世紀末覇者武勇伝 鮮血の戦士と漆黒の鬼神
[アーサー]
ひょんな事から異世界に飛ばされてしまった修司。
そこで彼は屈強の戦士達に襲われてしまう。
抵抗空しく囚われてしまった修司は、彼らのリーダーの許に連れて行かれてしまう
「……お前の名は」
連れて行かれた修司は、そこで顔面に鮮血の様な鮮やかな紅色のペイントを塗った筋肉質の男に名を問われる。
「修司……小田原修司だ」
リーダーである男の血の様に紅い顔を凝視しながら修司が答えると、男は言った。
「シュウジ……珍しい名だな。俺はアーサー、元奴隷であった仲間達とここで生きている」
「元奴隷? ここにいる連中は元は奴隷だったのか!?」
「そうだ。世界が混沌と化し、その機会に乗じて俺たちは主人であった男に対して反乱を起こした! それから皆は反乱を指揮した俺に従うようになり、今では協力し合って生き延びている」
「そうか……」
アーサーと名乗る西欧人風の男の話を聞いて、修司はこの世界が混沌と化していること、そしてアーサー達が元奴隷でありその反乱を指揮したアーサーを皆が慕っているのだと察した。
するとその時「グオオォォ……!」大地を揺らすほどの雄叫びが一同の耳に入った。
「ヤバイ、あいつらだ!」「あいつら?」
アーサーの一言と動揺に修司がきょとんとしていると、地平線の向こうから岩石の塊の様な人型の怪物が群れを成して此方へと向かってきていた。
「! あいつらはなんだ!?」
修司がアーサーに問うと彼は答えた。
「あいつらは世界がこの様になった時から現れる様になった怪物だ! 岩石の様に硬い皮膚に怪力と、厄介な奴らだ」
世界が混沌と化した時から出没するようになった岩石の様な硬さと怪力を兼ね備えた怪物だと述べるアーサーは、スグに仲間達と共に武器を手にして臨戦態勢に入る。
そんなアーサーに修司は訴える。
「おいッ! 俺も戦う! だから縄を解いてくれッ」
「馬鹿を言うな、相手は群れを成しているんだぞ。お前如きが敵う相手じゃない」
「大丈夫だ!」
自分も参戦すると言い出す修司の目を見て、アーサーは彼の目に宿る強い闘志に気付く。
――――そして
「……解った、お前も力を貸せ」
アーサーがそう言うと、彼の仲間の一人が修司の後ろ手に結んでいた縄を剣で切って開放した。
解放された修司はすぐさま、腰に携えていた日本刀を抜刀し、目前へと迫る怪物たちに立ち向かう姿勢を示す。
「お前、その武器はなんだ? 見た事がない刃物だが……」
修司が使用する日本刀を始めて見たアーサーが問うと、修司はまるで日本刀を自慢するかのようにアーサーに説いた。
「これは俺の祖国で作られた日本刀って奴だ。切れ味はそんじゃそこらの刃物とは比べ物にならない」
「ニホントウ……? うむ、ならばそのニホントウの切れ味とお前の実力、見せてもらおうか」
アーサーの言葉に修司は無言の御意を示すかのように頷いた。
そして戦いは始まった。
アーサー率いる戦士たちは、西洋の剣で岩石の怪物を斬り付けつつ振り付けられる豪腕を避けながら何とか応戦。
そんな戦況の中でアーサーは剣で斬り付けて怪物が怯んだ隙をついて、怪物の上に飛び乗ると、怪物の頭上に剣を突き上げて一気に頭部を突き刺した。
「グオオオオォォォ……!」頭の天辺を剣で貫かれた怪物は断末魔を上げながらその場に倒れ込み絶命する。
ようやく一体の怪物を倒したアーサーは一息入れる暇も無く、次の怪物を倒しに駆ける。
一方その頃の修司は、岩石の様に硬い怪物の手や腕の部分を日本刀で意図も容易く切断し、その瞬間に怯んだ怪物の胴体までも日本刀で一刀両断して簡単に倒してしまう。
日本刀の切れ味と、その日本刀を巧みに扱う修司の手腕を見たアーサーが修司の許に駆け寄って話し掛ける。
「凄い切れ味だな、その武器は」「へへ、まあな」
この時のアーサーと修司の間には、僅かながらに友情が芽生えていた。
その後も、アーサー率いる戦士達と素晴らしい切れ味を誇る日本刀を武器とする修司は、迫り来る怪物の群れを一掃していった。
戦いが終わった後、修司とアーサーは友の誓いを立て、アーサーの仲間達も修司の実力を認めた。
燃え上がるような黒煙に包まれた、何とも異様な空模様の下で、アーサーは修司を連れてある場所へと導いた。
言われるがまま修司は荒んだアスファルトの大地を進んでいくと、崩落した高速道路が見上げられる場所まで連れて行かれた。
そして驚いた事に、崩落した高速道路から古びたセスナ機を押して道路から真下に滑空させて遊んでいる幼い子供たちが確認できた。
子供達は皆でセスナ機を押して、高速道路から落とすとその場で跳びはねるほど大いに喜んでいた。
まるで普通の子供がラジコン飛行機を飛ばす感覚で、セスナ機を押して落として遊ぶ子供たちを見て修司は絶句した。
だが、そんな修司の真横でアーサーは子供たちを見て言った。
「あの子達を導かなければ……」
なんとアーサーは子供達が正しく成長できるように大人である自分たちが導かなければならないと説いたのだ。これには子供達の行動を見て絶句していた修司も、言葉を失くすほど感銘を受けた。
[チンジャオ]
「はっはっは! お前ら! また私に従ってもらうぞ!」
修司とアーサー達の前に現れたのは、キャタピラで地上を移動できる様に作られた、パイプオルガンに巨大な機械が取り付けられた装置を携えた中年の男だった。
男を見て、アーサーは表情を一変させた。
「お前は……チンジャオ!」
「チンジャオ?」
「俺たちの元主人だ」
現れた男の名はチンジャオと言い、その耳元まで伸びた黒い縮れ毛のチンジャオは元奴隷であったアーサー達の主人だった男だと言う。
鍵盤と連なったパイプというピアノの様な装置の前に腰を下ろすチンジャオの傍らには、目に光の無い女性の剣闘士の姿があった。
一見、ワンダー・ウーマンにも似た女性の剣闘士はアーサー達の仲間であったのだが、どうやらチンジャオが発明した巨大な装置によって洗脳されてしまったらしい。
仲間と闘うのを躊躇ってしまうアーサー達に成り代わり、修司が女剣闘士の前に立ちはだかる。
そしてチンジャオが鍵盤を叩いた瞬間、女剣闘士は修司に襲い掛かる。しかし修司は女剣闘士の斬撃を軽い身のこなしでかわすと、剣闘士など眼中に入れず、真っ向から装置の前に座り込むチンジャオに向かっていった。
チンジャオに急接近する修司に、チンジャオは「ひぃっ!」と何とも情けない声を上げながら装置の前から離れてしまい、その次の瞬間に修司は先ほどまでチンジャオが演奏していた鍵盤を力いっぱい叩いて滅茶苦茶に音を鳴らした。
するとどうだろう。洗脳されてた女剣闘士の目の輝きが元に戻り、彼女の洗脳が解けたのだ。おそらく正しい演奏で無ければ洗脳は続かない仕掛けになっていたのだろう。
更に修司は二度と人を洗脳できないよう、腕に力を込めて思いっきり鍵盤を叩き壊した。
鍵盤を破壊されたチンジャオは、鍵盤装置に取り付けている機械の上に飛び乗り、修司に対して酷く脅えていた。
機械の上に飛び乗って縮み込むチンジャオに修司は刃を突き向けて言い放つ。
「抵抗するな! 大人しくしろッ」
それから修司はチンジャオが機械に施された様々なスイッチに手が触れないよう、チンジャオに手を頭の後ろに回すよう言う。
だが姑息な策士であるチンジャオは手を頭の後ろにやりながら機械から下りる際、修司に気付かれないよう機械上の黒いペダルを肘で押した。
「! コイツ!」
しかし修司の目はチンジャオの姑息な手を見逃さず、黒いペダルを肘で押したチンジャオを強引に機械から引き摺り下ろすと次の瞬間、巨大化して機械を怪力で破壊し尽くしてしまった。
「わ、私の発明が……っ」
時間をかけて発明した装置を徹底的に破壊されるのを目の当たりにしたチンジャオはその場に崩れてしまった。
それからチンジャオはアーサー達によって牢屋に幽閉されてしまい泣きを見る破目に。
そして修司はアーサー達の許から去っていった。
修司を見送るアーサー、そして去り際にアーサー達に手を振って別れを告げる修司。
鮮血の戦士アーサーと漆黒の鬼神小田原修司の物語はこれにて幕引きとなります。