思ったより一話に反響がありまして、天啓も降りてきたので続きです。今回はカヨコ回です。
注意!今回の話には作者の自己解釈が多分に含まれています。
『…‥本当に、やるんですか?』
『あぁ。この情報を奴らから盗めれば、私の研究は大いに進展する。…‥期待しているぞ、鬼方カヨコ。』
『…‥はい。』
今となっては懐かしい。私がまだ、"雷帝"と呼ばれていた彼女の
なんでもやった。潜入に偽装工作、破壊工作に情報操作。彼女に言われるがままにその全てをこなした。…‥時には、彼女に牙を向ける者を病院送りにしたりもした。
今思えば、あの時の私は正気じゃなかったのだろう。雷帝という狂光に当てられ、従うことに喜びを覚えていた。そんな不思議なカリスマが、彼女には確かにあった。
だけど…‥私は徐々に、その光から目を覚ましていた。
その少し冷えた頭でやっと分かった。
自分の今までの行いは、許されることじゃない。
彼女の指令というだけで、私はこの手で何人を不幸にしたのだろう?…‥ははっ、笑える話だ。自身の怖い顔が嫌だと思っておきながら、精神はその顔に見合うどころか越えるほどに怖くなってしまっていたのだから。
…‥きっと、あの時の私は迷っていたのだと思う。『このまま彼女に従っていていいのか?』『今からでも、できないと言いに行った方がいいのか?』そんな思いが、脳内を駆け巡っていた。
でも、そう思うには遅すぎた。
その時の私は二年生だったけどもう三年生になる頃で、今更この道以外を探す時間は残っていなかった。…‥いや、正確には私自身が拒んでいたんだと思う。心のどこかで、彼女に従う以外の自身の姿を想像できなかったから。
そんな風なことを考えていたから、きっと顔にも出ていたのだろう。周りの視線がいつも以上に気になった。
少しばかり、その視線が鬱陶しく思っていた時
『あの…‥大丈夫ですか?』
彼に出会った。
『…‥私に言ってるの?』
『は、はい。…‥だって、あんまりにも辛そうな顔をしてるから…‥』
『…‥そんなに、酷い顔してる?』
『失礼ですけど…‥病人みたいですよ。』
『病人…‥ははっ、あながち間違いじゃないかも。』
『…‥良かったら、話ぐらい聞きますよ?なにかあったんじゃないですか?』
『…‥じゃあ、少しだけ聞いてもらおうかな。』
彼には少し濁しながらも、ある程度の事実を伝えたと思う。
『…‥なるほど。』
『正直、俺から言えることはあまりないです。きっとなにを言っても、貴女に対して失礼になってしまう。』
『…‥そうでしょう?聞いてくれただけ助かったからさ、貴方はもう、私に関わらない方が…‥』
『それでも、一つだけ言えることはあります。』
『…‥え?』
『貴女はもっと、自分に素直になっていい。』
『…‥俺には、目指してる夢があるんです。』
『その夢は今の俺にとってすごく遠いもので、色んな苦難があります。』
『この夢を聞いた人は一人を除いてこう言いました。『貴方にはできない』って。』
『けど…‥憧れは止められない。一度そうなると決めたのなら、俺はそれを叶えるまで夢を諦めるつもりはない。…‥えぇっと、つまりなんて言いたいかっていうと』
『自分に従って、いいと思うんです。色々な
『…‥偉そうなことを言って、すみません。』
貴方が言ってくれた言葉は、間違いなくその時の私を救ってくれたと思う。
暗闇の中で彷徨っていた私を、光の下へ引っ張り出してくれた。
『ふふっ…‥あはははは!』
『!?な、なにか可笑しいこと言いました?』
『いや、違う違う。こんなに簡単なことだったんだなって思ってさ。』
(そうだ…‥簡単なことだった。)
(もう三年生だからなんなんだ?一度きりの人生なら、今からでも…‥)
(やり直そう。)
(過去が消えるわけじゃない。自身の犯した行いが、完全に消え去るわけでもない。だけど)
(いつまでも後ろを向いていても、また不幸な人を増やすだけだ。なら…‥)
(これ以上被害者を出さないためにも、前を向いてみよう。)
『…‥ありがとね。おかげで、悩みは解決したよ。』
『そうですか!それは良かったです!』
(といっても、別にそんなにやりたいことがあるわけじゃないんだよね…‥)
『…‥また難しそうな顔してますけど、まだなにか?』
『いや…‥別に、そこまでやりたいことがあるわけでもないなって。』
『…‥なら、その…‥』
『ん?』
『これもなにかの縁です!良かったら、俺の会社に入ってくれませんか?』
『…‥スカウトってやつ?』
『従業員は俺を含めて二人しかいませんし、まだ中学生だから起業も来年になると思うんですけど…‥お願いします!』
『…‥』
(面白いかも。それに…‥貴方になら、私が従う姿が想像できる。)
『分かった、いいよ。』
『本当ですか!やったぁ!』
『ちょっと大げさじゃない?…‥私は鬼方カヨコ。これからよろしくね、社長さん。』
『はい!…‥あっ、俺も自己紹介しないと。陸八魔アルっていいます!これから、よろしくお願いします!』
これが便利屋68課長、鬼方カヨコの始まり。…‥私の、転換点。
彼の会社…‥便利屋68に入ってから、すごく慌ただしい日々だけど、毎日が充実してる。…‥でも、一つだけ不満なことがある。
鈍すぎる、あまりにも鈍すぎるのだ。
私がいくらアプローチしてもろくに気づかないし…‥たまに気づいたと思ったら顔を真っ赤にしながら倒れちゃうからその先に進まないし…‥
…‥彼は気づいているのだろうか?私は、私達はもう
貴方しか、眼中にないことを。
アプローチの仕方を変えてみようかな?もう少し、彼に刺激を与えないようなやり方に。
「なにか良いことでもあったか?カヨコ。今日は随分ニコニコしてるな。」
「…‥なんでもないよ、社長。」
「そっか…‥まぁ、楽しそうで良かったよ。」
「…‥ふふっ♪」
今までの日々も、確かに楽しいものだったけど…‥
貴方と一緒になれたら、この日々はもっと素晴らしいものになると思うんだよね。
ムツキとハルカには悪いけど
一番は、譲らないよ。
(…‥いつもそうだけど、俺の顔をずっと見ててなにか楽しいんだろうか?)
カヨコの過去は100%妄想ですが、以外とあるんじゃないかと思ってます。
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