クロノ・クロウの顔はかなり整っている。
幼少期は人形のようだと言われる程可愛らしく、成長した今、一種の魔性めいた美貌を持つ彼と方向性は違えどやはり整った顔立ちをしているレオンが共に歩けば多くの女子生徒が歩みを止め振り返る。
「あっ!」
「おっと、大丈夫ですか?」
「人も多い、気をつけなくては」
書類の束を運んでいた女教師が躓き資料を落とす。2人は床につく前に全て拾う。目にも止まらぬ早業だ。
そのまま空いた手を差し出し、女教師はうっとりしながらその手を取り立たせてもらう。
「31枚。俺の方が3枚多いかな」
「俺は順番通りになるよう受け止めた」
などと子供のように張り合うような会話をしている事には誰も気付かない。
クロノは遍く弱者が好きで強者は嫌いだが、それはオラリオという壁の中の蠱毒は強者でも挑まれる可能性があり、つまり弱いものを痛めつけるからだ。
逆にレオンは昔日の英雄の如く常に弱者をモンスターの脅威から守り、その背に安堵しただの民でいる者、その歩みに憧れ英雄を目指す者を生んでくれるのでクロノ的にはそれこそ昔日の英雄と同じ尊敬に値する存在と認識している。
レオンもその隠しもしない残虐性から人にはよく思われないクロノを分別をつける者として見ている。
『学区』は時折戦争にも関わる。だから知っているのだ、最初は高潔な意思を持っていてもいずれ暴力に酔う者が多い事を。身に潜む殺意を敵だけと言い訳して、しかしやがて無差別になる者達を。
どこまで非道を行おうとも衝動に飲まれることのないクロノを、レオンもまた尊敬している。
「とは言え、俺の趣味が生徒に及ぶのを良しとするとはな」
「実際、それだけオラリオが舐められているからな。半端な活躍をしてしまえるからなんだが」
「あー、地上のコボルト退治した程度で、調子に乗って進み過ぎてコボルトの爪で顔に消えない傷負ったエルフとか多いな」
あの屈辱と絶望に震える顔が何度見ても面白いんだ。後地上で繁殖したとは言え極稀にインファント・ドラゴンを倒してみせた有望なチームが一人残して全滅した時とかも、先に忠告しておくと、顔を合わせるたびに良い顔をするようになる。
「生徒達にはするなよ」
「するなと言うなら従うまでだ」
「言わなかったらするつもりだったのか」
「? 何故言われてもいないことを守る必要が? 言い忘れていたのなら、それはそちらのミスだ」
相変わらずだな、とレオンは苦笑した。
無差別に衝動を振るわないが、逆を言えば決まりを提示しない限り衝動を抑えることもしない。罪を犯さぬ悪人とは、どの神の言葉だったろう。
クロベエ
「危険を教えろなんて聞かれなかったからね。やりすぎるなとも言われてないのに何故怒るんだい? わけがわからないよ」