外道がギルド職員なのは間違っているだろうか?   作:社畜

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異端児

 物資を持って『里』に荷物を置いて、30階層に向かう。恐竜種のモンスター蔓延る弱肉強食の階層。

 強化種もよく目撃される。

 

 モンスターがモンスターを喰らい生態系が築かれている。

 そんな階層にも食糧庫(パントリー)は存在し、しかし現在そこは緑肉に遮られていた。

 

 そんな肉壁を物ともしない怪物が竜種だが踏み込めば無数の食人花の大群が物量を以て飲み込まんと襲いかかる。

 

 つまりは混戦。

 

「うおおお! また来たあ!」

「数ハ5! この速度、強化種が混じっていまス!」

 

 声が聞こえる。それは不幸にもこの混戦に巻き込まれた不幸な冒険者達…………ではない。

 

「下がれ」

 

 リザードマンの頭を踏み台に飛び上がった黒髪仮面の女はヒューマンのようだが、今まさに頭を踏まれたリザードマンは彼女の敵ではない。

 

 大口を開けたブラッドザウルスの上顎が切り捨てられる。ついで、群のボスへと向かうも巨体に似合わぬ速度で回避し僅かに刻まれた切り傷に忌々しげな視線を女に向ける。

 

「リド!」

「おう!」

 

 ()()()()()()()()リザードマンは口を開け炎を吐き出す。竜の息吹の如き炎はブラッドザウルスを飲み込み、強靭な皮膚により大したダメージを負っていないボスはしかし女を見失う。次の瞬間、片足が切り裂かれ地面が近づく。それが群のボスが見た最後の光景。

 

 仮面の女は死体から魔石を抜き取る。魔石に釣られるように燃えることも厭わず襲いかかってくる食人花の群を切り裂きながら仮面をずらし()()()()()()()

 

 ジリっと女の焦げた片腕が青い炎を吐き出す。

 食人花も、モンスターも緑壁も全てを焼き尽くす。

 

 

 

 

「で、手に入れたのがこれか」

 

 救援に向かったのにもう終わっていた。

 クロノは受け取った水晶に入った胎児を見つめる。頭には髪の毛のような触手。肌は緑。ギョロリと滲んだ黄色の瞳がクロノを捉え、怯えるように顔を伏せた。

 

「奴等、本格的に動くぞ」

 

 ガリッと焦げた片腕を搔く女。魂すら焼き尽くす炎が彼女の魂を蝕もうとする耳障りな『声』すら焼いているが、此奴との繋がりと思うと虫酸が走るとクロノを睨んでいる。

 

「どうするつもりだ」

「【ロキ・ファミリア】辺りに押し付ける」

 

 クロノは世界を救う気はない。

 クロノの中で黒竜にとどめを刺す英雄候補は今のところレオンだけだが、オッタルや他の弱い者たちも露払い程度には役に立ってもらう必要がある。成長の糧になりそうな今回の騒動、利用しない手はない。

 

「死者が出るぞ」

「彼奴等は冒険者だ。それに、正体を知っているだけで弱点や戦い方、作戦を知ってるわけでもない」

 

 それを知ってたら教えるつもりはちゃんとあるのだ。敵の正体なんて自ずと分かる。正体不明の相手に挑むなんて冒険者として当たり前の事をして、当たり前に死ぬのは冒険者の常である。

 

「チッ。それで? 何か地上で良いことがあったようだが、何があった」

「何故そう思う?」

「今回の鍛錬、ずいぶん八つ当たりが透けて見える。お前が嫌がることは万人の笑みと相場が決まっている」

「……………万人の笑みってわけじゃないが、良い子を鍛えてな」

「? それは八つ当たりするようなことなのですか?」

 

 そう()()()()()()()()()()()

 地面に寝転ぶ数多の影は、全てモンスター。しかしクロノに殺されることなく、それでも襲いかかる事もせず呼吸を整えている。

 

 彼等は異端児(ゼノス)。ウラノスの秘事。

 人と同じ知能と情動を持ち人に歩み寄ろうとする異端のモンスター。

 

 モンスターに()()()、モンスターであるが故に人に恐れられる存在だが、クロノは姿形に興味がないので友好的だ。

 

「いい加減に理解しろ。こいつは最低なんだ」

「最低? 俺が?」

 

 法に許される範囲で収まるように趣味を自制しているというのに酷い言い草だ。その法を作る側だけど。

 

「ん〜? クロっちって、結構良い政策出してんじゃなかったか? ほら、さぽ〜た〜、とか」

「網を細かくすればかかる魚の種類が増えるからだ。此奴の目当ては法を犯す手合、その為に法を利用しているにすぎん」

 

 とはいえ、結果的に人のためになっているので彼女も、クロノの上司も止められないのだが。

 

「まぁ、その獲物もここ最近娘に取られているんだが」

 

 クロノは娘を思い出しはぁ、とため息を吐く。

 

「ざまあないな」

 

 

 

 

 

 さて、物資も運び終え、軽い変装をすると18階層リヴィラの街にて運び屋に宝玉の入ったバックパックを渡す。

 

 あとは適当に、羽振りがいいふりをして街をぶらついてから人気のない場所に向かえば何人のおもちゃが釣れるだろうか、などと考えていると近付いてくる気配。

 

「お前、私を買え」

 

 娼婦のようなことを言ってくる女。その時クロノの脳内には一瞬で複数の選択肢が浮かぶ。

 

 まず一つ。手足を切り落として地上に持って帰ってから遊ぶ。

 2つ目は手足を切り落として森のモンスターに食わせる。

 3つ目は手足を切り落として腹を少し開いて内臓をゆっくり丁寧に殺さない様に取り出す。

 4つ目は手足を輪切りして水の都のモンスターに食わせる。

 

 ひとまず情報を絞りとるために殺さないようにしなくてはいけない。いやぁ、殺さないようにしなくちゃならないなんて大変だなあ。




『彼女』を生き返らせた理由
それっぽいの
死体の中で一番原型を保っていたから

ギルド暗部っぽいの
秘密裏に動く戦力として一番望ましいのが彼女だったから

本音
という建前全部聞かせる必要なんてなく、ただ単純にあの中で生き返った後己の変化と自分だけが生き返ってしまったという事実を一番深く考え込んで傷つきそうなのが彼女だったから


クロノの娘
クロノが大抗争の後拾った少女。絶対悪だの絶対正義だのなんか煩かったなぁ、と思い1から正義の味方を作ってみようとした結果。現在11歳。勇者にも求婚されたことがある将来有望な小人族(パルゥ厶)
ガネーシャ・ファミリア所属。2つ名は【絶対正義(エウノミア)】Lv.5。、
明らかに新人に関わらせたらまずいクロノが教導官になれたのは彼女を育てた実績によるもの。
正義をこよなく愛する法の番人。盗人を見た日には………
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