アトリエシリーズってもっと和気藹々してるモンだと思ってたんだけど!? 作:ドンケルハイト量産計画
俺は転生した。多分転生でいいと思う。
んでここは、多分アトリエシリーズの世界なんだと思う。
なんでこんな多分多分付け足してんだと思われるかも知れないが、俺はアトリエシリーズのニワカである。アトリエシリーズの歴史で言えば、最新作のライザのアトリエの名前とアニメを若干齧った程度の。
疲れた大人や年頃の子なら、ゲームの世界に転生なんて夢みたいな話だろう。転生したくない世界なんてのもままあるが、アトリエシリーズなら、なんかこう、楽しくスローライフとか行けそうだし、当たりの部類だと思ってたんだ。
──ん? どうしてそこがアトリエシリーズかどうかって分かったんだって?
そりゃアイツが居るからだ。ぷにぷにしたスライムちゃんが。ゲームで顔付きのスライムなんてのはそう多くない。特にマスコットポジのスライムなんてのは。アトリエにわかの俺だが、この棒線みたいな目に馬鹿みたいな半開きの口は間違いなく、アトリエシリーズのスライムだろう。
それに気付いた俺は安堵していたんだ。初代アトリエシリーズのキャッチフレーズは『世界を救うのはもうやめた』らしいから、ファンタジーあるあるな世界の危機なんてのも存在しない気楽な世界なんだろうと。
だが俺は、この世界に生まれてからというもの、スローライフとは無縁の生活を送っていた。
「……はぁ、人が居ねえ。どこにも居ねえ、廃墟は山ほどあるのに居るのは獣か変な三角帽被った小人にクラゲ人かカラス人。マトモな人! どこへ!?」
アトリエシリーズってのは、こう美少女が錬金術を通して一夏の大冒険的なのをするジュブナイルRPGじゃあないのか。会話は通じないし、俺の身体もおかしい事になってるしで散々だ。
「ぷに〜!」
そんな訳で歩くのに飽きて石に座っていたら、何やら目の前に水色のぷにぷにがやって来て、目をくの字にしながら威嚇してきた。威嚇にしては迫力が足りなさ過ぎるが、恐らくは威嚇でいいだろう。
「ん? ああ、ここはアンタの縄張りか?」
「ぷに! ぷに!」
いつまでも居座ってると襲われそうだな。にしても随分必死だな。そんなに大事な場所なのか。
「ぷ、ぷにっ!」
「何だ、後ろに何か居るのか?」
ぷにぷにが後ろに視線を向けている事に気付いた俺は何となく振り返ってみた。するとそこには、壁。さっきまで無かった筈の……いや、これは。
「ゴァァァァァッ!」
「ごっ、ゴリラ!?」
天衝くドラミング。
数秒後、俺の身体は空高く舞っていた。
縦回転の視界の中には、拳を振り上げたままのゴリラ。
「ゴァッ!」
それは勝利宣言か。俺の視界は真っ黒に染まった──
「道を歩けばゴリラに当たる……アトリエシリーズって、こんな過酷な世界なのかよ」
──そんでもってすぐに明けた。埋まっていた頭を地面から引っこ抜いて。
普通、人間が数メートルの高さから頭を下にして落ちれば、まず無事じゃない。死ぬか、何らかの致命的なダメージが残る。だが俺はピンピンしながらまた立ち上がる事が出来ていた。
「……またこの身体に助けられたな」
サーコートに付いた土埃を払い、
俺はどうも、死んじゃいないが生きてるかどうかも怪しい身体になっていた。全身は得体の知れない金属、中も外もだ。外見はフルプレートの騎士だが、中身はない。鎧に見える外観は実質俺の皮膚のようなものである。
だったら今の俺は機械なのかと考えてみたが、どうにも継ぎ目は見えないし、触覚どころか温度や湿度の感覚がある。
矛盾しているかも知れないが、今の俺は『生きた金属の塊』とでも言うべき存在と化していた。
風の噂では生きているパイなんてアイテムがアトリエシリーズには存在すると聞いたが、金属生命体まで作れるとは聞いた事がない、それなんてトラ〇スフォー〇ーだ。
更に胡乱な噂だが、そのパイの鳴き声は『ぱい』らしい。もし俺がその生きているなんちゃらであれば、外からは奇妙な鳴き声を発する珍生物とでも思われているのかも知れない。勘弁してくれ。
「……別に俺の喋り方、変じゃないよな?」
「ゴァァッ!」
「でしょうな!」
問答無用と振り抜かれたゴリラアーム(右)を腹を向けて構えた大剣で掬い上げる様に打ち返す。高く跳ね上がった右手、またもや早過ぎる勝利宣言のポーズとなったゴリラのガラ空きの懐に、俺は背中と足のブースターを点火しアウトレンジからインレンジに滑り込む。
俺は金属生命体らしいが、ロボットでもあるらしい。この重い身体を軽々動かすだけのエナジーとギミックが備わっていた。
だからこその無茶無謀、ホバー挙動で大剣に速度を乗せ、更に回転し遠心力を。全身全霊全力全開の一撃を振り抜く──。
「ゴァァァッ……」
一刀両断。
上下の泣き別れたゴリラは、小さな断末魔と共に光となって散っていった。あれは、この世界の物理法則なんだろう。多分、魔力的なアレに還ったのだ。
「……ふぅ」
「ぷにっ、ぷに!」
すると、足元に青いぷにぷにが寄ってきた。なんだろうか、襲う気配はなさそうだが。そう言えば、最初はコイツがゴリラに気付いてたんだったな、ゴリラに夢中で忘れてたが。
「ん、まだ居たのか、ぷにぷに」
「ぷにっ?!」
「スライムでも無視されてたらショック受けるんだな……」
ぷにぷにって奴はどうも警戒心が鈍いらしい。さっきまで大剣振り回してた奴にこの態度だ。自然界で生き残れるのか。
「ぷにっ!」
「……何だ? 俺がアンタを守ったって思ってるのか? あれは成り行きで……って、言葉通じないよな。さっきのは雰囲気で分かったんだろうし」
「ぷに〜」
青いシルエットをふるふる揺らして、だらしない笑みを浮かべるぷにぷにに毒気が抜ける。しゃがみ込むと俺の胸に飛び込んで来たので思わず受け止めてしまった。
「ぷに〜ぷにっ」
「……ま、1人旅も飽きてきた所だ」
どういう訳か、俺は懐かれてしまった様だ。俺の胸なんて硬くてゴツゴツして冷たいだけだろうが、スライムめいた身体を持つコイツには関係ないらしい。
さて、俺は1人旅をして来たと言ったが、俺は東の方から来た。方角は太陽の方向を眺めながら何となくで割り出した物だ。もしここの太陽の動きが現実世界と違っていたらアテにはならないが、どの道あてもなく歩き回っているのだから特に関係はない。食料問題もこの身体であれば不要だ。
「さて、次はどこへ向かうか。ずっと黄色や青白い景色ばかり見てたから、久しぶりに緑が見たいんだがな」
廃墟と訳の分からない生命体にばかり遭遇していた俺は正直な所、本当にアトリエシリーズなのか疑わしく思えて来た所だった。
焦りもある、そろそろ、俺のスタンスを確立させないとこのままふらふらと大陸を彷徨い歩いて終わりそうでもあったからだ。この地に根を下ろすのであれば、原住民にコンタクトを取ってより深く関わる事も考えなければならない。
俺は青白い大地から南へ向かう細道を通り、巨大な風車が幾つも突き立つ奇妙な浜辺を抜けた。すると待ち望んだ緑が見え始めた。俺はぷにぷにを連れたまま足早くその先の地下洞窟へ向かい、地上へ出る。
見下ろした先には細く長い川に木々がぽつぽつと並ぶ広い大地、至る所に獣がいる事と、奥に超巨大な木が見える事以外はかなり落ち着いた風景だ。
「……落ち着くな、やっぱ緑は」
「ぷにぷにっ」
「あぁ、青いぷにぷにがちらほら見えるな。もしかしてお前の故郷はここなのか?」
「ぷにっ?」
「はは、そりゃ分からないか」
今までの環境より、マトモに人が過ごせそうなこの場所なら、誰か見つかるかも知れない。そう思って周囲を見渡していると、ある物が目に入った。
「……マジか」
「ぷに〜?」
見下ろした先には、人の集まる仮設のテント群。そこにはトレードマークの様に赤い布を身体のどこかに巻き付けている人々。彼らは周囲の物を採集したり、観察しながらメモを取っている様子だった。
「間違いない、人間だ。人間だぞぷに太郎!」
「ぷに、ぷにっ!」
ぷに太郎は俺が名付けた。名前が無いと呼び分けるのに不便だからな。そしてぷに太郎は文字通りの鉄面皮だが身体で喜びを表す俺に合わせて伸びだり縮んだりしていた。
「よし、早速コンタクトを……いや待てよ」
「ぷ、ぷに?」
「ぷに太郎が居るまま会いに行くのは不味いか?」
いくらマスコット的ポジションとは言え、敵は敵だ。そんなものを連れて近付けば袋叩きに遭いかねない。それに彼らが身に付ける赤い布、あれは何らかの識別に使用しているのではないか。となればそれを身に付けていない俺もまた怪しい人物となる。かと言って赤い布を巻いて擬装したらバレた時に面倒な事になる。
……ここまで考えた結果、彼らの中から少人数で行動する班にコンタクトを取ろうと考えた。
これまでの道のりで、彼らの残した痕跡は見当たらなかった。つまり彼らはまだここから移動していない訳だ。そう考えた時、あの集団から見えるある程度規律立った動きや、そこら辺の石や水、動植物を注意深く観察する姿から察するに、調査団と言った所なのだろう、と推測した。流石に徒党を組んだ悪党の類があんな目立つ様に動き回るとは考えにくい。
それから俺は調査団(仮)を見下ろせる高台の上から、ぷに太郎と共に調査団の様子を観察する事にして──。
「お前、何モンだ?」
──誰かの声がして、思わず振り返る。
「はい?」
「ぷに?」
背後には、銃を構えたツンツン白髪頭の目付き悪過ぎ男が居た。目付きを誤魔化す為が、濃い橙色のメガネを掛けていたが、それが余計に厳つく見える。
彼の腰には、あの調査団(仮)と同じ赤い布が巻かれていた。つまり、彼はあそこの人間か。幸い、かけられた言葉が聞き取れたので、返す答えはあるのだが……。
「黙ってんじゃねえ。キリキリ話しやがれ」
「ぷにににっ!?」
あろう事かこのヤンキーの様な男、ぷに太郎に銃口を突き付けて来た。短い間だが、ぷに太郎とは友情を育んだ身である。咄嗟に背中を差し出して庇った。
「ちょちょ、ぷに太郎に銃口を突きつけてくれるなよ!?」
「……何だ喋れるじゃねえか」
「大体、アンタこそ何なんだ? ここに何の用ででででっ?!」
コイツ、足元に銃弾ばら撒いて来やがった。当たった所でかすり傷だが、相当に脅し慣れてるぞコイツ。あれは調査団じゃなくて指定暴力団か何かか、よく見たら団長らしき人物もえらい強面だったもんな。
「質問してんのはこっちだ。何でオレ等の拠点を観察してた」
「そりゃ、こんなマトモな人の居ない場所でアンタ等みたいな人間を見たら気になるもんだろ?」
だが、焦ったら負けである事くらいは分かる。努めて冷静に、コイツよか多少長くは生きていたんだ、霞みたいな人生経験値をここで活かさずなんとするか。
「ほお。ならお前はここの原住民ってワケか?」
「さあな? 俺にも分からんよ」
「…………どうやら、そいつは本当らしいな」
とりあえず正直に言ってみれば、彼は少し考えて納得していた。彼なりの理屈に合った答えだったのだろう。俺は少し調子付いた。
「ほほう、見た目の割に案外人を見る目あるじゃないか」
「ふざけた事言ってると撃つぞ」
「撃ってる! 撃ってる撃ってる!」
「ぷにっ?! ぷにぃっ!?」
わざと外れる様に撃っているのは分かるが、正直どこまでガチなのか区別が付かない。当たっても良いやと思ってるんじゃ無いかとすら思う。幾ら何でも引き金が軽いぞ。
と、無様に踊っていると懐のポーチからコロコロと光る石が転がり落ちた。すると彼の引き金を引く指が止まった。
「んな……それ、宝石じゃねえか」
「っと、何だ急に? 確かにこれは宝石だが」
それは道中で宝石を背負う虫が居たので、お金の代わりになるかと思い幾つか拝借していた物だった。ルビーやサファイアの様な深みと煌めきのあるそれを1つ手に取ると、彼はそれを太陽に翳して輝きの具合を見ている様だった。
「おいおい、こりゃ凄えな」
「どうした、そんなに珍しかったか?」
橙色の色付きメガネを下げ、鋭い眼光を覗かせて彼は言った。その口元に邪悪な笑みを浮かべて。
「……取引だ」
「取引?」
彼が掛けている色付きのメガネのせいか、目が金の色になった様に見えた。ギザギザの歯をギラリと輝かせたオリジナル笑顔……笑顔ってのは歯を剥き出しにする威嚇の仕草から来ている事を強く認識させてくれる様な教育的な笑みを見せる彼に、俺は剣を抜こうかとすら考えていた。
「お前はオレにコレを渡す。その代わりにオレはアンタを見なかった事にする。どうだ?」
「……えっ、いいのか? アンタは彼処の連中の仲間なんだろ。背信行為になるんじゃないのか?」
「落ちる程の信頼なんざねえよ。オレはオレのやりたい様にやるだけだ」
彼、ゴーイングマイウェイって感じだな。いかにも最近の若者っぽい。いや、この世界の最近って何なのかは分からないが。
「そうしてくれるなら助かる。えっと……名前は?」
「……あ? 何でお前に名乗らなきゃなんねえんだ」
「もしまた彼処の誰かに見つかったらアンタと知り合いって言ったら見逃してくれるかも知れないし。もう一つ宝石オマケするからさ、頼むよ」
すると彼は腕を組み逡巡する素振りを見せ、暫く黙り込んだ。口を出すか悩んだ俺だが、彼からの返答をただ待った。
「──ルトガーだ。別に忘れても構わねえぞ」
そうして漸く答えが出たのか、組んでいた腕を解いた彼はそっぽを剥きながら言った。
「そうか、2度と忘れないでおこう。因みに俺は……ああいや、好きに呼んでくれて良い」
「じゃあ似非騎士だな」
ルトガーね。よし、ファーストコンタクトはカス以下の出来だったが、何とか人間の知り合いを増やす事が出来た。あだ名まで貰えて何よりだ。実際似非なのは俺も認めるところだからな。
俺は宝石をもう1つ投げ渡す。ルトガーはそれを受け取り俺を見た。
「せっかく見逃してやるんだ、他の奴にあっさり見つかる様なヘマすんじゃねえぞ。オレの名前を出されたら面倒くさいからな」
「ああ、ご忠告痛みいるよルトガー君」
「ケッ、そのふざけた態度は鎧の奥にでもしまっとけ」
そうしてルトガーの方は用は済んだとばかりにすたすたその場を去っていった。まあ、何だかんだ言っても悪い奴じゃなさそうだ。宝石は既に1つルトガーに渡っていたのだから、取引などせずに持ち逃げすれば良かった所を、わざわざ俺に取引という選択肢を与えてくれた。内面は真面目というか、案外誠実なのかもな。
俺たちは嵐が過ぎ去った事にひと息つく。
落ち着いた所でぷに太郎に目を向けると先ほどよりやや色艶が落ちていた。透き通る青が少し濁った様な感じだ。
「ぷに……」
「ん、疲れたかぷに太郎。じゃあ、どこか雨風を凌げる場所で休むとするか」
……俺も疲れた。
この世界を俺はアトリエシリーズの何かだと疑ってはいるが、あんなヤンキーと遭遇する世界でスローライフなんて出来そうもない……まさかファンタジーなマガジン系ヤンキー漫画の世界なのかここは。一流
そんな下らない事を考えながらとぼとぼと道なりに歩いていると、上り坂の陰から何かが見えて来た。教会の様などこか荘厳さを感じる建物だ。
「おお、見ろよぷに太郎。立派な建物だぞ」
苔むして蔦が絡んではいるが、目立った損壊は少ない。雨風を凌いで一晩を明かすには丁度いい。んじゃまあ、ここで一休み──
「……だ、誰ですか?」
「──失礼しました」
……誰か居た。黒髪片目メカクレの美少女が。なんか鉤形のアホ毛がピンと伸びていた気がするが、ファンタジーの住人は髪の毛までファンタジーしてるんだな。
「いやいやっ! 誰なんですか!?」
『対象はフラミィのデータベースには存在しません』
教会からUターンした俺を追って出て来た女の子、その傍らには下部のプロペラでふよふよ浮いてる緑の炎を灯したランタン。自律式のドローンなんてのもあるんだな。俺みたいなのも案外居るのかも知れないぞ。だがここは退かせてもらう。
「通りすがりの騎士です、失礼しました」
「ぷに」
だが一番の問題は彼女の左上腕部で棚びく赤い布、あれは彼処に居た集団の身に付けていたアレだ。一匹狼なルトガーだって巻いてた辺り、徹底してるに違いない。だが俺はそんな物巻いちゃいないし、ぷに太郎を抱えたトップオブ不審者。見つけ次第即通報されてもおかしくない。
「まっ、待ってください! 何もしませんから!」
「そう言う奴ほど何かするんだって!」
そうして始まったのは、白昼の鬼ごっこ。ぷに太郎を抱えて真っ直ぐ逃げる俺とそれを追いかける女の子とランタン。道を下り、真っ直ぐに逃げるが彼女の脚も凄まじく中々距離が離せない。
「なんて健脚だ……っ!」
「待ってぇぇっ!」
『ユミア、注意して下さい。ここは──』
だが、女の子と喋るランタンに気を取られて居たのが不味かった。
眼前で群れをなすリアルなヨッ◯ー達に足が俺の足は止まる。
『──ロックリザードの群生地です』
ランタンは無機質に、されど的確に現状を伝えた。
無数の獣から放たれる視線が俺たちを貫く。空気が強張って色落ちした様な緊張感が俺たちの間に走る。
俺は不幸にも黒塗りの恐竜の群れのど真ん中に、彼女を連れて来てしまったらしい。
「ちょっとフラミィ、遅くない!?」
『ユミアが猪突猛進かつ前方不注意だったからです』
「ああもう! こうなったら煙幕玉を……あれ? 無いっ?!」
『注意、ユミアはアトリエに探索ポーチを置き忘れています』
「なんでそう言うこと早く言わないのかなぁ!?」
ユミアと呼ばれた彼女は、隣に浮かぶランタン……フラミィと喧嘩していた。先程のメカクレ美少女らしい幸薄のオーラはどこへやら、そこに居るのは明るい年頃の女の子だ。
常人からすればその程度の感想だが、前世の『記憶』を持つ俺からすると少し気になる光景だった。それは彼女が持つ『杖』にも関わる。
……確か、アトリエシリーズの主人公の1人のライザは杖を持っていたよな。アトリエシリーズの主人公の共通点は錬金術士くらいなものだと思っていたが、こんな共通点もあったりする感じか。だが、杖と美少女だけじゃまだ弱いかもな。
「ぷにッ!」
「──ああ、考えるのは後で良いな」
目の前の獣には悪いが、こうなったら以上は仕方ない。
「悪いお嬢さん。お詫びに後で色々説明させてくれ」
「……分かりました。今はこの状況から抜け出しましょう」
彼女は豊満な胸の前で杖を構えてみせた。俺も頷く。
完全な包囲、戦えるのは俺と彼女だけ。
その時、俺の腕からぷに太郎が飛び出した。
「ぷにっ!」
俺に向き直り、胸を張る様な仕草をするぷに太郎。正直威嚇にすらなってないが、誰か居るのは頼もしいものだ。
「……なるほど、お前も力になってくれるか」
2人と1匹で背中を合わせ、俺と彼女は得物を構える。
「そいじゃ頼むわ! ぷに太郎!」
「ぷにッ!」
「行くよフラミィ!」
『了解しました』
開幕の嚆矢と言わんばかりに飛びかかる恐竜の様な獣……ロックリザードを切り捨て、俺たちは動き出す──。