FGO × BIOHAZARD RE4 作:ダイアジン粒剤5
一組の男女に支えられた‘誠の旗,が、特異点の空に翻る。
そしてその旗に
大鎌、モーニングスター、棍棒、スタンロッドにクロスボウ。
多様な武器を振り回す怪物たちの動きは素人のソレだが、彼らは痛みこそ感じるものの恐怖は無く死ぬまで戦い続ける。
そんな怪物たちを相手に新選組は、武芸の技と連携で優位に立つ。
敵の攻撃を躱し、確実に傷を負わせ、最後に止めを刺す。
怪物たちも多少の連携はとるが、実戦と訓練で鍛えられた新選組には及ばない。
この戦いは、いわば人間の軍隊とアリの群れの戦い。
同じ大きさで身体能力に大きな差が無いのであれば、虫は人間に戦いで勝てない。
――故に虫の群れは、戦況を覆すべく身体的に優れた個体を前線に出す。
雄叫びを上げながら、ゾウに匹敵する巨体を誇る巨人たちが進む。
その全身に鉄屑を寄り集めて作った鎧を纏い、並の刀槍では傷もつかず銃弾に怯みもしない。
鍛えた並の人間では手も足も出ない、正しく物語の中から這い出して来た怪物そのものの巨人たち。
しかし、ソレを人間の身で倒してこその英雄だ。
「斬れ! 進め! 斬れ! 進め! 俺が! 新! 選! 組だあああああ!!」
他の隊士たちとは違う、漆黒の羽織を纏った男がライフル銃と日本刀を手に突進する。
新選組副長、土方歳三。
異名の通り鬼の様な形相で巨人たちに向かって突き進む土方、その後ろに続く者が数人。
槍使いの原田左之助や隻腕の剣豪伊庭八郎など、‘誠の旗,に呼ばれた者たちの中でも特に武芸に優れた者たちが土方の後に続く。
彼らは巨人の剛腕を掻い潜り、暴れる巨人たちの体に纏わりついて這い上がり、その頭や背の鎧の隙間に刀槍を突き入れる。
巨人たちは狂乱し彼らを振り払おうとするが払えず、遂に耐え切れなくなった本体の寄生虫が巨人たちの背から飛び出して来る。
「死ねぇ!!」
その飛び出した寄生虫の頭を斬り飛ばし、土方たちは巨人たちを倒す。
「まだだ……まだ、これからだ!」
だが巨人を倒したからと言って、土方たちの戦いは終わらない。
巨人の後ろに控えた者たち――人ではなく虫が入った、全身甲冑の騎士鎧たち。
その中でも特に、金色の鎧を纏ったモノに土方は狙いを定める。
「俺が……新選組だあ!!」
巨人の背から飛び出し、金色の騎士に襲い掛かる土方。
そんな土方の姿を、遠方から一人の男が嘲笑う。
「やれやれ、相変わらず田舎侍の戦い方には品というものがないな。まさにケダモノだ」
鉄扇を手にした偉丈夫――新選組筆頭局長、芹沢鴨。
牛の被り物をし両手に大槌を持った大男を軽くあしらいながら、芹沢は言葉を続ける。
「――とはいえ。この醜悪な虫ケラどもと比べれば、あの獣の方がまだマシか」
振り下ろされる大槌を左手に持った鉄扇で弾き、右手に持った刀を大男の胸に突き立てる芹沢。
「君もそう思わないかい? ……たしか、イトウ君といったかな?」
そのまま突き刺した刀を横に薙いで止めを刺しつつ、芹沢は傍らで戦う男に声をかける。
「伊東甲子太郎ですよ、芹沢先生。……まあ、そうですね。彼を肯定するのは心底嫌ですが、この害虫たちと比べれば、まだマシでしょう」
狐顔をした青年――新選組参謀にして禁裏御陵衛士盟主、伊東甲子太郎。
猪の被り物をし左腕に装備した動力式連弩から矢を乱射していた大男に止めを刺しつつ、伊東は芹沢に問いに答える。
「しかし、驚きましたよ。お噂はかねがね耳にしていましたが、まさか貴方が召喚に応えるとは。……まあ、僕が言う事ではない気もしますが」
「ははは! まあ私も、常ならばカルデアのマスターの召喚になど決して答えないがね!」
笑いながら芹沢は刀を構え、伊東もソレに続く。
被り物をした大男はまだ何人もおり、雑兵の数は更に多い。
戦は、まだまだ続いているのだ。
「しかし今回は、総司君を仲介しての呼び掛けだったからね。困っているようだったし、ほんの気まぐれだよ」
「なるほど、そうですか。ちなみに僕は同志の服部君――ああ、服部武雄というのですが、彼が今回はカルデアのマスターを助けてあげたいと飛び出したのを追ってですね。僕が行くのに気付いた弟の三樹三郎や篠原君も、僕の死後率いた赤報隊時代の友人たちを連れて付いて来ちゃって。これも人の縁、というヤツですかね」
両手に長大なカギ爪の武器を取り付けた巨漢が、獣の如き雄叫びをあげながら荒れ狂う。
両目を縫い付けていた紐を切られ、全身を締め上げていた拘束具を外された男は目につく者全て、味方すら巻き込んで周囲を斬り刻み続けた。
「もうやめましょう。これ以上は、無益です……!」
だがその暴走も、一人の男の手によって終わる。
優し気な風貌をした青年――新選組総長、山南敬助。
彼の手にした刀が巨漢の本体である背中の寄生体を貫き、とうの昔に終わっていた巨漢の人生を、ようやく本当の意味で終わらせた。
「上手くいったようだね……。やれやれ、肩の荷が降りたよ……」
それなりに剣の腕に自信が有るとはいえ、巨漢の体を両断するほどの膂力は山南には無い。
だからこそ一か八かで急所と思しき場所を貫いたのだが、どうやら賭けには勝ったようだった。
「さて……。戦況は、どうかな……?」
巨漢が周囲の敵を纏めて薙ぎ払ってくれたため、この場は多少の余裕がある。
だからこそ山南は、周囲の戦況を俯瞰して眺めてみる。
――人類最後のマスターが沖田総司と共に使ったことで、宝具‘誠の旗,は本来のスペック以上の効果を発揮した。
本来なら召喚に応えてくれないだろう芹沢一派や御陵衛士、それどころか伊庭八郎などの新選組に関わりのあった者などの、幕末を駆け抜けた英傑たちが数多く縁を通じて馳せ参じてくれた。
「……だがそれでも、数は敵の半分にも満たない」
その上で、現状戦況は優位に推移している。
それは人間の力が、決して怪物の力などには負けないという証明。
「しかし恐らく、敵にはまだ隠し玉がある」
ソレをしのぎ切れれば、この戦いは新選組の勝利だ。
「こふっ……!?」
血を吐き、思わず旗を握る手の力が緩み、旗を支える両の足の力が抜ける。
英霊の身となってもなお消えぬ、沖田総司の体を蝕む呪いの如き病。
限定召喚された身ゆえ言葉は発せられないが、悔しさと情けなさのあまり沖田は顔を歪める。
最期まで仲間と共に戦い抜く、それだけが沖田総司が持つ唯一の願いだ。
生前、仲間たちが最も苦しい戦いに臨んでいるなか病に倒れ、床の中で病死した。
その後悔を晴らすためにも今度こそ、どれほど苦しくても、何を犠牲にしてでも最期まで戦場に――。
「大丈夫? 沖田さん」
マスターの柔らかく暖かい手が、沖田の背に触れる。
その温かさを感じると同時に血で霞んでいた思考は澄み、四肢に力が戻ってくる。
心配そうな顔のマスターに笑みを返し、沖田総司は再び立ち上がり旗を握る手に力を籠める。
沖田総司が立つべき‘誠の旗,は、ここにある。
それを見失わない限り、今度こそ彼女は仲間たちと共に最後まで戦えるのだ。
「……むー」
そして雑賀孫一こと蛍は、そんなマスターと沖田の姿を見て少しばかり頬を膨らませる。
マスターの護衛として傍に残った彼女は、外套から取り出した対物ライフルを撃ちながら旗を支える二人の傍にいる。
長距離狙撃は苦手だが、大砲や投石機を撃ち込んでくる敵への牽制くらいはできる。
「仕方ない、私は新参者。マスターとの仲は、これから深めていけばいい」
思考を切り替え、数多の戦場を往来してきた傭兵としての眼で戦況を見る。
「全体的に有利。でも、三倍近い兵力差はやはり大きい」
ちょっとしたことで戦況は覆り、敗北に繋がるかもしれない。
それを阻止し、勝利を確たるものにする鍵はやはり――。
「任せたよ、イゾー」