外道がギルド職員なのは間違っているだろうか?   作:社畜

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加害の裁き

 冒険者のサポーターへの扱いは相当なものだ。クロノが規制してもギルドの監視がないダンジョン内で好き勝手やる冒険者も多い。

 

「こちら、アーデ氏によると貴方はギルドが指定する金額も払わず、食事に連れて行くといいながら鳥の骨を投げつけたとのことですが」

「そんな事してねえ!」

「嘘だな!」

「嘘デス」

「嘘ね」

 

 片手に持つ書類を読み上げるクロノの言葉を否定する冒険者は、しかし憲兵達の主神(ガネーシャ)嘘を見抜く憲兵(パール)中立で呼ばれた神(ハトホル)に嘘を見抜かれる。

 

「となると貴方のレベルも考慮してアーデ氏に払う賠償金額は………そこからアーデ氏の盗難品、盗難階層による危険度を考慮した賠償金を計算すると…………アーデ氏に5万ヴァリス、ギルドに20万ヴァリスの賠償金を払ってもらいますね」

「っ!? お、俺は被害者だぞ!」

「先に加害を行ったのはそちらなので、冒険者同士の報復は行き過ぎなければギルドも黙認するのはそちらも知っていることでしょう?」

 

 一々関わるのも面倒だし、殺人に発展、冒険者の名を落とすような行為でない限りギルドは基本的に放置する。

 

 そして今回冒険者が行なったのはギルドが定めた規則を破るというもの。咎めるのはコチラだ。冒険者同士のいざこざなら当人達で解決させることもあるが、サポーターの重要性は多くの大手ファミリアが知り、そんな彼等にサポーターのこれまでの扱いを公開した上で改革すると宣言してしまったのだ。

 

 あの時暫く徹夜になったロイマンの顔と言ったら……。と、楽しい思い出に振り返ろうとしたクロノは首を振る。

 

「比較的余裕な階層で、メインでもない武器を盗まれるなんてかわいいものじゃないですか」

 

 それが冒険者の街(オラリオ)。どう取り繕おうと力持つ者が得する社会。

 

「そいつはサポーターで、俺は冒険者だぞ!」

「ええ、この場合冒険者が優遇されますね」

 

 悲しいかな、それが現実なのだ。冒険者にサポーターが必要でも、オラリオにとって必要なのはダンジョン探索よりも黒竜に挑める冒険者。どうしたって冒険者有利に動く。

 

「ただ貴方達パーティは此処数年到達階層も増やさず、また稼ぎに対して日頃の迷惑行為の目撃証言を踏まえると金を貯めることもせず路上で酒を飲み自分より弱い相手に絡み上級冒険者の来ない安い酒場で店員を脅すなど……これはこれは」

「………………何がいいたい!!」

「貴方の扱いなんて底辺と思ってる相手(サポーター)と同等でギルドになんの損失もねぇデス」

 

 キッパリと素直に、何の偽りも言葉を被せることもせず言い切るパール。ニコーととても人を馬鹿にしているとは思えない笑みだ。というか別に馬鹿にしてないし。ただの事実を、都市の憲兵として笑顔で伝えているだけなのだ。

 

「このクソガキ!!」

 

 小人族(パルゥム)を最弱種と見下す典型的な冒険者は年下に舐められたと感じレベル差も忘れペンを片手にパールに襲いかかり、クロノの手がブレる。

 

 冒険者の腕が落ちた。

 

「いづ、ああああ!?」

「あ、書類が」

「大丈夫デス父様! 父様が悪い者いじめを我慢できると思ってないデスから予備を沢山用意しマス!」

 

 真っ赤になった書類に全部記憶してあるので新しく書き直そうとするクロノにパールが何処からともなく書類の複写を手渡す。

 

「いい子だなパール」

「にへへ〜」

 

 微笑ましげに見つめ頭を撫でる。嬉しそうに目を細める。

 今やった事を無視すれば何処にでも居る親子のような光景にガネーシャは慣れたもので、ハトホルはえぇ、と困惑していた。

 

 クロノは落ちた腕を凍らせ男の切断面も凍らせる。後で治療師(ヒーラー)にくっつけてもらうのだ。

 

「さて、ギルドの一室で暴力行為も追加、と」

「Lv.1ですから罰金は少なく済むデス。良かったデスね、冒険者様」

 

 そんなやり取りを何回か続け、リリ側から金を払うこともあり手に入れた金の半分を失ったが、最終的な賠償金はリリ側が多くもらえた。

 

 この事は当然公表しなくてはならない訳で、冒険者のサポーターへの扱い…………冒険者のマイナスイメージとなる事の公表にロイマンは今日も胃薬を飲むことだろう。

 

 

 

 

 

「最終的にリリの違法行為の罰金はファミリアが払うことになったのですが…………」

 

 リリの年齢、種族、性別、サポーターであることを考慮し本人のみならずファミリアの監督責任であるとギルドが判断したのだ。

 

「ザニス様は実質的に脱退状態だったと主張しました」

 

 実際殆どホームには戻ってなかったし、同派閥のパーティとは組まなかった。結果、リリを派閥から追放処分する形で罰金を減らすこととなった。

 

 本来脱退金として払わせる予定の金も入らずむしろ金を払うこととなったザニスはリリの背を睨み続けていたが報告に来た職員はクロノ。リリに報復してもすぐに調べられ嬉々として派閥を滅ぼされると判断し、怒りは身の内にしまうことにしたようだ。

 

 まあそれはそれとして別のギルド職員からの訴えで神酒(ソーマ)の危険度を加味し活動自粛を言い渡されたが。

 

 

 

 

 

 

「オラリオがまた少し平和に近づいたデス。これも(正義)が正しく執行されている証なのデスよ」

 

 ふんふんと鼻歌を歌いながら街を歩くパール。と、不意に立ち止まる。

 そのまま進行方向を路地裏に変えると犬に襲われている女の子がいたので犬を殺して助けてあげた。

 

 人を襲う猛犬は駆除すると法律で決まっているのだ。

 

「大丈夫デス?」

「あ、う?」

「おや、貴方だいぶ薄いデスが契約精霊(ガルダ)の同族デスね」




パールは身内に闇派閥(イヴィルス)が居ることは実は知られていて、当時かなりの扱いを受けていたので娘として育ててくれるクロノにめっちゃ懐いた。
尚、その事実を知った正義の妖精は暫く飯に喉が通らなかったし、紅髪ポニーテールのパールに未だ話しかけられないどころか見かけると逃げてしまうよ。



法こそ正義。法を敷くのはギルド。ここ数年間変わることのなかった法を増やし多くの『悪人』を発見したのがクロノ。
パール『つまり父様=正義!』
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