番組寮の空気は地獄となった。
人型醜鬼の襲撃を受けた魔防隊は各隊の連携強化を決めた。
俺と天花さんは七番組との会議を行う事にしたのだが、日万凛に会いたがった八千穂が同行してきた事で事態が変わる。
「それにしても複数の人型醜鬼に特別個体の醜鬼厄介な事じゃ。七番組は京香組長は頼もしいが、背中を預けるには不安な者がおるようじゃしのう」
「何よ」
「今のお主では頼りがなさ過ぎる。七番組に居ても京香組長だけで無く東にも泥を塗り続ける事になる。東に帰ってこい日万凛」
日万凛を煽る八千穂。言われている日万凛も人型醜鬼の襲撃で活躍出来なかった事を自覚しているからなのか、拳を握り肩を振るわせながら八千穂の煽りを耐えている。
あまりの物言いに京香は「なんとかしろ」みたいな目線向けてくるし、優希は只管困惑してる。
言葉選びこそ最悪だが、八千穂は俺以上に日万凛LOVEだからなぁ。実家出て俺以上に寂しがってたから本当に帰ってきて欲しがってるの知ってるから何とも言えないんだよな。
「…………………」
京香がめっちゃ俺を見てくるけど俺は首を振る。姉妹喧嘩に兄が出るなんて無粋極まり無いし、東基準で見れば八千穂の対応はまだ優しい方だ。
「連携を強化するにしろお互いの戦力を確認する必要がある。だから六番組と七番組とで魔都交流戦をしないか?」
「京ちんらしいね。良いよ、上にはこっちで申請出しとくね。ルールは一騎打ちで良いよね?」
八千穂を遮るように京香が切り出す。京香の提案に待ってましたと乗っかる天花さん。
「構わん、せいぜい首を洗って待ってろ」
「京ちんと久しぶりにガチでヤレるんだね、楽しみだ。それじゃ………八千穂帰るよ」
獣みたいな笑みを浮かべる京香。天御鳥命でゲートを開く天花さん。
「千景は帰らないのか?」
「千景君は暫くこっちに残るつもりみたいだからね。交流戦までしっかり鍛えるんでしょ?じゃ、無茶しないでね千景」
確かに日万凛や優希を鍛える為にこっちに残るつもりだった。最近は考えが読まれてるんじゃないかといくらい俺のやりたい事言いたい事を先回りしてくる天花さん。
「よ、よく千景の考えてる事が分かったな」
若干顔を引き攣らせてる京香。
「家族を除いた中で最も千景君への理解力があるのは私だと自負してるよ。それじゃあね」
俺に手を振る天花さんと物凄く俺を睨んでくる八千穂がゲートの中へ消えていく。
「と言う訳で交流戦当日まで俺が日万凛と優希を中心き鍛える事になりました」
「それはありがたい。日万凛の事、頼むぞ」
「任せとけ。優希‼︎」
「は、はい‼︎」
俺に呼ばれてびっくりしたのか、若干上擦った声で返事をする優希。
「これからお前は日万凛の奴隷になってもらう‼︎」
「えぇ⁉︎なんで⁉︎」
「魔都交流戦という名目が出来たんだ。ムカつく姉をぶっ飛ばしてしまえ日万凛‼︎」
「はい‼︎ぶっ飛ばす機会をくれてありがとうございます‼︎」
俺の言う事に理解が及んでいない優希と自分の奴隷を快く貸し与える京香、そして巡ってきたチャンスに燃える日万凛。
「それじゃ説明も兼ねてパトロールに行こうか。日万凛、車出してくれ」
「そうね。行くわよ優希‼︎」
「いや、ちょ、説明してくださいよ‼︎」
「はっはっは、ブラザー。時には歩く前に走る事が必要なんだ」
優希の首根っこを掴んで引き摺る俺と日万凛。
俺がいるから問題は無いが、人型醜鬼が出た後だ。援軍が来れる範囲でのパトロールになるだろう。
「日万凛の能力は青雲の志は予め設定しておいた能力をコピーする能力だ」
「え、めちゃくちゃ強い能力じゃないですか‼︎」
「初めは凄い能力だって言われてたけど欠点があるのよ。コピーする能力には相性があって能力によっては出力が大きく落ちるの。それに自分は大事な試験の前に怪我したり熱を出したり………結果を出せなかった」
「そういう事があって日万凛は東家だと落ちこぼれ扱いを受けてる」
マジで悔しい話だが、俺の力だけじゃ日万凛の扱いをどうにかする事は出来ない。
日万凛に舐めた事する奴には俺もお兄ちゃんを遂行してきたが、その度に母さんとか海桐花婆様に返り討ちにされるしその時は能力を自覚してなかった事もあって能力者には勝てなかった。
それから俺は本格的な修行を始めたし、日万凛も家を出てしまった。
「だから今度の交流戦は何としてぶっ飛ばさなきゃいけないのよ。その為にあなたを奴隷にするのよ」
「で、でも能力の性格な把握って出来てるのかよ」
「えぇ。使った事あるし問題無いわ」
奴隷化した対象は基本的に死ぬまで奴隷である事と奴隷には働きに見合った報酬が必要である事。
それが京香の無窮の鎖の能力だ。
京香に聞いた話だと醜鬼には豚肉を与えていたらしい。醜鬼に餌を与える程度で済むなら人間相手だとそう大した報酬にはならないだろう。
「身体を張った報酬が必要と聞いてるわ。別にあいつらをぶっ飛ばす為なら洗濯だろうが炊事だろうがなんだってやってやるわよ‼︎」
「い、いや報酬ってそういうかん……………」
何故かしどろもどろになっている優希をよそに目の前から醜鬼の群れがボコボコと現れる。
それを確認した日万凛は車を飛び降り、優希に手を差し出す。
「さぁ、早く‼︎」
「あぁもう‼︎どうなっても知らないからな‼︎」
優希が跪き、日万凛の手の甲にキスをすると優希が光に包まれる。
『無窮の鎖・旋風』
光が晴れると、京香の時のスレイブ化と違いスマートな印象を受ける姿となっていた。
「行きなさい、優希‼︎」
日万凛が号令をかけるとその場から姿が消える。
そして次の瞬間、優希の拳が醜鬼を捉える。しかし、クリーンヒットしたといのに体勢を崩す程度だ。
京香の時と比べるとパワーで劣るが、スピードが飛躍的に上がってるようだ。
優希もそこを分かっているのか、激しい連撃で周囲にいる醜鬼を狩っていく。
「良いわ、これならあいつと戦える‼︎」
醜鬼を倒し終えた日万凛達。日万凛もかなりの手応えを感じたようだ。
無窮の鎖が解除され、優希が元の姿へと戻る。
「良かったな、日万凛」
「えぇ、これなら戦え…………………」
想定以上で嬉しかったのか、ご機嫌な日万凛だったがいきなりスカートの裾を掴んで捲り上げてしまう。
「「は?」」
俺と日万凛の困惑の声が重なる。優希は物凄く気まずそうな顔をしている。
「これ……………能力の代償です」
「あー、うん。俺走って帰るから………ご、ごゆっくり…………」
別に妹と下着姿に思う所は無い。優希もブラザーだから人間性に問題は無い。
なんというか、京香ともこういうことしてるのかとかもっと凄い事してるのかとかを考えたりしてしまって気不味い。
身内のそういうシーンを見てしまった気まずさが半端無い。
「オッタシャデー‼︎」
「兄さん⁉︎待ちなさい、兄さん‼︎待て‼︎」
その後、七番組に戻った俺は京香を問い詰めた。無窮の鎖の報酬は奴隷化した対象が潜在的に望んだ事を強制するらしい。
能力を使用すればするほど要求もレベルアップしていくとの事。
能力の使い勝手も悪ければデメリットも凶悪という能力に同情しか湧かない。
その後も魔都交流戦の日まで朱々ちゃんや匡を含めて出来るだけの修行をつけた。
一週間後、申請が通り魔都交流戦が開かれる事になった。
六番組も七番組も遠征に出ているメンバーがいるからか今回は3vs3のタイマンバトルなった。
そして、この魔都交流戦を成立させる上で成立させる為に必要なのが彼女の存在だ。
「それでは今回の魔都交流戦の審判を務める備前銀奈です‼︎」
「よろしくね銀奈ちゃん」
「はい、お任せくださいチー様‼︎天サマと京サマの戦いを眺められるとか役得でしかないです‼︎激頑張っちゃいます‼︎」
「あーうん、よろしく」
銀奈ちゃんの能力で事前に署名した者同士が結界内で戦闘を行う場合、どんか傷でも治してしまうというものだ。
生粋の魔防隊オタクである彼女にピッタリな能力だ。
「あ、恋サマからまたよろしくとの事です‼︎」
「予定が空いたら連絡してくれって伝えといて」
彼女は山城さんの十番組の所属。定期的に山城さんに呼び出され、殴り合いをしてるうちに俺も懐かれてしまっている。
山城さんとの試合は殴り合いが一番修行になるから俺としてはありがたい。
だけど山城さんと試合する度、海桐花婆様が根掘り葉掘り聞いてくる。何を期待してるのか分からないでもないが、山城さんからしたら俺はストレス発散の為のサンドバッグみたいなもの。
お互いタイプじゃないし、何か起きるという事は無い。
あと俺が十番組に行く度に天花さんの視線が何か怖い。
「私様が勝ったなら、東に戻って来い。私様の部屋でしっかり矯正してやる」
素直に一緒に妹と過ごしたいと言えない八千穂が可愛い。
「勝つのは私よ」
凛々しく宣言し、手を翳す日万凛。優希は複雑そうな表情を浮かべながらも跪き、手の甲にキスをする。
事前のルール確認で優希は日万凛の能力の一環として参加させる事は六番組も了承済みである。
「それじゃ、第一試合はじめぇぇぇぇぇぇ‼︎」
「予告する、貴様は私様に秒殺さ「【烙印破】」ぐぅぅぅぅ‼︎」
旋風という形態だから出来る必殺技。神速で接近し、加速の勢いを利用した掌底突きである。
旋風のスピードで放てばただの掌底も必殺の域に到達する。
突如、違和感を感じる。気が付けば八千穂は額に若干の汗を浮かべながら大きく息を吐いていた。
八千穂の能力、東の辰刻は五秒間時間を止めるか戻すという超がつく強力な能力。
それ故に消耗が激しい能力だ。それをカバーする為に修行を積んでいるが、それでも疲労は避けられない。
「やるのぅ。能力が成長した事は認めてやろう。だが、妹では姉に勝てんという事を教えてやろう」
そう言うと八千穂は両腕広げ構えを取る。
八千穂の能力は強力だけど、能力そのものに醜鬼を倒せる力は無い。それ故に普段は魔都用に改造された銃を使っているが、接近戦の対策として二つの拳法を伝授した。
「劈掛拳というらしい。我らが兄は底抜けの阿保じゃが、こう言う所には感謝せんとな」
史上最強の弟子ケンイチに出てくるライバルキャラ、谷本夏が使う拳法である劈掛拳と八極拳を八千穂には教えた。
八千穂の能力は使用時に構えを取る必要があるから、武術とは相性が良い。
なんで劈掛拳と八極拳なのかと言われれば趣味だからとしか言えない。
まぁ八千穂は東家でも期待の才女だからか、基礎的な部分はアッサリとマスターしたし、功夫もちゃんと詰んでいる。
「確かに、兄さんは史上最強に阿保ね。そこだけは完全に同意よ」
妹達が仲良しで本当に嬉しい。
「貴女がどれだけ特訓を積んできたのかは知らない。それでも、勝つのは私達よ‼︎」
鎖を手繰り寄せ、気合を入れる日万凛と優希。
日万凛達の勝機は八千穂に能力をどれだけ無駄撃ちさせるかにある。
逆に八千穂は能力の使用を節約し、日万凛に一撃を叩き込めるかの勝負。
覇気の練度で言えば八千穂が上だが、日万凛には優希がいる。数の力と優希とのコンビネーションでなんとか頑張って欲しい所だ。
最近、サイレンって漫画がアニメ化されるって聞いて全巻買いました。めっちゃ面白い。アニメ楽しみや!!!!あと序でにToLOVEるも全巻買いました。えっち描写ばっかり言われてるけど、純粋に漫画として面白いのがやべぇよ。
以下、おまけとして各組長達から千景君への評価を乗せます。
一番組
冥加りう
・「思う所はあるけど可愛い馬鹿弟子だよ。木乃実の事任せたよ」
多々良木乃実
・「頼りになる兄弟子です‼︎また色々教えて欲しいです‼︎あ………でもお迎えに来る出雲さんがちょっと怖いのでたまにでお願いします‼︎」
二番組
上運天美羅
「鍛えて貰って感謝してるっス。また可愛い動物の動画とか教えてくださいっス。関係ねぇけど迎えに来た時の天花の笑顔がなんか怖ぇのはなんとかならねぇのか」
三番組
月夜野ベル
「良い人だとは………思います…………恋ちゃんと殴り合い出来てるのは本当に人間なのかな?って疑っちゃいます」
五番組
蝦夷夜雲
「是非とも‼︎ハーレムに‼︎」
六番組
出雲天花
「大型犬みたいで可愛いくて好きだよ。どういう好きかは言うつもり無いから。あと千景君はうちの所属だからね。誰にもあげないよ」
七番組
羽前京香
「兄弟子としても魔防隊の戦力としても申し分無い。色々世話になりっぱなしだから何かしら恩返しさせて欲しいが、天花が居るからお返しは進捗に選ばないとな」
八番組
ワルワラ・ピリペンコ
「感謝はしているわ。京香様の兄のように振る舞っているのは許せない」
九番組
東風舞希
「馬鹿息子ね。シスコンムーブを人前でするのは本当にみっともないからやめなさい」
十番組
山城恋
「暇潰し相手には丁度良いわね。海桐花さんが嫁に来いと鬱陶しいけどそれは無いわね。仮に結婚するなら千景を婿に入れるわ」