臆病な転生ルーク   作:掃き捨て芥

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 決戦です。ですが戦闘描写に期待はしないで下さい。


第24話 決戦

 アッシュの手紙で六神将の動きを知った俺は、シェリダンで地核振動停止作戦を開始する前にキムラスカの協力を仰ぐ事にした。ナタリアと陛下の和解、両国の和平がなったからキムラスカの兵士を動員させる事が出来るのだ。

 そうしてシェリダンには警備の兵士達が配備された。小隊規模で、三十人だ。

 

「やけに物々しいなぁ」

 

 ガイはそう言うが、原作のシェリダンの惨劇を知っている俺からすれば、事前にこれだけの準備をしなければ不安だったのだ。六神将達に襲撃された場合を想定して、打ち合わせもやっておく。

 

 それはそれとして、タルタロスの改造は既に終わっている。

 

「タルタロスはシェリダン港につけてある」

 

 イエモンさんは自信満々にそう言った。それを受けてタマラさんも説明してくれる。

 

「後はオールドラント大海を渡ってアクゼリュス崩落跡へ行くだけさ。そこから地核に突入するんだよ」

 

 シェリダンからアクゼリュス崩落跡へは、航海すると大体五日程度の日数を要する。

 

「ただ注意点がいくつかあるぞい。作戦中、障気や星の圧力を防ぐため、タルタロスは譜術障壁を発動する。これは大変な負荷が掛かるのでな。約130時間で消滅してしまう」

 

 130時間か、なんか中途半端だな。

 

「130時間かぁ。ずいぶん中途半端ですねぇ」

 

 アニスと感想がカブッた!? なんかショックだ……。

 

「負荷が強すぎるんでな。ここからアクゼリュスへ航行して地核まで辿り着く時間を逆算して、何とか音機関をもたせてるんじゃ」

 

「それと、高出力での障壁発動には補助機関が必要なんだよ。あんたたちが地核突入作戦を開始すると決めたらあたしらがここから狼煙を上げる。すると港で控えているアストンが譜術障壁を発動してくれる」

 

 いや、ちょっと待て。

 

「今の説明だとシェリダン港を出発する時に譜術障壁を発動させて、それがアクゼリュス崩落跡に辿り着くまで持たせるって事ですよね?」 

 

 それで合ってる……よね?

 

「む、そうじゃな」

 

「だったら……あの、譜術障壁はシェリダン港で発動させるんじゃなくて、崩落跡に辿り着いた時に発動させればいいんじゃ。障気や星の圧力がかかるのはその時なんだから」

 

 なんで無駄にシェリダン港で発動する必要があるのだ?

 

「…………」

 

「…………」

 

 どうやら職人達はそこに気づいていなかった様だ。

 

「譜術障壁は崩落跡で発動させる、でいいですよね」

 

 譜術障壁発動は俺の提案通りにする事に決まった。そんで後は脱出についてだが、

 

「脱出はアルビオールで行う。その為に、圧力を中和する音機関を取り付けねばならん。作戦を開始すると決めたら、アルビオールはこちらで港に送る」

 

「音機関を取り付けたらアストンがタルタロスの格納庫に入れておいてくれるよ」

 

タマラさんは続けて説明してくれた。

 

「地核到達後、タルタロスの振動装置を起動させたら、アルビオールでタルタロスの甲板上に移動しとくれ」

 

「甲板に上昇気流を生み出す譜陣が書かれておる。それを補助出力にして脱出するんじゃ」

 

「アルビオールの圧力中和装置も3時間しか持たないよ」

 

「急いで脱出してくれないとぺしゃんこになるぞい」

 

 何から何まで命がけって訳か。上等だ。

 それから俺達は準備を開始した。

 

「ルーク、貴方は六神将の襲撃があると読んでいるのですか?」

 

 準備の最中にジェイドが聞いてくる。

 

「うーん。俺の知る未来の知識と、現在の状況を合わせて考えると、今回の作戦を邪魔してくるのが最も可能性の高い敵の行動だと思う」

 

 ローレライ教団は死の預言(スコア)は詠まない。だが人が死ぬ事はこの世界に存在する預言には記されている筈だ。だとしたら原作でシェリダンの惨劇があった地核振動停止作戦で、同じ様にシェリダンの人達が死ぬ可能性は……。

 

「襲撃の可能性は、高いだろうな」

 

 アッシュは待ち伏せされるぞ、と言っていたが、俺がパッセージリングの操作を行う必要があるセフィロトは、アブソーブゲート、ラジエイトゲート、ロニール雪山、メジオラ高原、の残り4つだ。それと今回の地核振動停止作戦の5つから考えると、残り5つの行動全てで敵の襲撃を想定して動いた方がいい。俺が自説を披露すると仲間達は納得してくれた。

 

「狼煙が上がりました」

 

 よし! 地核振動停止作戦開始だ!

 集会所の扉を開けて外に出ると、予想通りの光景が広がっていた。

 

「魔弾のリグレット……!」

 

 やはり襲撃してきたか! だが、お目当てのヴァンは今回ここに居ないぜ。残念だったな。

 

「キムラスカ兵! 皆! 臨戦態勢!!」

 

 俺は配備されているキムラスカ兵と皆に声をかけた。やはりというか何というか、向こうも神託の盾(オラクル)騎士団の兵士を従えている。幹部連中は仲間達で対応するしかないか。敵は魔弾のリグレット、烈風のシンク、妖獣のアリエッタ、死神ディスト、の四名だ。ディストは相変わらず自分は空に浮かぶ椅子に座って、ロボットを持ってきている。

 

「散開!! ……イオン、アリエッタは任せたぞ!」

 

 今回は細かい指示を出す必要は無い。既に打ち合わせ済みだからだ。事前に決めた通り、俺はリグレットに向かって行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 事前に決めていた事だ。六神将が襲撃してきたら、俺とティアがリグレットに当たる。ガイとナタリアがシンクに、ディストはジェイド。そしてアリエッタはイオンが説得する。本当ならキムラスカ兵の数で押したい所だが、神託の盾兵士の相手をしているのでそこまで余裕が無い。

 

 トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ……

 

 いつもの様にティアが【ナイトメア】を詠う。しかも複数人に向けてではなくリグレット単体に向けてだ。六神将といえど鈍痛と眠気のコンボは相当効く筈だ。

 

「くっ」

 

 予想通り! だいぶ効いているみたいだ。俺は譜銃に備えて剣を構えながらリグレットに近づいた。譜銃から弾が撃ち出されたので射線を見極めて必死に躱す。無理に攻める必要はない。前衛である俺は回避に専念して後衛のティアからの【ナイトメア】が効くのを待てばいい。その内焦れて相手の方から近づかなければならない筈。

 

「焼き尽くせ! ――シアリングソロゥ!!」

 

 おっと、奥義を使ってきやがったか! だが回避に専念していた俺は余裕を持ってリグレットの放った火球を躱すと、一気に近づいて剣を振るった。

 

「はぁっ!」

 

 素早く三連撃。一撃は譜銃で受け止められたが、二回は敵の体を斬りつけるのに成功した。見たか! HPがあって何度も剣で斬りつけるゲームとは違うんだ。一度の攻撃が致命傷になる。

 

「そこまでだッ!」

 

 続けて攻撃しようとしたその時、リグレットの体から闘気が放出された。オーバーリミッツか。俺は攻撃動作を途中で止めざるをえなかった。

 

「光の欠片よ……! 敵を撃て! ――プリズムバレット!! 終わりだッ!」

 

 !? マズイ! 秘奥義だッ!

 

「調子に乗るなぁっ! ――粋護陣!!」

 

 俺も――オーバーリミッツだ! 全身から闘気を放出して攻撃に、耐える。痛い、リグレットの譜銃から放たれた弾丸が俺の身を苛む。だが、今なら俺もある程度はダメージを気にせずに攻撃できる。

 

「やってやるぜ! 響け! 集え! 全てを滅する刃と化せッ! 

――ロスト・フォン・ドライブ!!」

 

 俺が放ったのは、原作では第二超振動で行っていた秘奥義だ。この世界ではアッシュと合体(?)していないのでただの超振動でしかないが、それでも超振動と剣撃の合わせ技だ。これには耐えられまい。俺は超振動をまとわせた剣でリグレットを何度も斬りつけた。

 

 俺の攻撃を食らったリグレットの体は、もの凄い勢いで吹き飛んで行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「弧月閃!」

 

 ガイはその素早い剣撃で持って敵と相対していた。だが敵である烈風のシンクもかなりの素早さを誇るスピードタイプの様だ。……ルークはこれも見越して担当する人間を決めていたのかも知れない。

 

「ピアシスライン!」

 

 剣を避けた先に待っていたのはナタリアの弓矢による狙撃だ。さすがのシンクもこの連携には手を焼いている様だった。

 

「双撞掌底破!」

 

 シンクは一瞬でガイの懐に飛び込むと技を放った。気の籠もった掌の一撃にガイの体が吹き飛ばされる。

 

(マズイ。このままじゃナタリアが!)

 

 後衛が危険に晒されると思い、素早く受け身を取ると相手に向かって行く。

 

「おおおお! ――絶空魔神撃!」

 

 魔神剣から真空破斬のコンボで敵を仕留めようとする。一撃目は手甲で防がれたが二撃目は入った! その一瞬油断が生まれたのだろう。シンクが攻撃する隙を生んでいた。

 

「連撃行くよ……! ――疾風雷閃舞! これでとどめだぁッ!」

 

 シンクから神速の連撃が放たれ、ガイの体を打ちつける。

 

「ぐっ。ぐがっあぁ」

 

 ガイの体は鞠の様に飛んで壁に激突した。だが大技を放った一瞬の空隙を、ナタリアもまた見逃さなかった。

 

「譜の欠片よ、私の意思に従い、力となりなさい。これで決めますわ!

――ノーブル・ロアー!!」

 

 ナタリアの弓から放たれた矢がシンクの腹に突き刺さった。

 

「僕は……認めない」

 

 その言葉を最後に、シンクは倒れた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「アリエッタ! もうやめて下さい!」

 

イオンは自身を止めるアニスを引きずりながら前に出ようとしていた。

 

「イオン様……でも」

 

 イオンがアリエッタを説得する。それが事前の打ち合わせ(という名のルークの独壇場)で決まった事だった。だが「真実」を告げるかどうか、それはイオンの手に委ねられた。「お前の好きにしたらいいよ」とはルークの弁だ。

 

「……アリエッタ。聞いて下さい。僕は、貴方の知っている導師イオンではないんです。貴方の知る導師イオンは……二年前に既に死亡しているんです」

 

「え……」

 

「僕は……僕は、貴方の知っている導師イオンから作られた、レプリカなんです。ヴァンとモースが僕を作りました。病死してしまった導師の空位を埋める為に」

 

「レプ、リカ……え、死亡。え? え?」

 

「だから、僕は、貴方が望むイオンではないんです。……今まで黙っていてすみませんでした」

 

 アリエッタは突然の告白に、動きを止めた。……彼女がその真実を受け止めるのに、幾ばくかの時間を要した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「出でよ。敵を蹴散らす激しき水塊――セイントバブル!!」

 

「あああ、私の可愛いカイザーディスト号RXが!」

 

 前衛をキムラスカ兵に任せ、ジェイドはその強力な譜術を遺憾なく発揮していた。

 

「譜業である以上、水が弱点なのは前と変わりませんねぇ。学習しない鼻垂れですね」

 

 ルークが聞けば、そんな挑発してる暇があるならさっさと詠唱しろよ! と言われそうなそんな言葉をつぶやいていた。

 

「これでとどめです。雷雲よ、我が刃となりて敵を貫け――サンダーブレード!!」

 

 水の譜術をたらふく食らわされたロボットに、雷の譜術が炸裂した。ロボットはガガガ、と音を立てると少しの間をおいて爆発した。

 

「覚えてなさい! 今度こそお前達をギッタギタにしてやりますからねっ!」」

 

 ディストはそんな捨て台詞を残すと、空飛ぶ椅子に乗ったまま逃げて行ってしまった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 戦闘は、終わった。自分の敵であるリグレットが沈黙したのを確認して辺りを見回すと、爆発したロボット、涙を流すアリエッタ、矢を腹に受けて倒れ込んでいるシンクの姿が見える。敵の神託の盾兵は、1.5倍ほどのキムラスカ兵に鎮圧されつつあった。

俺は吹き飛んだままのリグレットに近づいた。……とてもじゃないが、これでは生きてはいられないだろう。背後にいるであろうティアの顔が見れない。振り向くのが怖い。俺はその場を後にするとシンクに近づいた。こちらはまだ息があるようでうめいている。ガイに治癒術をかけているナタリアに、それが終わったらシンクも回復してやって、死なせないでくれと言っておいた。

 

「ルーク」

 

「そっちも終わったみたいだな」

 

 次にロボットを倒したジェイドに声をかける。どうやらロボットは倒したものの、ディストには逃げられた様だ。まあディストならいいか、と思いすぐに忘れる。アリエッタはイオンに任せていればいいだろう。……なんだかずいぶんいい加減になっている気がするが、リグレットを殺しただけで俺ももう手一杯なのだ。これで勘弁してくれ。

 

 その後、シンクとアリエッタ含む神託の盾兵はそのほとんどが捕縛された。中には最後まで抵抗を続け戦って死んだ兵もいたが、おおむね捕縛出来た。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「おれはついて行くぞ。ここまできて仲間外れなんて冗談じゃない」

 

 シンクの攻撃で息もたえだえな様子のガイがそう言う。……いや大人しく寝てろって。そう言って宥めようとするがガイは聞かない。怪我をしているのだから作戦から外れて回復してろと言うのだが聞かないのだ。自分が仲間外れになる事が我慢ならないらしい。ジェイドが叱責しているが、どうなる事やら。

 最終的に、アクゼリュスまで五日あるんだからその内治る! というガイに押し切られ、俺達は地核振動停止作戦に出発するのだった。

 

 




 六神将との決戦です。せっかくの決戦ですが私の力量ではこの程度の鼻くその様な戦闘描写が限界でした。盛大な決着を期待していた皆さんすみません。
 リグレット死亡。シンクとアリエッタ捕縛。ディスト逃亡です。リグレットの死亡は書き始めた時から決めていました。理由はまたその内話します。
 シンクも生かすかどうか迷ったのですが、戦闘シーンを書いている内に矢なら頭とかに当たらない限り死なないか、と思ったので生存しました。適当です。まあ前も言った通り作者である私の都合で登場人物を動かす事は極力したくなかったので、生かそうとか殺そうとか考えては書きませんでした。あくまで作品世界の流れを優先させました。そうしたら自然と生存していたのですが。
 六神将を倒してしまったので、後はもう消化試合です。適当にセフィロトを回って適当にリングを操作して終了です。一応見せ場みたいなものは用意してありますが大したものじゃありません。

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