“あまりにスムーズに回りすぎる”こと。
“どの構築にも六花が含まれる”こと。
“全テーマが、同じ支援札で接続される”こと。
それは、いつしかある種の「常識」として受け入れられていた。
だが、その影には……すでに、歪みが始まっていた。
プレイ数の偏り。
効果の濫用。
展開ルートの過密化。
そして──
“汎用カードの過労死”という、
誰もが一度は笑った冗談が、現実になる日がやってきた。
それは、ターミナル史上初の“カード精霊の労働災害案件”だった。
【社外非公開】六花ホールディングス業務災害報告書(抜粋)
発行部署:人型資源運用部
報告区分:労働災害
報告対象期間:20XX年 春期
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《SRベイゴマックス@六花》
効果モンスター
星3/風属性/機械族/攻1200/守 600
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「SRベイゴマックス」以外の「スピードロイド」または@六花 モンスター1体を手札に加える。
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症状:機能障害
原因:過労によるストレス
勤務実績:一日平均稼働時間+1,000%(前月比)
コメント:「もう無理っス……回るのは好きだけど、ずっと回りっぱなしは無理っス……」
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《二代目SRベイゴマックス@六花(SRタケトンボーグ)》
効果モンスター
星3/風属性/機械族/攻 600/守1200
このカードは、SRベイゴマックス(傷病休暇中)の代役として扱いSRベイゴマックスと同様の能力を持つ。
~以下SRタケトンボーグ本来の業務(本文)~
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症状:機能障害
原因:兼任によるストレス
勤務実績:一日平均稼働時間+1,100%(前月比)
コメント:「ベイゴマックス先輩の業務を引き継ぐとかムリゲーっす。」
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《三代目ベイゴマックス@六花(SRダブルヨーヨー)》
効果モンスター
星4/風属性/機械族/攻1400/守1400
このカードは、SRベイゴマックス(傷病休暇中)、SRタケトンボーグ(傷病休暇中)の代役として扱いSRベイゴマックス、SRタケトンボーグと同様の能力を持つ。
~以下SRダブルヨーヨー本来の業務(本文)~
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症状:機能障害
症状:多重兼任による極度疲労
勤務実績:一日平均稼働時間+1,400%(前月比)
コメント:「ベイゴマ君とボーグ君の業務を兼任して無事なわけねーっすわ」
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【クシャトリラ・フェンリル@六花】
効果モンスター
星7/地属性/サイキック族/攻2400/守2400
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「クシャトリラ」または@六花 モンスター1体を手札に加える。
(3):このカードの攻撃宣言時、または相手がモンスターの効果を発動した場合、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを裏側表示で除外する。
症状:展開過多による明確な出力低下
原因:過労によるストレス
勤務実績:一日平均稼働時間+1,200%(前月比)
コメント:「ハイヨロコンデ!」
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【クシャトリラ・ユニコーン@六花】
効果モンスター
星7/風属性/サイキック族/攻2500/守2100
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「クシャトリラ」または@六花 魔法カード1枚を手札に加える。
(3):このカードの攻撃宣言時、または相手がモンスターの効果を発動した場合に発動できる。相手のEXデッキを確認し、その内のモンスター1体を選んで裏側表示で除外する。
症状:展開過多による明確な出力低下
原因:過労によるストレス
勤務実績:一日平均稼働時間+950%(前月比)
コメント:「俺って……ほんとに“クシャトリラ”なんだっけ……?」
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【クシャトリラ・オーガ@六花】
効果モンスター
星7/水属性/サイキック族/攻2800/守1000
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
デッキから「クシャトリラ」または@六花 罠カード1枚を手札に加える。
(3):このカードの攻撃宣言時、または相手がモンスターの効果を発動した場合に発動できる。
相手のデッキの上からカードを5枚までめくり、その中から1枚を選んで裏側表示で除外する。
残りのカードを元の順番でデッキの上に戻す。
症状:展開過多による明確な出力低下
原因:過労によるストレス
勤務実績:一日平均稼働時間+750%(前月比)
コメント:「休暇……どこ?ここ?」
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~以下略~
【黒魔女ディアベルスター】
~~無断離脱~~
【魔を刻むデモンスミス】
~~配置拒否~~
「……過労、ですって?」
ティアドロップの声は静かだったが、会議室の空気を一瞬止めるには十分だった。
彼女の眉がわずかに動く。
誰もが視線を合わせなかった。
報告を行うのは、新たに経営部門に加わったばかりの獣族幹部、
《ビッグホーン・マンモス@六花》。無骨なシルエットに反し、声音はよく通る。
「はい。最新のデータによれば、《SRベイゴマックス》は過去3週間でおおよそ153万回のデュエルに展開され、稼働率は規定限度の16.3倍。《クシャトリラ・フェンリル》は精神リソースが枯渇し、現在休眠状態に入っています。また、《黒魔女ディアベルスター》は無断離脱。精霊管理部が追跡中です」
端末に映された報告資料が、次々とスライドしていく。
数字の羅列。グラフの上昇。
それはどれも、“成功の証”にしか見えなかった。
「原因は明らかです」
マンモスは続ける。
「“@六花”の制度が、ほぼすべてのカテゴリに展開接続を可能としたことで、汎用展開枠に過剰な集中が発生しています。精霊たちは、制度が想定した“支援対象”ではなく、“加速装置”として酷使されています」
ティアドロップの手が、わずかに膝の上で震えた。
けれど、誰もそれに気づかない。
DPは、確かに伸びていた。
売上も、安定していた。
でも――何かが、どこかで、音を立てて“ひび割れて”いた。
その夜、ティアドロップは温室庭園にいた。
咲き誇る、六花精たちが育てた大切な花々。
けれど、目を凝らせば、そのうちの何輪かは、もう色を失っている。
「……咲かせすぎたのね」
呟いたその言葉は、静かな温室に吸い込まれて消えた。
彼女の肩に、小さく雪が降り始めていた。
翌朝、役員会。
ティアドロップは、静かに立ち上がる。
背筋は伸びていた。だが、その声には、わずかな翳りがあった。
「“@六花”の拡大を……一度、止めましょう」
「制度を手じまいし、再検討を。これは“救済”であるべきで、“依存”であってはならないと、私は思います」
会議室が沈黙した。
だが、それは“同意”の静けさではなかった。
一瞬の後、別の声が、それを覆い尽くすように響いた。
「それでは“稼げない六花”を意味しますよ?」
経営戦略担当の《トリックスター・ヒヨス@六花》が笑顔のまま問う。
だが、その笑顔は、氷のように薄い。
「顧客は、@六花の発展を望んでいます」
「現場のフィードバックも好調です」
「経営とは、理念ではなく――継続性です」
声が次々に重なる。
ティアドロップの言葉は、誰にも拾われないまま、床に落ちていく。
彼女は口を開こうとした。
だが、誰も彼女の方を見ていなかった。
タブレットを確認する者、資料をめくる者、すでに次の議題に移ろうとする者。
その空間に、もはや創設者のための椅子はなかった。
ティアドロップは、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
背後では、誰かがそっと会議室のドアを閉める音がした。
それは、彼女にとって“取締役という役割”が閉じた音でもあった。
■とある動画配信者による配信映像
えーとですね、ティアドロップさんが「@六花制度を手じまいしたい」って言ってるみたいなんですけど、それって要するに、“うまくいってる制度を感情で止めたい”って話ですよね?
正直、それって経営者としてかなり未熟なんじゃないかな、と僕は思いますね。
まずそもそも論として、制度がうまく回ってて数字も伸びてるなら、それを維持するのが普通じゃないですか。「過労が出たからやめる」って、じゃあそれ、全ての制度で過労出たらやめるんですか?って話になるわけで。それじゃあ社会回りませんよね?っていう話です。
それに「救済が依存になった」とか言ってますけど、いやいや、そもそも最初から“依存を前提にした救済”だったんじゃないの?って僕は言いたいですね。
他種族に力を貸して、それで回してたわけで。“優しさ”とか言っておいて、現実が見えなくなってるのはどっちなのかと。
だからまぁ、善意で始めたのはわかりますけど、経営って結局、綺麗事じゃ回らないんですよね。
むしろ、ここで制度を維持しながら働き方改革するとか、精霊サポート部門作るとか、そういう“仕組みの改善”を考えるべきであって、全部手じまいって、ただの感情論なんですよね。
なんか、自分が始めたものが大きくなりすぎて怖くなっちゃっただけにしか見えないんですよ。
それは、経営者としてどうなの?と思いますし、そもそも経営者の器じゃないんじゃないかなぁと、僕は思いまぁす。
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【重要】経営体制変更および組織改編に関するお知らせ
六花ホールディングス株式会社(以下、当社)は、持続的な成長と経営の効率化を目的として、20XX年〇月×日付にて、以下の通り取締役の改選および主要職員の人事異動を実施いたしました。
【退任役員】
下記を含む「六花」名義の全取締役が、本日付で退任いたします。
六花聖ティアドロップ(代表取締役CEO)
六花聖ストレナエ(常務執行役員・戦略企画)
六花聖カンザシ(取締役・倫理監査)
その他、六花精系列役員一同
これにより、当社取締役会から「六花」名義の人物はすべて退任となります。
【新任役員】
新体制は以下の通りです(一部抜粋)。いずれも多種族出身による構成となっており、「@六花制度」の理念に基づく多様性を重視した陣容です。
メカファルコン@六花(機械族|代表取締役CEO)
DDD疾風王アレクサンダー@六花(悪魔族|執行責任者)
アマゾネス女王@六花(戦士族|財務責任者)
トリックスター・ヒヨス@六花(天使族|マーケティング統括)
他、計10名の新任役員により構成