FGO × BIOHAZARD RE4 作:ダイアジン粒剤5
「貴様を殺してやる、殺してやる、殺してやるんだァァ!!」
全身の至る所を切り裂かれ怒り狂ったラモンが触手を振り回し、口から黒い汚水を吐き出す。
その黒水を以蔵は難なく躱し、自身に向かって振り回される触手も全て切り落とす。
「ぎゃああああ!? ――こ、この、瘦せっぽちの、醜い、汚らしいチビが!!」
触手の先にも神経は通っているのか、痛みで更に怒りを増したラモンは体から黒い肉片を無数に噴き出す。
その肉片は地面に着くと膨らみ始め、やがて弾け飛び毒液を周囲に飛び散らせる。
有機物製の爆弾ともいえるその肉片を爆撃機の如く以蔵へ向けて撒き散らしながら、ラモンは縦横無尽に飛び回る。
「貴様は死刑だ! じわじわと嬲り殺してやるぞ!!」
肉片や飛び散る毒液を、以蔵は巧みに動いて易々と掻い潜る。
その余裕の態度に、ラモンの怒りはますますヒートアップする。
「クソが……! まったく、鬱陶しい奴め!!」
一気に勝負を決めようと三つに裂けた大口を広げ、以蔵を噛み砕かんと襲い掛かるラモン。
だがその動きは、以蔵に読まれていた。
以蔵は自ら大口の中へと突っ込み、口が閉じられるよりも早く口内にあるラモンの体に刀を突き入れる。
刃は過たずラモンの右目に突き刺さり、そのまま以蔵は刀を右に振り抜きラモンの頭蓋の半分を裂く。
「ぐぎゃああああ!?」
以蔵は大口から飛び退き、頭蓋を半分割られたラモンは頭を抱え悶え苦しむ。
しかし、未だ致命傷には至っていない。
「全体を刻んで頭蓋も斬ったに、まだ死なんか。何処が急所なんじゃ、コイツ」
ラモンの巨体の外側は大した硬さでも無かったのでひたすら斬撃を浴びせ裂傷を負わせ、異様な黒い血液を大量に流させた。
しかし効果が薄いので本体と思しき口内の人間の上半身を狙ったのだが、苦しむものの致命傷には程遠い。
そもそも以蔵の眼から見て、まだ何とか人間のように見えるあの上半身の中身は、まったく人の形をしていない。
「次は、胸でも突いてみちゃろうか……?」
「ハァ……ハァ……!」
致命打を与える手段にこそ困っているものの、戦いそのものには余裕綽々の以蔵。
そんな以蔵の態度が、神の力を与えられ人を超えたと自負するラモンの自尊心を傷つけ、その思考を怒りで真っ赤に染め上げる。
「き、貴様の穴という穴に溜まった血を啜り取ってやる……! 一滴残らずだ! さあ、覚悟しろ!!」
残った巨大な眼球を血走らせながら、ラモンは再び大口を空けて突進する。
怒りに任せた短絡的で直線的な体当たり。
大した脅威ではないが、流石に必殺の確信もなく再度口の中に飛び込むのも危険と、以蔵はその突進を大きく飛び退いて躱す。
「まずは鼻、次は耳、そして指、爪、唇……! 最後の仕上げが、その目だ! 呪われた悪魔の子め! 貴様をあるべき地へと送り返してやろう!!」
「……本当に、好かん奴じゃ。まるで国元の上士どもみたいぜよ」
以蔵の額に、怒りの四つ角が浮かぶ。
もともと一目見た時から、このラモンとかいう小男のことは気に食わなかった。
明らかな無能のくせに見下してきて、小難しい言葉を使って蔑んでくる。
目下の者に対する横柄で傲慢な態度や、人を嬲り苦しめることに享楽を感じる嗜虐趣味な言動。
以蔵の嫌いなモノだけで構成されているような存在、それがこのラモン・サラザールという化物だった。
「もうええ、死にさらせぇ!!」
本当に死ぬかは分からなかったが、とにかくラモンの顔はもう見たくなかった。
大口に向かって飛び込み、肥大化し飛び出した左目に向かって全力の横薙ぎの斬撃を見舞う。
斬撃は見事に直撃し、飛び出した眼球を真っ二つにして、そのまま既に半分切り裂いていたラモンの頭蓋を斬り飛ばす。
「!!」
目から上の頭部を斬り飛ばされたラモンは、一瞬、自分の体に起きたことが理解できないように硬直する。
「ぶぎゃああああ!? ひぎゃああああ!? ひゃああああ!!??」
だが直ぐに自分の体に起きた裂傷に気付き、藻掻き苦しみだす。
その苦しみようは尋常ではなく、今までのものとは明らかに違っていた。
「な、なんじゃあ!?」
流石に此処まで効果があるとは思っていなかった以蔵も驚くが、最早そんな以蔵の姿にかまう余裕もないラモンが死へと向かって藻掻き続ける。
やがてラモンの巨体全体が力を失い地へと落ち、大口から飛び出たラモンの上半身は救いを求めるかの如く手を伸ばす。
「お助けください……、サドラー様ァ……!」
死に瀕し救いを求める者の、必死の祈り。
だが一族の歴史を汚した狂った僭主にして同地を地獄へと変えた心無き悪童を助ける者などはなく、やがて伸ばされた手も力を失い地に落ちる。
そして、かつてラモン・サラザールという名の人間だった怪物は死んだ。
少々忙しくなったので、次話以降は6月1日からの投稿を予定しています。