東家の長男は夢に生きる   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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最強と俺

俺は今、魔防隊の本部に来ていた。

 

目の前には魔防隊の組長達が雁首揃えている。迫力が半端では無い。

 

何故こんな事なっているのかというと、俺の処遇を決める為である。

 

男でありながら醜鬼と戦える存在。男であるが故に魔防隊には入れる訳にはいかないが、戦力を遊ばせるのは勿体無いという事で俺が組長会議の場に呼ばれたのだ。

 

 

「はっはっは‼︎という訳でお主にはこの山城恋と戦ってもらうぞ」

 

 

豪快に笑いながら世界最強の怪物と戦えと宣う制服姿の少女…………の見た目をしているのは我らが祖母、東海桐花。

 

元魔防隊総組長で東家の当主をやっている豪傑くそババァだ。

 

 

「何がという訳だクソババァ。ちゃんと説明しろ」

 

 

「1人で醜鬼の群れを圧倒した実力を見てみたいと言う組長が多くての。お主の処遇を決める為にもその実力を示すべきだろうと思ったのじゃ」

 

 

「だからって山城さんと戦う必要もねぇだろ」

 

 

「ごちゃごちゃ煩いのぉ。なんじゃ、自信が無いのか?女子に負けるのは恥ずかしいというなら構わんぞ」

 

 

「やってやろうじゃねぇか‼︎」

 

 

「話は決まったようね。じゃ、私は外出待ってるから用意が出来たら来なさい」

 

 

山城さんは余裕の笑みを浮かべながら部屋を出ていく。それに合わせるかのように組長達もゾロゾロと外へ出ていく。

 

部屋に残ったのは俺と母さんとくそババァ、そして出雲さん。

 

 

「さて、千景よ。山城恋と戦う前にお主には伝えておかなきゃいけない事がある」

 

 

「なんだよ」

 

 

「色々と複雑な事情があるのじゃが、簡潔に言うとお主のその強さは能力によるものじゃ」

 

 

「は?何言ってんだよ。俺は男だろうが」

 

 

「お主が産まれたばかりの赤子だった時の事じゃ。原因不明の病に罹っての。魔都由来の奇病の可能性があった事からお主は陰陽寮に預けられたんじゃ」

 

 

魔都の研究をしている組織である陰陽寮。俺がそこに預けられていた事自体は別にいい。

 

だけど、それがなんで能力を持ってる事に繋がるのか、男に発現しない筈の能力が何故俺にはあるのか、それはどんな能力なのか。

 

疑問が次から次へと浮かんできて何から聞けば良いのか分からなくなる。

 

 

「明確な治療方法が無い事もあって陰陽寮もお手上げ状態じゃった。そんな中、偶然桃を与えてみた結果お主の中にあった病魔と桃が反応して能力が発現したらしい」

 

 

「うん………まぁそれは分からないというか今処理しきれる情報じゃないからいいとして、俺の能力ってなんなの?」

 

 

気になる事は幾らでもある。正直どう反応したら良いのか分から無い事ばかりであるが、何をどう聞いた所で満足する事は無いだろうし、それを気にしてもしょうがない。

 

 

「うむ、その切り替え能力の高さこそ千景の良い所じゃ。実に扱いやすい」

 

 

「ぶっ飛ばすぞくそババァ⁉︎」

 

 

「お主の能力、それは夢叶える者〈ドリーマー〉じゃ」

 

 

「どういう能力だよそれ」

 

 

「ようはお主が本気で出来ると信じたことを出来るようにする能力。不可能を可能にする力じゃ。謎の病気と桃の力、赤子故に本能的に生きたいと願ったからこそ生まれた能力じゃな」

 

 

「つまり、貴方が漫画やアニメの技を再現出来るようになったのは貴方が修行すれば出来ると信じて実行したからなの。その証拠に魔法とかは使えないでしょ?」

 

 

これまで口を閉ざしていた母さんが説明してくれた。

 

確かにメラとかケアルみたいな原理がよく分かってない魔法とかは練習しても出来なかった。何故なら自分でも出来るわけ無いと思ってたから。

 

 

「って事は俺、かめはめ波とかも出来るんじゃない⁉︎舞空術とかも出来るよね⁉︎」

 

 

「多分ね。その気になれば元気玉も使えるわ」

 

 

つまり、レイリー師匠のいう疑わない事が強さってのは正しかったんだ。

 

やっぱり少年誌……………少年誌は全てを解決する。

 

 

「よっしゃ、テンション上がってきたぁ‼︎やってやる‼︎」

 

 

「ふふ、じゃあみなさん。そろそろいきましょうか」

 

 

話が終わるのを待っていたのか出雲さんが能力を使ってゲートを作る。

 

俺達がゲートを潜るとすでに組長達がいてなんか結界っぽいのも出来てて準備万端といった感じだった。

 

 

「あら、良い顔してるじゃない。勝てる訳も無いのに…………もしかして痛めつけられるのが好みだったりする?」

 

 

「負けるつもりで戦う馬鹿がいるかよ」

 

 

「へぇ」

 

 

山城さんが獲物を見つけたかのような獰猛な笑みを浮かべる。

 

人類最強だなんて言われてる山城さん。人の上に立つ事を運命レベルで決められた存在にとって戦いというのは暇つぶしの娯楽に過ぎないのだろう。

 

常に圧倒的に勝ってきた山城さんにとってこの戦いは遊びでしかない。戦える男という珍しい存在である俺を圧倒的にぶちのめして、自分という存在を更に高めるということしか考えていないようだ。

 

だが、それがどうしたというのか。こちとら男という性別に生まれてから逆境の中で生きてきたんだ。

 

少年誌の中で生きているキャラ達だって、俺なんかより壮絶な人生を送っていても諦める事は無かった。

 

絶望的な相手にだって立派に立ち向かっていった。

 

そんな人達を師匠と敬うのなら、人類最強程度に臆してはいけない。

 

俺は腰を低く落とし、両手を腰の位置で構える。

 

 

「かー……………めー………………」

 

 

 

青白い光が両手に集約されていく。山城さんが少し驚いたような表情を見せるが、動こうとしない為俺が次にする行動を見てみたいとかそんな感じなのだろう。

 

 

「はー…………めー……波ぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

 

両手を突き出すと青白い波動が山城さんへと向かう。

 

山城さんは避ける事もせずに片手で俺のかめはめ波を払った。

 

何も驚く事は無い。相手は山城恋なのだ。地球の答えとすら言われる最強の存在。そんな相手に思いつきで放った技が通用する訳無い。

 

 

「男なのに能力が使えるのね…………惜しいわ」

 

 

「まだ俺の可能性はこんなもんじゃないですよ」

 

 

かめはめ波はもっと研鑽を積む必要がある。だが、可能性は示せた。

 

ここからは俺が積み上げたものをぶつけるだけだ。俺は山城さんの間合いへと踏み込む。

 

 

「中々速いわね」

 

 

「数え抜き手‼︎四、三、二、一‼︎」

 

 

連続の抜き手を腕をクロスにして受ける山城さん。だがこの技に対しては無意味だ。

 

数え抜き手。史上最強の弟子ケンイチという漫画に登場する最強キャラ、風鈴寺隼人が使う特殊な抜き手。

 

連続で抜き手をするのだが、突く度に特殊な力の入れ方をして指を減らしていくのだ。最終的にはどんなガードすら突き崩すという技である。

 

 

「無影無限突きぃ‼︎」

 

 

無限とも思えるほど連続の突きを相手に叩き込む技だが今の俺だと長老ほどの威力は出せない。

 

それでも、山城さんのガードを崩すには充分だった。

 

俺の渾身の連続突きが体がくの字に折れ、ぶっ飛ぶ山城さん。

 

 

「やるじゃない。こんなに痛い突きは初めてだわ」

 

 

「そういう割には効いてる感じしないんですけど」

 

 

「いえ、貴方は誇って良いわ。この私に少しだけやる気を出させたんだから」

 

 

「そうですか。ならもっと凄いのを見せてやりますよ」

 

 

俺は拳を握り締め、最大質量の覇気を込める。これまでの攻撃にも覇気は込めてきたが、この一撃はこれまでの比じゃない程の覇気を込めている。

 

バチバチと黒い稲妻が俺の周りを奔る。

 

 

「貴方は強いわ。少なくとも男の中じゃ最強って言ってもいい。でも、最強には勝てない」

 

 

「やってみなきゃ分からねぇだろ‼︎」

 

 

山城さんが何やら掌印を組んでるみたいだが、こちらがやる事は変わらない。

 

真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす。渾身の右ストレートでぶん殴るだけだ。

 

全速力で山城さんの間合いに入り拳を構える。

 

 

「分かるわよ。だって貴方の力が能力であるのなら私には絶対に…………⁉︎」

 

 

なぜか驚いて隙を晒している山城さん。よく分からないけど折角のチャンス、ありがたく頂くとしよう。

 

 

「能力は無効化した筈なのに………‼︎」

 

 

「本物には及ばないけど………拳骨衝突ォ‼︎」

 

 

冷静さを取り戻したのか、山城さんはガードする。

 

拳は山城さんに触れる事なくその衝撃を伝える。

 

 

「ふ………ふざけた威力ね。ガードだってした筈なのに……………………私以外だったら今ので勝ってた事でしょう」

 

 

肩で息をしながら服についた埃を払う山城さん。

 

クリーンヒットでは無かったとはいえ今持てる全てを費やしての一撃が大したダメージにならなかった。

 

そのショックなのか、全力を使い果たしたからなのかこれまでに無い程の疲労感が一気に襲ってきた。

 

 

「渾身の一撃……………だぞ……せめて膝くらいはついて………欲しかっ……た」

 

 

意識を保つ事すら出来ないし、負けた事は悔しいが、カイドウ戦のゾロが言っていた台詞を言えた事は少しだけ嬉しかったりした。

 

 

「殴られて骨が折れるなんて初めての経験よ。誇りなさい」

 

 

山城さんの言葉に答える体力も残っていない俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

組長達が居なくなった会議室で恋と海桐花は2人で話していた。

 

 

「それでどうじゃ……馬鹿孫の実力は?」

 

 

「最後の一撃の前、能力の無効化をした筈なのに彼の周囲の黒い雷みたいなのは消えてなかった。スピードもパワーも変わらなかった。最後の一撃なんて腕の骨が折れただけじゃない、内臓へのダメージも凄まじかった」

 

 

能力で完全に治癒した筈なのに折れた骨が痛んだ気がして恋は顔を僅かに歪める。

 

その様子を見て海桐花は満足気に笑う。

 

 

「カッカッカ…………彼奴の強さは常識外れの修行故に身に付けた力じゃからな。漫画のキャラがやってた修行をやれば自分も強くなれると本気で信じて取り組む馬鹿よ。あの戦闘で能力を使った技はかめはめ波位よ」

 

 

信じる事で不可能を可能にする能力、夢叶える者〈ドリーマー〉。

千景はそれを戦闘においてほぼ使用していない。

 

高い身体能力も、修行をこなせば辿り着けるものと信じたからだ。

 

覇気も自分は体得出来ると信じて修行したから身に付けた技術。

 

それ故に恋の能力で無効化する事が出来なかった。

 

 

「こんなに満足いかない勝利も初めてです」

 

 

「どうじゃ?あの馬鹿に嫁いでみんか?お前なら喜んで東に迎えてやるぞ」

 

 

東は常に強大であるべしとしている海桐花にとって山城恋という女は千景の相手として申し分無かった。

 

 

「謹んでお断りします」

 

 

「ハッハッハ、いつでも待っておるぞ」

 

 

ちょっとやそっとで頷くような女では無いと分かっていた海桐花は恋の肩を叩き、会議室を出ていく。

 

 

「組長達へ面は通した。気は進まんが、上の連中にも話を通しておいてやるか。カハハハ‼︎これほど楽しみなのも久方ぶりじゃ‼︎カハハハハハハ‼︎」

 

 

大股でノッシノシ歩きながらご機嫌で歩く海桐花。何年振りかのご機嫌な様子の海桐花に東家の者達は「また何か悪い事企んでる」と訝しんでいた。




アニメは基本サブスクである程度話数が溜まってから纏めて見たい派です。

千景の能力は基本的にやろうと思えばなんでも出来ます。その気になればゴムゴムのピストルとかみたいに出来るし自然系の能力みたく流動体になって攻撃を回避なんて事も可能です。

ただ、千景君が本気で自分には出来ると思わなければ出来ません。出来ると思えば舞空術だろうが錬金術だろうが、メラゾーマだろうが無量空処だろうが何でも出来ます。
千景君は少年漫画脳なので能力や技は修行して身につける物という考えがあります。ので千景君の中で理屈が理解出来て修行で身に付けることが出来ると思えばどんな能力でも習得可能です。



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