魔防隊の任務にも慣れ始めた頃、俺は一番組寮まで来ていた。
「わざわざ来てもらって悪いね、千景」
「りうさんの頼みですから。任せて下さい」
一番組組長、冥加りう。うちの婆さまと同期の大ベテランの隊員だ。
俺も一時期りうさんの所で修行をつけてもらってた時期があってめちゃくちゃ世話になった恩師だ。
有望な妹弟子に稽古をつけてやってくれと頼まれた。
「入っておいで」
「押忍‼︎多々良木乃実です‼︎今日はよろしくお願いします‼︎」
りうさんの背後から現れたのは快活そうな少女だった。
「才能はピカイチさ。数年あれば総組長にだってなれる逸材だよ」
「なるほど、それは良いっすね」
「恐縮です‼︎」
「そんなビクビクする必要は無いよ。こいつも私の弟子、つまりアンタの兄弟子だよ」
そうか、りうさんの弟子という事は俺にとっては妹弟子という事になるのか…………………妹、弟子?
「しまったね……………久しぶりだから忘れてたよ。木乃実、気張りなよ」
「お、押忍‼︎」
何やらりうさんが溜息を吐いているが関係無い。俺の頭の中には唐突なビジョンが浮かび始める。
道着を着た木乃実がお兄ちゃんと言いながら俺を追いかけてきている姿、道場からの帰りで駄菓子屋によってお菓子を買って欲しいと強請る木乃実。
そう、俺はお兄ちゃん……………お兄ちゃんなのだ。
「どうやら俺達は兄妹だったようだな…………」
「た、確かに千景さんは兄弟子ですから」
「ふっ、昔のようにお兄ちゃんと呼んでくれても良いぞ」
「え、いや千景さんとは初対面ですよね⁉︎」
「諦めな、木乃実。こいつは筋金入りのシスコンなんだ。馬鹿である意味変態な奴だが、その技は本物だからしっかり学びな」
りうさんが何やら煩いが知らん。妹である木乃実が強くなりたいというのなら全力を尽くすのが兄の勤め。
俺はお兄ちゃんを全力で遂行する。
「木乃実、構えろ。全力で打ち込んで来い」
「お、押忍‼︎」
木乃実が構えを取るとオーラが溢れ出す。
「私の能力は金色形意拳〈ケモノチカラ〉獣の力をこの身に宿す能力です」
「なるほど、それで形意拳か。良いね、好きに打ち込んで来な」
昨日は六番組で俺のアクション映画鑑賞会は敢行した。八千穂にはめちゃくちゃ反対されたけどそこは流石にお兄ちゃんパワーを行使した。
そして、その後ケンイチを全巻一気読みした。
今の俺はめちゃくちゃアクション気分だ。
「行きます‼︎虎爪烈斬‼︎」
虎の爪に見立てた斬撃を飛ばす技か。りうさんが期待してるだけはあるな。能力の出力自体は組長クラスだろう。
斬撃の合間を縫って躱わす。すると目の前に木乃実が来ていた。
「虎撲砕破‼︎」
オーラによる砲撃。これも避ける。それならばと俺の間合いに入ってくる木乃実。
突きも蹴りもまさに一級品。これで発展途上なのだからりうさんの言う総組長だってなれるかもしれない。
そしてシームレスに型を変える木乃実。虎から蛇、蛇から猪、蠍と一連の動きの中で次々に手札を変えていく。
「なるほど、これは厄介だ」
「でも、千景さんは涼しい顔で捌いてますよね⁉︎」
「まぁお兄ちゃんだからな」
「答えになってないです‼︎」
「先に開展を求め、のちに緊湊に至るってやつだ」
「よく分かりません」
これはいけない。木乃実にケンイチを全巻貸してあげなきゃいけない。
始めは大きく、後に小さくの意味を持つこの言葉はケンイチという漫画において最終版まで活躍する技のきっかけとなった。
「制空圏ってやつだ。一定の範囲内ならどんな攻撃だってオートで捌けるし、侵入してきた敵はボッコボコって寸法よ」
ぶっちゃけ今の俺の制空圏だと普通に突破出来る人が魔防隊には結構居るんだよな。
多分、木乃実もそのうち余裕で突破するようになるんだろうな。
見聞色と合わせるとこれがめちゃくちゃ強くなると思うけど、まだ組み合わせが上手くいかない。
能力の組み合わせも今後の課題か。
「な、なるほど……………」
「これは武術の次の段階だ。木乃実は俺とは違うタイプっぽいから無理に覚えようとしなくて良い。とりあえず、今の打ち込みで色々と課題は見えてきたからそこをやっていこうか」
「お、押忍‼︎」
その後、改善点を伝えたりしながら俺が独学でやってきた修行なんかを教えたりした。
一通り教えたあと、木乃実から能力をフルに使った戦闘を見たいと言われ、醜鬼と戦う事になった。
地面からボコボコと醜鬼が現れる。
掌印を結び、呪詞を唱える。
「九綱 偏光 烏と声明 表裏の間」
麻衣亜のアドバイスで広がった俺の能力の解釈。大事なのは「出来るかもしれない」ではなく「俺には出来る」なのだ。
イメージと確信の二つさえあれば俺に出来ない事は無い。
そういう意味では掌印や詠唱といった分かりやすい記号がある技は俺にとってはかなりありがたい。
「〈虚式・茈〉」
どデカいエネルギーの塊が一直線に飛び、当たった醜鬼達を粉々に吹き飛ばす。
仮想の質量を押し付ける五条悟の必殺技。まだイメージが掴みきれてない俺では呪詞唱えてもまだ威力が足りない。
ここは練習次第だ。そして次の課題に挑むとする。
次に俺は丑、卯、申の順に印を組む。すると俺の右手に集まったエネルギーがバチバチと雷のような性質を帯びる。
「雷切‼︎」
ONE PIECEの高速移動技である剃とNARUTOの雷切という複数能力の併用。
超高速に走り回りながら残った醜鬼達を狩っていく。
次々と貫かれていく醜鬼達。そしてその中から一際大きな醜鬼が残った醜鬼達を取り込んで大きくなる。
それを見た俺は動きを止めて、次の能力を発動する。
「黒鞭、発勁」
両サイドにある大岩に黒い帯を射出する。そして後ろに飛びながら両足にエネルギーを溜める。
僕のヒーローアカデミアで主人公のデクがやっていた複数の能力を使ったコンビネーション。
「マンチェスタースマッシュ‼︎」
パチンコ弾の要領で俺自身を打ち出し、足に溜めたエネルギーを相手にぶつける必殺の飛び蹴り。
大型醜鬼は防御しようとするも間に合わずに直撃し、腹をぶち抜かれる事になった。
見聞色の覇気で醜鬼の反応が無いことを確認してから右腕を突き上げ、オールマイトのスタンディングを再現。
「やってみたかった事ランキング27位、オールマイトのスタンディング………見事たっ………せ」
直後、極度の疲労感を感じ、急激に眠気が襲ってきた。
その後、目を覚ました俺はりうさんから色々と説明を受けた。
能力の過度な使用した事からくる疲労、それによる気絶という事らしい。
能力に目覚めたばかりの新人の隊員などがよく起こす症状らしく、こればかりは能力を使用して自分の限界を知ることが大事らしい。
「兎も角、今日は助かったよ。あんたのお陰で木乃実はまた一つ成長出来た」
「木乃実の才能なら俺が指導しなくても強くなるだろ」
「あの子は負けん気が強くて、折角の能力もお気に入りの虎で拘りがちなんだ。今のあの子に必要なのは新しい視点なんだよ」
「なるほど、俺も広い視点を必要としているし、兄妹で課題は似るものか」
最近は他の組にも行ったりしてるから、色々と刺激を受けられて成長に繋がってる気がする。
「あんた、暫く見ないうちに気持ち悪くなったね」
「幾らりうさんでもぶっ飛ばすぞ」
「それで、今日は晩飯はどうすんだい?なんならあんたの分も用意は出来るよ」
流石はうちのお婆様と同期の歴戦ババァ。こっちの覇気にもケロッとしてやがる。
「いや、折角だけど今日は出雲さんと飯行くから遠慮しとく」
「あの子もあの子で忙しいだろうに……………あんまり迷惑かけるんじゃないよ」
確かにあの人、魔防隊の任務こなしながら地元のPRとかやってるみたいだし多忙過ぎるだろ。
とか考えてたら背後に出雲さんの気配を感じた。
「流石出雲さん、時間ぴったりだね。それじゃ、りうさんまたなんかあったら呼んでくれ」
「冥加組長、失礼します。さ、千景君そろそろ行こうか」
出雲さんは、りうさんに対して一礼すると俺の手を引いて天御鳥命で作った穴に入っていった。
このあと出雲さんと焼肉屋に行ったがめちゃくちゃ美味い店だった。
脹相ムーブは隙あればドンドン入れていきたい所存。
ヒロアカ入れられたし、ドンドン増やしていきたいです。武器使った技とか好きなのいっぱいあるんで。
りうさん的に天花さんと千景君の距離感は「なんかこいつらの距離感なんか近くないか?」とか思ってます。2人的には何にも恋愛的な意識はしていないです。フラグらしいフラグは立ってないような立ってるようなよく分からない状態です。
もっとドキドキするような恋愛描写とか入れてぇ。けど中々それが出来ない………………頑張りたい。