FGO × BIOHAZARD RE4   作:ダイアジン粒剤5

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第10話

 指揮官であるラモンが死んだからと言って、虫に支配された怪物たちが戦いを止めることはない。

 彼らに恐怖はなく、戦意が萎えることも決してなく、死ぬまで戦う事を止めない。

 だが強き人間の集団である新選組を前に、恐怖を知らない怪物の群体は太刀打ち出来ず確実に数を減らしていった。

 そしてその不利な戦況を変えうるラモンやその従者といった強個体は、人斬り以蔵と新選組によって討伐された。。

 そうなった以上勝ち目はなく戦力温存のためにも撤退か退却をするべきなのだが、恐怖という真っ当な生命が持ってしかるべき防衛本能すら持たない怪物たちには、その発想すらない。

 恐怖を持たない怪物たちは一体、また一体と討伐されていき、やがてその全てが新選組の手によって討伐される事となった。

 

 

 

 「おーい、マスター。無事かえ?」

 

 すべての怪物を討伐した新選組は光の粒子となって座へと帰還し、無人の荒野となった道を歩いて以蔵は藤丸たちのもとへと戻って来た。

 

 「私が護衛していたのだから、当然。雑賀は引き受けた仕事を必ずやり遂げる」

 

 その以蔵を出迎えたのは、雑賀孫一こと蛍。

 マスターである藤丸は、通常の限界を超えた英霊の同時召喚による魔力消耗からくる疲労により座り込んで休んでいる。

 

 「マスター、本当に大丈夫かえ?」

 

 「大丈夫だよ、以蔵さん。……それより、これからどうしようか」

 

 心配そうにのぞき込んでくる以蔵に笑みを返しながら、藤丸は問う。

 

 「確かに。この特異点にきてから戦いっぱなしで、全然情報収集が出来てない。戦で最も大事なのは、情報。雑賀は情報収集と売買も行っていた」

 

 「そうは言うても、此処におるんは言葉も碌に喋れん化け物ばっかりじゃ。わしが斬ったチビ助は口をきいとったが、碌なことは喋っとらんかった。……ただ、サドラーとかいうヤツのことを頻りに言うとったのう」

 

 以蔵の言葉に、蛍が反応する。

 

 「私が倒したムカデと人間が合体したみたいな怪物も、最後にサドラーと言っていた。多分、そのサドラーとういのが特異点の成立に関わってる。雑賀のカン」

 

 「でも、名前だけじゃあ……」

 

 手詰まり感に、唸る三人。

 しばらくして、蛍が口を開く。

 

 「やはりここは初心に帰って、周辺を捜索してみるべき。ひょっとしたら、まともな人間がいて話が聞けるかもしれない。私が偵察に行ってくるから、以蔵はマスターの護衛を――」

 

 「待ちや!!」

 

 以蔵が刀を抜き、蛍の言葉を遮って鋭い視線を送る。

 蛍もまた、外套の中から素早く拳銃を取り出し、マスターを庇いながら銃口を以蔵の視線の先へと向ける。

 そして最後に藤丸が視線を向けると、その先には一頭の狼が此方に向けて駆けて来ていた。

 

 「普通の……狼?」

 

 先程までの戦いで襲い掛かって来た異形の狼とは違う、真っ当な姿をした狼。

 狼は三人の目の前まで来ると、敵意が無いことを示すかのように座り込み、舌を出して見つめてくる。

 

 「敵意は……無い?」

 

 警戒心は残しつつも、蛍が狼に向けていた銃口を下げる。

 

 「油断しな。いきなり襲ってくるかもしれん」

 

 「でも、この特異点で初めての敵意の無い相手だよ」

 

 納刀することなく切っ先を狼に向ける以蔵を、藤丸が宥める。

 

 「でも、どうしようか。此処には動物と話せる人はいないし……」

 

 英霊の中には、坂田金時のように動物と会話し意思疎通を図ることが出来るスキルを持つ者がいる。

 だがこの場にソレが出来る者はおらず、藤丸の召喚術で呼べる英霊は戦闘以外出来ない。

 

 「……私が相手をしてみる。戦場では、犬や狼を飼いならして任務を行う者もいた。私は出来ないけど、とにかくやってみる」

 

 そう言うと蛍はソロリソロリと狼に近づき、片手でゆっくりとその体に触れる。

 狼は若干嫌そうな顔をするが、抵抗することなく蛍の手を受け入れた。

 

 「フワフワしてる。毛並みも野生とは思えないくらい綺麗だし……人に世話されてる?」

 

 抵抗されなかった事に安心し、蛍は両手で狼の体を撫で回す。

 人に愛情を持って世話されている動物は、野生の獣とは異なる特徴を持つ。

 この狼が人に飼われていることは、ほぼ間違いなかった。

 

 ――そうして蛍のスキンシップを受けていた狼だったが、やがて立ち上がり歩き出した。

 

 「あっ……」

 

 だが大きく距離をとることはなく、しばらく歩いた所で立ち止まり、こちらを振り向いてジッと見つめてくる。

 

 「ついて来いって……言ってる?」

 

 「罠かもしれんぞ、マスター」

 

 警戒心自体は薄れたのか既に納刀していた以蔵だったが、それでも不信感を込めた目で狼を睨む。

 

 「うん、でも手詰まりだし。情報を得ないと」

 

 「虎穴に入らずんば虎子を得ず。大丈夫、マスターは私が守る。雑賀は雇い主を死なせたりしない」

 

 蛍はすでに狼の傍らに立ち、その背を撫でながら二人が付いてくるのを待っている。

 狼は、少し迷惑そうだった。

 

 「……まあ、マスターの言う事はもっともじゃ。分かった、わしに任せちょき。敵が出たら、わしが叩っ斬っちゃるきにのう」

 

 ――そうして三人は、狼に先導されて進み始めた。

 

 あの戦場で全滅したのか道中襲って来る敵はおらず、その道のりは平穏なモノだった。

 そうして進んでいると、やがて紫色の炎が燃え上がる人の背丈以上もある燭台が見えてきた。

 そしてそその紫色の炎が照らす下には、巨大な荷物を背負った全身黒づくめの人物が。

 真っ黒なフードを目深に被り、口元を奇妙な文様の描かれた深紫色の布で隠した男女の判別も出来ない怪人物。

 そのあまりの怪しさに、蛍が外套の下からライフル銃を取り出し銃口を向ける。

 

 「……敵?」

 

 「敵かどうかは分からんが、ありゃ人間じゃ。今までの化け物どもとは違ぉて、中身はちゃんとしとる」

 

 「じゃあ、まずは話し合わないと。銃をしまって」

 

 藤丸の言葉に従い、蛍はライフル銃を外套の中にしまう。

 そうして三人が狼の先導のもと怪人物へと近づいていくと、ある程度近づいたところで狼が怪人物へと向けて嬉しそうに尻尾を振りながら駆け出していく。

 そして狼は怪人物に抱き着くように飛び掛かり、怪人物は愛おしそうに狼を抱擁する。

 そうしてしばらく狼を撫で回していた怪人物だったが、やがて三人に向き直ると陽気そうな男の声で話しかけてきた。

 

 「ウェルカム。待ってたぜ、ストレンジャー。まさかあのクソガキと化物共を全滅させるとはな。アンタらなら、あの忌まわしい教団を壊滅させられるかもしれねぇ。想像以上だ、歓迎するぜ」

 

 




次話以降の投稿は7月1日を予定しています。
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