弔くんと合ってからが始まりです。
未来は決めた。次は強さだ。個性を磨いて技術を高めて痛みに慣れて、怯まず臆さない最強のヴィランになる。
ボクの個性は“再生”。傷やケガが普通の何百倍以上に早く治る個性。小学校の低学年だったころ、階段から転げ落ちて折った腕は十分ぐらいで治った。お医者さん曰く常時発動型の個性らしい。
重要なのはここからだ。“個性”は身体能力。つまりは使えば使うほど鍛えられる。そしてボクの個性は“再生”だ。なら、自分で自分を傷つけて治すことを繰り返せば良い。痛みに耐える訓練にもなる。幸いにも....というべきか、半年以上ふさぎ込んでいたおかげでお父さんもお母さんももうほとんどボクに関わってこない。不幸中の幸いというヤツだ。今日から特訓をしていこう。
早いもので、決心を固めてからもう三ヶ月が経った。最初の1ヶ月は痛みに耐える練習をしようと思っていた…んだけど、指を折っても、腕を折っても、足を折っても、不快感はあれど痛いと思うことはなかった。まあそれもそうか。ひみ姉ちゃんが居なくなった虚無感に比べれば蚊に刺されるようなものだ。今のボクなら腕を斬り飛ばされようが体に穴を開けられようが痛みで怯むことはない。
次の一ヶ月でしたのは再生の練習。指を噛み切ったりカッターナイフで肉を切り割いてみたり。さすがに家の中でするとバレるだろうから、深夜に家を抜け出して近くの森で練習をしていた。指を噛み切った段階でわかったけれど、ボクの体から離れた部位は再生すると同時に消えるみたいだ。逆に言えば、直さない限りその場に残るわけだからブラフとか罠に使えるだろう。
最後の一ヶ月では個性の新しい使い方を特訓していた。特訓を始めてから治している時に治す場所を意識すると治るスピードが格段に早くなることと、意識して再生を止められる事に気付いた。そしてニヶ月目、指を噛み切って治していたときに思った。「治る形を変えられないか?」と。結果は最高。想像通りだった。元の指とは似ても似つかない、肉食恐竜の様な鋭い爪と鱗の生えた指を生やすことが出来た。重要なのは想像力。より細かく想像するほど強くしっかりとした形に再生できる。逆に特に何もイメージしなければ元の形に直るみたいだ。
そのまま訓練を続けてもう三ヶ月、ひみ姉ちゃんが居なくなってちょうど半年が経った日。この日の早朝にボクは家出をした。「忘れてください」とだけ書いた手紙を残して、部屋も全て片付けて、スマホも置いて、身一つで飛び出した。謝意だってないわけじゃない。一応申し訳ないとは思ってる。けど、ボクにとっては仕事ばかりでほとんど遊んでもくれなかった両親よりも、ひみ姉ちゃんの方が大切なんだ。
月明かりもない暗い夜、夜闇に紛れて山道を進む。まだ九月とは言え、住んでいる地域や時間のこともあって肌寒いけれど姿を隠す目的で着てきたロングコートが役にたってくれた。向かう先は人の多い都市部。狙うのはヒーロー。出来るだけ名が売れてる人が良い。殺しはしない。叩き潰して噂を広めてもらう。昔、最悪のヴィランと呼ばれた人がいたらしい。結局は負けてしまったらしいけど、そこまで行けば世界を変えることだって出来るだろう。
絶対に創ってみせるよ。ひみ姉ちゃんが生きやすい世界を。