東家の長男は夢に生きる   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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親友と俺

魔防隊入隊祝いで母さんから刀を貰った。他にも槍とか大剣とか色々な武器を強請ったらぶん殴られた。

 

能力の拡張性の為と説得したら何とか納得はしてくれた。

 

俺が入隊してから各隊を回って隊員達への指導がそれなりに成果を上げ始めた頃、俺は七番組に来ていた。

 

妹弟子の1人で友人の1人である羽前京香に指導を頼まれたからだ。

 

兄弟子である事は認めてくれたのだが、妹扱いしようとしたらめちゃくちゃ殴られた。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

「武装色に意識を割き過ぎだ。もっと見聞色に意識を回せ」

 

 

俺の能力の拡張性は思いの外凄まじいらしく、一部技能を教えるという形で他者に覚えさせる事が出来るみたいだ。

 

ただし、俺と教えられる対象がそれを習得出来ると信じる事が前提条件としてある。

 

かめはめ波のようなエネルギーの運用は木乃実を除いて教えられ無かったが、覇気であれば理解出来る隊員が多かったようで教える事が出来た。

 

武装色と見聞色の覇気は全人類に素養があるとレイリー師匠も言っていたのはこういう事かと納得したものだ。

 

 

「今ならうちの母さんともちゃんと戦闘にはなると思うよ」

 

 

「これだけ鍛えてまだ届かないか……………」

 

 

「こればっかりは能力の差かな。母さんはただでさえ高いゴリラパワーが能力でブーストされる。流石にそこら辺の醜鬼操るだけじゃ京香の足手纏いにしかならん」

 

 

「我ながらハズレな能力だよ」

 

 

京香の能力は奴隷とした生物の力を引き出し、操るというもの。

 

組長が持つ能力としては外れも良い所である。よほど強い個体の醜鬼を操るでもしないとやっていけなさそうだが、それでも裏鬼門の七番組の組長で成果を上げ続けている京香はよくやっている。

 

 

「千景、私の奴隷になってくれないか?」

 

 

「俺が七番組所属なら考えてもいいけど、俺六番組だからな。天花さんに許可取ってくれ」

 

 

「まぁ良い。千景ぎ教えてくれた覇気のお陰で私は可能性が見えた。何としても強くなって総組長になってやる」

 

 

握り拳を作りながら強く宣言する京香。彼女から僅かながら覇王色っぽい覇気が見えた気がした。

 

覇気を習得した隊員の中でも覇王色に目覚めたのは母さんと山城さんだけだ。

 

母さんは覇気全開のガチ組手を繰り返して覚醒させたが、山城さんに至っては説明しただけでやってみせた。

 

なんなら覇王色纏いも習得しかけてる。あまりにも才能ウーマンが過る。

 

 

「それにしても………この覇気というのは疲れるな」

 

 

「覇気の出力は良い感じだよ。ただアクセルベタ踏みし過ぎな感じがする。もっと効率良く運用してかないとな」

 

 

「今後の課題か………………すまん、部下から連絡だ」

 

 

懐から携帯を取り出す京香。報告を聞いた京香が驚いた表情を見せた後、こちらに視線を向けてくる。

 

表情から察するに門の出現、それか魔都災害の被害者が近くにいるかだ。

 

 

「東の方で魔都災害、西の方で門の出現だ。どっちに行く?私は魔都災害の被害者を救出しに行く。日万凛達が門の方に向かう。頼んでも良いか?」

 

 

魔都では突如魔都に迷い込む魔都災害というものがある。この魔都災害の被災者の保護も任務の一つである。

 

そして現実世界と繋がる門が突発的に発現する事があり、そこから醜鬼達が現実に出てしまわないように防ぐのも任務である。

 

 

「日万凛達も近くまで来てるみたいだな。よし、2人の事は任せとけ」

 

 

「頼んだ‼︎」

 

 

京香はそう言うと被災者のいる方角へと走り出す。

 

それを見送った俺は、見聞色の覇気で日万凛の位置を補足した俺はダッシュで日万凛の方へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、門が消えたのを確認した俺達は日万凛の運転する車で七番組寮まで戻った。

 

 

「はぁ?男の奴隷が七番組寮の管理人として働く?」

 

 

「さっき組長から連絡があったの」

 

 

俄には信じられないといった顔で不機嫌オーラ全開なマイシスター、日万凛。

 

どうやら京香は被災者の救出に行った先で窮地に陥り、仕方無く能力で被災者を奴隷としたようだ。

 

 

「嫌そうな顔してどうした?」

 

 

「だって男よ?兄さんは兎も角、大半の男は何もしないでヘコヘコ頭下げるしかしない生き物なの。そんなのが奴隷だなんて組長の足を引っ張るに決まってる‼︎」

 

 

現代は超が3つほど付く女尊男卑な世界だ。男というだけで基本的に扱いは酷いものである。

 

大半の男にとって生まれた時点で詰んでるまさに糞ゲーとなっている。諦めて無気力になる人も多いと聞く。

 

日万凛は東の本家に生まれてはいるが、落ちこぼれとして扱われている。本番に弱いタイプでどれだけ努力を重ねても、体調を崩したりで本来の実力が発揮出来ないという事が多かった。

 

それでも日万凛は諦めずに魔防隊に入隊し、七番組の副組長として活躍している。

 

努力家な日万凛にとって、スペックの低さを理由に諦めることは許せないのだろう。

 

 

「安心しろ日万凛」

 

 

「何が?」

 

 

「その奴隷君とやらに会ったら俺が見極め…………待て、何で「また変な事やろうとしてる」みたいな目で俺を見る」

 

 

「いや本当にその通り過ぎて…………自分の兄ながら変わってるなって」

 

 

「千景さーん、日万凛ちゃーん‼︎組長帰ってきたよ〜‼︎」

 

 

大きく手をブンブンと振りながら現れたのはショートカットで活発な印象を受ける女の子、駿河朱々ちゃん。

 

日万凛と仲良くしてくれる良い子だ。

 

 

「朱々ちゃんだけ?寧ちゃんはどうした?」

 

 

「寧ちゃんは玄関でスタンバってるよ。日万凛、行こ‼︎」

 

 

「やはり新人か………俺も同行しよう」

 

 

「千景院」

 

 

「いぇーい」

 

馬鹿な事やってるという日万凛の冷めた目を横目にハイタッチを決める俺と朱々ちゃん。

 

こういうノリをノータイムで返してくれるとても良い子だ。東だと反応してくれるの麻衣愛だけだからな。こういうノリを理解してくれるのは貴重だ。

 

どんな奴だろうねとか話しながら玄関まで行き待ってると京香が帰って来た。

 

京香の背後に居る少年がおどおどとこちらの様子を伺っていると俺と目が合う。

 

俺の存在を知っているのは正隊員のみと一部関係者のみである為か、めちゃくちゃ驚いているようだ。そしてそれと同時に嬉しそうでもあった。

 

 

「という事でお前は戦闘時以外、この七番組で寮の管理人として働いてもらう」

 

 

「え、俺も魔防隊員になれるんじゃ………………」

 

 

「男は基本的に魔防隊には入れん」

 

 

「え、じゃああの人は⁉︎」

 

 

少年が俺の方を指差す。それに対して京香は面倒くさいタイミングで現れやがってと俺を睨む。

 

 

「こいつは例外中の例外だ。こいつに関しては機密事項も多い。正式に管理人として雇われてないお前になんて話し「京香、ここは任せてももらおう」 はぁ……………」

 

 

なんか盛大なため息を吐かれたが関係無い。これ程絶好のシチュエーションを逃す手は無い。

 

 

俺は今人生で初めて魔都に来た時くらいの昂ぶりを感じていた。最高に好きなキャラのあのセリフを言えるのだから。

 

 

「は⁉︎まさか⁉︎」

 

 

朱々ちゃんが何かに気が付き、京香も何かを察知したようだがもう遅い。今の俺には誰にも止められん。

 

 

 

「少年、好きな女のタイプは何だ?」

 

 

「え?」

 

 

日万凛、朱々ちゃん、京香がなんかあちゃーみたいなリアクションを取っているが知った事じゃない。

 

 

「答えにくければ好きな漫画のキャラでも構わん。性癖にはその人間の全てが現れるからな」

 

 

多少のアレンジは入るが『一度は言ってみたい台詞〜自己紹介編〜』でベスト5に入る東堂葵の名台詞だ。

 

 

「それって呪術廻戦の東堂葵ですよね?俺も好きです。ジャンプ系のバトル漫画は大体好きですよ」

 

 

「はぁぅ⁉︎」

 

 

まさに天啓とはこの事。幼少の頃から周囲に女ばっかりな環境で育って来て趣味を語り合える同棲の友達が居なかった。

 

もしかするとこの少年は俺と同じ………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、俺の脳内に流れ出す存在しない記憶。

 

 

 

 

夕方の校舎裏、ジャンプ片手に俺と優希は語り合っていた。

 

 

『千景さん、今週のジャンプ激アツだよ‼︎』

 

 

『ふっ、ジャンプはいつだって激アツなんだぜ?』

 

 

『確かに‼︎その通りだ‼︎』

 

 

 

 

場面は変わり、空き教室。何か意を決したように俺に相対する優希。

 

 

『俺、魔防隊に入ってヒーローになる』

 

 

『男には無理だぞ』

 

 

『千景さんがやるってんなら俺もやる‼︎親友1人で戦わせるなんてヒーローじゃない‼︎』

 

 

『流石…………だな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地元じゃ負け知らず……………いや、世界最強のコンビか」

 

 

「え、ちょ、何ですかコレ⁉︎」

 

 

「どうやら俺達は親友だったようだな優希」

 

 

「俺自己紹介もまだですよね⁉︎」

 

 

「そういう所、中学の時から変わらないな」

 

 

「いや、多分ですけど貴方年上ですよね⁉︎」

 

 

「という訳でこいつは東千景、例外的に魔防隊員として認められてる男だ。戦闘に関してこいつ程頼れる奴も居ないが、この通り残念な奴でもある」

 

 

 

京香が俺を紹介してくれているが、俺と優希は最早超親友。そんなものは不用だ。

 

 

「俺の親友が京香の奴隷か…………今度の総組長選挙、俺は京香を推薦しよう」

 

 

俺の立場は平の隊員であるが、組長会議への参加が特例で認められているし、各隊のレベルアップに貢献してる事から俺の発言力はそこそこ高かったりする。

 

 

「それは有り難い事だが…………何が望みだ?」

 

 

京香は総組長に成りたがっている。山城さんという絶対の牙城を崩す為には手柄だけでは無く、多くの協力者を必要とする。

 

その事を理解している京香は俺の申し出に警戒をしていた。

 

 

「俺に優希を鍛えさせてくれ」

 

 

「はぁ?」

 

 

俺の提案に間の抜けた声を出す京香。俺とて無条件に協力する訳じゃない。

 

向上心の強い京香の奴隷となるのだから、優希は俺が関わらなくても勝手に強くなるだろう。

 

だが、そこで俺が全力で教え導くことで夢への後押しをさせてほしいのだ。

 

 

 

「だが、まだ優希には色々と説明しなきゃいけない事があるようだし今日の所は帰るとしよう。またな優希そして日万凛」

 

 

日万凛に手を振り、ゆうの肩を軽く叩いて寮の外へと出る俺。

 

外では出雲さんが待っており、俺に気がつくと小さく手を振っていた。

 

 

「久しぶりに末っ子と会えて楽しかったみたいだね」

 

 

俺の顔を見るなり、ニコニコと微笑む出雲さん。

 

確かに日万凛と一緒に仕事が出来てウルトラハッピーではあったが一番の要因はそこでは無い。

 

 

「確かに、日万凛と会えたのは良い事だ。だけど今日は久しぶりに親友と会えたんだ」

 

 

「そっか、それは良かったね。じゃあ今日はお祝いしなくちゃだ」

 

 

「今日は気分が良いから何時もの店じゃなくて少しグレードの高い所に行こう。金は俺が出す」

 

 

「折角だから八千穂とサハラも呼ぼっか」

 

 

 

「ここぞとばかりというやつだな。良いぞ」

 

 

俺は携帯を取り出して、お高めの焼肉屋のホームページを開きポチポチと予約するのだった。

 




やっと原作主人公と合流や…………………………

現状、千景くんがただのヤバい奴なんだよなぁ……………………

組長達や仲の良い隊員達からは「強いし顔も良いけど色々拗らせ過ぎてちょっと恋愛対象としては無理」と思われる事が多いです。
天花さんは「オモシレー男」と評価されてまふ。


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