーグの初期パーツ。

にもかかわらず、成績だけはなぜか良かった。

理由は簡単、「このままじゃ確実に死ぬ」と悟ったからである。

 

生き延びるためには、上に這い上がるしかなかった。

そのためなら規律も守るし、真面目に勉強もする。

誰かをぶん殴るときは必ず一礼してから。それが俺の礼儀であり、生き方だった。

 

 

貧乏だが家庭に恵まれたこともあって幸いにして"なぜか"高学歴なのに低所得労働者に身を甘んじている親父殿のおかげで教育水準も高かったんで、育ちは悪いが教養はそれなり。ただ両親に常識がなかったせいで、俺にも当然そんなものは備わらなかったため軍学校前での女学院ではかなり苦労した。だいたい女学院に入るような人間の未来ってのは二つで、大体食い扶持を稼ぎたきゃ商会にでも入るか、どっかの没落貴族と結婚するかなんだが、学業がそれなりに優秀だったのもあって、女学院から、士官学校に入り、気づいたら憲兵にまでなった。まさかのエリート枠。

 

これは流石に誰も予想していなかったようで、当時はみんな驚いていた。

給与のいい参謀本部付通信官になるつもりだったのに、まさかの憲兵。

いやいや、どんな罰ゲームだよって最初は思ったけど、まあ案外向いてた。

 

と言うわけで前世と比較して、今は真面目に働いている。朝は早く、夜は遅く、捜査記録はきちんと提出、報告は簡潔、書類は誤字脱字ゼロ。ただ数字だけはよく間違えるのが最近の悩みだ。前世でできなかった「まともな社会人生活」というやつを、髪振り乱して――いや、撫でつけながら実践しているのだ。

 

規律守るのは嫌いじゃないし、顔色伺うのも割と得意だったしな。

 

それにちゃんと親孝行もしてるし、仕送りだってしてる。まぁ誰も俺に求めちゃいないだろうけど。

でも、あのどうしようもなかった前の人生と違って、今世はちょっとだけ胸張って歩ける。少なくとも街を歩いているときに、視線を避けるよう背中が丸くなることはもうない。

 

 

さて――今日も“街の嫌われ者”の朝がこうして始まろうとしているわけだが。

呼ばれて飛び出て通勤がてらの巡察業務。

 

この街の裏側、こうして巡回しまくって俺の靴が汚れてるうちは、きっとまだ、救いが残ってるってことだと思いたいね。

 

 冬季雨季が続くこの地方では、泥濘(でいねい)対策に鉄製の簡易歩道板が敷かれていたが、昨日の夜間に盗まれたらしい。歩くたび、軍靴が泥に吸い込まれるんだよなぁ。

 

「おい、抜かすなよ!」

「はぁ? なんだど!」

 

突然、列の中核を成していたあたりで騒動が起こる。どうやら列を抜かそうとした小柄な男に対し、体格の良い、日に焼けた男が注意し、その首元をつかんでいるようだった。

 

「離せボケ!」

「なにを…!」

 

大柄な男が言葉を吐く前に、小柄な男は意図してか、はたまた偶然が男の汚れきった靴越しに爪先を勢いよく踏みつけた。

 

「いってぇ!」

 

大きな声で悶絶する男。足を押さえようと足を踏みつけた張本人から指を離した途端、そいつは人混みの中へと消えていく。

 

さて、気は進まないがやりたかないが仕事をするかね。

 

憲兵隊は、この腐りかけた街の包帯みたいなもんだ。一応色々繋ぎ止めちゃいるが。まぁあんま効果ねぇなくらいのもん。

 

 だが包帯は、傷を癒すために巻かれるとは限らない。膿み腐った患部を、誰にも見せないために巻かれることもある。

 帝国がこの街に巻いた包帯は、ちょうどそんな役目だった。外側をきれいに見せ、内側の膿を密かに処理する。それが、俺たち憲兵の本分ってわけだ。

 

そうして俺が珍しくも仕事をしようと自身を鼓舞しているところ。

 

「おい! そこ! 何してる!」

 

折り合い良く――男にとっては折り合い悪く表れた兵士たちは、一人足を押さえて騒ぐ男を見て、取り囲むと、事情も聴かずに腹を蹴り上げた。

 

「グォっ!?」

 

体格で劣るとはいえ、武装した兵隊たちに囲まれた男はようやく事態のまずさを理解し始め、弁解をすべく痛みに堪えて唾液を垂らしながら自らの無実を訴えた。

 

「まっ、待ってくれ! オレは列に並んでただけだ、それを抜かすやつがいたから注意したんだ」

 

その言葉を聞いているのかいないのか、最初に男に蹴りをお見舞いした兵士が感情のない瞳で男を見下ろすと、一言、漏らした

 

「連れて行け」

 

「!?」

 

それを聞いた男の反応は顕著だった。痛みも忘れ膝立ちになると、懇願するように、いや事実、懇願した。

 

「そんな…!もう6時間も並んだんだそ!」

 

「なら次は12時間は並ぶんだな」

 

そのやり取りは、スラスラと言葉が水の表面を流れるように、実体がなく軽やかで――つまる所相手にされていなかった。

 

当然だ。ここは属州、あの兵士にとって男はいつこちらを襲う反抗市民になるかわからないわけで、そして曲がりなりにもここは準戦闘地域だ。

 

――かつて、帝国と王国は、ひとつの王家の血脈に連なる双子の国家だった。

しかし、百五十年前、王国北西部にて起こった自由綱領革命は、不可逆の亀裂を生じさせた。

新たに樹立されたリベラ・コモンウェルス王国は、爵位制度を廃絶し、自由と法の支配を基礎に据えた。

一方、帝国は古来の権威主義を堅持し、血統と伝統にその正統性を求め続けた。

 

まぁ当然の対立だな。古今東西どこでもあるやつ。

 

両国間に横たわったのは、単なる地理的断絶にとどまらない。

それは理念の断絶であり、歴史観の闘争であり、文明の異なる二つの系譜。

永遠に和平など結ばれ得ない。

 

以来、表面上の平和を装いながらも、両国は互いを敵視し、数多の代理戦争を繰り返してきたのである。

 

とここまでなら、初等教育を受けていた俺が、鼻をほじりながら、へぇそうなんだ。で終わる話であったのだが。と言うか実際聞き流していた。

 

発端は、2年前の王国による対帝国経済制裁にあった。

国境税関における露骨な差別、帝国沿岸部少数民族への公然たる支援、ならびに鉄道権益をめぐる侵出行為。

これら一連の行動は、帝国上層部の認識において、もはや戦争行為と看做されるに至った。

 

帝国は、精密な動員計画を遂行し、四個師団をもって北境に展開。

開戦宣言と同時に国境を突破し、王国の防衛線を各個に撃破した。

魔導兵部隊の支援を得た帝国機甲兵団は、敵主力を圧倒し、三ヶ月に満たぬうちに四州を占領。

主要都市は陥落し、王国軍は急速に後退を重ね、今や内陸部において持久防衛に徹するほかなかった。

 

いややりすぎでは?

 

とは皆の思ったことだ。だがその圧倒的な戦果とプロパガンダに民衆を抱き込んだたぬき軍部は以来、色々と利権をこの地で確保している。

 

まぁ流石にやりすぎるなよってことで俺らみたいな憲兵大隊が必ずどの地域にも目を光らせてはいるが。まぁさっきも言った通り俺たちは包帯。外にもらさにようにすることが第一でで場合によっちゃむしろ揉め消しに協力したりもするんだから。ひどい仕事だよほんと。

 

そんなこんなで占領地域には軍政庁が設置され、治安維持のために憲兵隊が派遣されてしばらくたち。

鉄路は補修され、主要港湾には帝国籍商船が再び出入りするようになったが、

抵抗組織による暗殺、破壊、密輸、煽動は後を絶たず、都市と農村は未だ安定にはほど遠い。

 

六ヶ月前帝国政府は、当該地域を単なる軍政区域としてではなく、恒久的な属州として統合する意向を明言した。

徴税権と警察権は段階的に帝国型行政機構に移管され、旧王国の法律は無効とされた。

これに対する国際的反発はあったものの、帝国の外交的地位はいまだ揺るがず、侵攻の既成事実は確立されつつある。

 

斯くして、血と火にまみれた地に、帝国の影は深く沈潜した。

その未来が果たして、安寧たる帝国の新たな冠となるか、あるいは腐肉となって崩れ落ちるか―

 

というわけで、あの男がああいった扱いなのも当然の帰結だった。

…まぁ、体格が良すぎたのも多少は判断に影響は与えているだろう。あいつが問題を起こしたら次の対処は手間取りそうだしな。それに、あの筋肉はもしかしたら従軍経験者かもしれない。

 

そんなこんな根拠のない憶測を考えながら歩いていると、いつの間にか工業区を抜け出していた。

それに気づいたのは工業機械の油や煤の匂いが途端に薄らいだためだ。

 

そうして俺の前に、新たな都市の顔が現れる。

 

――第一区。

 

かつては王国随一の誇りだった商業街も、今では瓦礫と強制労働者と鉄条網の見本市。

俺の職場はそんな通りを抜けたさらに向こうに位置している。つまりここを抜けなきゃならないのだが、工業区とは違えども、ここはここであまり好かない。

 

そんなこと言っても職場は向こうから寄ってきたりはしないので自分の足で動かなければなるまい。

ため息をこらえつつ、足を動かす。カツカツという軍靴の音が辺りに響いた。

 

むしろ前世関連で嗅ぎなれた香りがする分、工業区の方が俺はまだ好きだといえる。

 

 俺の職場、すなわち憲兵局まで続く街の通りは、いつも湿り気を帯びた腐臭とともにある。

がそれは理由ではない。いや理由の一部ではあるのだが、それは微々たるものだ。

本当に俺が苦手なもの、それは—――

 

「っチ…憲兵か…」

 

――これだ。

 

辺りを見回すが人がいすぎて誰がいるのかわかったもんじゃない。そんなことしてるうちに発言主はとっくにどこかに行っただろうさ。

 

この人込みでそれをいちいち相手にして、追いかけようという気にもならない。

 

大体そんなこと言うなよ。俺が短気だったらどうすんだ?

 

いや、こっちが王国語を分からないと思ってるんだろうが、言っとくがそいつは間違いだ。こっちは一応王国語を軍学校で学んできてる。流暢とまでは言わなくても会話くらいはできるんだぞ?

 

と誰に言うわけでもない愚痴を脳内に垂れ流しつつ、朝から嫌な気分で職場へと進む足を続けた。

 

その間すれ違う市民たちは、ボロ布を巻いた顔でこちらを見てくる。

 

 彼らが手にしているのは、帝国労働局が配布した量産型の支給のキャンバス地の袋。――中には小麦粉、乾燥タマネギ、脱脂粉乳などなど。国外土省の名のもとに、飢えを誤魔化すための施策案。

 

ぶっちゃけカスみたいな誤魔化しでしかない。

実際食料供給が十分でないから兵士がそれを闇市に売って稼いだり、またそれを当然のように買ったり、奪ったり、やり取りが進むもんだから、もはや憲兵であっても下手に手がつけられない問題と化している。

 

食べ物の恨みって怖い。

 

 それでも、袋を手にできるのは幸運な部類だった。

 市街地の外れ、旧下層区――現在では「第三給食区」と軍政庁が呼称するスラムでは、配給は抽選制になっている。くじに外れた者たちは、パン屑のために暴力に身を染めるか、薄暗い給食区で、夜毎に食糧庫を襲い、互いの喉を裂きあう。

 

 

 憲兵であることを示す黒革の外套――この地で自らを守る地位の鎧に身を包んでさえいなければ、俺だって明日にでもその仲間入りを果たすだろうよ。

 

遠くで鐘の音が響いた。第三給食区で子ども向けに教会がなけなしの配給を始めたのだろう。

 

大した量ではないし、それで生き残るには到底間に合わないがそれでもすがる子供は多い、そしてそれを利用する輩も。

 

脳裏に浮かんだ嫌な想像…現実を振り払った。

頭が痛い。

鐘の音がまだ頭の中で響いていた。

 

 

―――――

 

工業区から街区を越えると、やがて巨大な建造物が目に入る。

 

 空爆で吹き飛んだ議事堂の跡地には、真新しい鉄柵が巡らされ、帝国旗が風に引き裂かれるように震えている。

 

司令部――軍政庁がその巨体で、土地を覆っていた。

 

 

鉄条網と防衛柵の上には、夜間監視用の自律魔導観測球が浮かび、時折、レンズを青白く光らせる。

辺りを警戒する兵士たちは、誰もが無言で銃を構えていた。

 

 サンドグレーの戦闘外套に、最新式の九五式短機関銃。無表情にこちらへ敬礼をよこすが、内心では彼らも憲兵を快く思っていないことは知っている。

 

ああして歩哨に立っているのは、帝国第9装甲歩兵師団の兵士たちだ。

 

まぁどこの奴らでも自分を取り締まる連中は好かん。

特にここは甘い蜜を吸いやすく、人を腐らせやすい。

真面目な奴ほどそういうもんなんだ。俺みたいなのはその点でここが向いてるかもな。

 

 憲兵局へ至る街区は、三重に張り巡らされた検問線の向こうにある。

 それぞれの検問所には、銃剣を装着した歩哨が立ち、隣には背の低いバリケードが据えられている。

 表札代わりの立て札には、白地に赤く「帝国陸軍憲兵隊直轄区域」の文字。

 通行証のない者には厳しい目線とついでとばかりにセットで銃口が向けられる。

それにビビってヘタクソなダンスを披露すると。暑いだろうからとついでに、不思議と22口径と同じサイズの穴をどうにかこうにかしてマジックのように一瞬で開け、体全体の風通しを良くしてくれるというサービスまでついている。

 

と語ってみたが、実際これが俺の目の前で繰り広げられた光景だ。ひどいもんだろ?

いや、恐怖したよ。そこまでするかと。

でもまぁ自爆兵とかの報告が各地で上がってるらしいし。ある程度はまぁ うん…

 

 

 一つ目の検問所で、俺は軍服の内ポケットから通行証を取り出した。

 厚紙に、金字で「第七占領区憲兵局」の紋章が押され、軍政庁の赤い押印が潰れている。

 歩哨はいつも通り、無言で手を差し出す。 どうもとか、拝見しますぐらい言えこら。

まぁこの気に入った憲兵服をスリーブれすどころかボディレスにするには早いかと言うことで、そういった内心はおくびにもださず。

 通行証とともに、左手で軍隊手帳を掲げて見せてやる。

 この手帳、革表紙が乾き切ってるんだよな。ページの隅は擦り切れてるし、白かったはずの紙も煤で黄ばんでしまった。

 

 兵士は一瞥し、素早く敬礼を送る。

 それを半ば流すように受け、無言でバリケードをまたいだ。

あぁもっと早く終わらないかなこれ。

 

みんなパルクールうまかったら通れることにしない?

俺パルクールだけは自信あるんだよね。前世の大学でずっとやってたから。

みんなもパルクール好きでしょ。あんまりこの世界でやってるやついないけど。

ダメ? ダメか そうだよな、パルクールうまいやつみんな通れたら、パルクール自爆兵だらけになっちゃうもな。そうか。

 二つ目の検問所でも、同じ動作を繰り返す。

 ここでは、兵士が念入りに顔を見比べ、写真との照合を行った。

今のお前の考えを当てよう。

え、さっきやれば良くない?

 

 

 だが、背後で聞こえる歩哨同士の無線のやりとりはどうにも気持ちよくないんだよな。

居心地悪いっていうか。なんか噂されてるなぁみたいな。

 

 三つ目、最後の検問所にたどり着いたときには、空の色が少し明るくなりかけていた。

 憲兵局庁舎は、かつて銀行だった建物を接収したもので、重たい鋼鉄の扉が朝の湿気に鈍く光っていた。

 入り口にはさらに厳重な門番が立ち、通行証だけでなく、今日の日付と目的任務を口頭で述べる義務がある。

 

「中央憲兵総司令部、第二監察課、配属勤務。通行証、軍隊手帳、指揮官認可番号、第零八三二五。書類審査および常務遂行のため。」

 

 低く、事務的に告げる。ちなみにこの前めっちゃ早口にして極限まで効率化したら何言ってるかわかんねぇからやめろと苦情がきた。

 門番は無表情のまま頷き、扉の隙間に無線を差し込む。

 ──確認終了。入場を許可する。

 

 ガチャリ、と無骨なボルトが外れる音がした。

 錆と機械油のにおいをまとった鉄扉が、わずかに軋みながら開いた。

 

 

 

―――

 

 

 

冷たい石畳を踏みしめながら歩き続ける。

通りを曲がると、建物の巨大な扉が視界に入る。憲兵局の建物は、その規模からして帝国の官庁の中でもひときわ威圧的な存在感を放っていた。

 

正面に広がるのは、石造りの重厚なファサード。時代を感じさせる深い灰色の石壁には、長年の風雨が刻んだ痕跡が無数に残り、その表情を一層険しくしていた。両側にそびえる柱は、まるで帝国の強固な意志を象徴するかのように、無駄な装飾を一切排し、直線的に空へと向かって伸びている。

 

過去の栄光を象徴するかのようにそびえ立つそれは。長年の風雨に晒され、色褪せた石壁が痛々しい。

 

重い扉を押し開けると、冷たい空気が一瞬、室内から外に流れ出した。中に入ると、ほのかな硝子越しの光が建物内に差し込み、石の床と無機質な光が肌を刺す。

 

広いホールの天井は高く、石でできたアーチ型の梁が重く垂れ下がっている。壁面は漆黒の木材で覆われており、全体の色調は暗く沈んでいる。窓は高い位置に配置されており、昼間でも薄暗さを感じさせる。窓から差し込む光は、霧がかかったようにぼんやりとしており、室内の陰影を一層強調していた。

 

ホールの中央には大きな柱が立ち、そこから通路が四方に延びている。その通路は、幾重にも折れ曲がり、まるで迷路のように複雑に交差している。天井には低く灯されたランプが数個ぶら下がっており、油で灯るその光が、壁の陰影と相まって不気味だ。

 

毎度のことながらここの空気は正直言ってあまり好きじゃない。

 

通路を進むにつれて、次第に室内の空気が変わってくる。背広姿の職員――彼らもまた憲兵だ――たちが忙しく歩き回る区域に差し掛かると、廊下の両側に整然と並んだ部屋が目に入る。それらの部屋には、無機質な金属製のドアが閉ざされており、ドアに付けられた小さな窓からは、こちら側の動きを窺い知ることができない。部屋から出てきた者たちの一部は書類を抱えながら、または急いで電話をかける最中に通り過ぎていく。その歩調は速く、無駄のないものだった。

 

 

 

憲兵局監査二課――中央棟西翼三階、第三巡察小隊執務室。

廊下の空気は冷たく乾いていて、靴音が小さく反響する。

 

俺は軍帽を軽く傾けながら、一つの扉を押し開けた。

薄く軋んだ蝶番の音が、すでに呼び鈴代わりになりつつある。

 

――いつか直さないとなこれ。

 

そこは書類であふれる部屋だった。中央には大きな木製の机が数台並べられ、その上には、半分崩れ落ちた書類の山が積まれている。書類は整理されることなく、指示を待っているように雑然と置かれている。壁一面には、無数の棚が並び、その棚には軍用の文書がぎっしりと詰め込まれている。机の上にはインク瓶や、開封された封筒、手紙の束、そして無数のスタンプが置かれている。

 

ここが俺の仕事場だ。

 

部屋の隅には、古びたタイプライターがあり、その隣に茶色く変色した皮革の書類鞄が置かれている。褪せた黒の筐体には細かな傷が刻まれており、キーの文字は摩耗し、幾つかは原型を留めていない。

 

インクと古びた紙の匂いが混じり合い、機械の音がそれを切り裂いていく。

 

俺の副官、フェルナンデス少尉が、その打鍵の主であった。書類を作成しているらしく、背筋を伸ばし、神経を指先に集中させている。背中はいつものように過度に直立しており、それがかえって妙に若さを感じさせる。背後から近づく俺は、わざと床板を踏み鳴らし、彼を驚かせぬよう気遣ったつもりだったが。

 

「おはようございます中尉」

 

奴はこちらが声をかけようとする前に、作業の手を止めこちらに振り返った。

俺はやや面食らいながら――といっても表情筋は死んでいるが――それに挨拶を返す。

 

「おはよう、フェル。朝から尋問書類作成か?」

 

「笑ってますが、他人事じゃありませんよ。これにサインするのは貴方ですから」

 

彼は淡々と言ったが、その唇の端には意地の悪いような、あるいは嬉しそうな曲線が浮かんでいた。

 

「捜査申請書か?」

 

「いえ、死刑執行者リストをまとめてました。」

 

「なに? それはお前の仕事ではないだろう。リストは尋問課から…まさか自分で尋問したのか?ご苦労」

 

「まさか、ただ死亡した人間の死刑執行願いが出てたもので。中尉の時間を無駄にさせないためにも選別していたんです。」

 

――フェル……!こいつの献身には頭が下がる。

 

勤勉という言葉が、こいつのためにあるとさえ思えてきた。いやでも、少しだけだが、申し訳なさもある。さすがに休ませてやりたい――そう思うが、思うだけで終わってしまうのが上官の悲しさだ。

 

「ありがとう」

 

結局ありきたりな感謝を述べるに留まってしまう。

 

「いえ、好きでやってますから」

 

そう言いつつも、得意げな笑みを浮かべるあたりが、こいつらしいよな。

 

「それよりも、今日は急ぎの書類が入ってましたよね?」

 

そう言いながらフェルは首の方向を奥へと向けた。

 

奥の部屋は保管庫で、さらに書類棚たちが立ち並べられている。

 

こちらのドアには、他の部屋に比べて目立つ装飾が施されており、壁の上部には帝国の紋章が金色で飾られている。

 

フェルは立ち上がって、ドアの前に立つと。鍵穴に装飾の施された金鍵を差し込み錠を回した。

 

ガチャっという音とともに中に踏み込み。目当ての書類を見もせず無造作に棚から抜き取ると、棒立ちしている俺に手渡してくる。

 

「こちらです」

 

そのファイルの上には明瞭な赤文字ラベルが貼られている。ラベルに記された言葉を目にすると、気分が悪くなった。

 

ーー最重要案件

 

 

短い。けれどそれだけで、血の温度が一度下がる。

 

その通知の中には、「現地軍政庁の不正問題に関する重要案件」とだけ記されていた。これを受けて、即座に心中で幾つかの仮説を立てる。

 

横領、横流し、それか軍政長官が死んだとか?

だとしたらおめでとう!!やったぜ!

 

アァダメだ…気分が悪くなってきた。どれをとっても厄介ごとだ。真面目に生きたいとは言ったが、それは別に働いて墓標に過労死と刻まれるような死に方がしたいわけじゃない。

 

「はぁああ…」

 

ところで、部屋には何本かのカーテンが垂れ、窓からはわずかながらも自然光が差し込んでいる。こいつをうっぱらえば、しばらくは下町で生活できそうだ。……案外いいアイデアなんじゃないか…?

 

「突っ立てないで、済ませないと、時間ないんですよね?」

 

現実の一打が、フェルの言葉となって俺の胸を叩く。俺はそっと執務机に向かい、腰を下ろす。

俺は会議までに最低限の仕事を終わらせるために、自分の定位置につくことにする。

 

部屋の中央には大きな執務机が置かれ、その上には無数の書類が整然と並べられている。執務室の椅子は頑丈で、硬い木製でできており、その座面は革張りで擦り切れた痕がいくつも見受けられる。その椅子に座りやがてタイプライターと羽ペンが紙面をなぞる音が部屋を包見始める頃。

 

「――おはようございます、リシュア隊長。」

 

静かな声がドアから響いた。目線を上げると、老いた女性が立っていた。目が合うと彼女は軽く会釈し、書類を机に並べ始める。

 

ヘレン・メイドリア曹長。

鉄灰色の髪をきちんと後ろで結い、上着の下に着たシャツの皺もない。

両の目元には年齢相応の皺があったが、その奥の光は、刃のようだった。

 

「おはよう、ヘレン曹長。……ずいぶん早いですね。」

 

「誰かさんより十五分早く来て、中尉殿の報告書の辻褄をまた三件直しました。三件。しかも全部同じ数字のミス。ええ、これはもう一種の才能ですわ。」

 

ため息混じりに皮肉るその口ぶりに、軽く苦笑する。

 

「そんなに怒らないでください。どうせ最後には曹長が全部きれいにしてくれるって、皆思ってるんですから。」

 

「ええ、わたしが死ぬまではね。」

 

とヘレンは皮肉を返しながらも、手は止めなかった。

彼女のデスクの上には、昨夜届いたばかりの未処理案件の束。

封筒の角が焦げたように歪んだ一枚を指で拾い上げる。

 

「それより、例の件――麻薬横流しと港湾の件、今朝になって追加の報告が来てます。表に出てるよりもっと複雑ですわ。何人か上の方に名前出したがらない連中がいる。署名が削除された出納記録が三通、今朝の便で私書箱に届いてました。」

 

「匿名?」

 

「左様。だが宛名の癖は見覚えがあります。四年前、例の密輸摘発の時に殺された貿易省の書記官。夫と一緒にマークしてた人物の手口にそっくり。」

 

ヘレンの低く落ち着いた声には、どこか痛みと冷笑が混じっていた。彼女の亡き夫は内務省付きの探偵――帝国でも異例の「独立捜査官」だったが、六年前、王都での汚職捜査中に事故死とされた。

 

「私思うんです。恐らくこれは単なる汚職じゃない。裏に"再建派"の資金源があるって。」

 

俺は自分がわずかに目を細めたことに遅れて気づいた。

それを上げようとするが、もう遅い。

 

再建派──カイル宗教の宗派の一つ。軍縮と政民統合を掲げるも、今や武装勢力に堕した危険な政治残党。

 

「……つまり、この横流しは、単なる下っ端の小遣い稼ぎじゃないと?」

 

「ええ。もっと上、もっと黒い金が流れてる。

…………リシュア中尉、あなたは少将とお近づきでいらっしゃる。」

 

一瞬、空気が凍った。

 

俺は反応を見せないように心がける。

眉一つ動かさず、ただ椅子に腰を下ろす。

 

「……何が言いたいんです?」

 

「"お近づき"というのは方便です。気を悪くなさらずに。けれど、彼の周囲で起きていることは、すでに一軍人の枠を超えております。私が申し上げたいのはただひとつ。」

 

ヘレンは、机の引き出しから古びた小冊子を出して差し出した。

 

「これは?」

 

ヘレンはこちらの瞳を通して何か別のものをみているかのようにして、口を開いた。しかしそれはこちらの予想と違う種の言葉だった。

 

「目の前の善意に酔わないで。背後に何があっても、あなたの判断力だけは奪われませんように」

 

質問への回答ではなく、助言――いや忠告か。

当然彼女は耳が悪いわけでも、早すぎる認知症に見舞われたわけでもない。ヘレンメイドリアン曹長は、階級への敬意を持ち合わせている。ヘレンにとってそれほど重要な忠告ということか。

 

俺は黙ってそれを受け取る。何も言えない。何を言うべきかを逡巡してみたが、ついに口から言葉が紡がれることはなかった。

 

「……あら嫌だ、私ったら。さてコーヒーでも淹れますね」

 

それを見かねたヘレンがふと口調を明るく戻した。それが彼女なりの気遣いだと分かればこそ、それに乗らない手はない。

 

「闇市のじゃないですよね? 疲れてるんだ。市場のやつなんて飲まされたら鼻どころか腰が曲がってしまう。そうなったら憲兵は続けられませんから」

 

俺の冗談にヘレンは軽く笑いながら返してくる。

 

「わかってますよ、うちのいたずら好きの坊ちゃん連中じゃあるまいし。まったく、リシュア隊長は全部背負い込むから、背中が丸くなるんですよ」

 

言いながら、彼女は古いホーローのポットを持ち上げ、小さな給湯室へと消えていく。彼女の背中は歳相応にがっしりしており、軍人としての筋は通っているが、どこか家庭的な温かさも感じさせた。

 

五分も経たずに、ほのかに焦げた香ばしさをまとって戻ってくる。

 

「はい、重油の代わりにどうぞ。今日は豆、ちょっとだけ良いの使ってますから」

 

ヘレンが持ってきたのは、軍備品には到底見えない私物のマグカップだった。俺のものは、黒い陶器に銀で階級章のレリーフが刻まれている。

 

「やっぱり、軍指定の粉よりずっとマシですね。ありがたいです」

 

カップを口に近づけると、苦味の奥に微かな甘みがある。粗雑な軍務のなかに紛れ込んだ、奇跡のような数分間。

 

「ところで、隊長。例の“火薬倉庫の件”、昨日の晩、新聞がちょろっと触れてましたけど――あれ、表向きの話だけじゃないでしょう?」

 

「……やっぱり、そう思います?」

 

「ええ。まぁこういうのは慣れてますから。情報が少なすぎますね。爆発の被害状況や、怪我人の名前すら載ってない。軍事施設が爆発してるのに、政庁のコメントもない。妙に抑制されているといった印象です」

 

 ヘレンは指で軽くこめかみを叩き、フェルは少し考え込むように眉を寄せた。

 

「たしかに。現地の調査報告も、まだこちらには上がってきていません。ただの事故なら、もっと堂々と書くはずです」

 

フェルが疑念を口にする。それを聞いて俺は決断する。

 

「……調べます。フェル」

「はいはい、書類探してきますね」

 

「頼む…あ、後」

「昨日の新聞も持ってきます」

「…任せた」

 

「何か、出回ってない事実がある。そう思って調べてきてくれないか。現場の火薬庫の搬入記録と、担当兵の名簿。あと、ここ三日間で出入りのあった車両情報も」

 

「了解しました」

 

 フェルが姿を消すと、再び静寂が戻った。椅子の背に身を沈め、指先で唇を撫でるように思案する。小さな違和感だ。しかしこの街では、些細な歪みがやがて巨大な崩落の兆しとなる――それを嫌というほど知っている。

 

 

 

――

 

俺はペンを置き、深く椅子に凭れた。フェルは軽く顎を引いて従い、紙の束を丁寧に並べる。その中に一枚、新聞の切り抜きがあった。思わず紙面に浮かぶ手製の印をなぞる。

 

新聞のページが音もなく捲れた。

 

「先ほど目を通しました。……調べてみたのですが特に別紙での続報も出ていません」

 

 机上で開かれた朝刊。その三面下段、角に押し込められるように載せられた短い記事が目に留まる。

 

 《港湾第23火薬庫、未明に爆発。けが人なし。原因は不明。現在調査中》

 

 ――やはり短い。そして、短すぎる。

 

 それが最初の違和感だった。火薬庫が吹き飛んだというのに、「けが人なし」と「原因不明」だけで済ますなど、あまりにもそっけない。まるで「書かされている」かのような言い回し。そして何より、写真がない。火薬庫が爆発して、記者が現地に殺到しないはずがない。

 

「フェル」

 

 声を上げると、間もなく追加の資料を机にドサッっと置く音が返る。

 

「はい、隊長」

 

 やがてドサッと再び紙が木に落とされる音。

 

「搬入記録はどこだ?」

 

「あっ、すみません、忘れてました。」

 

ハッとしたように謝るフェル。やはり疲れているのだろう。それを仕方ないと言おうとしたとき、ヘレンがその目当てのファイルを持って戻ってきた。いつの間に…

 

「戻りました。これが火薬庫の搬入記録です。……おかしな点が一つ」

 

 ヘレンはファイルを開き、印を付けた箇所を示す。

 

「三日前に火薬筒が通常の倍、搬入されていました。名目は“予備用”。でも、搬出記録がありません。つまり――実数より多く持ち込まれていた」

 

「余剰分が倉庫に残っていたか、あるいは……すでに消えたか」

 

 

「この火薬庫……港の第23。新聞社はやけに素早かったわね」

 

港湾地区では、海上封鎖にもかかわらず、外海から来た旅商人たちがこっそりと貨物を積み降ろしていた。帝国憲兵隊の巡回は厳しかったが、彼らもまた裏では賄賂を受け取り、黙認していた。

 

「まぁ奴らは色々なところにコネがありますしね」

 

 

 

 新聞にいつもある今日の占い。俺はその一文を目でなぞり、思わず舌打ちした。

 

『いつもより悪いことが起こりやすいでしょう』

 

読まなきゃよかったぜ。

 

「にしても連中、現場の写真まで持ってた。どうやって入ったのか、軍政庁からの公式な報告もまだだったはずだが」

 

「ええ、現場担当の兵士が数人、すでに聴取に回されています。報道のリーク元を洗ってみまましたが回答はありません……手際が良すぎる」

 

 フェルの声音は静かだったが、語尾の僅かな揺れに、苛立ちと焦燥が混じっていた。俺は無言のまま書類を繰る。焼損報告、目撃証言、保管されていた火薬類のリスト、それと――予備鍵の所在不明。

 

「これ、鍵は事件前の記録上“内部保管”のままになっているのに、こっちの報告書では……」

 

「遺失です。三日前の点検で判明していたようですが、上申が遅れ。監察課の我々に通達が回ってきたのは、爆発の後です」

 

 無言でファイルを閉じ、唇を噛む。

 

「火薬庫の内部は?」

 

「現場写真の一部がこれです」

 

 フェルが差し出した封筒から、現像されたばかりの白黒写真が出てきた。焦げた木箱、飛び散った鉄片。だが、一部に奇妙な痕跡があった。摩耗、鋭利な切断面。爆発というより、むしろ何かが“取り出された”ような。

 

「意図的に火薬を抜いた痕跡。むしろその隠蔽として、倉庫ごと吹き飛ばした……?」

 

 そう呟いたとき、室内の空気がわずかに重くなるのを感じた。フェルは俺の顔色を窺うでもなく、机の端に視線を落として言った。

 

「報道がこれだけ早ければ、火薬の流出先も既に……利用されている可能性が高い。もしかすると、政庁内に……」

 

 言葉を濁すフェルに、俺は手を上げて制した。

 

「いい、踏み込むのはまだ早い。まずは倉庫の状態を見てみることと、働いていた職員にも話を聞く」

 

俺は椅子から身を起こし、手帳に走り書きする。

 

「それと改めて過去三ヶ月の搬入搬出と警備日誌と監視哨の記録も洗って。報道関係者の動き――記事を出した記者の所属先と、過去の記事も調べておいて。今の動向のことも知りたい」

 

「承知しました。では車両手配と尋問課への連絡を済ませておきます」

 

 フェルが敬礼の後、扉の向こうへと去っていく。残された資料を手に取りながら、煙草に手を伸ばした。火薬と新聞、そして……沈黙する政庁。

 

 この街で何かが動き出している――その予感だけが、やけに胸に残った。

 

――コンコンコン

 

「入れ」

 

入ってきたのは若い士官だった。制服をかっちり着こなし。室内だというのに、軍帽まで被った如何にも憲兵というような――いや軍帽は俺も人のこと言えないな――ただ顔立ちだけがやけにのっぺりしている。

 

「中尉殿、少将閣下がお待ちです。至急第三会議室までお越しください」

 

そして予想通りの平坦な声色で、予想通り言葉を告げた。当然こちらが返す答えもそれに倣ったものとなる。

 

「あぁ、今いくよ」

 

内線電話が備え付けてあるというのにわざわざ人を寄越すあたりよほど警戒してるんだな。地下にある電話交換室にも何も悟らせたくないと見える。

 

置いていた軍帽を被りなおし支度を済ませると

 

「行ってくる」

 

とだけヘレンとフェルに言い残して俺は執務室を後にした。

 

―――――――

 

第三会議室――軍政庁舎本館・北棟四階。

 

古い煉瓦造りの建物のなかで、ひときわ異質な静けさに包まれた空間だった。

北棟は元は旧王国時代の金融省が使用していたもので、壁は分厚い石材、床には重厚な赤褐色の木が使われている。廊下には小さな格子窓が並び、朝でも光はほとんど差し込まない。

この一帯の通路は防音処理がなされ、扉は厚く、鉄の蝶番と重錠で固められている。機密性が極めて高い。

 

――コツコツ

 

その場所に先ほどの、便宜上のっぺり中尉とでも呼ぶか。のっぺり中尉と共に連れ立っていた。彼が廊下を先導し、それに俺が続く形だ。当然というべきか、会話は特にない。

 

第三会議室は廊下の突き当たり、角の階段室に隣接しており、警備の詰所が目の前に設置されている。通常、ここへ立ち入るには局長クラスか軍政庁からの通行許可が必要だ。

 

扉のプレートには小さく「会議中はノック厳禁」の札。

 

現地の政治家との癒着疑惑や、軍部内部の腐敗、諜報部との調整といった、公開できない議題は、ほぼ例外なくこの部屋で処理されていると聞く。それらのどれにも俺は参加したこはないし、実際に見たわけでもないが。まぁほとんど事実と言って差し支えないだろう。

 

いつもなら、憲兵隊としての仕事の一環として小さな事案が議題に上がるだけだが、今回は何かが違う。

何しろ赤字だし、とにかくロクなことにならないことだけは保証するよ。

 

まぁ考えても仕方ない。今更会議はなくなったりしないわけだしな。

 

益体もないことを考えている内に、のっぺりとした顔の士官――長いな。のっぺりはドアをノックした。

 

――コンコンコン

 

ノックの仕方ものっぺりしてるなぁ。というか会議中だったら怒られる。そんなはずないと思っていてもドキッとするのだからノックしてくれるのはありがたい。個人的にこれから毎回扉ノックは任せたいくらいだ。

 

「クラーク中尉です。第三巡察小隊、リシュア憲兵隊長をお連れしました」

 

「…入れ」

 

一泊遅れてから掛けられた入室許可に、のっぺり中尉は扉を開けて室内に半身を滑り込ませると、ドアノブを握り込んだまま俺に声を掛けて――

 

「――どうぞ」

 

と入室を促した。

 

俺は言われたままに室内に踏み込む。

 

内部は十人ほどが座れる楕円形の黒檀の会議卓が据えられ、四方の壁には地図と電灯、それから古めかしい冷気式の換気扇が回っている。

窓はない。

 

 

空気は密閉され、重く、わずかに紙とインクと乾いた革の匂いが漂う。

天井には古い通信用の金属配線が走っており、卓上の各席には記録用のボタン式装置とマイクがついている。

 

机まわりを見ると、すでに数人の上級将校が集まっていた。いずれもその表情は普段よりも一層険しく、部屋の空気がひどく重いものに感じられる。さらに、隣には報告書を携えた副官と思われる少尉が立っており、何かを急いで伝える準備をしている様子だった。確か彼は少佐の副官だったか。

 

そしてその場においての最高職権者、憲兵局長であるエリアス少将が中央に座っており、この場を支配していた。

 

「――来たか」

 

少将が腕を組み、声を上げた。たったそれだけの動作。

その瞬間、部屋の空気が微かに変わったのを、確かに感じ取った。換気扇の音が少しだけ遠のいたような錯覚――空調の問題ではない。人間が空間を支配する瞬間というのは、本当にあるのだと知った。

 

エリアス・ロートヴィヒ少将。

 

報道通達にたびたび名前を連ねる帝国西方軍政庁・治安部の実務責任者。その若さ――二十を少し過ぎたばかりの少将という階級は、出世を通り越して異質だ。帝都の軍務局では「赤絨毯を踏み越えた獣」などとも呼ばれていたらしい。

 

ちなみに赤絨毯というのが出世ルートのなかでも一番王道かつエリートみたいな位置づけらしいがそこら辺の価値判断がなにによってなされてるかは曖昧である。

 

彼は、ただ座っているだけだった。濃紺の制服、装飾を排した肩章、正確な角度で締められた襟元。

艶のない銀のネクタイピン。

 

「こちらへ来い。」

 

エリアスの声が低く、しかし命令的に響いた。

 

俺は獣に恐れる臆病な狩人よろしく、奴を刺激しないように静かに席に着き、周囲の重々しい空気を一瞥した。数秒の沈黙の後、少将が口を開いた。

 

「今日、ここで話すべき問題は、現地軍政庁の腐敗だ。」

 

エリアスは語気を強めた。

 

「特に、麻薬の横流しと、市議会との癒着。これはもはや放置できないレベルまできている。調査の結果、軍政庁内に市議会のメンバーが絡んでいることが判明した。」

 

一瞬、会議室の空気が凍りついた。少尉が持っていた書類をエリアスがテーブルに広げる。そこには、麻薬の流通ルートが詳細に記された地図と、関連する取引記録が並んでいた。

 

「これは……」

 

思わず息を呑む。手に取った報告書に目を走らせると、その内容が明確に示していた。麻薬が軍政庁の一部関係者から流出し、市議会のメンバーがそれを組織的に転売しているという事実。それは、単なる個人の横領にとどまらず、組織的な癒着による巨大な利益の構築、引いては軍の結束が脅かされているということを示唆している。

 

驚きの間にもエリアスは話を続ける。

 

「この情報は、我々の内部のスパイから得たものだ。おそらく、現地軍政庁の幹部たちはその事実を隠蔽している。今、我々の真の敵は、反乱分子だけではなく、この腐敗した体制に内在する。」

 

エリアスの声が一層低くなり“沈痛”が響きが漂った。

 

――まただ。またこれだ。

 

俺は思考の裏に浮かぶ既視感を止めることができなかった。この少々閣下はいつも人を試すように、こうした沈黙でこちらに思考と緊張を強いてくる。わざとか? わざとだろうな。

 

こいつのことだ。十中八九、普段から狙ってやっているのだろう。威厳を保つとか、部下に考えさせるという意味で効果的なのは認めるが。やられる側からしたら勘弁してほしい。

 

 

――俺がエリアス・ロートヴィヒという人間を最初に知ったのは、軍学校の訓練場だった。

 

あの日、俺は汗まみれの制服に埃の斑点をこびりつかせ、必死に模擬銃を構えていた。訓練評価はクラスでも上位に入っていた――はずだった。

 

だが、エリアスが現れた瞬間に、それはすべて過去になった。

 

戦術演習、論理試験、近接格闘、古典語の口述試験。

何をやらせてもエリアスの名前は筆頭にあった。完璧だった。

俺たちは“同期”だったが、アイツはまるで別の系譜に属していた。

鋭いだけではない。間違えない。疲れない。迷わない。

その異様なまでの正確さは、教官ですら評価と恐れを両立させるほどだった。

 

それでも俺は、自分が“食らいつけている”と思っていた。

 

卒業後、少尉に任官されたとき、俺は今世の母に手紙を書いた。

小さな部屋の裸電球の下で、未来への微かな希望を込めた。

だけど、数週間後の人事通達で、アイツの名が“中佐”として掲載されているのを見たとき、

喉の奥に詰まった鉄の味が、なかなか消えなかった。

 

父の遺した階級すらない庶民の俺が、どれだけ努力しても越えられない天井があるのだと、痛感した。

 

政治的な後ろ盾があると噂された。貴族筋の庇護だとも。

けれど――それだけでは説明のつかない速度だった。

昇進とは別に、彼が赴任する部局では不可解な粛清と組織再編が繰り返された。

 

「赤絨毯」がどうたらと言われるようになったのは、その頃からだ。

 

そして今――

 

会議室の長卓を挟んで向こうに座る彼は、軍服の袖を整える仕草すら、どこか演技めいていた。

それがわかる自分が、少しだけ悲しかった。

 

 

「憲兵の任務は、この腐敗を徹底的に根絶することだ。」

 

俺は黙ってその言葉を受け止めた。確かに、反乱分子の暴動に目を奪われている間に、実際の敵は内部に潜んでいた。感謝すべくは現地軍政庁が横流しした麻薬は、特別軍に必要な物資ではなく、必要とあればつけ次第廃棄できる。もっともそれが地域社会に与える影響は甚大で、それゆえに金にもなる。だから必ず現物を提出させないと、失くしたとか処分したと言って、麻薬を懐に入れるやつが出てくる。

 

そうした汚職が蔓延することで住民の信頼を失い、帝国の占領地としての立場がますます揺らぐ結果を招く。

 

「そこでだ…」

 

会議室内の空気が秒刻みでさらに重くなる。エリアスが静かに続けた。

 

「リシュア中尉、君にはこの件を引き継いでもらいたい。」

 

奴はいきなり俺の名前を呼び、冷徹な視線を送る。

 

「現地軍政庁との連携を強化し、情報を掴み次第、必要な行動を起こす。ただし、どんな手段を使うかは、君の判断に任せる。」

 

俺は一瞬躊躇したが、すぐにその心中を整理する。言うまでもなく、この任務は極めて危険であり、結果を出せなければ俺の立場も危うくなる。しかし、逆に言えば、この腐敗を明らかにすることで一気に地位を高めることができるだろう。

 

「できるか?」

 

――できます

 

そう答えようとした。

 

だが視線がぶつかった瞬間、胸の奥に何かが沈むような、重い感触が走った。視られている、というよりは、測られている

 

俺を見つめる奴の目は、美しくも冷たい石だった。深い湖のような灰青色で、すべてを写しても、何も返さない。

 

目があったまま、俺は口の渇きを感じながら少しでも喉を潤そうとツバを飲み込んだ

 

「君は、中尉になって3年だろう、そろそろ昇進の時期だと思わないか?」

 

それで奴は微笑んだ。完璧に計算された表情。唇の端が、ちょうど“品を落とさない”限界までだけ、皮肉気に上がっている。

 

「了解しました。」

 

短く答え、しっかりとエリアスの目を見返す。今度は決して動じることなく。

 

「結構」

 

会議はその後、さらに詳細な作戦計画に移行した。思案しながら手順を検討し、次第に具体的な行動を思い描く。現地での密偵網を使い、市議会と軍政庁の癒着を突き止め、証拠を集める。関係者を一人一人洗い出し、しっかりと調べ上げる必要がある。

 

会議が終わり、部屋を出て冷たい廊下を一人歩く。途中、憲兵隊の隊員たちが行き交う中で、今までにない大仕事に、背が曲がりそうだった。だが、今はなにも恐れてはいられない。戦うべき相手は目の前にいる。背後の腐敗を摘み取らなければ、前線での勝利は意味をなさないのだ。

 

 

そのためにも、まずは…!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ストレート!」

「負けたぁ!?」

 

「「「「「おぉぉぉぉーー!」」」」」

 

俺は喫茶店でギャンブルをしていた。

 

 

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