FGO × BIOHAZARD RE4 作:ダイアジン粒剤5
巨大なナイフが銃剣として取り付けられた二挺のサブマシンガンから、無数の鉛玉が撃ち出される。
銃弾は眼前の大男の頭と胸に突き刺さるが、被った黒い帽子を手で押さえ、体に撃ち込まれる銃弾を意に介さず突き進んでくる。
「くっ……!」
雑賀孫一こと蛍は後ろに飛びのいて距離をとり、両手に持ったサブマシンガンを羽織った外套の中に収める。
そして代わりに外套の中から、鍔の無い日本刀が銃剣として取り付けられたアサルトライフルを取り出す。
「これなら、どうだ!」
アサルトライフルを両手で構え、鉛玉の嵐を大男に撃ち込む。
アサルトライフルから撃ち出されるライフル弾の威力は、先ほどまでのサブマシンガンから打ち出される拳銃弾とは比べ物にならない。
流石に多少のけ反り帽子も弾け飛ぶが、それでも大男の突進は止まらない。
両手で体を庇いながら向かって来る。
「それなら――!」
更に後ろに飛びのいて距離を保ちながら、蛍はアサルトライフルを外套の中に戻し、今度は連発式グレネードランチャーを外套の中から取り出す。
「銃弾が効かないなら、燃やす!」
蛍の手にしたグレネードランチャーから、焼夷弾が撃ち出される。
そして焼夷弾は過たず大男の胴体に撃ち込まれ、その全身を炎に包んだ。
しかしそれでもなお、大男――村の村長であるビトレス・メンデスの突進は止まらない。
「主よ――反逆者を打ち砕く力を、お与えください」
しかしその体を覆っていた服は全て焼け落ち、最早人ではなくなったメンデスの真の姿を露にする。
「主よ――あなたの恩寵に、感謝します」
数メートルはあろうかというムカデの様な胴体が、人間の上半身と下半身を繋いでいる。
そして先ほどまでは普通だった両手には、猛獣のような爪が生えてきている。
だが何より異様なのは、上半身の背中から生えてきた二対の虫の腕だ。
上には鎌の付いたカマキリの腕の様なモノが、下には鋏の付いたサソリの腕の様なモノが。
常識を超えた巨躯を持つ八脚生物、それが今のビトレス・メンデスという名の怪物の姿だった。
「さあ、抗うな。私は主の御意思に従い、星見台の魔術師に恩寵を施さねばならんのだ」
「――そんなことは、させない!」
蛍は再び、グレネードランチャーをメンデスに向けて撃ち込む。
その擲弾を、メンデスは人間の手足を使い四つん這いになって躱す。
そしてそのまま八つの手足を器用に使い、まさに虫の如き軌道で蛍に向かって襲い掛かる。
「くっ……!」
メンデスの振るう鎌と鋏の斬撃を掻い潜りつつ、蛍はグレネードランチャーを外套内にしまい、アサルトライフルを取り出す。
そしてそのままライフル弾の雨をメンデスへと撃ち込むが、メンデスはその鉛玉を増えた関節をくねらせて躱し、同時に手足の爪を壁に食い込ませて村内の建物を縦横無尽に駆け回り始める。
見た目の通りムカデの如く壁や地面を這い回るメンデスに対し、アサルトライフルをしまい二挺のサブマシンガンを取り出す。
最初に撃ち込んで効果の薄かった拳銃弾だが、今は手数を増やしてメンデスの動きに対応しなければならない。
「……そこ!」
「ぐうっ!!」
死角から襲ってきたメンデスに、拳銃弾の雨を撃ち込む。
突進を止める事こそ敵わなかったがメンデスは怯み、その隙をついて蛍は襲って来る鎌と鋏を躱すことに成功する。
「――効いた」
再び複雑な軌道を描いて物陰へと消えるメンデスを見送りながら、蛍は拳銃弾がダメージを与えた事実を確かに思い出す。
「人間だった時には効かなかったのに、今は効いた。……なんで?」
しばし考え込む蛍だったが、すぐにその理由に思い至った。
人間の形を保っていた時に拳銃弾が効かななったのは、今の怪物としての巨躯が人間サイズに圧縮されていて防御力が高かったから。
怪物としての真の姿を開放した今は攻撃力と機動力は上昇したが、高かった防御力を失ったのだ。
「銃弾が効くなら、雑賀はどんな怪物だろうと倒せる」
そう言うと蛍は無数の銃器を内蔵している外套を脱ぎ捨て、更に袴をも脱ぎ捨てる。
そして軽装となった蛍は気を整え、目を大きく見開き、そしてその瞳を青く輝かせた。
『―― 銃神・八咫烏 』
それは雑賀孫一としての、蛍の宝具。
一種の自己暗示、自己催眠に近いものであり自身の精神と肉体を戦闘に最適化させ、一時的に巫女の如きトランス状態に至り戦闘能力を飛躍的に向上させる。
「――これより雑賀を開始する」
そうして向上させた身体能力は、異形の多脚生物として虫の如き軌道をするメンデスに容易く追い付く程のもの。
「なにッ!?」
驚いたメンデスは鎌と鋏を振り蛍を薙ぎ払わんとするが、タランス状態となった蛍は、その全てを躱し銃剣ではじき返す。
そして銃弾の嵐をメンデスの全身に叩き込む。
「ぐああああッ!」
銃弾に体を削られ、苦しむメンデス。
異形の身体構造となったメンデスの急所には当たらなかったが、それでも生物である以上、体を削られ続ければいずれは命に届く。
「おのれ、なんと罪深い……!」
這い回ることを止め、メンデスは人の二本足で立ち上がる。
「許しを得られると思うな!」
そして上半身と下半身を繋ぐムカデ部分の分、高くなった高所から六本の腕にて蛍に襲い掛かる。
鎌の付いたカマキリの二本腕と、爪の生えた人間の二本腕、そして鋏の付いたサソリの二本腕。
――通常の生命では有り得ぬ連撃、しかしその全てを蛍は躱し弾き、メンデスの体躯を足場に高く跳ぶ。
「なんだと?!」
そしてメンデスが人間だったころから唯一残った急所、義眼を嵌めた左目の眼窩に銃口を突き付ける。
「あ――――」
そして放たれる、とどめの一発。
放たれた銃弾は眼窩からメンデスの体を縦断し、その途中にある身体機構をズタズタに引き裂く。
その中には、異形と化したメンデスの生命活動を支える重要機関も複数存在していた。
メンデスは、致命傷を負ったのだ。
「主…、サドラー様ッ!!」
最期にメンデスが叫んだのは、真社会性を持つ超個体生物としての忠誠心。
かつてビトレス・メンデスという名の善き人間であった怪物は、人に仇名す怪物として人理に名を刻んだ英雄に討たれ死んだ。
「任務完了。――雑賀が味方した者は必ず勝ち、敵にすれば必ず負ける」
そして怪物を打倒した英雄はトランス状態を解き、再び外套を纏って彼女のマスターの下へと向かう。
雑賀孫一として数多の戦場を駆けた蛍の経験から言って、村での戦は自分たちフィニス・ガルデアの完勝だった。