臆病な転生ルーク   作:掃き捨て芥

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降下編
第16話 告白 ~ グランコクマへ


「『ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤い髪の男児なり。名を聖なる焔の光と称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くだろう。

ND2002。栄光を掴む者、自らの生まれた島を滅ぼす。名をホドと称す。この後、季節が一巡りするまでキムラスカとマルクトの間に戦乱が続くであろう。

ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へと向かう。そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって街と共に消滅す。しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の繁栄の第一歩となる』」

 

 俺はひとしきり話し終えると一息ついた。……皆は黙って聞いてくれている。

 

「今話したのはローレライ教団の秘預言(クローズドスコア)だ。第六譜石の内容と言ってもいいな。俺はこんな秘預言の内容も知ってる。ジェイドがバルフォアって名字だった事も知ってる。ガイの本名も出身地も知ってる。ティアが魔界(クリフォト)出身だった事も知ってたし、ティアにも本名がある事も知ってる。イオンの出自も知ってる。アッシュの本名も知ってる。自分がフォミクリーって言う技術で作られた生物レプリカだって事も知ってた。ヴァンが企んでいた事も知ってるし、六神将の来歴も知ってる。全部知ってるんだ」

 

 次に話した内容で皆は一様に顔色を変えた。だがその事について聞かれる前にたたみかける。

 

「そして……何故俺がそれらを知っているかと言えば、俺に“未来の知識”があるからだ」

 

「未来の……知識?」

 

「そう、これから先何が起きるか。大まかな内容だけど俺はこの世界に起きる事を知ってるんだ。言うなれば惑星預言(プラネットスコア)を詠める様なもんだよ」

 

 惑星預言と言うと教団に関係のある三者が微妙に反応する。ちなみに惑星預言とは星、惑星の一生が詠まれた預言の事だ。文字通り世界で起きる全ての事が書かれている。俺の原作知識も言ってみればそれと同じ様なものなので、引き合いに出してみた。

 

「俺には生まれた時からこの未来の知識が頭の中にあったんだ。だから生まれた時から今話した全ての事を知っていた。」

 

 この場の皆が皆、信じられないという顔をしていた。そりゃそうだ。俺だって他人がこんな事を言い出したら信じられないよ。でも信じて貰わない事には話が始まらないのだ。

 

「俺に何故、こんな知識が与えられたのかは分からない。度々起こる第七音素(セブンスフォニム)の意識集合体、ローレライとの意識の同調のせいかも知れない」

 

 これは半分嘘で半分本当だ。俺にも何故俺がレプリカ・ルークに転生したか分かっていないんだから。あとローレライについては少しでも話に信憑性を持たせる為の苦肉の策だ。

 

「ローレライとの意識の同調……」

 

 あ、ほら見ろジェイドが考え込んでるぞ。いいぞ。そのまま勘違いしとけ~。

 

「そして……この知識は今話した事で終わりじゃない。むしろ始まりなんだ。これから世界は大変な事になる」

 

 そこで言葉を切ると自分の座っている椅子をさしてこう言う。

 

「この椅子……それなりに立派な物だけど何時までもつかな。数十年はもつだろうが百年はもたないだろう。千年経てば欠片も残らないだろう」

 

「? 何を……?」

 

「そこにある物がいつまで劣化せずに形をとどめていられるかって話だよ。パッセージリングは二千年前に作られた人造の装置だ。当然の様に経年劣化するんだよ。今世界各地にあるパッセージリングは耐用限界を迎えているんだ」

 

 ガイが慌てて言葉を挟んでくる。

 

「ちょ、ちょっと待て。パッセージリングってのは大陸を浮かせるセフィロトを制御しているんだろう。耐用限界なんて迎えたら」

 

「そうだ。パッセージリングが壊れれば外殻大地は崩落してしまう。そう遠くない未来にな」

 

 突然通告された世界の危機に皆の思考が止まった。

 

「証拠もある。アクゼリュスで噴出している障気だ。ティアは知っているだろうが、魔界は障気にあふれる世界だ。第14坑道の奥にあるパッセージリングが耐用限界を迎えているから、アクゼリュス周辺の大陸が崩落しかかっていて、魔界の障気が噴出しているんだ」

 

「耐用限界……!」

 

「そんな……どうしたら」

 

 ジェイドやアッシュは厳しい表情のまま固まっているが、それ以外の皆は慌てている。信じて……貰えているのかな?

 

「大丈夫だ。対策はある。大陸のパッセージリングを操作して大陸を降下させるんだ」

 

「降下?」

 

「そう。崩落では無く、昇降機の様に動かして降下させるんだ。そして魔界の海に外殻大地の大陸を全て浮かべる。まあ降下にも色々と問題はあるけど、それで世界全土の崩落の危険は回避できる」

 

 そうして俺は降下作業の概要を話し始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ヴァンを倒した次の日、俺達は救援作業を再開した。アクゼリュスの民は急いで避難させなければいけないからだ。その中にアッシュの姿はなかった。俺が頼んで戻って貰ったからだ。

 

「アッシュ。頼みがあるんだ。……あんたは六神将の元に戻ってくれないか。俺達はこれから世界中の降下作業を行っていく必要がある。その時に六神将は俺達の邪魔をする障害になるんだ。降下作業に横やりをいれられない様にする為には、六神将の動向を知らなければならない。あんたが六神将の元に戻って、彼らが動く時に素早く連絡を入れてくれれば対応できる。」

 

「俺に、六神将のスパイをやれってのか」

 

 これを頼むのは正直言うと気が引けた。アッシュの性格的にもスパイというのは合ってないしな。しかし他に適任がいないのだ。こちらに居る神託の盾(オラクル)騎士団所属の人間はアッシュとティアだけ。ティアは総長の妹でリグレットの教え子とはいえ一兵卒だ。六神将と同列の存在にはなりえない。

 

「俺達はヴァンを捕らえた。これは俺達に取ってかなりのアドバンテージだ。今六神将の奴らは、総長はアクゼリュスを崩落させる為の作業中だと思っているだろう。だからヴァンを捕らえた事はできうる限り秘密にしておく必要がある。『ヴァンが捕らえられた』という情報があっちに漏れなければ、それだけ俺達は先行して行動できる事になる。……だから頼むよアッシュ。これが出来るのはアッシュだけなんだ」

 

 その後も俺は自分にもてる限りの言葉を尽くしてアッシュを説得した。

 

「今はまだお前がアクゼリュスに来て半日しか経ってないんだ。アクゼリュスでヴァンに説得されて戻って来たといえば、自然に戻れる筈だ。その後ヴァンと連絡がとれなくなって困るだろうが、特に変わった事は無かったと言っていればいい」

 

 最終的にアッシュは俺の言葉通り六神将の元に戻ってくれた。六神将が動く時は鳩で知らせてくれる手はずになっている。アクゼリュスが崩落もせず、ヴァンが戻っても来なければ六神将は不審に思うだろうが、一、二週間程度ならごまかせる筈だ。その間にアクゼリュスの救援作業を終えなければならない。

 

 ヴァンを倒してから二週間が経つか経たないかといった頃、アクゼリュスの救援作業は終わった。アクゼリュスの住民は全てタルタロスに乗船している。俺達はこれからタルタロスでマルクトの首都グランコクマへ向かう事になる。

 追加人員を含めたキムラスカ兵はデオ峠を越えてカイツール軍港へ行く様に指示してあるので、そのままバチカルへ帰って貰う。第14坑道でヴァンを倒すのに協力してくれたキムラスカ兵に関しては、王族ルーク・フォン・ファブレの名を持って口止めしてある。理由としてはローレライ教団の詠師で神託の盾騎士団主席総長がキムラスカの王族を誘拐していたというのは世界規模のスキャンダルになりかねないから、と言う事にしてある。

 

「しかし、皇帝陛下が貴方の言葉を信じてくれるという保証はありませんよ」

 

 グランコクマへ移動中、船室の中でジェイドが言う。

 

「ああ、分かっているさ。そこは俺が頑張って説得するしかない」

 

 これから行う降下作業は主にマルクトの領土に関する事なので陛下の了承は得なければならない。というより放っておけばマルクトの領土が崩落してしまうのでマルクトの皇帝にとっては他人事ではないのだが、まず俺はその崩落してしまうという事実を皇帝に信じさせなければならない。大変だ。たよりは俺の原作知識のみ……説得できるかなぁ。出来なかったらどうしよう。不安だ。

 そう言えば、原作知識と言えば俺以外の転生者、憑依者の存在は今の所確認できていない。ティア、ジェイド、アニス、などパーティーメンバーもそうだが、ラルゴ、アッシュ、リグレット、アリエッタといった敵方の人物も原作知識と違う行動は起こしていない。本当に俺以外の転生者はいないのだろうか? まあこれからも出会う人全てをチェックしていくがね。

 それと原作知識に無い出来事もだな。これも無かった。既に物語の三分の一のアクゼリュスまで全て原作知識通りに事が運んだのだ。これからもそうなる可能性が高いと思っていいのか、な。俺はそんな不安と心配と希望に満ちた気持ちを抱えていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 神託の盾騎士団に襲撃などされる事なく、俺達は無事グランコクマに到着した。まずは重症者を含めたアクゼリュス住民の受け入れ作業を行う必要がある。まあ作業は主にマルクトで行ってくれるから、俺や護衛のガイ、ティア、白光騎士団、和平の仲立ち役のイオンは特にやることがない。マルクトの貴賓室で優雅に待機する事となった。

 そして俺はジェイドを通じてマルクト皇帝ピオニー九世陛下と謁見する事になったのである。

 

「キムラスカ・ランバルディア王国において国王インゴベルト六世陛下より親善大使に任命されました、ルーク・フォン・ファブレと申します。マルクト皇帝ピオニー九世陛下におかれましては………………」

 

 俺は王族としての礼儀にのっとって名乗りと挨拶をする。あー肩が凝る。

 

「マルクト皇帝ピオニーだ。この度は我が国と和平を結び、アクゼリュスを救援してくれた事、誠に感謝している。話は聞いているよ。マルクトに飛ばされた所をジェイドに保護されたんだってな。こいつ使えない奴で困っただろう?」

 

 形式ばった挨拶をしてきたかと思えばコレか。相変わらず軽いなぁ。皇帝という身分以外は基本的にノリの軽いにーちゃんだからなこの人。

 

「それで? ジェイドが言うにはアクゼリュスについて重大な話があるそうじゃないか」

 

「はい。皇帝陛下だけでなく、出来ればマルクト上層部の方々皆に聞いて欲しかったのですが……」

 

 今この場に居るのは皇帝の他にゼーゼマン参謀総長、とノルドハイム将軍だけ。あとジェイド。その他には警護の兵士が居るだけだ。

 

「上層部の皆に、ねぇ……。余程の重要事とみえるな。だが今は俺達しか居ないんだ。まずは話ちゃくれないか?」

 

 まあ何の事前情報も無い状態で上層部を招集する事は出来ないよな。まずはこのお三方に話して信用を得る所からか。

 俺は腹を決めるとパッセージリングの老朽化、それによるアクゼリュスの障気噴出。このままではホド諸島と同じ様にアクゼリュス周辺の大地も崩落する危険性がある事を話した。

 

 話を聞いた皇帝達はさすがに驚きを隠せない様だった。

 

「パッセージリングの老朽化……。ホドと同じ崩落が起きる、か……」

 

「本当だとしたら由々しき事態ですじゃな」

 

「だが、全ては私達にあずかり知らない事。本当かどうか確かめる術はない」

 

 まあいきなりそんな話をされた所で信じる方がおかしいですよね。

 

「ですが陛下、アクゼリュスにある坑道の奥にダアト式封咒があるのは事実。中に入ってはいませんが、パッセージリングもあると思われます」

 

 イオンが補足説明をしてくれる。言い忘れたがこの場には魔界出身のティアと俺の護衛としてガイも同席している。

 

「ふむ。導師が言うならばそれは確かな事なのかも知れないな。しかし疑問なのはだ。何故この話がキムラスカの王族であるルーク殿からされているかだ。聞くところのよるとルーク殿は今まで屋敷に軟禁されていて公務はおろかろくに外を出歩いた事もないというではないか。そのルーク殿が何故アクゼリュスのパッセージリングが老朽化している事を知っているのだ?」

 

 ですよねー。イオンやティアの援護もあってパッセージリングや魔界の事は信じてくれるかも知れないけど「俺が」それを語っていたらおかしいですよね。導師本人が語るならともかく。

 

 そこで俺はタルタロスの船室で語った事と同じ事、自分に未来の知識がある事を話した。

 

「未来の……知識」

 

「惑星預言と同じ……」

 

 あ、考え込んでる。そりゃそうなりますよね。いきなりそんな事言われたら。

 

「拙いですが、俺にはそれを証明する手段があります。例えば幼い頃のジェイドとサフィール、それに陛下とネフリーさんがゲルダ・ネビリムさんの私塾の生徒だという事を俺は知っています」

 

「……ほう」

 

 ピオニー陛下の俺を見る目が少し変わる。

 

「それから……僭越ではありますが、ピオニー陛下の初恋の方が誰なのかも俺は知っています。未来の知識によって」

 

 その言葉を言ったとたん場の空気が変わる。

 

「……ジェイド」

 

「もちろん私は話してなどいませんよ」

 

「未来の知識と言えば胡散臭いかも知れませんが、膨大な預言(スコア)が詠める預言士(スコアラー)とでも思って貰えれば構いません。その知識で私はアクゼリュス崩落の危険性を知ったのです。ですがそれだけではありません。未来の世界では崩落の危険が迫った世界でそれを回避しようとたくさんの人が動いていました。俺の未来の知識の中には崩落を防ぐ手立てもあります。もしも陛下が俺の知識を信じて下さるのでしたら。世界各地で起きる崩落を防ぐ方法をお教えします」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 皇帝達は沈黙している。沈黙はやめてくれー。胃が痛むんだよああもう畜生。胃が! 胃がキリキリとおおおおおお。

 それからややあって、陛下は口を開いた。

 

「……分かった。とりあえず信じてみよう」

 

「陛下!?」

 

「16年前ホド諸島は崩落した。それがホドのパッセージリングが破壊された事だとすれば、崩落したのもうなずける。であるならばパッセージリングの存在については信じる事ができる」

 

 よっしゃ! 第一段階クリア!

 

「それで? 崩落に対する対策とは一体なんだ? 俺はどうすれば良い?」

 

「は、はい。崩落への対策ですが、パッセージリングを操作しての降下作業を考えています」

 

「降下作業」

 

「はい。パッセージリングはセフィロトを制御する装置です。その為パッセージリングを操作すれば、昇降機の様に大陸をゆっくりと魔界へ降下させる事ができるのです。全てのセフィロトでその作業を行い、全ての大地を降下させれば崩落とそれによる犠牲者は防げます」

 

 俺の言葉に陛下は少し考え込んだ様子だった。

 

「降下作業……か。確かにルーク殿の言う様に作業を行えるのだとしたら何とかなるのかも知れないな。しかし問題はあるだろう。そもそも創世暦の時代に大陸を浮遊させたのは魔界に障気が充満したからというじゃないか。魔界に降下したとして障気の問題はどうするんだ」

 

 さすが一国の皇帝。頭の回転が速いな。俺とは大違いだ。俺にあるのは七年間のありあまる時間でもって考えた内容だけだ。頭の回転は普通以下。……自分で言ってて虚しくなってきた。

 

「魔界の液状化の原因は地核にあります。本来は静止状態にある地核が激しく振動している……筈です。それが液状化の原因なのです。ですからその揺れを打ち消す装置を作り地核に設置すれば魔界の液状化を解消できます」

 

「地核の振動を打ち消す、か」

 

「はい。その為の技術者などにも当てはあります。障気についても事が進めば解決策が見つかります。ですが、マルクトにはその前に大きな問題が立ちはだかっているのです」

 

 降下作業に関してはこんなもんでいいだろう。後に起きる問題よりもまず当面の作業について説明しなくては。

 

「大きな問題、ですかな」

 

 ゼーゼマンさんがその豊富な髭をもしゃもしゃしながら返事をする。

 

「マルクトだけでなくキムラスカ、ダアト、ケセドニア、世界全てが崩落の危険性に見舞われています。その為には先ほど言った降下作業を行わなければならないのですが、一つとても大きな問題があるのです」

 

「それは一体なんだ?」

 

「はい。降下作業を行うには各地のパッセージリングを操作する必要があります。ですが、パッセージリングには三つのセキュリティが存在するのです。その内の一つが厄介なんです」

 

「セキュリティか。まあ大陸を浮上させている装置なら当然か。それで? そのセキュリティとは?」

 

「まず一つ目は『ダアト式封咒』ダアト式譜術が使える者でしか解けない扉です。これはこちらに導師イオンがいますので、導師によって解いて貰います。次に『ユリア式封咒』これはユリアの血縁の者に反応してリングの操作を許可するものです。これについては現在牢に逮捕されているヴァン・グランツを使います。彼はユリアの子孫です。なので彼を連れて行けばこのセキュリティも突破出来ます」

 

 そこで俺は一旦言葉を切った。……喉が渇くな。

 

「そして……順番は前後しますが、二つ目のセキュリティは『アルバート式封咒』これはホドとアクゼリュスのパッセージリングに施された封印なのです。既にホドのアルバート式封咒はホドが崩落した事で解けています。ホドのパッセージリングが破壊されたので。つまり……」

 

 その場に居る皆の表情が変わる。

 

「まさか……アクゼリュスのパッセージリングも破壊しなければならないのか!? だがそれでは……!」

 

 残酷な事実。だが俺はこれを言わなくてはならない。俺がこれを言わなければ世界は前に進まないのだから。

 

「アクゼリュスのパッセージリングを俺の超振動でもって破壊します。結果、アクゼリュス周辺の大地はホド諸島の様に崩落するでしょうが、残り八カ所のパッセージリングは操作できる様になります」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 話し合いは一旦休憩となった。俺の話した事があまりに大きかったからだ。そりゃそうだよな。このまま放っておけば世界全土が崩落する。解決する為には世界各地を降下させるしかない。降下させる作業に入るにはアクゼリュスを崩落させなければならない。ジレンマだ。

 それでも、世界全土を崩落から守ってアクゼリュスを崩落させるか、アクゼリュスを崩落させないで世界全土が崩落してしまうか。選ぶなら答えは一つしかない。

 

「なあ、ルーク。他に方法は無いのか?」

 

「んー。俺も全能の神様じゃないからなぁ。もしかしたら、探せば、俺が提示する方法よりも上等な、全てを救える方法もあるのかも知れない。でも俺が知る未来の知識の中ではこれしか方法が無いんだ」

 

 問いかけてくるガイに俺は静かに返した。

 

「……そうか。うーん」

 

 そうして普通に話しているガイを見て、俺は言うべき言葉を悩んでいた。

 

「なあ、ガイ……もう気づいてると思うけれど、ガイが意識を変える事になった俺の言葉、その言葉も俺は未来の知識で知っていたものを言っただけだったんだ。それに俺はお前の素性も全部知っていた。ファブレ公爵、父親に攻め滅ぼされたマルクト帝国ホド伯爵領の人間だって事を」

 

「…………」

 

 ガイは沈黙している。くっそ、胃が痛い。

 

「ガイがうちの使用人になったのは俺達に、公爵の家族に復讐するつもりだったという事もな」

 

 これについては思う所がないわけではない。公爵本人に復讐するならともかく、体の弱い母親、シュザンヌ夫人やホド戦争当時赤ん坊だったオリジナル・ルーク、アッシュを殺そうとするのは筋違いじゃないかとも思っていた。けれど隠し事をしていたのは俺も同じなわけで。結局は同じすねに傷を持つ身なので何も言う事が出来なかった。

 

「ガイ……俺が告白した事でお前も色々と考えた事があるだろう? 今の俺の事、本当はどう思ってるんだ?」

 

「…………。そうだな。今のお前に思う事がない訳じゃない。でもそれも含めて、俺は自分に誓った事の顛末を見届けたいと思っているよ」

 

「でもその誓いは……」

 

 俺が原作知識でズルをして出来た誓いじゃないか、と言い出そうとしたが、

 

「それも含めて、と言っただろ。全部含めて、お前という人間を見極めさせてくれ。お前はお前で考えている事があるんだろうが、俺は俺で考えているからさ」

 

 ……それは、今は保留しておこう。って事なのか? その後、呼びに来た人によって俺達の会話は途切れた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 少しして、混乱から立ち直った皆で話し合いが再開された。

 

「色々考えたが、お前が提示した情報の中では、アクゼリュスを犠牲にするしか道は無いと言う事が分かった。だがな、俺はマルクトの皇帝だ。はいそうですかとアクゼリュスを犠牲にする事を容認する訳にはいかない」

 

「ごもっともだと思います。陛下。そこで俺から提案があるのですが……」

 

「提案?」

 

「まず、ダアト自治区にあるアラミス湧水洞を通ってのユリアシティへの訪問です。マルクトの上層部の方に実際にユリアシティ……魔界を見ていただく事により、私の話した内容を信じていただこうかと。それとユリアシティには私以上にパッセージリングやセフィロトに詳しい人達がいます。彼らの話を聞けば私のもたらした情報の裏付けが取れるでしょう。」

 

「ふむ」

 

「次に、アクゼリュスのパッセージリングの実地調査です。ダアト式封咒を導師イオンに、ユリア式封咒をヴァンに解かせて、パッセージリングを調べるのです。実際に調べていただければ、リングが耐用限界に到達している事に納得していただけるでしょう。」

 

「実地調査か。確かにそれは必要だな」

 

「私が今提示出来る情報はこれぐらいです。どうか陛下、戯れ言と言わずに受け止めて下さい」

 

 そうして俺は精一杯の誠意でもって説明を締めくくった。

 

 




 主人公の知識バレです。意外とあっさりいきました。書くのはすごい苦労しましたが。アビス世界、オールドラントには預言、惑星預言、第○譜石といったものがゴロゴロしてますからね。未来の知識があると言っても私達の世界より理解されやすいのではないでしょうか。
 アッシュが自由に動くのではなく六神将の元に戻りました。アッシュにしては素直に言う事聞きすぎじゃね? と思われるでしょうが、これにはちゃんと理由があります。ヒントとしては……原作においてもアッシュは決してルーク達と行動を共にしようとせず、別行動してましたよね? それと同じ理由でこの世界のアッシュはスパイとなる事を受け入れました。
 そしてグランコクマ、皇帝訪問です。アクゼリュスのパッセージリングはアルバート式封咒があるので必ず壊さなければなりません。でないと世界全体を降下させられませんから。とはいえマルクトの皇帝にとっては苦渋の決断でしょうね。
 次回は一気にストーリーを飛ばすつもりです。

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