FGO × BIOHAZARD RE4   作:ダイアジン粒剤5

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第11話

 「ほれ、簡単だが食い物だ。まずは腹を満たさなきゃ、何事も始まらねぇ」

 

 米を中心に肉と海産物、野菜や香辛料を底の浅い鍋の中で水気が無くなるまで煮込んだパエリア風の料理を、全身黒づくめの男が藤丸たち三人に差し出す。

 

 「ありがとうございます。えーと……」

 

 「名前か?有って無いようなもんだし本名を明かす訳にもいかねぇが、どうしてもって言うんならデュークって呼んでくれ。デュークってのは、もちろん本名じゃねぇ、友達の名だ。まあソイツの本名が本当にデュークなのかは、俺も知らねぇんだがな!」

 

 そう言うとデュークは、軽快に笑う。

 怪しさ満点だが敵意は無く、周りを安心させるような朗らかさが、その声にはあった。

 

 「マスター、こんな怪しさ満点な相手の差し出すご飯を食べるのは危険。だからここは、まず私が食べる。――うん、おいしい。これは安心」

 

 「そもそもマスターに毒は効かんろう。おう、飯ももらうが酒はないかえ? それとこの狼が重うて敵わん、飼い主なら引き取りや」

 

 いつの間に懐かれたのか、座る以蔵の膝の上に狼が体を預け眠っていた。

 

 「その狼は飼ってるわけじゃねぇよ。化物共に取っ捕まって連中の同類にされそうなところを助けて以来、俺の近くなら安全だと思ったのかずっと引っ付いて来るのよ。頭の良いやつで、最近は偵察やお使いもしてくれるようになって、アンタらを迎えにも行ってもらった。まあ今では相棒みたいなもんだが、そいつのやることに口出しは出来ねぇな」

 

 そう言いつつデュークは棚をあさって酒瓶を取り出し、ソレを以蔵に渡す。

 渡された以蔵は酒瓶の封を切り中の酒の臭いをかぐと、瓶の口を軽く拭ってから少し飲んで舌の先で味わい、問題ないと判断してからチビチビと飲み始めた。

 

 「へへっ、用心深いこって。だがそれくらいじゃなきゃ、長生き出来ねぇ。――それじゃ、喰いながら聞いてくれ。俺の知ってくることなら、なんだって答えるぜ」

 

 既に料理を口に運んでいた藤丸に、向き直るデューク。

 

 「じゃあ……この村に、何があったんですか?」

 

 「なぜ化物だらけで、連中はアンタらを襲って来るのかって話だな? ――それじゃ、まずはコイツを見てくれ」

 

 デュークは厳重に封がなされた小型の金庫を取り出すと、その金庫の鍵を開け、中からガラス瓶の中に容れられた琥珀を取り出した。

 

 「なに、これ?」

 

 「おっと! 嬢ちゃん、手を出すな! 封じてるとはいえ、コイツはまだ生きてるんだ。……ほら、よく見てみな。真ん中に、小せぇ虫みたいなモンがあるだろ?」

 

 三人が望みこむと、確かに琥珀の中心に奇妙な虫の様なモノが居た。

 

 「――プラーガだ。寄生虫みたいなモンだが、連中は全員コレに寄生されて、あんな化け物になっちまったんだ」

 

 デュークは言葉を続ける。

 

 「コイツらが何時から此処に巣食ってるのか? それは誰にも分からねぇ、ひょっとしたら何億年も前からいやがるのかもな。だが確かなことは、この地には昔から‘狂い病‘って風土病があって、その原因がコイツ等だってことだ」

 

 プラーガのはいった琥珀を、デュークは再び金庫の中へと封じ込める。

 

 「ある日突然血を吐いて、目が充血したかと思えば狂暴になって人や獣を襲い始める。そしてソイツの体の中には、気味の悪い虫が全身に蠢いている。――それが‘狂い病‘だ。この地では悪魔に取り憑かれたとして血を吐いた段階で、おかしくなる前に家に火をつけて自ら死ぬってのが伝統だ」

 

 デュークは、何か言いたそうな顔をしている藤丸に気付く。

 

 「残酷だって思うか? 俺もそう思う。でも治療法は無ぇし、そうしないともっと多くの人が死ぬことになるんだ、仕方なかったのさ。……話が逸れたな。まあそういうわけで、この地はずっとこのプラーガって疫病に苦しめられてきたんだが、だいたい五百年前に転機が訪れた。悪い方のな」

 

 目深に被ったフードにより顔は分からないが、語気の強さからデュークが怒りをこらえているのが藤丸たちにも分かった。

 

 「アダム・サドラーって奴が、この地にやって来た。この地に蔓延る悪魔を祓いに来た牧師だとも、病魔を癒しに来た医者とも言われてる。まあ五百年前ならどっちも同じだったかもしれねぇが、そいつは‘狂い病‘の原因を探して水脈を辿って古い城跡を見つけ、その地下へと降りて行った。――そして戻って来た時、そいつは別人になってた。プラーガって虫ケラを神と崇め、祝福と称して地下で見つけた寄生虫を人々に植え付けていった。自分の事を≪教え導く者/ロス・イルミドナス≫なんて名乗りながらな」

 

 そこでデュークは、落ち着くためにか大きく息を吐く。

 

 「……此処がこんなことになっちまったのは、そのロス・イルミドナスって名乗る教団のせいだ。初代アダムから十三代、代々サドラーの名を継いで今の教主はオズムンドって野郎だ。元は外から来た強欲な野心家のナルシストで自分の事をカリスマなんて言ってる馬鹿だったが、今はどうなってるか」

 

 デュークは食事を掻っ込んでいる蛍に視線を送る。

 

 「嬢ちゃん、アンタが倒した髭面の大男を覚えてるか?」

 

 「うん、覚えてる。マスターに祝福を授けるとか何とか言ってた」

 

 「そうかい。じゃあ、連中がアンタらを襲ったのは感染を広げるためだったんだな。プラーガに寄生された奴は知性を失って寄生されていない生き物を無差別に襲うようになるんだが、たまに知性と自我を残す奴がいる。あの村長……髭面の大男のことな。ビトレス・メンデスって名前だったんだが、そういう自我を残した奴が他を指揮して感染を広げようとするんだ」

 

 そこで言葉を切り、デュークは沈痛な声で続ける。

 

 「ただ、知性や自我が残ると言っても、寄生された時点で別人になる。ビトレスは元々外から来た牧師でな、真面目で勤勉、村長になってからは誰よりも村と村民のために働く良い奴だった。よく、村の子供たちに読み書きを教えてたっけな。……だが、そんな奴も寄生されてからは別人になった。教団のため、サドラーのため、プラーガのために何もかもを犠牲に捧げる化物に、身も心もなっちまった。――プラーガに寄生された時点で、人間としては終わりなんだ」

 

 デュークはそこで、言葉を切る。

 村に生きていた者として、今の状況は慙愧に堪えないのだろう。

 その姿に同情を抱きつつも、蛍が藤丸に話しかける。

 

 「マスター、間違いなくこの特異点の元凶は、その教団とサドラーとかいう奴だと思う。この特異点を形作っている聖杯は、そのサドラーが持ってるに違いない」

 

 「そうじゃな、わしが斬った奴もサドラーとか言うちょった。他に怪しい奴もおらんし、そいつの所に行ってみたほうがええと思うぜよ」

 

 二人の言葉に促された藤丸は、デュークに問いかける。

 

 「その、サドラーが何処にいるのか分かりますか?」

 

 「……ああ、もちろんだ」

 

 泣いていたのか軽く鼻をすすって、デュークは話始める。

 

 「此処から少し離れた場所にある、孤島。そこが教団の本部で、サドラーは間違いなく其処にいる。もしアンタらがサドラーと教団をぶっ潰してくれるってんなら、ボートをやるよ。この村に住んでたやつらの仇を、討ってくれ」

 

 




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